『ドンキーコング』(Donkey Kong)は、1981年に任天堂から発売されたアーケードゲームである。2年後の1983年にはファミリーコンピュータ版が本体と同時発売された。
概要[]
乱暴者のゴリラにさらわれた恋人を助けるため、大工の主人公が工事現場を登っていくという、ストーリー性のある固定画面アクションゲーム。プレイヤーがステージ上でジャンプをするというアクションゲームそのもののルーツとなる記念碑的作品で、マリオがスクリーンデビューした作品でもある。
誕生の経緯[]
それまでの任天堂はアーケードゲーム市場で作品は出せどヒット作品とまではいかず、社長の山内溥から「もっと売れるゲームを」というオーダーで制作が開始された。制作を任された横井軍平は、その当時任天堂がトランプなどのグッズのライセンシーをしていた漫画作品『ポパイ』をゲームにすることを宮本茂に提案。宮本は主人公ポパイがホウレンソウを食べると宿敵ブルートとの力関係が逆転するという構図がちょうど大ヒットゲーム『パックマン』と同じであると考え、これを起点にゲームの企画構想を練る。しかし制作の段階で『ポパイ』の版権が使えないということになり、急遽オリジナルのキャラクターで埋め合わせをする必要が生まれた。このときに誕生したキャラクターこそが「ドンキーコング」と「ジャンプマン」であった。
このキャラクターとアイテムの構造を利用してゲームを考えることに挑戦し、次にゲームの面白さの構造についてを分析した。1つの簡単なタスクでも、2つ同時に行うと難しく、かつ個々が簡単であるほど失敗したときの悔しさが生まれると考えた宮本は、「はしごを上り下りする」「転がってくるタルを避ける」という2つの要素を組み合わせた。タルの軌道を予測して避けて進むという戦略的なゲームで、移動はスティック1本のみで行う予定であったが、使用する筐体(シューティングゲーム『レーダースコープ』が売れ残ったもの)にはスティックに加えてボタンが1つついていたため、これにジャンプという要素を付け加えたら偶然にも面白みが生まれたため、主人公はジャンプをできるようになった。ジャンプを付け加えたことで、次の面にある動くリフトの攻略法も「ジャンプで飛び越えればいい」とスムーズに設計されていき、宮本茂の「アイデアとは複数の問題を同時に解決するものである」という考え方が生まれたきっかけともなった。
デザイナーとして入社した宮本は、当時のゲームに登場する人間キャラクターが総じて「棒人間」であったことに違和を感じ「絵が描けない人がゲームを作っている」と信じて疑わなかった。しかし当時のゲームでは16×16という小さなマス目でキャラクターを描く必要があり、実際に制作にあたると宮本もその壁に打ちひしがれた。漫画家を志望したこともあった宮本は、いわゆるリアル頭身の人間ではなく、頭身の低い漫画キャラクターのようなデザインを用いることを思案。ヒゲを生やすと口を表現する手間が抑えられ、帽子をかぶせれば髪の毛を表現せずに済み、歩いているアニメーションを表現するためには胴と腕が分離している必要があるためオーバーオールを身に付けることとなり、ゲーム的に最良の表現を組み合わせて誕生したキャラクターこそが「帽子にオーバーオールにヒゲの姿の主人公」であった。
悪役のゴリラはとにかくマヌケで愛嬌のあるものにしたいと考えた宮本は、英語の辞書を引き「とんま・マヌケ」を意味する単語を用い、特撮『キングコング』の影響でゴリラという意味だと勘違いした単語を組み合わせ「ドンキーコング」という名前を命名した。しかし現地で「Donkey」を用いる際はたいてい「ロバ」と訳されるため意味不明な名前となったが、これが逆に印象深い名前になったという。
ステージは4ステージ構成をしているが、4つのステージそれぞれで「起承転結」を演出している。開発元の池上通信機は、任天堂からの依頼を受けた4月から夏休みの稼働に間に合わせるため、わずか2ヶ月半で完成させたという。開発環境もキロバイト程度のフロッピーディスクを用い、1台のコンピュータを4人で使用して製作していた。
ゲーム内容[]
25m、50m、75m、100mという4つのステージを登っていき、ドンキーコングにさらわれた恋人のレディを助ける。
25m[]
最初のステージ。
互い違いになった斜め向きの鉄骨を、はしごを伝って登っていき最上段のレディの元へたどり着けばクリア。その奥からはドンキーコングがタルを転がしてくるので、登るはしごを変えたりジャンプで飛び越えるなどしてタルを避けながらゴールを目指す。ゲームの開始直後にドンキーコングが主人公の背後にあるオイル缶にタルを投げ入れ火の玉のモンスター「おじゃま虫」を出現させるため、否が応でも動き出さなければならない。
2段目と4段目の端にパワーアップアイテムのハンマーが置かれている。
50m[]
鉄骨の色はオレンジ色。
5段構成のステージになっていて、右へ左へと交互に移動した25mとは異なり、はしごを登って上の段へ上の段へと昇っていく形式のステージ構成。最上段はドンキーコングがおり、そこにたどり着けばクリア。
2段目と4段目は地面がベルトコンベアになっていて、放置すると主人公が勝手に移動するほか、触れるとミスになるパイの仕掛けが存在。4段目から最上段までのはしごは伸縮式で、パイやおじゃま虫に触れない位置で登りきるためのタイミング取りが重要になる。
この面のみ、ファミコン版には収録されていない。
75m[]
鉄骨の色は再び赤色。
ドンキーコングがいる最上段と、その下に広がる足場の少ないアスレチックが特徴的な広大な面。主人公の初期位置は左端で、上または下に移動するリフトが2か所に存在し、高さを合わせてジャンプでリフトを乗り継ぎながら右上に移動したのち、最上段を左に向かって進みドンキーが放つ「ジャッキ」を避けながらレディの元へたどり着くとクリア。大きめの段差でミスになってしまうため、乗り継ぎの高さ合わせとジャンプを忘れてリフトと固定足場の間に落ちてしまわないかが重要となる。
100m[]
最終ステージ。鉄骨の色が青くなっている。
各段の鉄骨に黄色いボルトが埋まっており、上を通り過ぎることでこのボルトを外すことができる。すべて外すとドンキーコングの乗っている足場の鉄骨が全て落下し、コングも落下して退治され、一周が終了する。
ボルトが外された部分は見ての通り穴になっており、主人公もジャンプで避けないと落下してミスとなってしまう。
登場キャラクター[]
- 主人公(ジャンプマン / 救助マン / ミスター・ビデオゲーム / マリオ)
- 大工姿をした主人公。ジャンプによりタルや穴を飛び越えることができる���、ある程度高い段差から落下すると人並みに負傷しミスになる。
- 稼働当時は名前が決まっておらず、続編『ドンキーコングJR.』にて初めて命名された。
- レディ(ポリーン)
- 主人公の恋人。ドンキーコングに連れ去られてしまう。
- ドンキーコング
- 悪役のゴリラ。もともとは主人公のペットであったが、恋人ばかり構うようになったため嫉妬からレディをさらって工事現場へ逃げ込む。
- おじゃま虫
- 火の玉の敵キャラクター。触れるとミスになる。左右にうごめくほか、はしごを伝って移動する時もある。ハンマーで倒せる。
- タル
- 25mでドンキーコングが転がしてくる障害物。地面に沿って転がってくるか、はしごを伝って転がってくる。ジャンプで飛び越えると得点、ハンマーで壊しても得点。
- 一定の間隔で、地形を無視してマリオめがけて飛んでくる青いタルも存在。
- パイ
- 50mに登場する障害物。触れるとミスになる。ベルトコンベアで流れてくる。
- ジャッキ
- 75mに登場する障害物。触れるとミスになる。バウンドしながら登場し、画面右側まで行くと落下する。
- ハンマー
- パワーアップアイテム。取得すると一定時間ハンマーを振り続けタルやおじゃま虫を破壊することができるが、ジャンプやはしごの上り下りができない。ハンマーが上に上がっている時に胴体に敵が当たると当然ミスになってしまう。
- レディの落とし物(パラソル、帽子、バッグ)
- ステージ内に落ちており、取得するとボーナス点が加算。
移植作品[]
関連作品[]
任天堂発売[]
- スーパーマリオ オデッセイ
- 「都市の国 ニュードンク・シティ」には本作と関連するネタが多く、フェスでは本作をモチーフとしたステージが登場する。
- マリオカート ツアー
- コース「ニューヨーク ドリーム」「ニューヨーク ドリーム 2」「ニューヨーク ドリーム 3」「ニューヨーク ドリーム 4」「ニューヨーク ドリーム B」に本作の画面を再現した看板が登場。
- マリオカート8 デラックス コース追加パス
- コース「Tour ニューヨークドリーム」に本作の画面を再現した看板が登場。
- スーパードンキーコング
- 本作を思わせる赤い鉄骨の上で、ファミコン版のタイトルBGMのレコードを再生するクランキーコングを映したオープニングで始まる。
- ドンキーコング64
- 作中で本作が遊べる。
- マリオvs.ドンキーコング
- 鉄骨、ハンマー、ファイアなど、本作に登場するキャラや要素が登場する。また、ステージに3つ置かれているプレゼントを取得した時などの、効果音の一部が同じものである。
- マリオvs.ドンキーコング2 ミニミニ大行進!
- ラストバトルとなる屋上でのドンキーコング戦が、本作の25mをオマージュしたものである。
- また、B1のドンキーコング戦が本作の100mを、B2でのドンキーコング戦が75mをオマージュしたものである。
- スーパーマリオRPG
- 敵キャラのドソキーユングがタルを転がしてくる坂道を最上段まで登るというステージがある。
- マリオ&ルイージRPG、マリオ&ルイージRPG1 DX
- アハハ・アハデミーに上から転がってくるタルを避けて登るというエリアがある。
- マリオパーティ7、マリオパーティ100 ミニゲームコレクション
- タルを飛び越えながらコースを登り、ドンキーコングより先にゴールする「タルジャンプきょうそう」というミニゲームが収録されている。
- メイド イン ワリオ
- プチゲーム「ドンキーコング」が収録。タルをジャンプで飛び越える。
- あそぶメイドイン俺
- プチゲーム「ドンキーコング」が収録。タッチでタルを破壊する。
- メイド イン ワリオ ゴージャス
- プチゲーム「ドンキーコング」が収録。タッチでタルを破壊する。
- ガチャコロンで手に入る「ニンコレ」のひとつに本作の筐体がある。
- 大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ
- アイテムのハンマーや、本作をモチーフにしたステージ「75m」など、様々な要素が登場。
- 『ニンテンドウオールスター! 大乱闘スマッシュブラザーズ』の「ボスのところまでたどりつけ!」は本作を意識している[1]。
- テトリスDS
- 「プッシュ」モードのグラフィックは本作のファミコン版をモチーフにしている。
- TETRIS 99
- カスタマイズで選択できるスキンに「ドンキーコング」が存在。
- MOTHER2 ギーグの逆襲
- オネットのゲームセンターのBGMに、本作の100mのBGMが組み込まれている。
- 新・光神話 パルテナの鏡
- 19章「光の戦車」にて、坂を転がる岩とジャンプ台を見たピット達に対して冥府神ハデスが「『ドンキーコング』って、知ってる?」という発言をする。
- ニンテンドーDSiメトロノーム
- 手拍子などの音を出してマリオをジャンプさせてドンキーコングが転がすタルを避ける「DONKEY METRONOME」というミニゲームが収録されている。
任天堂以外が発売[]
- ティップタップ / コンゴボンゴ - アーケード - セガ
- 本作のプログラム制作を担当した池上通信機が開発した「斜め視点のドンキーコング」。転がる障害物、頂上のゴリラなど多くの共通点があり、こちらを事実上の続編と唱える者も多い。
- 桃太郎活劇 - PCエンジン - ハドソン
- 転がってくるタル(金太郎飴)をジャンプで避けながらジグザグの坂を進むというステージがある。
- Braid - XBox 360 - Number None, Inc.
- 本作の25mステージによく似たステージが登場。
- Minecraft - パソコン - Mojang Studios
- 本作に出てくる要素「絵画」の1つに100mステージを描いたものがある。
テレビ番組[]
- DOORS 2008 - TBS
- DOORS 2009 厳冬 - TBS
- 「ドンキーコング」という、本作の25mをモチーフにしたアトラクションが登場。
映画作品[]
- ピクセル - ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
- 敵の宇宙人軍の大ボスとして、ドンキーコングと25mが登場。
- ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
- 「ジャンプマン」という本作をモチーフにした架空のゲームの筐体がブルックリンにある飲食店「Punch-Out Pizzeria」に登場する。
- ほか、コング族が住まうジャングル王国で足場を構築する建材や、マリオとドンキーコングが戦うコロシアムに、本作を意識した赤い鉄骨が用いられている。
脚注[]
外部リンク[]
ドンキーコング
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