バゲット
バゲット(仏: Baguette、「細い棒」「杖」などの意)は、フランスパンの一種。小麦粉と塩、水、イーストのみで作られるフランスの伝統的なパンであるパン・トラディショネル(仏: pain traditionnel)の一種である。
概要
[編集]パン・トラディショネルは小麦粉、塩、水、イーストのみで作られるパンの総称であるが、棒状のものを指す[1][2](棒状でないものはパン・ファンテジーと呼ばれる[1][2])。棒状であるため、皮(クラスト)の部分の面積が増え、香ばしさも増し、皮のパリパリした食感を楽しむパンでもある[1]。パンの皮ではなく中身(クラム)を食べるパンとしてはパン・ド・ミーがある[1]が、パン・ド・ミーはイギリスから伝わったとされ[3]、砂糖を使用していることが多く、フランスの伝統的な製法によるパンではない。棒状のものであっても太く短くすることで中身の部分を多くしたタイプがある(後述)。
パン・トラディショネル
[編集]パン・トラディショネルは長さ、重さによってそれぞれ名称が異なる[1][2]。
バゲット
[編集]バゲットは「杖」「棒」の意味である[1][2]。重さは350グラム、長さは65センチメートルである[2]。
フランスを代表する食文化の一つであり、首都では1994年から5月にパリ最優秀バゲットコンクールが開かれ、優勝すると一年間、エリゼ宮殿(フランス共和国大統領官邸)御用達を務める[4]。
2018年9月、フランスのパン屋とペイストリー製造の全国連合は、バゲットがユネスコの無形文化遺産に含まれることを望んでいると表明した[5]。フランス国内では、「手工芸技術とバゲットの文化」については、2018年11月23日以降はフランスの無形文化遺産の目録に含まれており、2022年11月30日にユネスコの無形文化遺産に登録された[6][7]。
パリジャン
[編集]パリジャンは「パリっ子」の意味である[1][2]。重さは約650グラム、長さは75センチメートル、クープ(パンの切れ目)は5本が基本である[2]。
かつてはパリで主流のパンだったが、現在はパリでもバゲットが主流である[3]。
パリジャンにハムとバターを挟んだサンドイッチ、ジャンボン・ブール(仏: Jambon-beurre)もパリジャンと呼ばれることがある。
ドゥ・リーヴル
[編集]ドゥ・リーヴル(仏: deux livres)は「2リーブル」の意味で、重量が2リーブル=2×500グラム=1キログラムであることに由来する[8]。
バタール
[編集]バタール(仏: batard)は「中間」の意味である[1][2]。重さは350グラム、長さは40センチメートルである[2]。バゲットよりも太くて短い[9]。
フランス語で「中間」の意味であり、バゲットとドゥ・リーヴルとの中間の太さであることに由来する[10]。
バゲットよりも中身が多いため、食感はよりもちもちとしている[11]。フランスパンの中で日本人に最も好まれている[11]。また、日本においてはバタールをバゲットと呼んでいることも多い[10]。
フルート
[編集]フルート(仏: Flûte)は管楽器のフルートの意味である[2]。重さは約450グラム、長さは60センチメートル[2]。
フィセル
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i 『パンシェルジュ検定 3級公式テキスト』(改訂新版)実業之日本社、2021年、23頁。ISBN 978-4408421124。
- ^ a b c d e f g h i j k 坂本りか『イチバン親切なパンの教科書』(新版)新星出版社、2020年、166頁。ISBN 978-4405093904。
- ^ a b “フランスのパン”. 一般社団法人 日本パン技術研究所. 2024年7月24日閲覧。
- ^ 【ご当地Price】無形文化遺産の仏バゲット、1本130円「大統領御用達」狙い職人競う『日経MJ』2023年1月23日アジア・グローバル面
- ^ La baguette de pain bientôt au patrimoine mondial immatériel de l'Unesco ? フィガロ(2018年9月24日)
- ^ 世界遺産になった「フランスパン」に差し迫る危機 フランスで年間60億本売れでも厳しい現状 The New York Times 東洋経済オンライン(2022年12月2日)2023年2月2日閲覧
- ^ “UNESCO - Artisanal know-how and culture of baguette bread” (英語). ich.unesco.org. 2022年11月30日閲覧。
- ^ RIN (2016年1月14日). “「フランスパン」と「バゲット」の違いって知ってる?”. TABI LABO. 2022年12月5日閲覧。
- ^ ナガタユイ『サンドイッチの発想と組み立て: 世界の定番サンドイッチとその応用』誠文堂新光社、2012年、12頁。ISBN 978-4416812723。
- ^ a b 鈴木理恵子『世界のパンアレンジブック: おいしい・あたらしい・食べてみたい』誠文堂新光社、2013年、20頁。ISBN 978-4416613399。
- ^ a b “バゲットとバタールって何が違うの?覚えておきたいフランスパンの種類と特徴♪”. キナリノ (2019年3月13日). 2022年12月5日閲覧。