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点線国道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
点線国道の一例(国道152号青崩峠

点線国道(てんせんこくどう)とは、日本で国道一般国道)に指定されている陸地上の道のうち、車両の通行が最初から不可能な区間を指す俗称。具体的には、徒歩でしか通行できない登山道や階段が含まれる。

概要

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俗称であるため公的な定義はないが、「点線国道」の点線とは、国土地理院発行の地形図で幅員1.5 m未満の道路が点線で表されることに由来する。そのような道でありながら一般国道としての指定を受けている区間を点線国道と呼ぶ[1][2][3]

点線国道の大部分はの周辺に存在し、徒歩での通行(登山)を余儀なくされる[2]ものが多い。いわゆる「酷道」の最たるもの[1]とされるが、「酷道」は車両での通行が著しく困難・危険な道を指すのに対し、「点線国道」は最初から事実上車両の通行ができる道として整備されたものではない。ただし林道など別の道で迂回可能な場合もある。

日本の点線国道一覧

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ここでは、国土地理院発行の地形図で幅員1.5 m未満の道路として記載されている区間[4]を記述する。

路線番号 地点 場所 距離 備考
国道152号 地蔵峠 長野県下伊那郡大鹿村・長野県飯田市 約2 km[5] 蛇洞林道で迂回可能(崩落により現在通行止め、事実上迂回不可)
青崩峠 長野県飯田市・静岡県浜松市 約2 km[5] 兵越林道で迂回可能。青崩峠道路国道474号三遠南信自動車道)を建設中[5]
国道256号 小川路峠 長野県飯田市 約10 km[6] 小川路峠道路(国道474号三遠南信自動車道)を建設中[6]
国道289号 鞍掛峠木の根峠 新潟県三条市・新潟県魚沼市福島県南会津郡只見町 約30 km[7] 八十里越を建設中[8]。直轄権限代行区間については2021年4月から5か年程度で開通予定[9]
国道291号 清水峠 群馬県利根郡みなかみ町・新潟県南魚沼市 約12–15 km[10] 関越自動車道関越トンネル)および、国道17号三国トンネル)で迂回可能[10]。新潟県側の点線部分は徒歩でも通行不能で(迂回する登山道あり)、現行の2万5千分の1地形図や地理院地図には道自体が記載されていない。清水峠越えの道路は1885年明治18年)に国道8号として開通しているが、その後は荒廃して廃道化してしまい、再開通の目処は立っていない[3]
国道339号 竜飛崎 青森県東津軽郡外ヶ浜町 約300 m[11] 階段国道として有名[11][12]。外ヶ浜町道で迂回可能。
国道371号 高尾峠 和歌山県田辺市・和歌山県東牟婁郡古座川町 約3 km[13] 本山谷平井林道玉の川林道)で迂回可能。

点線国道以外の未開通区間・不通区間

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以下は点線国道以外の未開通区間・不通区間のリストである。

なお国道の未開通・不通区間が登山道などの(地形図の点線で表される)道で結ばれていたとしても、その道が国道指定を受けていなければ点線”国道”にはあてはまらない。ただしこれは行政上のみの違いであり、「国道=車道」という認識が一般化している現代、実態としての点線国道と未開通・不通区間はどちらも「車道が開通していない区間」という意味で極めて似ている。

未開通・普通区間は中部地方や紀伊半島の山岳地帯にその多くが分布し、国道422号などのように、1つの路線で複数箇所の断絶区間を抱える一般国道もある[3]が、林道などで迂回でき、実際の通行では支障を来さず通行可能な区間も多い[3]。峠の未開通区間にはバイパス道路の整備が進められているところもあり、断絶が解消される見通しの路線もある[3]

なお国道357号のように、都市部・平野部に新設される計画の道路が未開通である場合も本リストに含まれている。

号線 所在地・区間 備考
193号 徳島県名西郡神山町 - 同県那賀郡那賀町 ただし、徳島県道253号山川海南線が接続されているため、通行可能。
257号 岐阜県高山市清見町楢谷 - 同県高山市荘川町黒谷 この区間を結ぶ三尾河バイパス(7.3 km)は事業休止中。この区間は主要地方道高山清見線国道158号で迂回可能。
274号 北海道白糠郡白糠町 - 同道釧路市
352号 花立峠 - 萱峠(新潟県長岡市 この区間のうち萱峠を結ぶ萱峠バイパス(萱峠工区)が事業中。
353号 群馬県吾妻郡中之条町 - 新潟県南魚沼郡湯沢町
357号 東京都大田区 - 神奈川県川崎市川崎区 首都高速湾岸線が並行。大田区 - 川崎市川崎区間は2016年[14]、横浜市金沢区 - 横須賀市間は2018年[15]に事業着手されたが、川崎市川崎区 - 横浜市鶴見区間は未着手。
神奈川県川崎市川崎区 - 同県横浜市鶴見区
神奈川県横浜市金沢区 - 同県横須賀市
360号 岐阜県大野郡白川村 - 石川県白山市 ただし、白山白川郷ホワイトロードが接続されているため、(冬季期間を除き)通行可能。
401号 沼山峠 - 三平峠(福島県南会津郡檜枝岐村 - 群馬県利根郡片品村 尾瀬を縦断する区間(七入 - 大清水小屋)が未開通区間となっている。このうち、沼山峠付近から大清水小屋までは国道指定されてはいないものの、群馬県道・福島県道1号沼田檜枝岐線がこの区間を結んでいる。ただし、群馬県道・福島県道1号沼田檜枝岐線のこの区間は全線が一般車両進入禁止、または登山路となっている。
405号 地蔵峠(群馬県吾妻郡中之条町 - 長野県下水内郡栄村
422号 庄司峠三重県津市美杉町木地屋 - 同県松阪市飯高町荒滝不動)
野又峠(三重県多気郡大台町野又谷 - 同県北牟婁郡紀北町十須下河内)
450号 北海道紋別郡遠軽町 - 同道紋別市 旭川紋別自動車道。遠軽町 - 湧別町間が遠軽上湧別道路として事業中。
452号 北海道芦別市幌内 - 同道上川郡美瑛町五稜 盤の沢道路五稜道路として事業中[16]
468号 千葉県成田市吉岡 - 同県山武市松尾町谷津 首都圏中央連絡自動車道。成田市 - 山武市間は2024年度開通予定[17][注釈 1]、藤沢市 - 横浜市間は横浜湘南道路横浜環状南線として事業中[18]
神奈川県藤沢市城南 - 同県横浜市金沢区釜利谷町
470号 石川県七尾市 能越自動車道。七尾市内の一部は田鶴浜七尾道路が事業中。輪島市内は輪島道路として事業中。
石川県羽咋郡志賀町 - 同県鳳珠郡穴水町
石川県輪島市
474号 長野県飯田市 - 同県下伊那郡喬木村 三遠南信自動車道。北設楽郡東栄町 - 新城市間は2025年度開通予定[19][注釈 2]
かつては草木トンネルも国道474号だったが、現在は国道152号に変更されている。
長野県飯田市 - 静岡県浜松市天竜区
愛知県北設楽郡東栄町 - 同県新城市
475号 岐阜県山県市 - 同県本巣市 東海環状自動車道。山県市 - 本巣市間は2024年度開通予定[20]、海津市 - いなべ市間は2026年度開通予定[21][注釈 1]
1993年の路線指定後、2005年に豊田東JCT - 美濃関JCT間が開通するまで一般国道で唯一、開通区間が存在しない路線であった。
岐阜県海津市 - 三重県いなべ市
476号 段ヶ岳峠(福井県今立郡池田町 - 同県南条郡南越前町
483号 兵庫県豊岡市 北近畿豊岡自動車道。豊岡道路として事業中。一部が2024年秋開通予定[22]
497号 福岡県糸島市 西九州自動車道。糸島市内の一部は今宿道路として事業中。松浦市 - 佐々町間は長らく計画中であったが2014年度に松浦佐々道路として事業化された[23]
佐賀県伊万里市
長崎県松浦市 - 同県北松浦郡佐々町
506号 沖縄県那覇市 - 同県豊見城市 那覇空港自動車道。小禄道路として事業中。2021年4月から5か年程度で開通予定[24][注釈 3]

このほか、海上を通り、自動車の走行が不可能な区間が存在する[25]海上国道を参照。

解消された点線国道・未開通区間

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道路整備により解消された点線国道や未開通区間もあり、以下のものがある。なお以下では点線国道があった区間と、点線国道がなかった未開通区間とを区別していない。

長期通行止め区間

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車両通行可能な道路として開通したものの、災害やバイパス開通などを機に長期にわたって車両通行止めとなり、国道の指定が解除されていないため実質的な点線国道となっている区間も存在する。以下のような区間がある。

福島第一原子力発電所事故による長期通行止め区間

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以下の区間は廃道の状況にあるとは限らないが、福島第一原子力発電所事故に伴う帰還困難区域内にあるため、許可車両以外は立ち入り禁止であり、歩行者や自転車も通行できない。公共一般に広く供されている公道としては機能不全の状態である。

点線都道府県道・点線市町村道

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概要は点線国道と同じで、都道府県道または市町村道の車両通行不能区間における将来的に都道府県道または市町村道に指定されるであろう連絡路のことである。全国的に見られるが、点線国道ほど工事が積極的に行われておらず、全く手のつけられていない分断区間も見られる。

脚注

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注釈

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  1. ^ a b 用地取得等が順調な場合。
  2. ^ トンネル工事が順調に進んだ場合。
  3. ^ 関係機関協議等が順調に進んだ場合。

出典

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  1. ^ a b 松波成行 2008, p. 71.
  2. ^ a b 浅井建爾 2015, p. 14.
  3. ^ a b c d e 佐藤健太郎 2015, p. 51.
  4. ^ 松波成行『国道の謎』(祥伝社、2009年)374 - 375ページ。
  5. ^ a b c 松波成行 2008, p. 82.
  6. ^ a b 松波成行 2008, p. 77.
  7. ^ 松波成行 2008, p. 74.
  8. ^ 道ならぬ「酷道」、国道の「車両通行不能区間」とは 登山道やけもの道、解消工事進む”. 乗りものニュース (2019年7月20日). 2020年12月21日閲覧。
  9. ^ 道路事業の開通見通しについてお知らせします。” (PDF). 国土交通省北陸地方整備局 (2021年4月27日). 2021年5月7日閲覧。
  10. ^ a b 松波成行 2008, p. 78.
  11. ^ a b 松波成行 2008, p. 72.
  12. ^ 浅井建爾 2015, pp. 14–15.
  13. ^ 松波成行 2008, p. 81.
  14. ^ 国道357号 東京湾岸道路(多摩川トンネル)”. 川崎市. 2019年6月4日閲覧。
  15. ^ 国道357号の南下延伸について”. 横須賀市. 2019年6月4日閲覧。
  16. ^ 一般国道452号盤の沢道路・五稜道路 費用便益分析バックデータ” (PDF). 国土交通省北海道開発局. 2018年8月28日閲覧。
  17. ^ 平成30年度予算大臣折衝について” (PDF). 国土交通省 (2017年12月18日). 2019年4月16日閲覧。
  18. ^ 神奈川県圏央道連絡調整会議(第3回)開催結果について』(PDF)(プレスリリース)国土交通省関東地方整備局横浜国道事務所・東日本高速道路株式会社関東支社横浜工事事務所、2022年8月5日https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000836883.pdf2022年10月13日閲覧 
  19. ^ 国道474号 三遠南信自動車道 東栄IC〜鳳来峡IC 令和7年度開通予定” (PDF). 国土交通省中部地方整備局 浜松河川国道事務所 (2021年4月27日). 2021年5月7日閲覧。
  20. ^ 防災・減災、国土強靭化に向けた 道路の5か年対策プログラム(中部ブロック版)を策定 〜今後5か年の目標を示し、取り組みを重点的かつ集中的に実施〜” (PDF). 国土交通省北陸地方整備局 (2021年4月27日). 2021年5月7日閲覧。
  21. ^ 令和2年度 有料道路事業関係説明資料” (PDF). 国土交通省道路局 (2020年3月16日). 2020年12月21日閲覧。
  22. ^ 国道483号豊岡道路 他4事業が今後5か年内に開通予定 〜兵庫県における「防災・減災、国土強靱化に向けた 道路の5か年対策プログラム」を公表します〜” (PDF). 国土交通省近畿地方整備局兵庫国道事務所・豊岡河川国道事務所 (2021年4月27日). 2022年10月13日閲覧。
  23. ^ 平成26年度新規事業候補箇所説明資料 一般国道497号(西九州自動車道)松浦佐々道路” (PDF). 国土交通省九州地方整備局 (2014年3月6日). 2022年10月13日閲覧。
  24. ^ 防災・減災、国土強靭化に向けた 道路の5か年対策プログラム(沖縄ブロック版)を策定 〜今後5か年の目標を示し、取り組みを重点的かつ集中的に実施〜” (PDF). 内閣府 沖縄総合事務局 (2021年4月27日). 2021年5月7日閲覧。
  25. ^ 浅井建爾 2015, p. 16.
  26. ^ 国道325号阿蘇大橋ルートが3月7日15時に開通 〜熊本と南阿蘇方面とのアクセスルートが回復〜” (PDF). 国土交通省九州地方整備局 熊本復興事務所・熊本県 (2021年2月2日). 2021年2月2日閲覧。
  27. ^ 国道325号阿蘇大橋ルートの開通について 〜新橋梁名称の決定、展望所の完成〜” (PDF). 熊本県 (2021年2月2日). 2021年3月10日閲覧。
  28. ^ 一般国道416号 福井・石川県境道路の開通について』(pdf)(プレスリリース)2018年8月8日http://www.pref.ishikawa.lg.jp/kisya/h30/documents/0808douro.pdf2018年9月16日閲覧 
  29. ^ 国道158号大野油坂道路 令和8年春に全線開通予定 国道417号冠山峠道路 令和5年内に開通予定” (PDF). 国土交通省近畿地方整備局 福井河川国道事務所 (2021年4月27日). 2021年5月7日閲覧。
  30. ^ (PDF) 事業認定理由, 中部地方整備局, (2011-12-08), https://www.cbr.mlit.go.jp/kensei/build_town/pdf/2011120801_1.pdf 2016年1月8日閲覧。 
  31. ^ (PDF) トンネル工事始まる!! - 領内出張所だより 第57号, 大台町, (2015-02-15), http://www.odaitown.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/16/201502.pdf 2016年1月8日閲覧。 
  32. ^ (PDF) 一般国道422号(八知山拡幅)道路改良工事の概要と施工状況状況について(平成27年9月末現在), 三重県, (2015-10-02), http://www.pref.mie.lg.jp/MKENSET/HP/original/topics/151002_yatiyama_9gatu_sinntilyoku.pdf 2016年1月8日閲覧。 
  33. ^ 一般国道422号(大台町滝谷地内)を供用開始します, 三重県, (2017-02-08), https://www.pref.mie.lg.jp/TOPICS/m0039100014.htm 2017年2月26日閲覧。 

参考文献

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  • 浅井建爾『日本の道路がわかる辞典』(初版)日本実業出版社、2015年10月10日。ISBN 978-4-534-05318-3 
  • 佐藤健太郎『国道者』新潮社、2015年11月25日。ISBN 978-4-10-339731-1 
  • 松波成行「酷道ファイル 点線国道編」『酷道をゆく』、イカロス出版、2008年3月20日、71-82頁、ISBN 978-4-86320-025-8 

関連項目

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