BABEL国際翻訳大賞
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BABEL国際翻訳大賞(バベルこくさいほんやくたいしょう)は、かつて株式会社バベル(バベルプレス)刊行の翻訳雑誌『翻訳の世界』が主催していた、翻訳本を対象とした文学賞。バベル翻訳奨励賞、日本翻訳大賞、バベル翻訳大賞とも。
概要
[編集]1976年(昭和51年)の『翻訳の世界』発刊とともに、日本と海外を結ぶ翻訳の普及と新人発掘を目指して「バベル翻訳奨励賞」が創設された。1991年(平成3年)、同誌が実施していた「ベスト翻訳書アンケート」の集計結果により「バベル翻訳大賞」が創設され、ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』(河島英昭訳)が受賞した。1994年(平成4年)には賞全体を「バベル翻訳大賞」として再編・改称した。
2000年(平成12年)の『翻訳の世界』終刊でいったん休止、後進の『eとらんす』で2003年(平成15年)に再開したが、2005年(平成17年)の���eとらんす』の終刊により、賞も終了した。
- バベル翻訳奨励賞:新人翻訳者登竜門としての賞。優秀賞受賞者が中心となって翻訳出版する権利が授与された。
- 日本翻訳大賞:前年度の翻訳書の中で最優秀とされる作品を刊行した翻訳書・翻訳者に授与された。
- BABEL新人賞:前年度の翻訳書の中で優秀とされる新人翻訳者に授与された。
主な受賞者・受賞作
[編集]日本翻訳大賞
[編集]- 大賞:河島英昭、ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』東京創元社
- エンタテインメント部門:浜口稔、オラフ・ステープルドン『スターメイカー』国書刊行会
- 児童文学、絵本部門:中川千尋、 リチャード・ケネディ『ふしぎをのせたアリエル号』福武書店
- ノンフィクション部門:刈間文俊、陳凱歌『私の紅衛兵時代-ある映画監督の青春』講談社現代新書
- 思想・芸術部門:安西祐一郎、マーヴィン・ミンスキー『心の社会』産業図書
- 特別賞:宇野利泰[1]
第2回(1992年)
- 大賞:柳瀬尚紀、ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク (1)(2)』河出書房新社
- 思想部門:巽孝之・小谷真理、ダナ・ハラウェイ他『サイボーグ・フェミニズム』トレヴィル
第3回(1993年『翻訳の世界』2月号)
- 大賞:堀茂樹、アゴタ・クリストフ『第三の嘘』早川書房
- エンタテインメント部門:酒井昭伸、デイヴィッド・ブリン『ガイア―母なる地球』早川書房
- 児童文学、絵本部門:青木由紀子、マーガレット・マーヒー『贈りものは宇宙のカタログ』岩波書店
- ノンフィクション部門:堀内静子、ダニエル・キイス『24人のビリー・ミリガン―ある多重人格者の記録』早川書房
- 思想・芸術部門:高山宏、ユルギス・バルトルシャイティス『アナモルフォーズ バルトルシャイティス著作集(2)』国書刊行会
- 学術部門:浜名優美、フェルナン・ブローデル『地中海 (1)(2)』藤原書店
第4回(1994年『翻訳の世界』3月号)
- 大賞:越川芳明,佐伯泰樹,植野達郎,幡山秀明、トマス・ピンチョン『重力の虹』国書刊行会
- エンタテインメント部門:東江一紀、ミッチェル・スミス『ストーン・シティ』新潮文庫
- 児童文学、絵本部門:清水真砂子、アーシュラ・K・ル=グウィン『帰還―ゲド戦記最後の書 (ゲド戦記 (最後の書))』岩波書店
- ノンフィクション部門:土屋京子、ユン・チアン『ワイルド・スワン』講談社
- 思想・芸術部門:今村仁司、ヴァルター・ベンヤミン『パサージュ論 1 パリの原風景』岩波書店
- 学術部門:渡辺政隆、スティーヴン・ジェイ・グールド『ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語』早川書房
第5回(1995年『翻訳の世界』3月号)
- 大賞:柴田元幸、ポール・オースター『ムーン・パレス』新潮文庫
- エンタテインメント部門:上田公子、ネルソン・デミル『将軍の娘』文藝春秋
- 児童文学、絵本部門:坂崎麻子、ロバート・ウェストール『海辺の王国』徳間書店
- ノンフィクション部門:柴田京子、オットー・フリードリック『ハリウッド帝国の興亡―夢工場の1940年代』文藝春秋
- 学術・芸術部門:宇野邦一・田中敏彦・小沢秋広、ジル・ドゥルーズ,フェリックス・ガタリ『千のプラトー―資本主義と分裂症』河出書房新社
第6回(1996年『翻訳の世界』3月号、8月号)
- 大賞:今村仁司・三島憲一他、ヴァルター・ベンヤミン『パサージュ論 (2)(5)』岩波書店
- 文学部門:志村正雄、ジョン・バース『船乗りサムボディ最後の船旅』講談社
- エンタテインメント部門:酒井昭伸、ダン・シモンズ『ハイペリオン』『ハイペリオンの没落』早川書房
- 絵本、児童文学部門:小野耕世、 ジャック・プリラツキー『ドラゴンたちは今夜もうたう』偕成社
- アート部門:谷川渥、ユルギス・バルトルシャイティス『鏡 バルトルシャイティス著作集(4)』国書刊行会
- ノンフィクション部門:高橋武智、クロード・ランズマン『ショアー』作品社
第7回(1997年『翻訳の世界』3月号)
- 大賞(=エンタテインメント部門ベスト作品):宮脇孝雄、ジョン・ダニング『死の蔵書』ハヤカワ・ミステリ文庫(ベスト翻訳書ではなく、部門ベスト1が受賞したのは初)
- 文学部門(=ベスト翻訳書):丸谷才一・高松雄一・永川玲二、ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ (1)(2)』集英社
- 絵本、児童文学部門:江國香織、イヴ・バンティング (著),デイヴィッド・ウィーズナー (イラスト)『夜がくるまでは』ブックローン出版
- アート部門:坂上桂子、リンダ・ノックリン『絵画の政治学―フェミニズム・アート』彩樹社
- ノンフィクション部門:村上春樹、マイケル・ギルモア『心臓を貫かれて』文藝春秋
- 学術部門:木田元・渡辺祐邦・須田朗・徳永恂・三島憲一・宮武昭、テオドール・W・アドルノ『否定弁証法』作品社
第8回(1998年『翻訳の世界』3月号)
- 大賞:受賞作なし
- 文学部門:柴田元幸・斎藤兆史、デイヴィッド・ロッジ『小説の技巧』白水社
- エンタテインメント部門(=ベスト翻訳書):白石朗、スティーヴン・キング『グリーン・マイル』新潮文庫
- 絵本、児童文学部門:菱木晃子、ウルフ・スタルク『うそつきの天才 』小峰書房
- ノンフィクション部門:富岡明美・原美奈子、リリアン・フェダマン『レスビアンの歴史』筑摩書房
- アート部門:女性と音楽研究フォーラム、スーザン・マクレアリ『フェミニン・エンディング―音楽・ジェンダー・セクシュアリティ』新水社
- 学術部門:鵜飼哲・大西雅一郎・細見和之・上野成利、エルネスト・ルナン,J・G・フィヒテ,ジュール・ロマン,エティエンヌ・バリバール『国民とは何か』インスクリプト
第9回(1999年『翻訳の世界』3月号)
- 大賞:長谷川宏、G・W・F・ヘーゲル『精神現象学』作品社(「ベスト翻訳書でもなく部門ベストでもない」作品が受賞したのは初。『精神現象学』は人文・社会・芸術・伝記部門でも、第9位だった)
- 文学・文芸評論・エッセイ部門:柴田元幸、スティーヴン・ミルハウザー『三つの小さな王国』白水社
- ミステリ部門(=ベスト翻訳書):鴻巣友季子、トマス・H・クック『緋色の記憶』文春文庫
- SF・ホラー・ファンタジー部門:日暮雅通、ニール・スティーブンスン『スノウ・クラッシュ』アスキー
- 児童文学・絵本・ヤングアダルト部門:千葉茂樹、クェンティン・ブレイク『みどりの船』あかね書房
- 人文・社会・芸術・伝記部門:本橋哲也、レイ・チョウ『ディアスポラの知識人』青土社
- 自然科学部門:中村和幸、ロジャー・ペンローズ『心は量子で語れるか―21世紀物理の進むべき道をさぐる』講談社
- ビジネス・実用部門:仁平和夫、トム・ピーターズ『トム・ピーターズの起死回生』TBSブリタニカ
賞を実施せず(2000年『翻訳の世界』4月号)
- ベスト翻訳書:佐藤良明、トマス・ピンチョン『ヴァインランド』新潮社
- ミステリ部門:佐藤和彦、スティーヴン・ハンター『極大射程』新潮文庫
- SF・ホラー・ファンタジー部門:酒井昭伸、ダン・シモンズ『エンディミオン』『エンディミオンの覚醒』早川書房
- 児童文学・絵本・ヤングアダルト部門:松岡佑子、J・K・ローリング『ハリー・ポッターと賢者の石』静山社
- ノンフィクション部門:中野圭二、ジェラルド・クラーク『カポーティ』文藝春秋
- 学術・思想部門:竹村和子、ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル―フェミニズムとアイデンティティの攪乱』青土社
賞を実施せず(2001年『eとらんす』4月号)
- ベスト翻訳書:柴田元幸、リチャード・パワーズ『舞踏会へ向かう三人の農夫』みすず書房
- ミステリ部門:高見浩、トマス・ハリス『ハンニバル』新潮文庫
- SF・ホラー・ファンタジー部門:中村融、フィリップ・K・ディック,ディーン・R・クーンツ他『影が行く―ホラーSF傑作選』創元SF文庫
- 児童文学・絵本・ヤングアダルト部門:松岡佑子、J・K・ローリング『ハリー・ポッターと秘密の部屋』静山社
- ノンフィクション部門:小林清衛・竹中昌宏・高村宏・渡辺福実、ジョゼフ・ジュッファ『ベーラ・バラージュ―人と芸術家』創樹社
- 学術・思想部門:倉骨彰、ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎』草思社
賞を実施せず(2002年『eとらんす』4月号)
- ベスト翻訳書:若島正、リチャード・パワーズ『ガラテイア2.2』みすず書房
- ミステリ部門:田村義進、ジェイムズ・エルロイ『アメリカン・デス・トリップ 』文藝春秋
- SF・ホラー・ファンタジー部門:中村融・山岸真(共編)、アーサー・C・クラーク他『20世紀SF 1~6』河出文庫
- 児童文学・絵本・ヤングアダルト部門:松岡佑子、J・K・ローリング『ハリー・ポッターとアズガバンの囚人』静山社
- ノンフィクション部門:武井みゆき・渡部良子、モフセン・マフマルバフ『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない 恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』現代企画室
- 学術・思想部門:山崎淳、ノーム・チョムスキー『9・11―アメリカに報復する資格はない!』文春文庫
第10回(2003年『eとらんす』4月号)
- 大賞:嶋田洋一 マーク・Z・ダニエレブスキー『紙葉の家』ソニーマガジンズ
- ミステリ部門:越前敏弥、ジェレミー・ドロンフィールド『飛蝗の農場』創元推理文庫
- SF・ホラー・ファンタジー部門:柳下毅一郎、R・A・ラファティ『地球礁』河出書房新社
- 児童文学・絵本・ヤングアダルト部門:井辻朱美、スーザン・クーパー『影の王』偕成社
- ノンフィクション部門:今枝麻子、T・ガートン・アッシュ『ファイル―秘密警察(シュタージ)とぼくの同時代史』みすず書房
- 学術・思想部門:村田公一・舩木篤也・吉田寛、テオドール・アドルノ(渡辺裕編)『アドルノ 音楽・メディア論集』(平凡社)
第11回(2004年『eとらんす』4月号、2005年1月号)
- 大賞:村上春樹 J・D・サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』白水社
- ミステリ部門:中村有希、サラ・ウォーターズ『半身』創元推理文庫
- SF・ホラー・ファンタジー部門:若島正・吉村満美子・霧島義明・今本渉・大森望、若島正編、シオドア・スタージョン『海を失った男』河出書房新社
- 児童文学・絵本・ヤングアダルト部門:前沢明枝、クリストファー・ポール・カーティス『バドの扉がひらくとき』徳間書店
- ノンフィクション部門:本橋哲也、アルンダティ・ロイ『帝国を壊すために―戦争と正義をめぐるエッセイ― 』岩波新書
- 学術・思想部門:水嶋一憲・酒井隆史・浜邦彦・吉田俊実、アントニオ・ネグリ,マイケル・ハート『<帝国> グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』以文社
BABEL新人賞
[編集]- 第01回(1991年) - 新人賞なし
- 第02回(1992年) - 堀茂樹 アゴタ・クリストフ『悪童日記』『ふたりの証拠』早川書房 芹澤恵 キース・ピーターソン『暗闇の終わり』『幻の終わり』創元推理文庫
- 第03回(1993年) - 河野万里子 D・ハンドラー『フィッツジェラルドを目指した男』講談社文庫 渡辺佐智江 キャシー・アッカー『血みどろ臓物ハイスクール』白水社
- 第04回(1994年) - 高橋恭美子 フェイ・ケラーマン『水の戒律』創元推理文庫
- 第05回(1995年) - 鴻巣友季子 メグ・ファイルズ『メリディアン144』東京創元社
- 第06回(1996年) - 栩木玲子 ラリイ・マキャフリイ『アヴァン・ポップ』(共訳、筑摩書房)、 渡辺了介、S. フライシュマン『ジンゴ・ジャンゴの冒険旅行』 (あかね書房)・ペギー・オルドリチ・キドウェル、ポール・E・セルージ 『目で見るデジタル計算の道具史―そろばんからパソコンまで』ジャストシステム
- 第07回(1997年) - 池田真紀子 アーヴィン・ウェルシュ『トレインスポッティング』角川書店
- 第08回(1998年) - 古沢嘉通 イアン・マクドナルド『火星夜想曲』早川書房
- 第09回(1999年) - 栗原百代 レイ・ワイア,ティム・テイト『なぜ少女ばかりねらったのか』草思社
- 第10回(2003年) - 該当者なし
- 第11回(2004年) - 鈴木仁子 W・G・ゼーバルト『アウステルリッツ(ゼーバルト・コレクション)』白水社
BABEL国際翻訳大賞以前の『翻訳の世界』ベスト翻訳書
[編集]1990年『翻訳の世界』2月号
- 翻訳書ベスト:沼野充義・工藤幸雄・長谷見一雄、スタニスワフ・レム『完全な真空』国書刊行会
- 文学部門:平川祐弘、アレッサンドロ・マンゾーニ『いいなづけ―17世紀ミラーノの物語』河出書房新社
- 児童文学部門:青木由紀子、マーガレット・マーヒー『足音がやってくる』岩波書店
- ノンフィクション部門:上田惇生・佐々木実智男、ピーター・F・ドラッカー『新しい現実―政府と政治、経済とビジネス、社会および世界観にいま何がおこっているか』ダイヤモンド社
- 思想・芸術部門:滝浦静雄・木田元、 M・メルロ・ポンティ『見えるものと見えないもの』みすず書房
脚注
[編集]- ^ 日外アソシエーツ現代人物情報より
参考文献
[編集]- 『地球翻訳図書館―バベル・ライブラリー 2013』プロジェクトに寄せて バベルグループ代表 湯浅美代子
- 『eとらんす』2003年4月号、「バベル翻訳賞の歩み」
- 『eとらんす』2005年1月号、「バベル国際翻訳大賞10回の歩み」
- バベルメンバーズ内『eとらんす』『翻訳の世界』バックナンバーPDF