2025-02-12

その4

7

1)。動画5は、口腔性交 〔2〕 が始まった際にcが携帯電話動画撮影していたのをXに撮るのは絶対だ めで、携帯電話を置くように言われて置いたというのが始まりの方にあり(同番号6ないし8、29、3 0) この動画が終了したタイミングについて、 cは、 ずっと撮っている認識ではなくて、消し忘れて置い てあったものなので、帰るときに、XとLINEの交換をするということになって、 自分携帯を拾い上げ たことで動画が終わったのだと思う (c 39 40頁)、 そのとき (動画が終わる直前)、Xは、 リビン グ内の廊下への出口付近のベッド横におり (c 41、42頁)、LINEを交換するために携帯を取った 後、動画5が終了した直後に、 Xの腰か腕に腕を回す感じで抱き付いてそのままベッドに座ったんだと思 う、そのときにはYと被告人はもう既に廊下の方にいた (c 43ないし47頁) と証言するところ、 動 画やそれをキャプチャーした写真という客観証拠を基に説明するもので、 動画の終わり際の会話の内容にも 整合し、被告人aの供述 (被告人a 37頁以降) ともおおむね合致しており、 その信用性を否定できな い。 X が証言するような、 動画5の後に、 何度言っても帰らせてもらえないから諦めざるを得ない、Yだけ でも帰らせてあげてほしいと考えるしかないような展開になったというのは、このような動画5からうかが われる状況に照らすと、 必ずしも信用し難いのであり、むしろLINE交換を名目とするcの引き止めを受 けて、残ることにした可能性を払拭できない。

そして、cの抱き付き行為の後、 被告人 a がY を送りに外へ出て、 戻ってきたときには、 またc と Xの間 口腔性交 〔3〕 が始まっていたのであり、 前同様任意に応じたものとしても、不合理ではなく、cの抱き 付き行為は、強制性交等罪にいう暴行脅迫に当たるとは認められないし、 その後に行われた膣内性交まで に、新たに暴行脅迫が加えられたことも認められない。 動画撮影行為が膣内性交に向けられた脅迫に当た るとみるべき事情もない。

以上のとおり、本件性交等(暴行〔2〕) について、前記認定に至った原判決は、X及びYの虚偽供述動機等についての判断の不合理さに加え、 X証言がY証言とおおむね合致するとした点等でも不合理であ り、Xが同意の上で本件性交等に及んだ疑いを払拭できない。

(5) 補論

念のため、Xが動画撮影を止められず、 事後に動画拡散防止のための行動に出たことが、 口腔性交 〔1〕、 同 〔2〕 及び本件性交等がXの同意によらずに行われたものであることを推認させるものではない かについて検討を加えておく。 この点、Xは、本件性交等時、 cが動画撮影していることに気付き、 撮ら ないでほしいと思ったが、それまでも言っていたのに撮られたので諦めていた旨証言する(×43頁)。し かし、前記のように、口腔性交 [2] に関する動画5は、 口腔性交 [2] が始まった際にcが携帯��話で撮 影していたが、Xに撮るのは絶対だめで、 携帯電話を置くように言われて置いたことを示すものであり、X 証言はこのような客観証拠にそぐわない。 Xが本件性交等時に動画撮影をやめるよう言わなかったのは、 言えなかったからではなく、言いそびれたといったようなものである可能性があり、 後刻不安になったこから拡散防止のための行動に出たというもので、本件性交等がXの同意によらずに行われたものであること を推認させるものとはいえない。

(6) 結論

以上の次第であり、 その余の点について判断するまでもなく、 X証言の信用性等についての原判決判断論理則、 経験則等に照らして不合理であって、 強制性交等罪にいう暴行脅迫があり、 Xの同意がなかっ たと認めた原判決には被告人両名の関係判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある。

被告人両名の事実誤認の各論はいずれも理由があり、 被告人 a に関するその余の論旨について判断する までもなく、 原判決は破棄を免れない。

第2 破棄自判

そこで, 刑訴法397条1項、 382 条により原判決を破棄し、 同法400条ただし書により更に判決す ることとし、 本件公訴事実については、これまで説示したとおり、 被告人両名の関係犯罪証明がないこ とになるから同法404条、 336条により、 被告人両名に対し無罪の言渡しをすることとする。

よって、 主文のとおり判決する。

令和6年12月18日

大阪高等裁判所第6刑事部

裁判長裁判官 飯島健太郎 裁判官 大寄淳 裁判官 宇田美穂

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