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はてなキーワード: 狼狽とは

2025-03-01

俺一人行動好きな非モテなんだけどさ

この間高校時代友達同士が結婚して家建てたから遊びに行ったんだけどさ、

嫁さんの方に「増田彼女は?」って聞かれたから「いないよ、モテないし甲斐性ないしね」って笑いながら応えてたら、

「え、お前高校時代の頃に普通にモテてたよ」って言われた

旦那の方にも「誰とでも話す割には放課後素っ気なく真っ先に帰るからミステリアスな感じあったしな」って言われて

学校疲れるから家帰って即行寝てただけなんだけど……」って自分主観とは違う印象で狼狽えてしまった

モテてたらしいわ、なんかすまん

2025-02-23

anond:20250223175737

からほっといても円高になるって言っいたじゃん、不況になれば超円高、これは序章に過ぎない。


2021年比較するとドル円は46%変動したが、他国通貨に対しては10-20%の変動幅に収まる。つまり異常なドル正常化すれば2021年+10-20%程度、1ドル114-125円あたりまでは勝手に戻るというだけの話。


嫁が投資信託やってるんだが円安!と騒がれてる時に担当者が「ああ大丈夫ですよ、すぐ元に戻りますから心配しないで放っておいてください」と笑いながら断言してたが、やっぱああい大企業はスゲえなあとつくづく。


ドル高円安の本質は、米国が高インフレ制御に手こずっていたことだが、日本国内では極論に基づいて円安懸念する論者やメディアの声が強まり円安自己実現的に進んでオーバーシュート、そして収束した。


FRBが早ければ年内にも利上げを停止する(予想ほど米金利が上がらない)というのが大きい。というか春先から円安狼狽していたメディア特に朝日毎日東京新聞)は扇動目的報道しているのか?


この円安が、金利差と戦争による一過性のものしかないのは解りきってたことじゃん。俺は常にそう書いてきた。日本の国力がー!とかほざいてたバカ共は、今度は円高国内産業が!と真逆の主張始めるんだろ?


32年ぶりの円安と大騒ぎしていたidはこういう時どこに行ってるんだろうな…ほとんどがアベガーだけど。



過去為替ニュースへの反応見てると、感情考える人たち必ず負けるっぽいな

感情が先でそれに合うように理屈を構築してしま

2025-02-08

anond:20250208133722

えぇ...

強がるも何もなくこの増田私が書きましたって言われたところでどうでもよくないか

狼狽える要素がどこにあるのか本気でわからんのだが

anond:20250208132719

バラされても狼狽える要素ないんだけど・・・

あ、そう、だからなに?くらいの感想

anond:20250208131603

ある程度バズった後で自分が書きましたってブコメはてブロバラすと、

増田相手だと思って好き勝手言ってたブクマカ狼狽えるのが面白いから

これからも後だし自増田宣言はやっていくわ。

2025-01-18

ジークアクス感想

ネタバレあり。

====

なんか、ガンダムNTみたいだな。

と言うのが途中浮かんだ感想

事故で消えた謎のガンダムを追って昔搭乗者と仲のよかったオッサン宇宙をさ迷う。

あとはそのモビルスーツを持ってる謎の男と二人の少女とかでガンダムバトルするとかなんか。

それっぽい。

基本的日本語公用語日本的な町並みでロボットバトルってブブキブランキっぽいよな。

て言うか、前半と後半で絵が違いすぎるけど、どっちかが作中作みたいな感じになるかと思ってたけど別にそんな事はなかったな。

やっぱりビックリしたのは、初っ端からファースト絵柄でまじでビギニング始めたところよな。予告と絵柄違うじゃねぇか!あっ、ビギニングってそういうこと?もしかしてこのまんま最後まで行くのか?と不安だったけどちゃんPVキャラデザパートもあって安心した。

ていうかテレビ放送版どういう形式放送するんだろう。シャアによるモビルスーツ奪取から始めたらそれだけで一回分の分量になっちゃうよ?いや二回分ぐらいか

その後のマチュのパートもどう分けるんだろ。まあ、サイコミュ警察ザク撃退迄でいいか

後のクランバトルは後の回でやればいいし。

それにしても、シャリアブルとかいうおじさんが、正規ジークアクスパイロットを引き取る為にあんな強襲艦をコロニーに無理矢理揚陸させたのはなんだったんだろう。あれやってなんかお偉いさんやってきてたけど、ああも大事にしたら総統ジークアクスの紛失がバレるんちゃうん?

強襲艦のスタッフやたらそれ気にしてたけどシャリアブルおじさんは気にした様子もなかったが、どういう立場の人なんだこの人。戦争終わったのにあんなムチャクチャして大丈夫なのか?

サイドスリーはジオン領土って訳でもなさそうだったけど。

旅券みたいなの渡して昨日の日付だったりしたのはなんなの?

そういや、マチュがハマーン・カーンかいう女説が出てたけど、耳にある赤い三日月がそれと���係してるんかな?あれイヤリング

 

そういや自称ガノタガノタは早く見に行けとか言ってるけど、あれどのレベル情報隠したいんかな?少なくともシャアガンダム強奪して連邦との戦争に勝ったって世界観イタリア語版の情報からすでに広まってるわけだし今更隠す意味もない。

もしかして初っぱなに、正史から分岐するルートちゃんと描いちゃってるところが隠したいところなんだろうか?

かにあの手のパラレルワールド歴史って白黒で一二枚の絵とナレーションだけですませるところを、わざわざ映像にしてちゃんと描いていたのはビックリだったな。大抵、ナレーションだけか、公式資料で書くとかだけですまされるもんな。そういう点では確かにすごい。

て言うか、あのイタリア語版の情報ミス漏れたとかじゃなくてわざと漏らしたんじゃないの?だってあの情報たから皆興味持って観に行こうってなったわけでしょ?

で、そんな皆の一番見たいところはその情報が本当かどうかだよね。で、この映画それを最初にやっちゃうわけよ。ややリアル調のオッサンと画面が出て来たとき、「あれ?俺のマチュは?」って思っちゃった。事前に出てたPVとは絵柄も演出も違う訳よ。あれ?なんか…見るの間違えた?じゃないけどなんか場違いな気分になった。

「な、何ィー!?

……!?

さっきまで観る気でいた百合アニメは?」

みたいな。エロ同人見てた幻覚見せられた奴みたいな狼狽えっぷりしてたと思う。いや、普通普通はさぁ

なんかこう、新規視聴者向けの新規アニメ装ってさ、そんで後半言うか三話ぐらいか、十話ぐらいでネタばらしすんじゃん?

視聴者何となく感づいてるけど気付かないロールプレイをわざとらしくしてさ、三話で世界観バラしで~す。ってとこでウォォォォォォ!とか盛り上がったりするじゃん。わざとらしく。

でもやんねーんだよな。いきなり世界観バラちゃう。いやそこはすごいよ。確かに。開始数分でみたいもの見せてくれてるわけだから普通にすごい。

えーでもこれやったら後半語ることなく無い?

みたいな気分。

うん。気分的にはいなくなったシャアを探し出そうとするシャリアブルとかの方に気が向いちゃってて、マチュとかの方にはあんま向かなったんだけど。そこはうまく興味を引くことやってのけてたね。スカート逆立ちしたり、シャアが鹵獲して赤く塗られたガンダムが再度出てきたり。しかも乗ってる奴違うし。シャアどこいったん?ガンダムに吸収された?それも若返った?

魂だけどっかの女の子宮に入って再度生まれてきた?

とは言え乗ってたのは青髪だし本当に別人なんだろうな。

後なんか劇中歌多くないか?こういうの庵野いかと思ってたのに。

いや、そうでもないかエヴァだと入れてたよな色々。翼をくださいとか別れの歌とか

VTuberが歌ってるとか聞いて警戒してたけどぶっちゃけどこかわからんかったわ。て言うか、☆街すいせいの追っかけたちは観に行ったのか?観に行ってない?それでもファンなのか?

後思ったんだけど、人住んでる町並みであんデカモビルスーツ動かすの無理あるって。マジでカドカ壊しまくってんじゃん。ハサウェイほど真に迫ってはないけど。

パトレイバーぽいって言われてたけど、民家への被害を抑えるために気を使ってるパトレイバーとは運用方針違うなってマジで感じる。

ていうか、コロニー内であんなドカドカやり合ってて大丈夫なのかね。

と言うところで取り留めもなく書いて終わり

2025-01-11

  何買ったりどこに入ったりバス乗ってるか乗ってないか車両衛星から全部収集してるけど記録してねえだけ

    特に県境なんか超えられるとプログラム破綻するので狼狽するはずだが、という話

   一見何もしないように、臼杵津久見の次の  津久見でこっちみてるように止まっていても、後日何かをするための情報収集の準備行為をしている

     延岡学園高校入り口の民家は昼間はカーテンが閉まっていて、19:30に俺が異動してると警戒して家の明かりが煌々とついている

  市棚も、誰もいないように見て、19:30頃には明かりがついている

    12・18に帰って来て拡声器活動全然してないから出てくる奴も出て来れない、  12/18~1/11 まで何もしてないか

  Twitterに冷たい証拠資料をアップされたらされたで、別の少年対応し、仕事中に蒐集帰宅後に突然、挙げられた場合は、対応どないもできない

2024-12-25

ユニコーンの遊び

彼女を私だけのものにしたい。

けれども、それはできない。彼女は姫であり、みんなのものだ。みんなのものからこそ価値があり、誰かのものなら価値がない。

この何物にも代え難い価値担保するために、ひとつの掟をつくろう。


『男はなんぴとも、姫に触れてはならぬ』


我らは紳士なるがゆえ、姫をその背に乗せつつも、自ら触れることはせぬ。

あしかしやんぬるかな、姫は一人で生きてゆかれぬ!


姫に靴を履かせる者が要る。

姫の傘を捧げ持つ者が要る。


すべて姫と同じ、処女でなければならぬ!


おお麗しき処女の園。

穢れなき姫を戴く我らユニコーン闊歩する。


姫にも話し相手必要だ。

すべて処女でなければならぬ!


いやいや話し相手なら我らで十分。

いやいやそれでは姫もつまらない。

我らは紳士なるがゆえ、そのくらいのことは許すとしよう。


さてそういえば、

「男は姫に触れてはならぬ」のだけれども、

姫の触れるものに男が触れるのはなんとする?


言語道断、穢らわしい!

姫の触れるもの、とりわけお口に召されるものに、男が触れることなどあってはならぬ!


いやいやそれは極端というもの、お目見えするわけでなし、言葉を交わすわけでなし、ただのシェフなら男でよかろう。

我ら紳士なるがゆえ、そのくらいのことは許すとしよう。


おお麗しき処女の園。

世に穢れ多かれど、我らが姫に穢れなし。


おう聞いたか皆の衆、どうやら昨晩不届きものが、

姫の召し上がる野菜ひとつに、己の精液を擦り付けておったらしい!


おお言語道断! 到底許せぬ、縛り首じゃ!

いや縛り首では足らぬ、生きたまま火刑にせよ!


ヒヒーン!

ヒヒーン!


おお煌びやかなる火刑

世は穢れに満つれども、我らが姫に穢れなし!


……して結局のところ、その野菜を姫は召し上がられたのか?


ヒヒーン! 言語道断

我らの姫がそのようなもの召し上がられるわけがない!


おおそのように嘶くな、我ら紳士なるがゆえ、そのようなことが仮にあったとしても驚くにはあたらない。

事故のようなものじゃ、そのくらいは許すとしよう!


おお麗しきヒッヒッヒッ処女の園。

穢れなき?姫を戴く我らユニコーン闊歩する。


おう聞いたか皆の衆、どうやら昨晩不届きものが、姫の寝所に忍び込もうとしたらしい!


ヒヒーン! 言語道断

到底許せぬ、火刑に処す!


……して結局のところ、姫はその不届きものと……


ヒヒーン! 言語道断

我らが姫に本日もお変わりなし! やや俯いておられるが、それはそなたらがそのように囃し立てるゆえ!


おおそのように嘶くな、我らは紳士なるがゆえ、そのようなことが仮に、万一、あったとしても狼狽するようなことではない。

姫に落ち度があったわけでなし、そのくらいは許すとしよう!


おお麗しきヒッヒッヒ処女?の園。

穢れなき姫を戴く我らユニコーン闊歩する。


おう見たか皆の衆、姫が不届きものと交わした文を!


ヒヒーン! 嘘じゃ!

あり得ぬ、我らが姫が。我らという者がありながら、男と文を交わすなど!


おおそのように嘶くな、どうせ偽物じゃ。たとえ本物であったとしても、姫も年頃、ヒッヒッヒよくあることじゃ。

我ら紳士なるがゆえ、そのくらいのことは許すとしよう!


しかし仮に、もし万一、この文が本物だったとしたら、姫はやっぱり……?


ヒヒーン!

ヒヒーン!


ヒッヒッヒこれは愉快じゃ、愉快でたまらぬ。次の醜聞を早う聞かせろ!


事実かどうかはもう問わぬ、どうせあの姫、我らが知らぬ間に男と逢引き、とっくに穢れ切っておる!

そのくせどうじゃ、今日今日とて澄ました顔してユニコーンの背に跨って!

滑稽極まるその姿、罵ってやるのが正義でないか


おお麗しきヒッヒッヒ処女の園!

穢れなきヒッヒッヒ姫を戴くヒッヒッヒ我らユニコーン闊歩する!

ユニコーンの遊び

彼女を私だけのものにしたい。

けれども、それはできない。彼女は姫であり、みんなのものだ。みんなのものからこそ価値があり、誰かのものなら価値がない。

この何物にも代え難い価値担保するために、ひとつの掟をつくろう。


『男はなんぴとも、姫に触れてはならぬ』


我らは紳士なるがゆえ、姫をその背に乗せつつも、自ら触れることはせぬ。

あしかしやんぬるかな、姫は一人で生きてゆかれぬ!


姫に靴を履かせる者が要る。

姫の傘を捧げ持つ者が要る。


すべて姫と同じ、処女でなければならぬ!


おお麗しき処女の園。

穢れなき姫を戴く我らユニコーン闊歩する。


姫にも話し相手必要だ。

すべて処女でなければならぬ!


いやいや話し相手なら我らで十分。

いやいやそれでは姫もつまらな��。

我らは紳士なるがゆえ、そのくらいのことは許すとしよう。


さてそういえば、

「男は姫に触れてはならぬ」のだけれども、

姫の触れるものに男が触れるのはなんとする?


言語道断、穢らわしい!

姫の触れるもの、とりわけお口に召されるものに、男が触れることなどあってはならぬ!


いやいやそれは極端というもの、お目見えするわけでなし、言葉を交わすわけでなし、ただのシェフなら男でよかろう。

我ら紳士なるがゆえ、そのくらいのことは許すとしよう。


おお麗しき処女の園。

世に穢れ多かれど、我らが姫に穢れなし。


おう聞いたか皆の衆、どうやら昨晩不届きものが、

姫の召し上がる野菜ひとつに、己の精液を擦り付けておったらしい!


おお言語道断! 到底許せぬ、縛り首じゃ!

いや縛り首では足らぬ、生きたまま火刑にせよ!


ヒヒーン!

ヒヒーン!


おお煌びやかなる火刑

世は穢れに満つれども、我らが姫に穢れなし!


……して結局のところ、その野菜を姫は召し上がられたのか?


ヒヒーン! 言語道断

我らの姫がそのようなもの召し上がられるわけがない!


おおそのように嘶くな、我ら紳士なるがゆえ、そのようなことが仮にあったとしても驚くにはあたらない。

事故のようなものじゃ、そのくらいは許すとしよう!


おお麗しきヒッヒッヒッ処女の園。

穢れなき?姫を戴く我らユニコーン闊歩する。


おう聞いたか皆の衆、どうやら昨晩不届きものが、姫の寝所に忍び込もうとしたらしい!


ヒヒーン! 言語道断

到底許せぬ、火刑に処す!


……して結局のところ、姫はその不届きものと……


ヒヒーン! 言語道断

我らが姫に本日もお変わりなし! やや俯いておられるが、それはそなたらがそのように囃し立てるゆえ!


おおそのように嘶くな、我らは紳士なるがゆえ、そのようなことが仮に、万一、あったとしても狼狽するようなことではない。

姫に落ち度があったわけでなし、そのくらいは許すとしよう!


おお麗しきヒッヒッヒ処女?の園。

穢れなき姫を戴く我らユニコーン闊歩する。


おう見たか皆の衆、姫が不届きものと交わした文を!


ヒヒーン! 嘘じゃ!

あり得ぬ、我らが姫が。我らという者がありながら、男と文を交わすなど!


おおそのように嘶くな、どうせ偽物じゃ。たとえ本物であったとしても、姫も年頃、ヒッヒッヒよくあることじゃ。

我ら紳士なるがゆえ、そのくらいのことは許すとしよう!


しかし仮に、もし万一、この文が本物だったとしたら、姫はやっぱり……?


ヒヒーン!

ヒヒーン!


ヒッヒッヒこれは愉快じゃ、愉快でたまらぬ。次の醜聞を早う聞かせろ!


事実かどうかはもう問わぬ、どうせあの姫、我らが知らぬ間に男と逢引き、とっくに穢れ切っておる!

そのくせどうじゃ、今日今日とて澄ました顔してユニコーンの背に跨って!

滑稽極まるその姿、罵ってやるのが正義でないか


おお麗しきヒッヒッヒ処女の園!

穢れなきヒッヒッヒ姫を戴くヒッヒッヒ我らユニコーン闊歩する!

ユニコーンの遊び

彼女を私だけのものにしたい。

けれども、それはできない。彼女は姫であり、みんなのものだ。みんなのものからこそ価値があり、誰かのものなら価値がない。

この何物にも代え難い価値担保するために、ひとつの掟をつくろう。


『男はなんぴとも、姫に触れてはならぬ』


我らは紳士なるがゆえ、姫をその背に乗せつつも、自ら触れることはせぬ。

あしかしやんぬるかな、姫は一人で生きてゆかれぬ!


姫に靴を履かせる者が要る。

姫の傘を捧げ持つ者が要る。


すべて姫と同じ、処女でなければならぬ!


おお麗しき処女の園。

穢れなき姫を戴く我らユニコーン闊歩する。


姫にも話し相手必要だ。

すべて処女でなければならぬ!


いやいや話し相手なら我らで十分。

いやいやそれでは姫もつまらない。

我らは紳士なるがゆえ、そのくらいのことは許すとしよう。


さてそういえば、

「男は姫に触れてはならぬ」のだけれども、

姫の触れるものに男が触れるのはなんとする?


言語道断、穢らわしい!

姫の触れるもの、とりわけお口に召されるものに、男が触れることなどあってはならぬ!


いやいやそれは極端というもの、お目見えするわけでなし、言葉を交わすわけでなし、ただのシェフなら男でよかろう。

我ら紳士なるがゆえ、そのくらいのことは許すとしよう。


おお麗しき処女の園。

世に穢れ多かれど、我らが姫に穢れなし。


おう聞いたか皆の衆、どうやら昨晩不届きものが、

姫の召し上がる野菜ひとつに、己の精液を擦り付けておったらしい!


おお言語道断! 到底許せぬ、縛り首じゃ!

いや縛り首では足らぬ、生きたまま火刑にせよ!


ヒヒーン!

ヒヒーン!


おお煌びやかなる火刑

世は穢れに満つれども、我らが姫に穢れなし!


……して結局のところ、その野菜を姫は召し上がられたのか?


ヒヒーン! 言語道断

我らの姫がそのようなもの召し上がられるわけがない!


おおそのように嘶くな、我ら紳士なるがゆえ、そのようなことが仮にあったとしても驚くにはあたらない。

事故のようなものじゃ、そのくらいは許すとしよう!


おお麗しきヒッヒッヒッ処女の園。

穢れなき?姫を戴く我らユニコーン闊歩する。


おう聞いたか皆の衆、どうやら昨晩不届きものが、姫の寝所に忍び込もうとしたらしい!


ヒヒーン! 言語道断

到底許せぬ、火刑に処す!


……して結局のところ、姫はその不届きものと……


ヒヒーン! 言語道断

我らが姫に本日もお変わりなし! やや俯いておられるが、それはそなたらがそのように囃し立てるゆえ!


おおそのように嘶くな、我らは紳士なるがゆえ、そのようなことが仮に、万一、あったとしても狼狽するようなことではない。

姫に落ち度があったわけでなし、そのくらいは許すとしよう!


おお麗しきヒッヒッヒ処女?の園。

穢れなき姫を戴く我らユニコーン闊歩する。


おう見たか皆の衆、姫が不届きものと交わした文を!


ヒヒーン! 嘘じゃ!

あり得ぬ、我らが姫が。我らという者がありながら、男と文を交わすなど!


おおそのように嘶くな、どうせ偽物じゃ。たとえ本物であったとしても、姫も年頃、ヒッヒッヒよくあることじゃ。

我ら紳士なるがゆえ、そのくらいのことは許すとしよう!


しかし仮に、もし万一、この文が本物だったとしたら、姫はやっぱり……?


ヒヒーン!

ヒヒーン!


ヒッヒッヒこれは愉快じゃ、愉快でたまらぬ。次の醜聞を早う聞かせろ!


事実かどうかはもう問わぬ、どうせあの姫、我らが知らぬ間に男と逢引き、とっくに穢れ切っておる!

そのくせどうじゃ、今日今日とて澄ました顔してユニコーンの背に跨って!

滑稽極まるその姿、罵ってやるのが正義でないか


おお麗しきヒッヒッヒ処女の園!

穢れなきヒッヒッヒ姫を戴くヒッヒッヒ我らユニコーン闊歩する!

2024-12-16

NISA税制上の優遇で、インデックス投資資産リスク晒した上での指標意味するところへの賛同(往々にして『健全資本主義社会において経済は成長し続ける』)でしかない。

みんなものごとを複雑に考えすぎだ。

NISAなんかみんなでアジア開発銀行買ってたぞ。もっと適当でいいんだよ。

どの期間のスコープで見るか。NISA性質上、日単位ってのは神経質かと思う。1年ごとの再考しか年末で固定されている)が意味のある区切りになる。そこで売りたきゃ売れ。

結局メンタルの話になる。日々気にしていたら狼狽するが、情報収集の頻度は高い方が良いのは確かだ。

損益が確定した時も、それを単なる数値と捉えるメンタルが強みになる。資産リスク晒して結果を享受しただけ。数値は今後の判断へのフィードバックになるだけ。損を取り返すことなんかできず、少し減った資産で再び投資判断を行うだけ。結果的に損がなくなって益になる。こともある。

要するに「投資自己責任で」というエクスキューズは、最もシンプルにこの一連の事象説明している。

anond:20241216105738

それはもう一定世代以上には半生掛けて染み付いた所作なので治らないだろうね。

そもそも「こういうのが欲しい」 「こういうのがない」 「メーカー無能」までならギリでカスタマーに許される範疇暴言だが

女性差別意図故意製品の性能を落としてる」まで言ったら戦争なんだよな。

それでキレられるのは当たり前なのにキレられたら狼狽して「ミソジニー!」と泣き叫ぶ。

言葉覚悟が軽すぎるんだよ。

2024-12-01

ホロ豚がいまさら大量卒業狼狽えていて笑う

アイドル部が3年以上前に通り過ぎたことや

そして案の定箱推しという害悪が暴れている

害悪タレント個人なんかどうでもよく、場の一体感組織調和しか興味がないから、平気でタレント誹謗中傷する。

こうした害悪組織黎明期を確かに支えてきたのだろうが、成長期を超えて組織の再編が始まる時期になると、在りし日の栄光を懐かしがるあまり、変化に対して攻撃的になりやすい。

SNSにいる害悪相互フォローだろうが容赦なくブロックした方がよい。

そしてこれからしょう���ないVTuber推していこうな!

2024-11-23

anond:20241122210507

そんなどこでもやってるような話でいちいち狼狽えてる情弱選挙以前に人間として生を受けるのがちょっと早すぎたのだ。

早く吊れ。

2024-11-15

小学生の娘がスマホで見ていたもの

こんなこと、誰にも言えない。誰にも相談できない。

でも、吐き出したくて、どこかの誰かに聞いてほしくて、これを書く。

小学高学年の娘が、スマホで成人漫画を見ていた。

リビングにいる娘にお風呂に入るように伝えて、私は寝室で下の子を寝かしつけていた。

の子が寝たので寝室からリビングに行くと、娘が慌ててお風呂に向かった。

「まだ入ってなかったの?」と言うと、

別に、ダラダラしてただけだよ!」と答えるその姿が狼狽しているようで、

何か怪しいとピンと来た私は、そこに置かれたままになったスマホをチェックした。

スマホを持たせる際、これは親のものあなたに貸与していること、親がチェックすることがあることを伝えていた。)

Chromの履歴を開いたとき、私の目に飛び込んだのは、

目を覆いたくなるようなタイトルの成人漫画の一覧だった。

二、三週間ほど前から、頻繁にアクセスしていた。

悍ましくて、震えて、心臓バクバクして、吐きそうになる。

まさかまさか娘が、こんな漫画を見ていたなんて。

数ヶ月前、どうやって赤ちゃんができるの!?不思議で仕方なかった娘に、

行為というもの説明したところだった。

性教育自分を大切にすることだと考えていたので、ごまかさずきちんと伝えたくて、性教育の本を使いながら、あなた達はパパとママが愛し合って、心からまれて産まれたんだよと、伝えたところだった。

驚いた娘は、「びっくりしたけど、パパとママラブラブなんだね!嬉しい!」と喜び、

そんな返事が微笑ましくて、

このまま自分を大切にしていってほしいなと、

きちんと伝えてよかったなと思ったところだった。

そんな想いが、成人漫画に全て踏みにじられた気がして、悲しくてショックでたまらない。


恋愛漫画の延長線上の、愛し合った恋人同士が信頼関係を築きながら、

お互い愛を深めあったその先にベッドシーンがあって...というストーリーがあれば、

まだ全然許せた。

でもこれは全く違う。

ただただ快楽のための、

十分成人してる私が見て思わず目を背けたくなるような、エグい、グロい、カラーの絵。

これを娘が見たのかと思うと、

そしてその記憶はもう消せないのかと思うと、辛すぎる。


行為は、心から愛する人と、あなたを本当に大切にしてくれる人とするものなんだよと

教えたところだったのに。

うん、うん、とじっくり話を聞いてくれていたのに。

全て、無駄にしてくれた。


ちゃおコミや小学館の漫画サイト少女漫画を読んでいたことは知っていた。

友達に教えてもらったんだーと言っていて、

これらのサイトなら危なくないだろうとすっかり安心していた。

スマホを持たせてはいたけど、ファミリーリンク

露骨な性表現を含むサイト可能な限りブロックする】

にチェックを入れていたので、油断していた。


娘が見ていた成人漫画プラットフォームは、

コミックシーモア、ピッコマ、めちゃコミ、レンタなどの漫画サイト

きっと何かの拍子で目にしてしまい、そのまま興味本位で見ていたのだろうと思うけど、

まさか、明らかに18禁の成人向けのエロ漫画に、誰でも簡単アクセスできるなんて。

なんで。なんで。

年齢認証されていないの。

法規制されていないの。

ファミリーリンクの設定が無意味なの。

まだたった10歳の女の子なのに。

恋愛漫画が好きで、少女漫画を読みながら

小学生の告白シーンに「キャー!」とはしゃぐピュアな子なのに。

なんで、この子の目に触れてしまうの。


人格形成とまではいかなくても、

性的嗜好に少なからずとも悪影響があるのではないかと、そんな不安が拭えない。

取り急ぎ、ファミリーリンクで【承認済みのサイトのみ許可する】に変更し、上記漫画サイトブロックした。


あとは、きちんと娘と話さなくては。

決して娘を責めることなく、冷静に、落ち着いて。

性教育を先にしていたことが、せめてもの救い。

話し合いの前に、この今のグチャグチャな気持ちを整理したくて、吐き出したくて、ここに記す。


お願いだから

18禁漫画は、身分証明書アップロードしないとアクセスできないような、

そんな仕組みにしてほしい。

成人漫画をなくせと言ってるわけじゃない。

幼い子どもの目に触れさせないような努力をしてほしいだけなのに。

そんなことがどうして出来ないの?誰が困るの?

2024-11-14

anond:20241114150033

日本経済が成長しなくなった、あまりにも「残念」な理由

https://diamond.jp/articles/-/289179?page=2

OECD32ヵ国と中国について、1997年から2015年の間の財政支出の伸び率と名目GDP成長率の相関をとったものである

見て明らかな通り、極めて高い相関がある。そして、財政支出の伸び率が最も低く、GDP成長率も最低水準にあるのが、日本である

過去20年の間、どの国よりも財政支出抑制し続け、そしてどの国よりも成長しなかった国、それが日本なのだ

「古い見解」に固執する健全財政論者は、この不都合な図を見せられると狼狽え、苦し紛れに「これは、相関関係であって、因果関係ではない」と言い放つのが常である

要するに、「財政支出の拡大が経済成長をもたらしたのではなく、経済が成長したか財政支出が増えたのかもしれないではないか」と言いたいわけだ。

もちろん、この図だけでは、因果関係説明できない。

しかし、積極財政経済成長をもたらすという因果関係については、すでにイエレン説明した通りである

他方、「経済が成長したか財政支出が伸びた」という因果関係を想定するのは、相当に無理がある。


天才的な発想だな・・・

2024-10-24

バイトが騒がれてるけど

30代以上の奴らはエアマックス狩りとかオヤジ狩りとかしょっちゅうそこらで暴行事件が起きてた頃を忘れたんか?もっと上の世代チーマーやらカラーギャングやら、さらに上は暴走族流行ってたし、その上は学生運動警官も襲撃してたろ。その頃に比べたら闇バイト?そんなもん珍しいもんじゃないだろう。何を今更狼狽えてるんだ

2024-10-19

anond:20241019115358

女が下方婚した結果その2:

年収:700〜800、大学中退、手に職系

年収:500〜600、旧帝大卒、営業

夫の強い希望夫婦別財布制、生活費負担割合収入にあわせて可処分所得が同じくらいに6:4で妻6割負担

家事も分担。夫はだんだん掃除や洗い物をしなくなり、平気で3日分くらい使った食器放置するため、やがて食事洗濯掃除ゴミ捨ては妻、夫は風呂のお湯はりボタン押し担当になった。

夫は仕事の帰りが遅いからと家事負担は目を瞑った。

ある日職場からお土産をもらったと包みを持ち帰ってきた。開けてみると可愛らしい文字で夫宛の手紙が添えられてた。夫はその手紙を見るとひどく狼狽していた。目が泳いでいた。こういうの好きな子なんだよねと聞いてもないことを答えた。

ある日夫が泥酔して帰ってきた。風呂で寝てたので起こしたら風呂に持ち込んでたスマホの画面にLINEトーク画面が表示されたままだった。

ゆいちゃんという名前と、今日デートいかに素晴らしかたかというお礼のメッセージが見えた。また会いたい、はやく奥さん別れてくれるといいね、ずっと待ってる…、といった文字列に、鈍器で頭を殴られたような衝撃が走った。目眩がして立っていられなくなった。

現実を受け止められなかった。が、いろいろと夫の近辺を数週間かけて調べたら少し前から私の7歳年下のゆいちゃんと仲良くやってることがわかった。

泣いた。夫に尋ねたら逆ギレして離婚を突きつけられた。

そうして私たち夫婦生活は終わった。

増田はこうならないことを祈ります

2024-10-11

柔道選手の回想を聞いてほしい 3


最後公式戦(夏季大会)は印象に残っている。毎年、県内で一番立派な総合体育館で行われる大会だった。梅雨時にある。

団体戦予選は、秋季大会と同じく4校によるリーグ戦だった。上位2校が決勝トーナメントに上がる。

当校の場合は、全国レベル高校と、それに準ずる高校と、平均レベル高校の3校での争いだった。前二者には、それぞれ0-5,0-4という散々な結果に終わった。T君は健闘して強豪校相手引き分けに持ち込んだし、ほかの選手一年前に比べたらずっといい試合をするようになっていた。

だが、勝負世界は厳しい。現実リアルビジネス世界でもそうなのだが、自分が成長しても、ほかのライバルもっと成長している。最後の三試合目は、確か4-1で勝ったのかな。これで、T君の世代にとっての最後団体戦は終わった。各リーグで上位2校だけが勝ち抜いて、決勝トーナメント進出する。当校は第3位だった。これで、本当に終わったのだ。

翌日には団体戦決勝トーナメントがあって、うちの学校と同じ市内のところが優勝した。N君が所属する学校だった。広島県は、伝統的に野球柔道が強い。サッカーもそれなりである

大体のスポーツ広島市にある学校県内最強なのだが、柔道場合は、広島市福山市にある高校県内二強である。いずれも全国に通用する実力を有していた。



記憶に残っている試合の話をする。その翌週には個人戦部門があった。各階級に分かれて戦い、優勝者全国大会に出場する。T君は、81kg級で出場した。

1回戦は、尾道にある高校選手と当たった。確か、今年放送アニメ『ぽんのみち』の舞台の近所にある学校である。俺は、第一試合が始まる前にT君の打込練習に付き合っていた。体を温めておくのだ。体を超動かすスポーツ場合は、事前のウォーミングアップが欠かせない。無論ハードモードである

T君の試合が始まる直前だった。

「勝つとか、負けるとか考えるな。��合邪魔だ。柔道のことだけ考えろ」

と言った。T君は「やり切ってきます!」と言った。

やがてT君が呼ばれて、試合場の前と、開始線の前での二度の礼が終わった。

「始め!」

という審判の声とともに、相手と組み合った。練習で教えたとおり、大内刈りと小外掛けを繰り返しやっていく作戦を採っていた(T君は左利きの左組み。多くの場合ケンカつの組み手になる。鏡写しの組み姿勢)。彼の運動神経だと足技の威力は弱いのだが、技をかけ続けていれば指導は取られない。

相手が技を仕掛けてくると、T君は隙を見て――寝技の態勢に移行した。その時はたしか相手が低くしゃがんで投げる背負い投げに失敗したのかな。

すると、T君は相手に密着しつつ、真横に体重を預けるようにして、釣り手だけで送り襟締めを決めた(相手の背後から横襟を掴んで、手首の尺骨でグイっと頸動脈を圧迫する)。

相手がたまらず仰向けになったところで、両足を絡めた縦四方固めに移行すると、相手は全く動けずに25秒が経過した。一本勝ちである

よく、ここまで強くなったと思った。彼と出会った頃は、紐に巻かれたチャーシュー柔道をしているように思えた。あまりにボテボテとした動きで、才能がないのは明白だった。

だが、T君はここまで寝技を鍛えた。彼にとってのエクスカリバーだった。この頃の彼は、俺と寝技乱取りをしても1分以上は持ちこたえることがあった。

さて、次の試合だが……例の強豪校の子だった(N君)。T君と同じく高三で、改めて見るとスマートな体形だった。背丈はやはり185cmはある。あの細長い足から繰り出すカミソリのような内股で、T君は何度も吹っ飛ばされてきた。

おそらくこの時点で、すでに名門大学からスカウトを受けている(記憶によると、その後明治大学に進学している)。

試合が始まる直前、T君と最後の技の打ち込みをして、最後大内刈りで投げさせてやった。試合場に送り出す時、背後から彼の両肩に手を置いた。肩甲骨のあたりが1年前より逞しくなっている。そのまま、グイっと前に押し出すようにして闘魂を注入した。

試合前の二度の礼の最中、対戦者であるN君の表情を見た。高校三年生とは思えないほど大人びていた。歴戦の兵を見ているようである高校三年間をスポーツに捧げた者の目つきだった。子どもの頃から、数多くの試練を乗り越えてきたのだろう。こういう野獣の眼をしている若人は少ない。

試合場の外には、そのN君の学校の仲間と、あとは監督コーチ陣が控えていた。これといった表情はない。自分の教え子の初戦を観察するのは指導者の基本である。それだけだ。



実は、この時の試合ビデオ撮影している。映像は悪いのだが、できるだけ実況風に説明してみる。わからない単語があった場合は、とりあえずこちらの、

柔道チャンネル柔道用語https://www.judo-ch.jp/terms/

       柔道の技https://www.judo-ch.jp/technique/

をご覧になるといい。

別に不明単語表現があって気にしなくていい。読んでいるうちになんとかなる(と思われる)。以後、試合が終わるまでT君はTと表記する。N君はそのまま。紛らわしいからな。

さて、二度目の礼が終わった直後だった。試合場内ではTとN君が向き合っている。そして、審判が両者を確認する――試合開始の宣言があった。

「始めっ!」

Tは左組みで、N君は右組みだった。

N君は殴り抜くようにして釣り手を取ってきた。横襟のあたりだ。Tも相手の前襟を掴んだが、どこか心もとない。柔道力に差がありすぎて、まともに襟を掴めないのだ。厳しい印象の組み手だったが、後は引き手を握ることができれば……。

次の場面では、同じタイミングで袖を握り合った。中ほどの位置だった。相手ちょっと嫌がったかもしれない。かくして両者の組み手が完成する。ケンカつの組み手である

Tは大内刈りに入ろうとしたが、難しい様子だった。対戦相手と体力差があると、そもそも技のモーションに入ることすら難しい。両者、ジリジリと畳の上で移動を重ねていく。N君が技に入る様子はない。シード枠で第一戦目だった。慣らし運転という印象を受けた。

これは舐めプではない。トーナメントの初戦というのは、綺麗に勝って勢いをつけるものだ。何事も始まり大事である

重心移動を重ねていく両者。ここで、Tが小外掛け、そして大内刈りに入ったが……全く効いていない。もう一度リズムを取って、トン、という畳を蹴る音が聞こえた(ビデオ映像では聞こえないが、俺は確かに聞いた)。Tが足指の裏で畳を蹴り込んで、再度の大内刈りを放ったのである

今度はバッチリ効いていた。左腕で相手の肩を制していたのが大きい。ふくらはぎを刈り取られるようにして、N君が後ろに後退していく。数歩だけ後ろに下がったところで、技が解けて動きが膠着した。

Tは、そこから双手刈りに変化して、相手を押し込んで寝技に持っていこうとする――が、相手は両手を使ってTを上下に振って無効化した。Tの体が揺れている中、N君の大内刈りがしっかと掛かると、真後ろに倒されるのをどうにか我慢した。間合いを取ろうとしたが、遅かった。

N君は、Tの体を引き出して崩しつつ、股下に飛び込んでいた。全身を躍動させて、右脚でもってTの骨盤を跳ね上げた――内股、炸裂。

会場がどよめいた。それくらい、鮮やかな技の入りであることの証明だった。Tの身体が浮いている。が、まだ投げられてはいない。右足をケンケン状態にして抗っていた。歩幅のあるケンケンをしていた。

最後に、ダメ押しとばかり身を捨てたN君に巻き込まれる格好で、畳に落ちていく。

「……!」

主審動作は、会場全体の視線に応えるかのようだった。右腕を緩やかに振っている――ノーポイントだ。背中がついてないので当たり前だが。

会場の反応を気にする素振りもなく、それから寝技の攻防を見守っていた。Tが上からN君を攻め立てるが、「待て」がかかる。

次の組み手でもそうだった。お互いに十分な位置で組めているとは思うが、相手の圧に押されて、Tは身動きが取りにくい。N君は、けん制気味の大内刈りで攻めていた。タイミングを合わせて内股を狙っている。

ある瞬間だった――N君が内股を仕掛けた。すると、Tの動きがおかしかった。ジャンプするようにして真横に飛んだのだ。相手の振り上げた足がぶつかって、コロンと畳を転がった。背中がついている。

「技あり!」

N君にポイントが入った。背中はついていたが、勢いがなかった。

その後も厳しい展開が続いた。Tは相手とガッシリと組み合った後、てんで効かない大内刈りを繰り返していた。そして、N君はそれを上回る勢いで足技を仕掛けてくる。

Tは、それからも真横にジャンプするような動きをすることがあった。対するN君は、いい位置の組み手を取って大内刈りを仕掛けている。大内刈り→内股に繋げるのが狙いだ。

Tは正面から大内刈りを受けるも、後ろに飛んで腹ばいになって回避した。「待て」がかかった。その後、Tに指導(※ノーポイント)が与えられた。

「始め!」

ここで、N君が奥襟を掴もうとしてきた。奥襟というのは文字通り、横襟よりも奥になる。あなたが今着ている衣服で言うと襟首である

Tは抵抗を見せるも、最初は横襟を掴んでいた敵人の右手は、ついに奥襟に差し掛かった。Tは体を後ろに下げつつ……なんと、内股を放った!

N君の奥襟を取る力を利用しようとしたのだろう。ただ、懐には入れていたが全く効いていない。発想はよかったが、素の柔道力の違いがこういう所に出る。威力が無さすぎて、N君の方が戸惑っているように見えた。

今は、互いに横襟を握り合っている状態だ。ケンカ四つなのは変わりない。さっきとは、うって変わって静かだった。N君は小刻みに大内刈りを繰り返している。投げる気はない。けん制だ。Tも、何かを狙うかのように釣り手を小刻みに動かしている。

N君が、釣り手を下方向に絞ったかと思うと、Tの胸をいきなり突いた。一歩下がることになり、また前に踏み出そうとする。その時、Tの胸を小突くようにしてまた大内刈りを放った。Tは嫌がって、猫背気味に距離を突き離した。そして、背筋を真っ直ぐに戻した直後である――直立姿勢。一瞬の静止。

N君は脱力している。俺はつい、「あ……」と言った。技に入る準備ができている。もうダメだ。直観である

一瞬だった。N君は釣り手と引き手を利かせつつ、軸足としての左足で、Tの股下に飛び込んだ。体を密着させつつ、右足を高らかに振り抜いた――内股、一閃。

「技ありいいぃーーーーッ! ……抑え込みッッ!!」

審判の声が響いた。

彼らを視認すると……TがN君を横四方固めで抑え込んでいた! とともに湧いてきたのは、会場からのどよめきと、賛辞の拍手だった。

「なにしとる、N。まだ逃げられる! 右に回転せえ、手を、手を突っ込め!!」

N君の高校監督が、試合場の外から怒号交じりのアドバイスを送っていた。不完全ではあるものの、N君は確かに抑え込まれている。

何が起こったのか。一応、撮影したビデオ画面をベース説明すると……あの時、N君が振り上げた右足は、Tの身体を跳ね上げることな空振りし、宙をひと回り以上して畳に落ちていったのだ。返し技――内股すかしである

Tがやったのは、まず一番に跳ね上げられるであろう左足を、真後ろに隠して回避するという古典的な内股すかしだった。あとは、N君が内股を空振りして自らの威力で吹っ飛び、空中を一回転半して腹ばいで畳の上に落ちた。そして、Tが電光石火の早業で抑え込んだ。以上である

「てら、全力で体重乗せんだよ。あと半分、半分!」

 ※あと10秒抑え込んだら合わせて一本

気が付くと、横四方固めはガッシリ入っていた。N君の動きは著しく制限されている。しかし、彼も体力は相当ある方だ。寝技が解けないならばと、背筋で跳ねるのを繰り返すことで、徐々に移動して……試合場外への脱出成功した。

審判の「解けた!」の宣言の瞬間、試合場の端から抑え込みタイマーのブザー音が聞こえた。これは……!?

「待てー、待て……!」

審判の声は焦っていた。

開始線に戻った両者。ここで主審が、副審のところに行って協議を始めた。N君の学校監督コーチ陣は、ギラついた目で審判団を睨んでいた。タイマーを見ると、残り試合時間は1分半だった。

戻ってきた主審は、「技あり」のジェスチャーを取った後で、上方向に手を振った。ノーポイントに訂正する、という意味だ。

残念だった。あれは内股すかしだったが、投げ方は確かに変だった。N君が技に失敗して、自分で体勢をコントロールして腹ばいに落ちたようにも思えた。

正直、一本でもよかった。今の柔道では、スーパー一本といって、技の威力ありすぎて腹ばいに落ちた場合、一本になるルールがある。当時もその概念はあったが、ルールブックに明文化されているわけではなかった。

その後、併せて審判は、T君が寝技で抑え込んだことによる「技あり」の宣言をした。

「始め!」

N君は即座、猪突の勢いで駆けた。右手でTの奥襟を奪いに行こうとするが――パシン、という音がすると、なんとTが相手柔道着の背中を掴んでいた――奥襟の、さら真下の部分である

N君は、前傾姿勢になった。彼もTの奥襟を掴んではいるが、動きはない。静��している。

「なにをしよおる、はよう技に入れ!!」

相手校のコーチ狼狽していた。

わかっていない。N君は動かないんじゃない、動けないのだ。Tの腕力は本物だったようだ。

「ようだ」というのは、俺がTと乱取りしていて、背中を取らせたことは一度もないかである

体捌きも、総合的なパワーも、ありとあらゆるテクニックも、俺の方がずっと上だった。よって、奴のパワー(ベンチプレス160kg,背筋280kg以上)を体感する機会はなかった。

とにかく、N君は前傾姿勢のまま動けないでいる。その状況で、Tは不意に大外刈りに入った。N君のふくらはぎに刈り足が当たって、ケンケン状態で後ろに下がった。

Tが大外刈りをやめると、すぐさま、今度は連続して内股に入るのだった。釣り手で背中を掴んだまま、大腰みたいにしてN君の体が浮いたが……やはり柔道力が足りない。そのまま両者、畳に沈み込んだ。

いや、違う! Tはこれを、寝技を狙っていた。寝姿勢に入った途端、N君の片腕を取りつつ、巻き込むようにして後ろ袈裟固めに入ろうとする。N君はさらに体を転がして回避した。防御姿勢になる。

Tは亀状態になったN君の上に乗ると、帯を掴んだ。すると、体を捨てる重心移動によって亀状態をひっくり返した。そのまま縦四方固めに持っていこうとする。

再び、N君は腹ばいになって逃れるも、ここでTは――中腰の姿勢になり、両腕で相手柔道衣を握った。胴衣の腕の部分と、下袴の太腿部分をそれぞれ握っていた。そのまま、立ち上がってN君を両手で宙づりにすると――畳の上にゴロンとひっくり返した。

「抑え込み!」

タイマーカウントが始まるが、抑え込んで十秒もしないうちに解かれてしまった。試合の残り時間は、あと30秒ほどだ。

いい作戦だった。まともに立ち技勝負してN君に勝てるはずがない。先ほどの背中を掴んだ組み手は本当によかった。寝技にもっていくための算段のひとつである背中を掴んだ後は、なんやかんやで相手を動かし続ければいい。

背中を掴むのに成功してからは、立ち技ガンガン打って、早々に寝技に引き込んで、審判の「待て」がかからないように動きまくるのだ。それで時間を稼ぐ。

彼は、これを狙っていたのか。作戦だったのか? そんなことは……あるかもしれない。まぐれはこんなに続かない。彼の脳裏にこの流れがあったのだ。

主審は、選手2人が開始線の前に立つと、柔道衣の乱れを直すようポーズを取った。

そして、N君に対して指導を与えた。一瞬、彼の表情を見たが、恐れを感じていた。眉のあたりが強張っている。恐怖を感じる時の表情だ。これから自分がどうなるかわからない、そういう恐怖を感じている。

会場がどよめいていた。大番狂わせのニオイを感じ取っている。

「始め!」

N君は脱兎のごとく、Tの奥襟を取った。対するTが背中に手を回すよりも早く、伝家の宝刀、内股に入った――不十分な組み手だったが、Tの股下に入った足がガッシリ効いている。浮かないようにするだけで精いっぱいだった。

「ヤアァァーーーーーーーーーーッ!!」

N君は咆哮を上げつつ、内股から大内刈りに変化した。自分の後ろに投げる技から、前に投げる技への連続――完璧タイミングだった。

「終わった……?」と思ったその瞬間、Tは自らの体をコマのように回転させて、腹ばいになって畳に落ちた。寝姿勢で向き合って、怒涛の勢いでN君を組み敷いたかと思うと、縦四方固め……? いや、違う。それはフェイントであり、腕がらみ(アームロック)を極めようとしていた。審判が真上から様子を見ている。関節技が極まるか極まらいか、際どい局面だった。

刻一刻と、時間が経過していく……Tの作戦が功を奏したのだ――試合終了のブザーが鳴った。

「それまで!」

ここまで四分。実時間で約十分。お互いによく戦った。ポイントは同点である。この場合は、主審×1と副審×2による旗判定で勝敗を決する。

試合用のタイマーが置いてある長机から審判員が手慣れた動作紅白旗を取った。元の位置まで戻ると、主審は、副審を見やってアイコンタクトを取った。全員、どちらに旗を上げるか決まったようだ。N君が赤旗で、Tが白旗だった。

紅白2本の旗を手前に持ち上げる審判員――白い旗が2本だとTの勝ちである。会場の一角は、静かだった。かくいう俺も心臓バクバクだった。僅かな時間のはずなのに、長く感じられる。

「判定ッ!」

赤2本、白1本という事実を確かめ主審は、溜め息を吐きながら白い旗を仕舞うと――N君の方に勝利の手を掲げた。

この試合を見ていた観客は、ほぼ全員が選手2人に拍手喝采を送っていた。スタンディングオベーションである。いい試合だった。勝ち負けとかどうでもよくて、とにかくいい試合だった。

俺はしばらく其処に立っていたが、T君の後を追いかけてトイレの方に向かった。

次です

https://anond.hatelabo.jp/20241011192840

2024-10-02

 三四郎は、その不思議な事を、すぐ話せばいいと思うのに、与次郎は平気なもので、一人でのみこんで、一人で不思議がっている。三四郎はしばらく我慢していたが、とうとう焦れったくなって、与次郎に、美禰子に関するすべての事実を隠さずに話してくれと請求した。与次郎は笑いだした。そうして慰謝のためかなんだか、とんだところへ話頭を持っていってしまった。 「ばかだなあ、あんな女を思って。思ったってしかたがないよ。第一、君と同年ぐらいじゃないか。同年ぐらいの男にほれるのは昔の事だ。八百屋お七時代の恋だ」  三四郎は黙っていた。けれども与次郎意味はよくわからなかった。 「なぜというに。二十前後の同じ年の男女を二人並べてみろ。女のほうが万事上手だあね。男は馬鹿にされるばかりだ。女だって自分軽蔑する男の所へ嫁へ行く気は出ないやね。もっと自分世界いちばん偉いと思ってる女は例外だ。軽蔑する所へ行かなければ独身で暮らすよりほかに方法はないんだから。よく金持ちの娘や何かにそんなのがあるじゃないか、望んで嫁に来ておきながら、亭主を軽蔑しているのが。美禰子さんはそれよりずっと偉い。その代り、夫として尊敬のできない人の所へははじめから行く気はないんだから相手になるものはその気でいなくっちゃいけない。そういう点で君だのぼくだのは、あの女の夫になる資格はないんだよ」  三四郎はとうとう与次郎といっしょにされてしまった。しかし依然として黙っていた。 「そりゃ君だって、ぼくだって、あの女よりはるかに偉いさ。お互いにこれでも、なあ。けれども、もう五、六年たたなくっちゃ、その偉さ加減がかの女の目に映ってこない。しかして、かの女は五、六年じっとしている気づかいはない。したがって、君があの女と結婚する事は風馬牛だ」  与次郎は風馬牛という熟字を妙なところへ使った。そうして一人で笑っている。 「なに、もう五、六年もすると、あれより、ずっと上等なのが、あらわれて来るよ。日本じゃ今女のほうが余っているんだから風邪なんか引いて熱を出したってはじまらない。――なに世の中は広いから、心配するがものはない。じつはぼくにもいろいろあるんだが、ぼくのほうであんまりうるさいから、御用で長崎出張すると言ってね」 「なんだ、それは」 「なんだって、ぼくの関係した女さ」  三四郎は驚いた。 「なに、女だって、君なんぞのかつて近寄ったことのない種類の女だよ。それをね、長崎へ黴菌の試験出張するから当分だめだってわっちまった。ところがその女が林檎を持って停車場まで送りに行くと言いだしたんで、ぼくは弱ったね」  三四郎ますます驚いた。驚きながら聞いた。 「それで、どうした」 「どうしたか知らない。林檎を持って、停車場に待っていたんだろう」 「ひどい男だ。よく、そんな悪い事ができるね」 「悪い事で、かあいそうな事だとは知ってるけれども、しかたがない。はじめから次第次第に、そこまで運命に持っていかれるんだから。じつはとうのさきからぼくが医科の学生になっていたんだからなあ」 「なんで、そんなよけいな嘘をつくんだ」 「そりゃ、またそれぞれの事情のあることなのさ。それで、女が病気の時に、診断を頼まれて困ったこともある」  三四郎おかしくなった。 「その時は舌を見て、胸をたたいて、いいかげんにごまかしたが、その次に病院へ行って、見てもらいたいがいいかと聞かれたには閉口した」  三四郎はとうとう笑いだした。与次郎は、 「そういうこともたくさんあるから、まあ安心するがよかろう」と言った。なんの事だかわからない。しかし愉快になった。  与次郎はその時はじめて、美禰子に関する不思議説明した。与次郎の言うところによると、よし子にも結婚の話がある。それから美禰子にもある。それだけならばいいが、よし子の行く所と、美禰子の行く所が、同じ人らしい。だから不思議なのだそうだ。  三四郎も少しばかにされたような気がした。しかしよし子の結婚だけはたしかである。現に自分がその話をそばで聞いていた。ことによるとその話を美禰子のと取り違えたのかもしれない。けれども美禰子の結婚も、まったく嘘ではないらしい。三四郎ははっきりしたところが知りたくなった。ついでだから与次郎に教えてくれと頼んだ。与次郎はわけなく承知した。よし子を見舞いに来るようにしてやるから、じかに聞いてみろという。うまい事を考えた。 「だから、薬を飲んで、待っていなくってはいけない」 「病気が直っても、寝て待っている」  二人は笑って別れた。帰りがけに与次郎が、近所の医者に来てもらう手続きをした。  晩になって、医者が来た。三四郎自分医者を迎えた覚えがないんだから、はじめは少し狼狽した。そのうち脈を取られたのでようやく気がついた。年の若い丁寧な男である三四郎は代診と鑑定した。五分ののち病症はインフルエンザときまった。今夜頓服を飲んで、なるべく風にあたらないようにしろという注意である。  翌日目がさめると、頭がだいぶ軽くなっている。寝ていれば、ほとんど常体に近い。ただ枕を離れると、ふら���らする下女が来て、だいぶ部屋の中が熱臭いと言った。三四郎は飯も食わずに、仰向けに天井をながめていた。時々うとうと眠くなる。明らかに熱と疲れとにとらわれたありさである三四郎は、とらわれたまま、逆らわずに、寝たりさめたりするあいだに、自然に従う一種快感を得た。病症が軽いからだと思った。  四時間、五時間とたつうちに、そろそろ退屈を感じだした。しきりに寝返りを打つ。外はいい天気である。障子にあたる日が、次第に影を移してゆく。雀が鳴く。三四郎はきょうも与次郎が遊びに来てくれればいいと思った。  ところへ下女が障子をあけて、女のお客様だと言う。よし子が、そう早く来ようとは待ち設けなかった。与次郎だけに敏捷な働きをした。寝たまま、あけ放しの入口に目をつけていると、やがて高い姿が敷居の上へ現われた。きょうは紫の袴をはいている。足は両方とも廊下にある。ちょっとはいるのを躊躇した様子が見える。三四郎は肩を床から上げて、「いらっしゃい」と言った。  よし子は障子をたてて、枕元へすわった。六畳の座敷が、取り乱してあるうえに、けさは掃除をしないから、なお狭苦しい。女は、三四郎に、 「寝ていらっしゃい」と言った。三四郎はまた頭を枕へつけた。自分だけは穏やかである。 「臭くはないですか」と聞いた。 「ええ、少し」と言ったが、べつだん臭い顔もしなかった。「熱がおありなの。なんなんでしょう、御病気は。お医者はいらしって」 「医者はゆうべ来ました。インフルエンザだそうです」 「けさ早く佐々木さんがおいでになって、小川病気から見舞いに行ってやってください。何病だかわからないが、なんでも軽くはないようだっておっしゃるものから、私も美禰子さんもびっくりしたの」  与次郎がまた少しほらを吹いた。悪く言えば、よし子を釣り出したようなものである三四郎は人がいいから、気の毒でならない。「どうもありがとう」と言って寝ている。よし子は風呂敷包みの中から蜜柑の籠を出した。 「美禰子さんの御注意があったから買ってきました」と正直な事を言う。どっちのお見舞だかわからない。三四郎はよし子に対して礼を述べておいた。 「美禰子さんもあがるはずですが、このごろ少し忙しいものですから――どうぞよろしくって……」 「何か特別に忙しいことができたのですか」 「ええ。できたの」と言った。大きな黒い目が、枕についた三四郎の顔の上に落ちている。三四郎は下から、よし子の青白い額を見上げた。はじめてこの女に病院で会った昔を思い出した。今でもものうげに見える。同時に快活である。頼りになるべきすべての慰謝を三四郎の枕の上にもたらしてきた。 「蜜柑をむいてあげましょうか」  女は青い葉の間から果物を取り出した。渇いた人は、香にほとばしる甘い露を、したたかに飲んだ。 「おいしいでしょう。美禰子さんのお見舞よ」 「もうたくさん」  女は袂から白いハンケチを出して手をふいた。 「野々宮さん、あなたの御縁談はどうなりました」 「あれぎりです」 「美禰子さんにも縁談の口があるそうじゃありませんか」 「ええ、もうまとまりました」 「だれですか、さきは」 「私をもらうと言ったかたなの。ほほほおかしいでしょう。美禰子さんのお兄いさんのお友だちよ。私近いうちにまた兄といっしょに家を持ちますの。美禰子さんが行ってしまうと、もうご厄介になってるわけにゆかないから」 「あなたはお嫁には行かないんですか」 「行きたい所がありさえすれば行きますわ」  女はこう言い捨てて心持ちよく笑った。まだ行きたい所がないにきまっている。  三四郎はその日から四日ほど床を離れなかった。五日目にこわごわながら湯にはいって、鏡を見た。亡者の相がある。思い切って床屋へ行った。そのあくる日は日曜である。  朝飯後、シャツを重ねて、外套を着て、寒くないようにして美禰子の家へ行った。玄関によし子が立って、今沓脱へ降りようとしている。今兄の所へ行くところだと言う。美禰子はいない。三四郎はいっしょに表へ出た。 「もうすっかりいいんですか」 「ありがとう。もう直りました。――里見さんはどこへ行ったんですか」 「にいさん?」 「いいえ、美禰子さんです」 「美禰子さんは会堂」  美禰子の会堂へ行くことは、はじめて聞いた。どこの会堂か教えてもらって、三四郎はよし子に別れた。横町を三つほど曲がると、すぐ前へ出た。三四郎はまったく耶蘇教に縁のない男である。会堂の中はのぞいて見たこともない。前へ立って、建物をながめた。説教掲示を読んだ。鉄柵の所を行ったり来たりした。ある時は寄りかかってみた。三四郎はともかくもして、美禰子の出てくるのを待つつもりである。  やがて唱歌の声が聞こえた。賛美歌というものだろうと考えた。締め切った高い窓のうちのでき事である。音量から察するとよほどの人数らしい。美禰子の声もそのうちにある。三四郎は耳を傾けた。歌はやんだ。風が吹く。三四郎外套の襟を立てた。空に美禰子の好きな雲が出た。  かつて美禰子といっしょに秋の空を見たこともあった。所は広田先生の二階であった。田端小川の縁にすわったこともあった。その時も一人ではなかった。迷羊。迷羊。雲が羊の形をしている。  忽然として会堂の戸が開いた。中から人が出る。人は天国から浮世へ帰る。美禰子は終りから四番目であった。縞の吾妻コートを着て、うつ向いて、上り口の階段を降りて来た。寒いみえて、肩をすぼめて、両手を前で重ねて、できるだけ外界との交渉を少なくしている。美禰子はこのすべてにあがらざる態度を門ぎわまで持続した。その時、往来の忙しさに、はじめて気がついたように顔を上げた。三��郎の脱いだ帽子の影が、女の目に映った。二人は説教掲示のある所で、互いに近寄った。 「どうなすって」 「今お宅までちょっと出たところです」 「そう、じゃいらっしゃい」  女はなかば歩をめぐらしかけた。相変らず低い下駄はいている。男はわざと会堂の垣に身を寄せた。 「ここでお目にかかればそれでよい。さっきからあなたの出て来るのを待っていた」 「おはいりになればよいのに。寒かったでしょう」 「寒かった」 「お風邪はもうよいの。大事になさらないと、ぶり返しますよ。まだ顔色がよくないようね」  男は返事をしずに、外套の隠袋から半紙に包んだものを出した。 「拝借した金です。ながながありがとう。返そう返そうと思って、ついおそくなった」  美禰子はちょっと三四郎の顔を見たが、そのまま逆らわずに、紙包みを受け取った。しかし手に持ったなり、しまわずにながめている。三四郎もそれをながめている。言葉が少しのあいだ切れた。やがて、美禰子が言った。 「あなた、御不自由じゃなくって」 「いいえ、このあいからそのつもりで国から取り寄せておいたのだから、どうか取ってください」 「そう。じゃいただいておきましょう」  女は紙包みを懐へ入れた。その手を吾妻コートから出した時、白いハンケチを持っていた。鼻のところへあてて、三四郎を見ている。ハンケチをかぐ様子でもある。やがて、その手を不意に延ばした。ハンケチ三四郎の顔の前へ来た。鋭い香がぷんとする。 「ヘリオトロープ」と女が静かに言った。三四郎は思わず顔をあとへ引いた。ヘリオトロープの罎。四丁目の夕暮。迷羊。迷羊。空には高い日が明らかにかかる。 「結婚なさるそうですね」  美禰子は白いハンケチを袂へ落とした。 「御存じなの」と言いながら、二重瞼を細目にして、男の顔を見た。三四郎を遠くに置いて、かえって遠くにいるのを気づかいすぎた目つきである。そのくせ眉だけははっきりおちついている。三四郎の舌が上顎へひっついてしまった。  女はややしばらく三四郎をながめたのち、聞きかねるほどのため息をかすかにもらした。やがて細い手を濃い眉の上に加えて言った。 「我はわが愆を知る。わが罪は常にわが前にあり」  聞き取れないくらいな声であった。それを三四郎は明らかに聞き取った。三四郎と美禰子はかようにして別れた。下宿へ帰ったら母から電報が来ていた。あけて見ると、いつ立つとある

anond:20241002010446

2024-09-30

 三四郎はこの時ふと汽車水蜜桃をくれた男が、あぶないあぶない、気をつけないとあぶない、と言ったことを思い出した。あぶないあぶないと言いながら、あの男はいやにおちついていた。つまりあぶないあぶないと言いうるほどに、自分はあぶなくない地位に立っていれば、あんな男にもなれるだろう。世の中にいて、世の中を傍観している人はここに面白味があるかもしれない。どうもあの水蜜桃の食いぐあいから、青木堂で茶を飲んでは煙草を吸い、煙草を吸っては茶を飲んで、じっと正面を見ていた様子は、まさにこの種の人物である。――批評家である。――三四郎は妙な意味批評家という字を使ってみた。使ってみて自分うまいと感心した。のみならず自分批評家として、未来存在しようかとまで考えだした。あのすごい死顔を見るとこんな気も起こる。  三四郎は部屋のすみにあるテーブルと、テーブルの前にある椅子と、椅子の横にある本箱と、その本箱の中に行儀よく並べてある洋書を見回して、この静かな書斎の主人は、あの批評家と同じく無事で幸福であると思った。――光線の圧力研究するために、女を轢死させることはあるまい。主人の妹は病気である。けれども兄の作った病気ではない。みずからかかった病気である。などとそれからそれへと頭が移ってゆくうちに、十一時になった。中野行の電車はもう来ない。あるいは病気が悪いので帰らないのかしらと、また心配になる。ところへ野々宮から電報が来た。妹無事、あす朝帰るとあった。  安心して床にはいったが、三四郎の夢はすこぶる危険であった。――轢死を企てた女は、野々宮に関係のある女で、野々宮はそれと知って家へ帰って来ない。ただ三四郎安心させるために電報だけ掛けた。妹無事とあるのは偽りで、今夜轢死のあった時刻に妹も死んでしまった。そうしてその妹はすなわち三四郎が池の端で会った女である。……  三四郎はあくる日例になく早く起きた。  寝つけない所に寝た床のあとをながめて、煙草を一本のんだが、ゆうべの事は、すべて夢のようである。椽側へ出て、低い廂の外にある空を仰ぐと、きょうはいい天気だ。世界が今朗らかになったばかりの色をしている。飯を済まして茶を飲んで、椽側に椅子を持ち出して新聞を読んでいると、約束どおり野々宮君が帰って来た。 「昨夜、そこに轢死があったそうですね」と言う。停車場か何かで聞いたものらしい。三四郎自分経験を残らず話した。 「それは珍しい。めったに��えないことだ。ぼくも家におればよかった。死骸はもう片づけたろうな。行っても見られないだろうな」 「もうだめでしょう」と一口答えたが、野々宮君ののん気なのには驚いた。三四郎はこの無神経をまったく夜と昼の差別から起こるものと断定した。光線の圧力試験する人の性癖が、こういう場合にも、同じ態度で表われてくるのだとはまるで気がつかなかった。年が若いからだろう。  三四郎は話を転じて、病人のことを尋ねた。野々宮君の返事によると、はたして自分の推測どおり病人に異状はなかった。ただ五、六日以来行ってやらなかったものから、それを物足りなく思って、退屈紛れに兄を釣り寄せたのである。きょうは日曜だのに来てくれないのはひどいと言って怒っていたそうである。それで野々宮君は妹をばかだと言っている。本当にばかだと思っているらしい。この忙しいものに大切な時間を浪費させるのは愚だというのである。けれども三四郎にはその意味ほとんどわからなかった。わざわざ電報を掛けてまで会いたがる妹なら、日曜の一晩や二晩をつぶしたって惜しくはないはずである。そういう人に会って過ごす時間が、本当の時間で、穴倉で光線の試験をして暮らす月日はむしろ人生に遠い閑生涯というべきものである自分が野々宮君であったならば、この妹のために勉強妨害をされるのをかえってうれしく思うだろう。くらいに感じたが、その時は轢死の事を忘れていた。  野々宮君は昨夜よく寝られなかったものからぼんやりしていけないと言いだした。きょうはさいわい昼から早稲田学校へ行く日で、大学のほうは休みから、それまで寝ようと言っている。「だいぶおそくまで起きていたんですか」と三四郎が聞くと、じつは偶然、高等学校で教わったもとの先生広田という人が妹の見舞いに来てくれて、みんなで話をしているうちに、電車時間に遅れて、つい泊ることにした。広田の家へ泊るべきのを、また妹がだだをこねて、ぜひ病院に泊れと言って聞かないから、やむをえず狭い所へ寝たら、なんだか苦しくって寝つかれなかった。どうも妹は愚物だ。とまた妹を攻撃する。三四郎おかしくなった。少し妹のために弁護しようかと思ったが、なんだか言いにくいのでやめにした。  その代り広田さんの事を聞いた。三四郎広田さんの名前をこれで三、四へん耳にしている。そうして、水蜜桃先生青木堂の先生に、ひそかに広田さんの名をつけている。それから正門内で意地の悪い馬に苦しめられて、喜多床の職人に笑われたのもやはり広田先生にしてある。ところが今承ってみると、馬の件ははたして広田先生であった。それで水蜜桃も必ず同先生に違いないと決めた。考えると、少し無理のようでもある。  帰る時に、ついでだから、午前中に届けてもらいたいと言って、袷を一枚病院まで頼まれた。三四郎は大いにうれしかった。  三四郎は新しい四角な帽子かぶっている。この帽子かぶって病院に行けるのがちょっと得意である。さえざえしい顔をして野々宮君の家を出た。  御茶の水で電車を降りて、すぐ俥に乗った。いつもの三四郎に似合わぬ所作である。威勢よく赤門を引き込ませた時、法文科のベルが鳴り出した。いつもならノートインキ壺を持って、八番の教室はいる時分である。一、二時間講義ぐらい聞きそくなってもかまわないという気で、まっすぐに青山内科玄関まで乗りつけた。  上がり口を奥へ、二つ目の角を右へ切れて、突当たりを左へ曲がると東側の部屋だと教わったとおり歩いて行くと、はたしてあった。黒塗りの札に野々宮よし子と仮名で書いて、戸口に掛けてある。三四郎はこの名前を読んだまま、しばらく戸口の所でたたずんでいた。いなか物だからノックするなぞという気の利いた事はやらない。「この中にいる人が、野々宮君の妹で、よし子という女である」  三四郎はこう思って立っていた。戸をあけて顔が見たくもあるし、見て失望するのがいやでもある。自分の頭の中に往来する女の顔は、どうも野々宮宗八さんに似ていないのだから困る。  うしろから看護婦草履の音をたてて近づいて来た。三四郎は思い切って戸を半分ほどあけた。そうして中にいる女と顔を見合わせた。(片手にハンドルをもったまま)  目の大きな、鼻の細い、唇の薄い、鉢が開いたと思うくらいに、額が広くって顎がこけた女であった。造作はそれだけである。けれども三四郎は、こういう顔だちから出る、この時にひらめいた咄嗟の表情を生まれてはじめて見た。青白い額のうしろに、自然のままにたれた濃い髪が、肩まで見える。それへ東窓をもれる朝日の光が、うしろからさすので、髪と日光の触れ合う境のところが菫色に燃えて、生きた暈をしょってる。それでいて、顔も額もはなはだ暗い。暗くて青白い。そのなかに遠い心持ちのする目がある。高い雲が空の奥にいて容易に動かない。けれども動かずにもいられない。ただなだれるように動く。女が三四郎を見た時は、こういう目つきであった。  三四郎はこの表情のうちにものうい憂鬱と、隠さざる快活との統一を見いだした。その統一の感じは三四郎にとって、最も尊き人生の一片である。そうして一大発見である三四郎ハンドルをもったまま、――顔を戸の影から分部屋の中に差し出したままこの刹那の感に自らを放下し去った。 「おはいりなさい」  女は三四郎を待ち設けたように言う。その調子には初対面の女には見いだすことのできない、安らかな音色があった。純粋の子供か、あらゆる男児に接しつくし婦人でなければ、こうは出られない。なれなれしいのとは違う。初めから古い知り合いなのである。同時に女は肉の豊かでない頬を動かしてにこりと笑った。青白いうちに、なつかしい暖かみができた。三四郎の足はしぜんと部屋の内へはいった。その時青年の頭のうちには遠い故郷にある母の影がひらめいた。  戸のうしろへ回って、はじめて正面に向いた時、五十あまり婦人三四郎挨拶をした。この婦人三四郎からだがまだ扉の陰を出ないまえから席を立って待っていたものみえる。 「小川さんですか」と向こうから尋ねてくれた。顔は野々宮君に似ている。娘にも似ている。しかしただ似ているというだけである。頼まれ風呂敷包みを出すと、受け取って、礼を述べて、 「どうぞ」と言いながら椅子をすすめたまま、自分は寝台の向こう側へ回った。  寝台の上に敷いた蒲団を見るとまっ白である。上へ掛けるものもまっ白である。それを半分ほど斜にはぐって、裾のほうが厚く見えるところを、よけるように、女は窓を背にして腰をかけた。足は床に届かない。手に編針を持っている。毛糸のたまが寝台の下に転がった。女の手から長い赤い糸が筋を引いている。三四郎は寝台の下から毛糸のたまを取り出してやろうかと思った、けれども、女が毛糸にはまるで無頓着でいるので控えた。  おっかさんが向こう側から、しきりに昨夜の礼を述べる。お忙しいところをなどと言う。三四郎は、いいえ、どうせ遊んでいますからと言う。二人が話をしているあいだ、よし子は黙っていた。二人の話が切れた時、突然、 「ゆうべの轢死を御覧になって」と聞いた。見ると部屋のすみに新聞がある。三四郎が、 「ええ」と言う。 「こわかったでしょう」と言いながら、少し首を横に曲げて、三四郎を見た。兄に似て首の長い女である三四郎はこわいともこわくないとも答えずに、女の首の曲がりぐあいをながめていた。半分は質問があまり単純なので、答に窮したのである。半分は答えるのを忘れたのである。女は気がついたとみえて、すぐ首をまっすぐにした。そうして青白い頬の奥を少し赤くした。三四郎はもう帰るべき時間だと考えた。  挨拶をして、部屋を出て、玄関正面へ来て、向こうを見ると、長い廊下のはずれが四角に切れて、ぱっと明るく、表の緑が映る上がり口に、池の女が立っている。はっと驚いた三四郎の足は、さっそく歩調に狂いができた。その時透明な空気の画布の中に暗く描かれた女の影は一足前へ動いた。三四郎も誘われたように前へ動いた。二人は一筋道廊下のどこかですれ違わねばならぬ運命をもって互いに近づいて来た。すると女が振り返った。明るい表の空気の中には、初秋の緑が浮いているばかりである。振り返った女の目に応じて、四角の中に、現われたものもなければ、これを待ち受けていたものもない。三四郎はそのあいだに女の姿勢服装を頭の中へ入れた。  着物の色はなんという名かわからない。大学の池の水へ、曇った常磐木の影が映る時のようである。それはあざやかな縞が、上から下へ貫いている。そうしてその縞が貫きながら波を打って、互いに寄ったり離れたり、重なって太くなったり、割れて二筋になったりする。不規則だけれども乱れない。上から三分一のところを、広い帯で横に仕切った。帯の感じには暖かみがある。黄を含んでいるためだろう。  うしろを振り向いた時、右の肩が、あとへ引けて、左の手が腰に添ったまま前へ出た。ハンケチを持っている。そのハンケチの指に余ったところが、さらりと開いている。絹のためだろう。――腰から下は正しい姿勢にある。  女はやがてもとのとおりに向き直った。目を伏せて二足ばかり三四郎に近づいた時、突然首を少しうしろに引いて、まともに男を見た。二重瞼の切長のおちついた恰好である。目立って黒い眉毛の下に生きている。同時にきれいな歯があらわれた。この歯とこの顔色とは三四郎にとって忘るべからざる対照であった。  きょうは白いものを薄く塗っている。けれども本来の地を隠すほどに無趣味ではなかった。こまやかな肉が、ほどよく色づいて、強い日光にめげないように見える上を、きわめて薄く粉が吹いている。てらてら照る顔ではない。  肉は頬といわず顎といわずきちりと締まっている。骨の上に余ったものはたんとないくらいである。それでいて、顔全体が柔かい。肉が柔かいのではない骨そのものが柔かいように思われる。奥行きの長い感じを起こさせる顔である。  女は腰をかがめた。三四郎は知らぬ人に礼をされて驚いたというよりも、むしろのしかたの巧みなのに驚いた。腰から上が、風に乗る紙のようにふわりと前に落ちた。しかも早い。それで、ある角度まで来て苦もなくはっきりととまった。むろん習って覚えたものではない。 「ちょっと伺いますが……」と言う声が白い歯のあいから出た。きりりとしている。しかし鷹揚である。ただ夏のさかりに椎の実がなっているかと人に聞きそうには思われなかった。三四郎はそんな事に気のつく余裕はない。 「はあ」と言って立ち止まった。 「十五号室はどの辺になりましょう」  十五号は三四郎が今出て来た部屋である。 「野々宮さんの部屋ですか」  今度は女のほうが「はあ」と言う。 「野々宮さんの部屋はね、その角を曲がって突き当って、また左へ曲がって、二番目の右側です」 「その角を……」と言いながら女は細い指を前へ出した。 「ええ、ついその先の角です」 「どうもありがとう」  女は行き過ぎた。三四郎は立ったまま、女の後姿を見守っている。女は角へ来た。曲がろうとするとたんに振り返った。三四郎赤面するばかりに狼狽した。女はにこりと笑って、この角ですかというようなあいずを顔でした。三四郎は思わずうなずいた。女の影は右へ切れて白い壁の中へ隠れた。  三四郎はぶらりと玄関を出た。医科大学生と間違えて部屋の番号を聞いたのかしらんと思って、五、六歩あるいたが、急に気がついた。女に十五号を聞かれた時、もう一ぺんよし子の部屋へあともどりをして、案内すればよかった。残念なことをした。  三四郎はいさらとって帰す勇気は出なかった。やむをえずまた五、六歩あるいたが、今度はぴたりととまった。三四郎の頭の中に、女の結んでいたリボンの色が映った。そのリボンの色も質も、たしかに野々宮君が兼安で買ったものと同じであると考え出した時、三四郎は急に足が重くなった。図書館の横をのたくるように正門の方へ出ると、どこからたか与次郎が突然声をかけた。 「おいなぜ休んだ。きょうはイタリー人がマカロニーをいかにして食うかという講義を聞いた」と言いながら、そばへ寄って来て三四郎の肩をたたいた。  二人は少しいっしょに歩いた。正門のそばへ来た時、三四郎は、 「君、今ごろでも薄いリボンをかけるものかな。あれは極暑に限るんじゃないか」と聞いた。与次郎はアハハハと笑って、 「○○教授に聞くがいい。なんでも知ってる男だから」と言って取り合わなかった。  正門の所で三四郎はぐあいが悪いからきょうは学校を休むと言い出した。与次郎はいっしょについて来て損をしたといわぬばかりに教室の方へ帰って行った。

anond:20240930192717

 元来あの女はなんだろう。あんな女が世の中にいるものだろうか。女というものは、ああおちついて平気でいられるものだろうか。無教育なのだろうか、大胆なのだろうか。それとも無邪気なのだろうか。要するにいけるところまでいってみなかったから、見当がつかない。思いきってもう少しいってみるとよかった。けれども恐ろしい。別れぎわにあなたは度胸のないかただと言われた時には、びっくりした。二十三年の弱点が一度に露見したような心持ちであった。親でもああうまく言いあてるものではない。――  三四郎は��こまで来て、さらにしょげてしまった。どこの馬の骨だかわからない者に、頭の上がらないくらいどやされたような気がした。ベーコン二十三ページに対しても、はなはだ申し訳がないくらいに感じた。  どうも、ああ狼狽しちゃだめだ。学問大学生もあったものじゃない。はなはだ人格関係してくる。もう少しはしようがあったろう。けれども相手がいつでもああ出るとすると、教育を受けた自分には、あれよりほかに受けようがないとも思われる。するとむやみに女に近づいてはならないというわけになる。なんだか意気地がない。非常に窮屈だ。まるで不具にでも生まれたようなものである。けれども……  三四郎は急に気をかえて、別の世界のことを思い出した。――これから東京に行く。大学はいる。有名な学者接触する。趣味品性の備わった学生交際する。図書館研究をする。著作をやる。世間喝采する。母がうれしがる。というような未来をだらしなく考えて、大いに元気を回復してみると、べつに二十三ページのなかに顔を埋めている必要がなくなった。そこでひょいと頭を上げた。すると筋向こうにいたさっきの男がまた三四郎の方を見ていた。今度は三四郎のほうでもこの男を見返した。  髭を濃くはやしている。面長のやせぎすの、どことな神主じみた男であった。ただ鼻筋がまっすぐに通っているところだけが西洋らしい。学校教育を受けつつある三四郎は、こんな男を見るときっと教師にしてしまう。男は白地の絣の下に、鄭重に白い襦袢を重ねて、紺足袋はいていた。この服装からおして、三四郎は先方を中学校教師と鑑定した。大きな未来を控えている自分からみると、なんだかくだらなく感ぜられる。男はもう四十だろう。これよりさきもう発展しそうにもない。  男はしきりに煙草をふかしている。長い煙を鼻の穴から吹き出して、腕組をしたところはたいへん悠長にみえる。そうかと思うとむやみに便所か何かに立つ。立つ時にうんと伸びをすることがある。さも退屈そうである。隣に乗り合わせた人が、新聞の読みがらをそばに置くのに借りてみる気も出さない。三四郎はおのずから妙になって、ベーコン論文集を伏せてしまった。ほかの小説でも出して、本気に読んでみようとも考えたが、面倒だからやめにした。それよりは前にいる人の新聞を借りたくなった。あいにく前の人はぐうぐう寝ている。三四郎は手を延ばして新聞に手をかけながら、わざと「おあきですか」と髭のある男に聞いた。男は平気な顔で「あいてるでしょう。お読みなさい」と言った。新聞を手に取った三四郎のほうはかえって平気でなかった。  あけてみると新聞にはべつに見るほどの事ものっていない。一、二分で通読してしまった。律義に畳んでもとの場所へ返しながら、ちょっと会釈すると、向こうでも軽く挨拶をして、 「君は高等学校の生徒ですか」と聞いた。  三四郎は、かぶっている古帽子の徽章の痕が、この男の目に映ったのをうれしく感じた。 「ええ」と答えた。 「東京の?」と聞き返した時、はじめて、 「いえ、熊本です。……しかし……」と言ったなり黙ってしまった。大学生だと言いたかったけれども、言うほどの必要がないからと思って遠慮した。相手も「はあ、そう」と言ったなり煙草を吹かしている。なぜ熊本の生徒が今ごろ東京へ行くんだともなんとも聞いてくれない。熊本の生徒には興味がないらしい。この時三四郎の前に寝ていた男が「うん、なるほど」と言った。それでいてたしかに寝ている。ひとりごとでもなんでもない。髭のある人は三四郎を見てにやにやと笑った。三四郎はそれを機会に、 「あなたはどちらへ」と聞いた。 「東京」ゆっくり言ったぎりである。なんだか中学校先生らしくなくなってきた。けれども三等へ乗っているくらいだからたいしたものでないことは明らかである三四郎はそれで談話を切り上げた。髭のある男は腕組をしたまま、時々下駄の前歯で、拍子を取って、床を鳴らしたりしている。よほど退屈にみえる。しかしこの男の退屈は話したがらない退屈である。  汽車豊橋へ着いた時、寝ていた男がむっくり起きて目をこすりながら降りて行った。よくあんなにつごうよく目をさますことができるものだと思った。ことによると寝ぼけて停車場を間違えたんだろうと気づかいながら、窓からながめていると、けっしてそうでない。無事に改札場を通過して、正気人間のように出て行った。三四郎安心して席を向こう側へ移した。これで髭のある人と隣り合わせになった。髭のある人は入れ代って、窓から首を出して、水蜜桃を買っている。  やがて二人のあいだに果物を置いて、 「食べませんか」と言った。  三四郎は礼を言って、一つ食べた。髭のある人は好きとみえて、むやみに食べた。三四郎もっと食べろと言う。三四郎はまた一つ食べた。二人が水蜜桃を食べているうちにだいぶ親密になっていろいろな話を始めた。  その男の説によると、桃は果物のうちでいちばん仙人めいている。なんだか馬鹿みたような味がする。第一核子恰好が無器用だ。かつ穴だらけでたいへんおもしろくできあがっていると言う。三四郎ははじめて聞く説だが、ずいぶんつまらないことを言う人だと思った。  次にその男がこんなことを言いだした。子規は果物がたいへん好きだった。かついくらでも食える男だった。ある時大きな樽柿を十六食ったことがある。それでなんともなかった。自分などはとても子規のまねはできない。――三四郎は笑って聞いていた。けれども子規の話だけには興味があるような気がした。もう少し子規のことでも話そうかと思っていると、 「どうも好きなものにはしぜんと手が出るものでね。しかたがない。豚などは手が出ない代りに鼻が出る。豚をね、縛って動けないようにしておいて、その鼻の先へ、ごちそうを並べて置くと、動けないものから、鼻の先がだんだん延びてくるそうだ。ごちそうに届くまでは延びるそうです。どうも一念ほど恐ろしいものはない」と言って、にやにや笑っている。まじめだか冗談だか、判然と区別しにくいような話し方である。 「まあお互に豚でなくってしあわせだ。そうほしいものの方へむやみに鼻が延びていったら、今ごろは汽車にも乗れないくらい長くなって困るに違いない」  三四郎吹き出した。けれども相手は存外静かである。 「じっさいあぶない。レオナルド・ダ・ヴィンチという人は桃の幹に砒石を注射してね、その実へも毒が回るものだろうか、どうだろうかという試験したことがある。ところがその桃を食って死んだ人がある。あぶない。気をつけないとあぶない」と言いながら、さんざん食い散らした水蜜桃核子やら皮やらを、ひとまとめに新聞にくるんで、窓の外へなげ出した。  今度は三四郎も笑う気が起こらなかった。レオナルド・ダ・ヴィンチという名を聞いて少しく辟易したうえに、なんだかゆうべの女のことを考え出して、妙に不愉快になったから、謹んで黙ってしまった。けれども相手はそんなことにいっこう気がつかないらしい。やがて、 「東京はどこへ」と聞きだした。 「じつははじめてで様子がよくわからんのですが……さしあたり国の寄宿舎へでも行こうかと思っています」と言う。 「じゃ熊本はもう……」 「今度卒業したのです」 「はあ、そりゃ」と言ったがおめでたいとも結構だともつけなかった。ただ「するとこれから大学はいるのですね」といかにも平凡であるかのごとく聞いた。  三四郎はいささか物足りなかった。その代り、 「ええ」という二字で挨拶を片づけた。 「科は?」とまた聞かれる。 「一部です」 「法科ですか」 「いいえ文科です」 「はあ、そりゃ」とまた言った。三四郎はこのはあ、そりゃを聞くたびに妙になる。向こうが大いに偉いか、大いに人を踏み倒しているか、そうでなければ大学にまったく縁故も同情もない男に違いない。しかしそのうちのどっちだか見当がつかないので、この男に対する態度もきわめて不明瞭であった。

anond:20240930165106

2024-09-28

ガザ宗教っていうか、神の必要性について

私はクリスチャンの両親に育てられ、ある時期までは神を信じていた

だが遅まきながら成人後に、聖書に書いてあるような都合の良い神(守り助けてくれる神)はいないんだと気づいた たとえば虐待されて亡くなった小さな子供がいると知りながら神の存在を信じるなら、それは死者への冒涜になると思った 私は小さな犠牲者冒涜するような人間ではありたくないし、朧げな神よりも目の前の人間尊厳に天秤が傾くようになった

まあ普通の人は、そもそも神の存在しない地平線から人生スタートするか、宗教を信じる家庭で育った子も大体は思春期に至る頃には、親を批判的に見れるようになるのに伴い神の存在自分の中から削除する …んだよね?

生き物は死んで物質として土に還り、脳など、肉体の作用であった思考も共に消える、魂とは人が都合よく作り出した概念であり最初から存在すらしない

多分、大多数の日本人にとっての死生観てそういうものなんだと推察する 私も遅まきながらそういう場所に落ち着いて、長くそこに留まっていた

でも最近狼狽えている 昔の信仰に戻ることは絶対にないけれど、それとは別として神とか仏の存在を信じる人の気持が切実にわかる ガザとかウクライナを見ていたら、やっぱり天国と地獄はあってほしい 

無辜犠牲者天国に行って慰められてほしいし、加害者には地獄業火永遠に焼かれてほしい (死者を裁いて天国と地獄管理する存在を便宜的に神と呼称するとして)神にはいてくれないとこまる  

毎日毎日、何人殺されたというニュースを見る

たび、死ねば悪行がゼロになるなんて許されるわけがないという考えが頭に過る 神の存在を前提として育てられた私の脳が、勝手に昔の思考の癖をなぞっているのだと分かっていても、それでもなお「神」の存在にすがろうとする 自分は愚かだなと思いながら

いつか悪人は裁かれ相応の報いを受けるのだと信じなければガザの人たちもウクライナの人たちも正気を保てないだろう 一説によればガザではこの1年で30万人近く死んでいるという 誰にも顧みられないまま土砂に埋もれ朽ちていく死体があまりに多すぎる 

3.11では2万人が死に、日本中が大混乱と悲嘆に飲み込まれたというのに、何十万人て…

自分幸せにする神ではなく自分を殺した相手復讐する神が必要なんだと切実に感じる

もし神がいるとすれば不可知なのだろうと個人的には思う 神はこの世に干渉もしない でも善悪を計る絶対的な存在が別の世界にいて人を見ていてくれなければ困ると思ってしま

神の存在しない地平線から人生スタートし、神という考えすらよぎることのない生活をしている人は現代虐殺を見てどんな事を考えてますか?

人間動植物虐殺して食べてるではないかというツッコミは今は受け付けまられせん

10.7で殺されたイスラエル人とその加害者ついても勿論同じ事を考えますが、数日で終わった殺戮と1年続く殺戮では自ずと考える時間が違ってきます

読みにくく捻くれた文章最後まで読んでくれた人がいるなら、心からありがとう

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