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HD 28185 b

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
HD 28185 b
HD 28185 b と地球のような衛星(想像図)
HD 28185 b と地球のような衛星(想像図)
星座 エリダヌス座
分類 太陽系外惑星
発見
発見年 2001年[1]
発見者 N. C. Santos ら[2]
発見場所 チリの旗 チリ ラ・シヤ天文台[2]
発見方法 ドップラー分光法 (CORALIE英語版)[2]
現況 公表
軌道要素と性質
軌道長半径 (a) 1.03au[2]
離心率 (e) 0.07 ± 0.04[2]
公転周期 (P) 383 ± 2日[2]
(1.05年)
近点引数 (ω) 351 ± 25 °[2]
前回近点通過 JD 2451863 ± 26[2]
準振幅 (K) 161 ± 11 m/s[2]
HD 28185の惑星
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α)  04h 26m 26.32s[1]
赤緯 (Dec, δ) −10° 33′ 03.0″[1]
距離 129光年
(39.4 pc[1])
物理的性質
質量 > 5.7 MJ[2]
平衡温度 (Teq) 250 K[2]
他のカタログでの名称
HIP 20723 b, SAO 149631 b, BD-10 919 b, SD-10 919 b, TYC 5317-00733-1 b, 2MASS J04262631-1033028 b, WISE J042626.37-103303.4 b[1]
Template (ノート 解説) ■Project

HD 28185 bは、地球から約129光年の距離に存在する太陽に似た恒星HD 28185を周回する太陽系外惑星巨大ガス惑星)である。天球上ではエリダヌス座の方角に位置する。この惑星は2001年4月、CORALIE英語版による南天の太陽系外惑星の調査で発見された。2008年に行われたMagellan Planet Search Program英語版による調査でも改めてその存在が確認されている[3]。HD 28185 bの軌道恒星ハビタブルゾーンの内側の境界付近内に位置している[4]

発見

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HD 28185 bの発見は、それまでに見つかっていた他の多くの太陽系外惑星と同様、惑星の重力による恒星のふらつきを検出するドップラー分光法により行われた。この方法では、ドップラー効果による恒星のスペクトルの変化から惑星の存在を導き出す。2001年、HD 28185のスペクトルが383日の周期で変化しており、かつその振幅から、下限質量木星の5.72倍の惑星が存在しているとの発表がなされた[2]

軌道と質量

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HD 28185 bは恒星を1.04年で周回する軌道をとる。それまでに見つかっていた長い公転周期を持つ他の多くの太陽系外惑星と異なり、HD 28185 bは太陽系火星に匹敵する低い軌道離心率の軌道を持つ[5]。その軌道は恒星ハビタブルゾーン内に位置している[4]

視線速度法の振幅から、HD 28185 bは最低でも太陽系の木星の5.7倍の質量を持つ惑星であることが判っている。しかし、視線速度法で判るのは最低質量だけであり、惑星の軌道傾斜角によっては真の質量はこれより大きな値である可能性もある。

性質

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HD 28185 bはその大きな質量から固体の表面を持たない巨大ガス惑星だろうと考えられている。しかし、惑星の観測データが視線速度法による間接的なものに限られているため、その半径や組成、温度といった情報は不明である。

HD 28185 bの軌道がハビタブルゾーン内に位置することから、この恒星系には生命が存在するのではないかとの推測がなされている[6]。ガス惑星に生命が存在できるかは不明だが、シミュレーションによればHD 28185 bはその周囲に地球質量の衛星を数十億年に渡り保持することが可能であるとの報告がなされている[7]。もしこのような衛星が存在するのであれば、そこには生命が存在可能な環境が広がっていると考えられる。ただし、HD 28185 bの周囲にそのような衛星が形成されうるのかについては、はっきりしていない[8]。その他のシナリオとしては、小さな惑星がHD 28185 bのトロヤ点に長期間安定して存在する可能性が提示されている[9]。木星の5.7倍という巨大質量を持つHD 28185 bでは、木星の衛星やトロヤ群のようにこうした天体が成立する可能性がある。

脚注

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  1. ^ a b c d e HD 28185 b”. NASA Exoplanet Archive. NASA Exoplanet Science Institute. 2020年11月3日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l Santos, N. C. et al. (2001). “The CORALIE survey for southern extra-solar planets”. Astronomy & Astrophysics 379 (3): 999–1004. Bibcode2001A&A...379..999S. doi:10.1051/0004-6361:20011366. ISSN 0004-6361. 
  3. ^ Minniti, Dante et al. (2009). “Low-Mass Companions for Five Solar-Type Stars From the Magellan Planet Search Program”. The Astrophysical Journal 693 (2): 1424–1430. arXiv:0810.5348. Bibcode2009ApJ...693.1424M. doi:10.1088/0004-637X/693/2/1424. ISSN 0004-637X. 
  4. ^ a b Jones, Barrie W. et al. (2006). “Habitability of Known Exoplanetary Systems Based on Measured Stellar Properties”. The Astrophysical Journal 649 (2): 1010–1019. arXiv:astro-ph/0603200. Bibcode2006ApJ...649.1010J. doi:10.1086/506557. ISSN 0004-637X. 
  5. ^ Butler, R. P. et al. (2006). “Catalog of Nearby Exoplanets”. The Astrophysical Journal 646 (1): 505–522. arXiv:astro-ph/0607493. Bibcode2006ApJ...646..505B. doi:10.1086/504701. ISSN 0004-637X. 
  6. ^ Mullen, L. (2001年8月8日). “Extrasolar Planets with Earth-like Orbits”. 2011年10月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月3日閲覧。
  7. ^ Barnes, Jason W.; O’Brien, D. P. (2002). “Stability of Satellites around Close‐in Extrasolar Giant Planets”. The Astrophysical Journal 575 (2): 1087–1093. arXiv:astro-ph/0205035. Bibcode2002ApJ...575.1087B. doi:10.1086/341477. ISSN 0004-637X. 
  8. ^ Canup, Robin M.; Ward, William R. (2006). “A common mass scaling for satellite systems of gaseous planets”. Nature 441 (7095): 834–839. Bibcode2006Natur.441..834C. doi:10.1038/nature04860. ISSN 0028-0836. 
  9. ^ Schwarz, R. et al. (2007). “Survey of the stability region of hypothetical habitable Trojan planets”. Astronomy & Astrophysics 474 (3): 1023–1029. Bibcode2007A&A...474.1023S. doi:10.1051/0004-6361:20077994. ISSN 0004-6361. 

関連項目

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外部リンク

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座標: 星図 04h 16m 27.32s, −10° 33′ 03.0″