孔子
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孔子は、紀元前5世紀頃の中国の思想家。言行録に『論語』がある。
引用
[編集]孔子は匡の国へ遊説に赴いた。宋の人々は彼の居を取り囲んだが、彼は絃を弾いて唄い、ひるむ様子もなかった。
子路が部屋に入ってきて言った。「何をこんな時に楽しんでいるん��すか?」
孔子は答えた。「来なさい。話して聞かせよう。私も窮地を避けようとして随分久しい。だがな、天命とは免れ得ないものだ。万事うまく事が運ぶことを願ったのも随分久しい。だがな、時勢には抗えないものだ。聖帝の堯や舜の時代では、天下に窮する者など一人もいなかったが、皆が皆賢かった訳ではない。暴君の桀や紂の時代では、天下にうまくやりおおせた者は一人もいなかったが、皆が皆賢くなかった訳ではない。これが時勢というものだろう。蛟や竜を恐れずに船を漕ぐのは漁師の勇気。野牛や虎を恐れずに歩くのは猟師の勇気。刃が目前で飛び交う中で、死と生を等しく見るのは、武人の勇気。窮するにも天命があるのを知り、うまく行くのにも時勢があるのを知り、大難にも恐れずに臨むのは、聖人の勇気だ。子路、私にも定められた天命というものがある。」
しばらくして、兵士の長が訪れた。「あなたを陽虎かと思い、取り囲んでおりましたが、誤解と分かりました。お詫びして退かせて頂きます。」
『論語』
[編集]学而篇
[編集]- 学びて時にこれを習ふ、また説ばしからずや。朋遠方より来たる有り、また楽しからずや。人知らずして
愠 みず、また君子ならずや。- 學而時習之、不亦說乎。有朋自遠方來、不亦樂乎。人不知而不慍、不亦君子乎。。
- 巧言令色、
鮮 なし仁。- 巧言令色、鮮矣仁。
- 陽貨篇にも同じ句がある。
- 子曰く、人の己を知らざるを患えず、己の人を知らざるを患えん。
- 子曰、不患人之不己知、患己不知人也。
- 人が私のことを知らないということなどは気にせず、私自身が人のことを知らないということを気にしなさい。
- 子曰、不患人之不己知、患己不知人也。
- 己に如かざる者を友とするなかれ。
- 無友不如己者
- 過ちては則ち改むるに憚ることなかれ。
- 過則勿憚改
- 夫子は温、良、恭、倹、譲。
- 夫子溫良恭儉。
為政篇
[編集]- 吾十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑はず。五十にして天命を知る。六十にして耳順ふ。七十にして心の欲する所に従いて、矩(のり)を踰(こ)えず。
- 吾十有五而志於學。三十而立。四十而不惑。五十而知天命。六十而耳順。七十而從心所欲、不踰矩。
- 故きを温(たず)ねて新しきを知る、もって師となるべし。
- 溫故而知新、可以爲師矣。
- 冒頭四字をとって「温故知新」とも。古訓には「故きを温(あたた)めて」とする。
- 君子は器ならず。
- 君子不器。
- 子貢君子を問ふ。子の曰く、まずその言を行ひ、
而 して後にこれに従ふ、と。- 子貢問君子。子曰、先行其言、而後從之。
- 君子は周して比せず。小人は比して周せず。
- 君子周而不比。小人比而不周。
- 学びて思はざればすなはち
罔 し、思ひて学ばざればすなはち殆 し。- 學而不思則罔 思而不學則殆
- 勉強しただけで考えることをしないと、それを何に使ってよいかわからず意味がない、考えたてばかりで体系的な勉強をしないと、独断に陥ってしまう。
- 學而不思則罔 思而不學則殆
- 子曰く、由や、女にこれを知るを
誨 えんか。これを知るを知るとなし、知らざるを知らざるとなせ、これ知るなり。- 子曰、由、誨女知之乎。知之爲知之、不知爲不知、是知也。
里仁篇
[編集]- 子曰く、賢を見てはひとしからんことを思い、不賢を見ては内に自ら省みると。
- 子曰、見賢思齊焉、見不賢而内自省也。
公冶長篇
[編集]- 道行われず、
桴 に乗りて海に浮ばん。- 道不行。乘桴浮于海。
- この国で道が行なわれないようなら、いっそ海に出てしまおうか、その向こうの東夷の地に行ってしまおうか。
- 道不行。乘桴浮于海。
- 朽ち木は
雕 るべからず。糞土の牆は杇 るべからず。- 朽木不可雕也,糞土之牆,不可杇也
- 朽木は柱にすることが出来ない。糞土で作った塀は塗ることが出来ない。
- 人の曲がった性根は繕うことが出来ないという意味。四字熟語「朽木糞牆」の元となった。ただし近代の文献学的研究には、この章句を後代の付加であるとする意見がある。
- 朽木不可雕也,糞土之牆,不可杇也
雍也篇
[編集]- 民の義を務め、鬼神を敬して之を遠ざくは、知と謂ふべし。仁者は難を先にして獲るを後にするは、仁と謂ふべし。
- 務民之義、敬鬼神而遠之、可謂知矣。仁者先難而後獲、可謂仁矣。
- 知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ。知者は動き、仁者は静かなり。知者は楽しみ、仁者は
寿 し。- 知者樂水。仁者樂山。知者動。仁者靜。知者樂。仁者壽。
- 難きを先にして獲を後にす。
- 先難而後獲。
- 仁者は、己達せんと欲すれば人を達せしむ。
- 夫仁者、己欲立而立人、己欲達而達人。
- 子曰はく、之を知る者は、之を好む者に如かず。之を好む者は、之を楽しむ者に如かず、と。
- 子曰、知之者、不如好之者。好之者、不如楽之者。
述而篇
[編集]- 述べて作らず、信じて古を好む。
- 述而不作、信而好古。
- 不義にして富み且つ貴きは、我に於いて浮雲の如し。
- 不義而富且貴、於我如浮雲。
子罕篇
[編集]- 後生畏るべし。焉んぞ来者の今に如かざるを知らんや。
- 後生可畏、焉知來者之不如今也。
- 自分より年少のものがいつ自分を追い越すかわからない。つまり若いからといって侮ってはならない。
陽貨篇
[編集]- 性相近きなり、習い相遠きなり。
- 性相近也 習相遠也
- 人間は先天的なものの差は小さいが、その後の教育においてその差が生じる。
- 性相近也 習相遠也
- ただ女子と小人は、養ひがたきとなす。
- 唯女子與小人、爲難養也。
鶏 を割 くに、焉 くんぞ牛刀 を用 いん。- 割雞焉用牛刀。
先進篇
[編集]- 顔淵死す。子曰く、噫、天は予を喪ぼせり、天は予を喪ぼせり。
- 顔淵死 子曰 噫 天喪予 天喪予
- 未だ生を知らず、焉んぞ死を知らん。
- 未知生、焉知死
- 過ぎたるはなほ及ばざるがごとし。
- 過猶不及
子路篇
[編集]- 子曰く、君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず。
- 子曰、君子和而不同、小人同而不和。
その他
[編集]- 古の訟へを聞く者は、その意を
にく んで、その人を悪まず。--『孔叢子』- 古之聽訟者、惡其意、不惡其人。
- いにしえの裁判官は、犯罪者の犯意を悪として裁くのである。孔鮒(孔子の子孫九代目)の刑法論の書中の孔子の言葉。罪を犯す意思がない行為を罰しないという現代の刑法と同様の考えである。
- 古之聽訟者、惡其意、不惡其人。
孔子に誤って帰せられるもの
[編集]- 有子曰く、礼をこれ用うるには、和を貴しとなす、と。 --『論語』学而第一
- 有子曰、禮之用和爲貴。
- 聖徳太子の「憲法十七條」第1条「以和爲貴(和を以って貴しとなす)」(出典『日本書紀』)の出典。『論語』に由来するが、孔子の弟子・有若(有子)の言であり、孔子の言ではない。
孔子に関する引用
[編集]- 孔子様や顔淵は知識はあっても社会にあってそれを活かす術をもたなかった。--『荀子』
- 仲尼、顔淵は、知にして世に窮す。
- 仲尼、顏淵、知而窮於世。