ソロモン諸島
- ソロモン諸島
- Solomon Islands
-
(国旗) (国章) - 国の標語:To Lead is to Serve
(英語: 先導こそ貢献) - 国歌:God Save Our Solomon Islands
神よ、我がソロモン諸島を守り給え -
公用語 英語、ピジン語 首都 ホニアラ 最大の都市 ホニアラ 独立
- 日付イギリスより
1978年7月7日通貨 ソロモン諸島ドル(SBD) 時間帯 UTC+11 (DST:なし) ISO 3166-1 SB / SLB ccTLD .sb 国際電話番号 677
ソロモン諸島(ソロモンしょとう、英: Solomon Islands)は、南太平洋のメラネシアに位置する立憲君主制国家。イギリス連邦の一員にして英連邦王国の一国である。首都はガダルカナル島にあるホニアラ。
オーストラリアの北東、パプアニューギニアの東にある。北にはナウル、東にはツバル、南東にはフィジー、南にはバヌアツがある。地理的にはソロモン諸島に属するブーゲンビル島はパプアニューギニア領である。
6つ主要島からなる人口約70万人、100以上の部族方言をもつ多民族島嶼国。1978年に英国統治から独立後は、国内政治が断続的に不安定だった。特に最多人口かつ親台湾が多いマライタ島(マライタ州)と中央政府のあるガダルカナル島(ガダルカナル州)が反目している。親中派のソガバレ政権による台湾との断交に反発した野党支持者・親台湾派が多いマライタ島出身者らによる退陣要求騒動が2021年11月に起きた[3][4]。
国名
[編集]正式名称は、Solomon Islands(ソロモン・アイランズ)。大航海時代の1568年、スペイン人探検家のアルバロ・デ・メンダーニャ・デ・ネイラがガダルカナル島で砂金を発見し、「ソロモンの宝」と名付けたことに由来する[5]。
日本語の表記は、ソロモン諸島。
独立前の旧称はBritish Solomon Islands(英領ソロモン諸島)。
歴史
[編集]紀元前1000年までにはメラネシア系の住民が定住していた。旧石器時代にサフル大陸から人類が移住してきた南限となっているので、ここを境に、これよりもおおよそ北西にある島々をニアー・オセアニアと呼び、これよりもおおよそ南東にある島々をリモート・オセアニアと呼ぶようになった。[要出典]その後、1000年間は動きが停滞する。
「ソロモン諸島」発見以後
[編集]1568年、スペイン人探検家のアルバロ・デ・メンダーニャ・デ・ネイラがヨーロッパ人として初めて渡来。ガダルカナル島で砂金を発見し、これが捜し求めていた古代イスラエルのソロモン王の財宝だと考え「ソロモン諸島」と名付けた。
1893年にイギリス領ソロモン諸島としてイギリスの植民地となり、1900年にはドイツ領ニューギニアの一部だったソロモン諸島の北部もイギリスが獲得した。同年にはコプラ産業も開始。
太平洋戦争中の1942年、日本軍に占領されるが、アメリカ軍およびオーストラリア軍とのソロモン諸島の戦いではガダルカナル島が日米の激戦地(ガダルカナル島の戦い)となる。
イギリスからの独立以後
[編集]1976年に自治権を獲得し、2年後の1978年に、イギリス連邦加盟国かつ英連邦王国として独立した。
1983年に中華民国(台湾)と国交樹立。以降から2019年の断交まで多額の支援を受ける[4]。
2000年6月、ガダルカナル島では、隣のマライタ島からの移住者が増加し、原住部族と移住部族間で土地の領有をめぐって武力による対立が継続し、市民社会の治安が脅かされた。この事態に対し、自国の警察だけで対応できなくなった政府は、2003年7月、太平洋諸島フォーラムに対し多国籍軍の派遣を要請した。オーストラリアとニュージーランドの軍と警察が約2200��が出動し、治安の回復が図られた。
現在の課題は、財政赤字、森林破壊およびマラリア対策である。
2006年4月、首都ホニアラで反政府運動が勃発して、チャイナ・タウンが集中して襲撃された。
2007年4月2日、地震が発生した。津波被害が顕著で同国政府は、3日、50人以上の死者が出たと発表した(en:2007 Solomon Islands earthquake)。
2013年2月6日、サンタクルーズ諸島付近でマグニチュード8.0の地震が発生した(ソロモン諸島沖地震 (2013年))。
政府の親中化以後
[編集]2019年4月3日、国会選挙が行われて50人の国会議員が確定。同月24日、議員の投票によりソガバレが再び首相に就任した[6]。マナセ・ソガバレは首相に再就任後に、対外関係の全面見直しを表明した。同年9月16日、中華人民共和国と国交を樹立し、1983年以降から国家承認していた台湾(中華民国)と断交することを発表した[7][4]。
アメリカは、台湾との国交を継続するよう働きかけていたが裏切られた形となり、直後にアメリカ合衆国副大統領マイク・ペンスがソガバレ首相との会談をキャンセルするなど大きなしこりを残すこととなった[8]。
2021年11月24日、台湾と断交による中国との関係強化・首相の公約が果たされていないことに不満を持つマライタ州の住民や野党支持者を中心とした国民により、マナセ・ソガバレ首相の退陣を求めるデモが発生。デモ隊は1000人以上に膨れ上がり、一部は国会に侵入しようとするなど混乱が広がったため、政府は首都ホニアラに外出禁止令を発令した。デモは翌25日にも発生して暴動に発展。中国人が経営する商店などが襲撃されて略奪・放火が行われた。混乱を受けて中国政府は重大な懸念を表明。オーストラリア政府は警察や軍人など66人を派遣することを決定した[9][10]。
中国との安全保障協定・関係強化
[編集]2021年12月23日、ソロモン諸島は暴動再発防止のため中国から警察関係者と装備品の受け入れに合意した[11]。その一環として2022年11月4日、中国からソロモン諸島警察に対し、放水車が寄贈されている[12]。二国間の協定により中国の警察官は2025年まで駐留する[13]。
2022年4月19日に中国と安全保障協定を締結したが、中国に船舶の寄港を認め、中国軍・中国警察派遣要請できることとなった[14]。
2022年8月、アメリカは日本が主催する慰霊祭出席のためシャーマン国務副長官をソロモン諸島に派遣。ソガバレ首相と会談を行い両国関係の維持を確認した[15]。 しかし、同月、ソロモン諸島はアメリカ沿岸警備隊の巡視船の寄港と補給を拒否する出来事が発生した[16]。
アメリカはその後も、中国に対抗してソロモン諸島など南太平洋への関与を再拡大する政策を継続しており、1993年に閉鎖した在ソロモン諸島大使館を2023年2月1日に再開した[17]。
2023年4月には、中華人民共和国と「包括的戦略パートナーシップ」に向けた関係強化の一環として治安維持で協力する協定を締結した[18]。
2023年9月23日、国連総会に出席したマナセ・ソガバレ首相は、福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出を非難する演説を行い、緊密な関係を築いてきた中国に同調する姿勢を示した[19]。
2023年11月にソロモン諸島で開催される2023 パシフィックゲームズのメイン会場も中国の援助により実現した。華為技術による約160基の電波塔建設や、中国企業と「1億ドル規模」の港湾改良事業を立て続けに実現させている。長年国交が続いた台湾の援助で建設された施設も多いが、台湾の援助で建設されたことを示すプレートや記念碑が相次いで撤去されるなど、台湾との関係は過去のものとなりつつある[20]。
政治
[編集]英連邦王国の一つであるため、国家元首であるソロモン諸島の国王は、イギリスの君主が兼ね(現在はチャールズ3世)、国王権限は総督が代行する。総督は任期5年で、議会の決定に従い、国王が任命する。
行政府の長は首相である。議会によって議員の選挙後に第1党の党首が選出されるのが慣例である。内閣は20人の閣僚によって構成される。閣僚は議員の中から、首相の助言に従い、総督が任命する。
ソロモン諸島議会
[編集]国会(国民議会)は一院制。全50議席。議員は任期4年で、小選挙区制選挙で選出される。前回投票は2019年4月3日に行われた。政党別獲得議席数は以下の通り。
- カデレ党 (Kadere party) 8
- ソロモン諸島民主党 (Solomon Islands Democratic Party) 8
- 統一民主党 (United Democratic Party) 4
- 民主連合党 (Democratic Alliance Party) 3
- 国民連合党 (People's Alliance Party) 2
- ソロモン諸島統一党 (Solomon Islands United Party) 2
- 国民第一党 (Peoples First Party) 1
- ソ���モン諸島地方前進党 (Solomon Islands Party for Rural Advancement) 1
- 無所属 21
州
[編集]独立時は4州であったが、現在は9州および首都区域に分かれる。
- 中央州 (Central)
- チョイスル州 (Choiseul)
- ガダルカナル州 (Guadalcanal)
- イサベル州 (Isabel)
- マキラ・ウラワ州 (Makira-Ulawa)
- マライタ州 (Malaita)-ソロモン諸島で最多人口。親台湾派が多い[3][4]。
- レンネル・ベローナ州 (Rennell/Bellona)
- テモツ州 (Temotu)
- 西部州 (Western)
- 首都区域ホニアラ (Honiara) - ガダルカナル州にあるソロモン諸島の首都[3]
地理
[編集]南西太平洋のニューギニア東方の100余の島々で構成している島嶼国家。主な島々は首都ホニアラが位置するガダルカナル島などがあるニュージョージア諸島とサンタクルーズ諸島である。険しい火山島と熱帯雨林に覆われている。最高峰はガダルカナル島のポポマナセウ山(2440m)である。
環境
[編集]1951年以降、ソロモン諸島では10年毎に0.15度ずつ気温が上昇していると言われている。
主な島
[編集]- ガダルカナル島
- チョイスル島
- サンタイサベル島
- マライタ島
- マキラ島(サンクリストバル島)
- ニュージョージア諸島
- ラッセル諸島
- フロリダ諸島
- マラマシケ島
- レンネル島
- サンタクルーズ諸島
- ショートランド諸島
ブーゲンビル島は地理的にはソロモン諸島に属し同諸島内で最大の島であるが、パプア・ニューギニアの領土となっている。
経済
[編集]主な通貨は、ソロモン諸島ドル。
捕鯨擁護国の一つ。自給自足的な経済と貨幣経済が併存している。経済格差が大きく、木材とコプラ、パーム油に鰹と鮪が主要品目である。なお、部族紛争勃発前までは日本が最大援助国であったが、現在の最大援助国は豪州である。ガダルカナル島の武装勢力の対立が経済を直撃し、現在、国家財政は破綻状態であり、後発開発途上国に指定されている国でもある。
サツマイモの消費が世界一である。
情報・通信
[編集]ソロモン諸島には国営放送のSolomon Islands Broadcasting Company (SIBC) があり、同国でのワールドカップの中継権も持っている。インターネットにおいてはSolomon Islands Network Information Centreというプロバイダが主流である。 新聞は売店などでの販売が主流。
国民
[編集]民族
[編集]人種の構成は、メラネシアン 93%、ポリネシアン 4%、ミクロネシアン 1.5%、ヨーロッパ人 0.8%、華人 0.3%、その他 0.4%。
言語
[編集]公用語は英語であるが、母語とする人は全人口の1から2パーセントにすぎず、現地語と英語とが混ざって形成されたピジン言語が部族間の共通語となっている。国内全域では、オーストロネシア語族、パプア諸語(中央ソロモン語族)など約120の固有の言語が存在する。
宗教
[編集]約96%がキリスト教徒(英国国教会 45%、カトリック教会 18%、United (Methodist/Presbyterian) 12%、バプティスト 9%、セブンスデー・アドベンチスト教会 7%、その他のプロテスタント 5%)。他の約4%は、地域固有の精霊信仰。
生物
[編集]ソロモン諸島には、固有種・固有亜種を含め、様々な生物が生息している。しかし、密猟や戦争行動、人間によって持ち込まれた外来種の影響で、絶滅あるいは絶滅の危機に瀕している種もある。
交通
[編集]文化
[編集]世界遺産
[編集]ソロモン諸島には、ユネスコの世界遺産リストに登録された自然遺産が1件ある(詳細は「東レンネル」を参照)。
スポーツ
[編集]ソロモン諸島ではサッカーが最も人気のスポーツとなっており、2003年にサッカーリーグのソロモン諸島・Sリーグが創設された。ソロモン諸島サッカー連盟によって構成されるサッカーソロモン諸島代表は、これまでFIFAワールドカップには未出場である。しかしOFCネイションズカップには7度出場しており、2004年大会では準優勝に輝いている。
祝祭日
[編集]日付 | 日本語表記 | 現地語表記 | 備考 |
---|---|---|---|
1月1日 | 元日 | New Year's Day | |
移動祝祭日 | 聖金曜日 | Good Friday | |
移動祝祭日 | 復活祭の翌日 | Easter Monday | |
移動祝祭日 | 聖霊降臨祭の翌日 | Whitmonday | |
移動祝祭日 | 国王公式誕生日 | Queen's Birthday | 6月14日に最も近い金曜日 |
7月7日 | 独立記念日 | Independence Day | |
12月25日 & 26日 | クリスマス | Christmas Days |
脚注
[編集]- ^ a b “UNdata”. 国連. 2021年10月11日閲覧。
- ^ a b c d e IMF Data and Statistics 2021年10月24日閲覧([1])
- ^ a b c “ソロモン諸島チャイナタウンで暴動、背景にある中台バトルとは チャイナマネーに絡め取られて台湾と断交した親中派政権 | JBpress (ジェイビープレス)”. JBpress(日本ビジネスプレス). 2023年9月23日閲覧。
- ^ a b c d 浩, 森 (2023年6月6日). “中国が「国の分断招いた」 対中傾斜で揺れる島国ソロモン”. 産経ニュース. 2023年9月23日閲覧。
- ^ http://www.orloff-art.com/reki.html |2018年11月19日
- ^ “新首相選出(ソロモン諸島) - 国際機関 太平洋諸島センター”. 国際機関 太平洋諸島センター. 2023年9月23日閲覧。
- ^ “ソロモン諸島が台湾と「断交」”. 産経新聞 (2019年9月16日). 2019年9月17日閲覧。
- ^ “米副大統領、ソロモン諸島首相と会談拒否 台湾断交で=政府高官”. ロイター (2019年9月18日). 2019年9月20日閲覧。
- ^ “ソロモン諸島首都で反政府デモ、暴徒がチャイナタウン襲撃・放火”. AFP (2021年11月25日). 2021年11月25日閲覧。
- ^ “ソロモンで暴動、豪軍派遣 首相辞任要求も”. 産経新聞 (2021年11月25日). 2021年11月25日閲覧。
- ^ “ソロモン諸島、中国が治安支援 暴動再発備え警察訓練”. 時事通信. 2021年12月28日閲覧。
- ^ “ソロモン諸島警察に中国から放水車 豪から銃も”. AFP (2022年11月5日). 2022年11月5日閲覧。
- ^ “中国との警察協力協定「脅威」でない ソロモン諸島”. AFP (2023年7月14日). 2023年7月14日閲覧。
- ^ 岡田充 (2022年4月28日). “南太平洋の小国「ソロモン諸島」と中国の安保協定が衝撃的と言える理由。米国の影響力、日本の外交力の限界が…”. BUSINESS INSIDER JAPAN. 2023年9月23日閲覧。
- ^ “米高官、ソロモン首相と会談 中ロを暗に批判”. 日本経済新聞 (2022年8月7日). 2022年8月27日閲覧。
- ^ “ソロモン、米巡視船の寄港拒否 中国との関係影響か”. 日本経済新聞 (2022年8月27日). 2022年8月27日閲覧。
- ^ 米大使館 30年ぶりソロモン諸島に「インド太平洋へ関与」『読売新聞』夕刊2023年2月2日3面(同日閲覧)
- ^ 「ソロモン諸島、中国と関係強化へ治安維持協定締結」『Reuters』2023年7月10日。2023年9月23日閲覧。
- ^ “日本に「がくぜん」 ソロモン首相、国連総会で処理水放出を非難”. AFP (2023年9月23日). 2023年9月23日閲覧。
- ^ 森 浩 (2023年6月6日). “中国が「国の分断招いた」 対中傾斜で揺れる島国ソロモン”. 産経新聞 2023年6月6日閲覧。
関連項目
[編集]- ソロモン諸島関係記事の一覧
- オントンジャワ海台
- ソロモン諸島の戦い
- 日本とソロモン諸島の関係
- 在ソロモン諸島日本国大使館(在ソロモン日本国大使館)
外部リンク
[編集]政府
日本政府
名誉領事館
観光
- ソロモン諸島政府観光局日本事務所
- ソロモン諸島政府観光局
- ソロモン諸島政府観光局(公式) (@solomon_japan) - X(旧Twitter)
友好協会
その他
- TCI - ソロモン諸島
- 『ソロモン諸島』 - コトバンク