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ニューヨーク市地下鉄R160形電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ニューヨーク市地下鉄R160形電車

10両編成のR160A形電車(57丁目駅
10両編成のR160B形電車(39番街駅)
基本情報
製造所 アルストム(R160A)
川崎重工業(R160B)
製造年 2005年 - 2010年
製造数 1,662両(合計)
運用開始 2006年8月17日
主要諸元
編成 4両または5両編成
軌間 1,435(標準軌) mm
電気方式 直流600–650V(第三軌条方式
最高運転速度 90 km/h
起動加速度 4.0 km/h/s
減速度(常用) 4.0 km/h/s
減速度(非常) 5.1 km/h/s
編成定員 2,436人うち着席432人(10両)
1,944人うち着席172人(8両)
全長 18,350 mm
全幅 2,980 mm
全高 3,700 mm
台車 ボルスタ付き軸梁式
主電動機 かご形三相誘導電動機
アルストム製4LCA1640(R160A形全車・R160B形8842以前と9103以降)またはシーメンス製1TB1710-1GA02(R160B形8843-9102)
主電動機出力 110kW(アルストム)
120kW(シーメンス)
駆動方式 WN駆動方式
編成出力 1760kW(4両)
2200kW(5両、アルストム)
2400kW(5両、シーメンス)
制御方式 IGBT素子VVVFインバータ制御
制御装置 アルストム製ONIX 800(R160A形全車・R160B形8842以前と9103以降)
シーメンス製(R160B形8843-9102)
制動装置 電気指令式電磁直通ブレーキ
RT96
保安装置 打子式ATSCBTC
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ニューヨーク市地下鉄R160形電車(ニューヨークしちかてつR160がたでんしゃ)は、ニューヨーク市地下鉄で使用されている通勤形電車である。

この電車は、製造会社の違いにより「R160A形」と「R160B形」の2種類に分けられるが、ほぼ共通なため本稿で一括して取り扱う。

概要

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大型車両の走る「B・ディビジョン」の車両を置き換えるために製造された。フランスアルストムで製造されたR160A形と日本川崎重工業で製造されたR160B形からなるグループである。2019年現在1,662両が在籍し、ニューヨーク市地下鉄の中で最も製造数が多い形式である。このうち4両編成93本(372両)と5両編成126本(630両)の合計1,002両がアルストム製のR160A形、5両編成132本(660両)が川崎重工業製のR160B形となっている。なお、R160A形に関してはさらに細かく分類され、4両編成のものを「R160A-1形」、5両編成のものを「R160A-2形」と呼ぶ。

川崎重工業が参加することになったのは、本系列の仕様がすでに運行していた同社製のR143形車両との互換性を求められたことや、アルストムがNY市地下鉄との取引が初めてであったことによる[1]。なお、アルストムは本社のあるフランスにおいてのステンレス車両の製造を1994年に中止していたため、ステンレス車両の製造設備かつ安価で豊富な労働力を有する同社のブラジルサンパウロ州のラパ工場(かつてのマフェルサの車両工場)において車体を製造することとなった。

2002年に契約が締結され、2005年には両社の試験車両が納入されたあと、2006年から量産車が納入されて、同年8月17日に営業運転を開始した。

車体外観

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R160A形、R160B形ともにステンレス製18.5m級の車両で、片側4つの両開きドアを持つ通勤型の車体である。前面は黒く塗ることで運転席の窓を大きく見せる視覚的な工夫がなされており、上部には走行路線を表すアルファベットや数字を表すLED式の表示器が、下部には衝突事故で衝撃を軽減することを期待してアンチクライマーが装備されている。連結器は、電気連結器付き密着連結器を採用している。落書きを防ぐために、側面には一切の飾り帯が貼られていない編成がほとんどだが、ラッシュ対策を実施した一部の編成は、紺・白・黄色の飾り帯が貼られた。

内装

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紫色のプラスチックのベンチのようなロングシートで構成され、立ち客用として車内に握り棒が設置されているが、つり革は設置されていない。その後、一部のR160A形にて混雑時の座席格納改造を施した車両では、金属製のつり革が装備された。客用案内装置としてLED表示による行き先と次の停車駅を案内する装置が備え付けられている。

R160B形の戸閉装置は富士電機製リニアモーター式が採用されている[2](R160A形は不明)。

運転・走行機器

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電装品はR160A形がアルストム製、R160B形は初期車がアルストム製、後期車がシーメンス製である。台車第三軌条方式対応で集電靴を持ち、R160A形を含めて全車両が川崎重工業製のものを装着する。車番#8396はefWINGの試験車両となっている。

運用

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通常は2編成を連結した8両編成、もしくは10両編成で用いられており、以下の路線で運用されている。

  • 8両編成(R160A-1形) - J,L,MとZの4路線
  • 10両編成
    • R160A-2形 - E,F,G,Rの4路線
    • R160B形 - R160A-2と共通運用。

トラブル

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ニューヨーク市地下鉄からの初受注となったアルストムであるが、量産先行車を納入期限に間に合わせられなかった[3]うえ、量産車についても月に200両から400両を納入できるとしていながら、実際には80両しか納入できなかった。最終的には製造設備を増強して対応したものの、納入完了は予定より7か月遅い2010年4月になった。このため、アルストムは1両1日につき200ドルの違約金をニューヨーク市交通局に支払うことになった。

脚注

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  1. ^ アルストムは本形式以前の1980年代R68形の一部車両の車体の製造を行ったことがあるが、これは従来R68形の車体を製造していた別の企業がアルストムに買収されたことによるものであった。また、R68形の契約はフランスとアメリカ合衆国の企業連合・ウエスティングハウス=アムレイルの名義で行われている。
  2. ^ 鉄道車両用電気駆動式ドアシステム”. 富士電機株式会社. 2024年8月26日閲覧。
  3. ^ 職員の視察で溶接場所の不具合が見つかったため。2005年7月28日付ニューヨーク・タイムズより

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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