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A重油

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

A重油(Aじゅうゆ)とは、主として燃料に用いられる重質の石油製品の一つである。性質は軽油に近く、用途も軽油と共通する部分が多い。

概要

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重油は、原油分留後の残渣油と軽油を混合した重質油である。JIS規格によって、動粘度により「1種 - 3種」に分類されており、順に「A重油」「B重油」「C重油」と呼ばれる。このうち軽油成分が90%を占めるものがA重油に分類される。このためA重油は性質としては軽油に近く、ディーゼルエンジンの燃料や、特に硫黄分を嫌う金属の精錬用燃料などに用いられる。

日本税制上、軽油には1リットルあたり32.1円の税金軽油引取税)がかかる。精製原価を超える租税がかかるため、無税のA重油をトラック燃料に用いようとする脱税行為が後を絶たない。管轄省庁では簡易に検査できるように、A重油にはクマリンを混入することを義務づけている。クマリンはブラックライトにより蛍光する為、簡易に軽油とA重油を、または混合の有無を識別することが可能である。

また、A重油を自動車のディーゼルエンジンの燃料に使用する行為は、現在では税制面のみならずエンジンの設計・構造上も認められていない。2000年代以降の自動車用ディーゼルエンジンでは、排気ガス対策としてEGRDPF触媒を設けており、またガソリンエンジン同様燃料噴射やノックコントロールなどを電子制御ECUで行っている。そのため、熱量や硫黄含有量の異なるA重油を使用すると、トルク低下・黒煙増大・バルブリセッション(バルブやバルブシートが腐食してしまいバルブが閉じる事が出来なくなる)の原因となり、最終的に内燃機関の寿命を縮める事になる。さらに、冬季における軽油からA重油への切り替えについては、始動性が悪化することもある。

船舶や、定置発電用等のディーゼルエンジンの燃料としては広く用いられている。

2018年(平成30年)頃の日本においては、小型船の多くはA重油を燃料としていたが、燃料消費量の多い大型船は価格の低いC重油を主用していた[1]。しかし、C重油は硫黄分含有率の高いものが多く、船舶の排出ガス中の硫黄酸化物(SOx)による環境汚染が問題視されるようになり、2008年海洋汚染防止条約の改正により、2020年以降、船舶燃料油中の硫黄分濃度を0.5%以下とするよう規制が強化されることとなった(改正前は3.5%以下)[2]。この規制強化への対応策の一つとして、燃料油の低硫黄A重油への転換があり、以後は大型船においてもA重油の採用が増加することとなる[3]

A重油の規格

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  • 引火点:60以上
  • 動粘度(50℃):20cSt(mm2/s)以下
  • 流動点:5℃以下
  • 残留炭素分:質量4%以下
  • 水分:容量0.3%以下
  • 灰分:質量:0.05%以下
  • 硫黄分:質量2.0%以下
  • 非課税
  • クマリンを含むこと

脚注

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  1. ^ 国土交通省海事局海洋・環境政策課 『SOx規制への対応について』 2018年、p.11(2021年9月12日閲覧)
  2. ^ 国土交通省海事局海洋・環境政策課 『SOx規制への対応について』 2018年、p.3(2021年9月12日閲覧)
  3. ^ 国土交通省海事局海洋・環境政策課 『SOx規制への対応について』 2018年、p.3・6・8(2021年9月12日閲覧)

関連項目

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