コンテンツにスキップ

紹巴抄

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

紹巴抄』(しょうはしょう)は、『源氏物語』の注釈書。

概要

[編集]

連歌師里村紹巴により著されたものである。1563年永禄6年)に受けた三条西公条による源氏物語の講釈をまとめたもので、1564年(永禄7年)に作業を始めたが、1565年(永禄8年)春の成立と考えられている[1]。多くの写本が存在するが、書名が異なるだけでなく内容にも異同が多い。江戸時代に入ると源氏物語の注釈書の中では最も早く版本(古活字本や製版本)として刊行されて広く読まれるようになった[2]が、版本の記述には後代の加筆の跡が認められる[3][4][5]

書名

[編集]

本書は、現在は著者の名前を入れ込んだ「紹巴抄」という名称で呼ばれることが多いが、現存する写本によって以下のようにさまざまな書名が付けられている。しかしながらもともとの著者によって付けられた書名は、内題に多く使用されている「源氏物語抄」といったごく一般的な名称であったと思われる[6]

巻別

[編集]

本書は以下のような全20巻20冊からなっている。

  1. 桐壺帚木
  2. 空蝉夕顔
  3. 若紫末摘花
  4. 紅葉賀花宴、(
  5. 賢木花散里須磨
  6. 明石澪標蓬生関屋
  7. 絵合松風薄雲
  8. 朝顔少女
  9. 玉鬘初音胡蝶
  10. 常夏篝火野分行幸藤袴真木柱
  11. 梅枝藤裏葉
  12. ��菜上
  13. 若菜下
  14. 柏木横笛鈴虫
  15. 夕霧御法
  16. 匂宮紅梅竹河
  17. 橋姫椎本総角
  18. 早蕨宿木
  19. 東屋浮舟
  20. 蜻蛉手習夢浮橋

翻刻本

[編集]
  • 稲賀敬二校・解説『翻刻平安文学資料稿 第2期 1 源氏物語紹巴抄 永禄奥書 1-2 』限定版・非売品、広島平安文学研究会 1976年(昭和51年)
  • 稲賀敬二仁尾雅信,岡田八千代校・解説『翻刻平安文学資料稿 第2期 2 源氏物語紹巴抄 永禄奥書 3-4 』限定版・非売品、広島平安文学研究会 1976年(昭和51年)11月
  • 稲賀敬二他校・解説『翻刻平安文学資料稿 第2期 3 源氏物語紹巴抄 永禄奥書 5-6 』限定版・非売品、広島平安文学研究会 1977年(昭和52年)11月
  • 稲賀敬二他校・解説『翻刻平安文学資料稿 第2期 4 源氏物語紹巴抄 永禄奥書 7-8 』限定版・非売品、広島平安文学研究会 1979年(昭和54年)6月
  • 稲賀敬二他校・解説『翻刻平安文学資料稿 第2期 5 源氏物語紹巴抄 永禄奥書 9-10 』限定版・非売品、広島平安文学研究会 1981年(昭和56年)6月
  • 稲賀敬二他校・解説『翻刻平安文学資料稿 第2期 6 源氏物語紹巴抄 永禄奥書 11-12 』限定版・非売品、広島平安文学研究会 1982年(昭和57年)6月
  • 稲賀敬二他校・解説『翻刻平安文学資料稿 第2期 7 源氏物語紹巴抄 永禄奥書 13-14 』限定版・非売品、広島平安文学研究会 1983年(昭和58年)6月
  • 稲賀敬二他校・解説『翻刻平安文学資料稿 第2期 8 源氏物語紹巴抄 永禄奥書 15-16 』限定版・非売品、広島平安文学研究会 1984年(昭和59年)6月
  • 稲賀敬二他校・解説『翻刻平安文学資料稿 第2期 9 源氏物語紹巴抄 永禄奥書 17-18 』限定版・非売品、広島平安文学研究会 1985年(昭和60年)6月
  • 稲賀敬二他校・解説『翻刻平安文学資料稿 第2期 10 源氏物語紹巴抄 永禄奥書 19-20 』限定版・非売品、広島平安文学研究会 1986年(昭和61年)6月
  • 稲賀敬二他校・解説『翻刻平安文学資料稿 第2期 別巻2 源氏物語紹巴抄 永禄奥書 索引編 』限定版・非売品、広島平安文学研究会 1995年(平成7年)

参考文献

[編集]
  • 森正人「紹巴抄に導かれて」徳江元正編『室町芸文論攷』三弥井書店、1991年(平成3年)12月 ISBN 4-8382-3032-X
  • 妹尾好信「広島大学蔵刊本『源氏物語抄(紹巴抄)』とその書き入れについて」広島大学大学院文学研究科編『広島大学大学院文学研究科論集』第63号、広島大学大学院文学研究科、2003年(平成15年)12月、pp. 51-70。

脚注

[編集]
  1. ^ 小川陽子「『源氏物語抄(紹巴抄)』と先行注釈--三条西公条との関わりを中心に」『国文学攷』第202号、広島大学国語国文学会、2009年(平成21年)6月、pp. 33-45。
  2. ^ 小川陽子「『源氏物語抄(紹巴抄)』の展開と享受--猪苗代家の関与を中心に」東京大学国語国文学会編『国語と国文学』第84巻第4号 (通号第1001号)、ぎょうせい、2007年(平成19年)4月、pp. 29-41。
  3. ^ 妹尾好信「『源氏物語抄(紹巴抄)』の古活字本と製版本」広島大学大学院文学研究科編『広島大学大学院文学研究科論集』第64号、広島大学大学院文学研究科、2004年(平成16年)12月、pp. 11-24。
  4. ^ 妹尾好信「『源氏物語抄(紹巴抄)』の古活字本から整版本へ--項目異同から見た改訂の様相」広島大学大学院文学研究科 編『広島大学大学院文学研究科論集』第65号、広島大学大学院文学研究科、2005年(平成17年)12月、pp. 51-70。
  5. ^ 妹尾好信「講釈聞き書きから注釈書へ--『源氏物語抄(紹巴抄)』の写本、古活字本、そして製版本」『国文学攷』第192・193合併号(中世文学・日本語学特集号)、広島大学国語国文学会、2007年(平成19年)3月、pp. 1-9。
  6. ^ 「紹巴抄」伊井春樹編『源氏物語 注釈書・享受史事典』東京堂出版、2001年(平成13年)9月15日、pp.. 407-409。 ISBN 4-490-10591-6