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スピコメルス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
スピコメルス
生息年代: 中期ジュラ紀 (バトニアンカロビアン),
~168–164 Ma
ホロタイプのイラスト
ホロタイプのイラスト
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 鳥盤目 Ornithischia
亜目 : 装盾亜目 Thyreophora
下目 : 曲竜下目 Ankylosauria
: スピコメルス属 Spicomellus
学名
Spicomellus
Maidment et al.2021

スピコメルス学名 : Spicomellus、「スパイクの首輪」の意味)は、モロッコエル・メルス層群英語版バトニアン-カロビアン)から発見された、絶滅した原始的な曲竜類恐竜。本属には、癒合した皮骨板を持つ単一肋骨から既知されているスピコメルス・アフェルSpicomellus afer)一のみが含まれる。スピコメルスは、命名された最古の曲竜類である。

発見と命名

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スピコメルスのホロタイプ標本 NHMUK PV R37412 は、モロッコフェズ=メクネス地方ブルマーヌ英語版ブラファ近郊のエル・メルス層群英語版で発見された。標本は後にロンドン自然史博物館ディーラーから譲渡された。標本は、4本の骨化した棘を持つ、1本の肋骨から構成されている。ホロタイプはコンピュータ断層撮影が行われ、組織学的に切断され、曲竜類であることが確認された[1]

2021年、スザンナ・メイドメント英語版らはこれらの化石に基づき、スピコメルス・アファーを新属新種の装盾類曲竜類として記載された。属名Spicomellus は、ラテン語で「スパイク」を意味する "spicus" と「首輪」や「襟」を意味する "mellus" を組み合わせたものである。種小名afer は、ラテン語で「アフリカに生息するもの」を指す[1]

ジュラ紀ローラシア大陸堆積物からは、多種多様な寛脚類が発見されているが、ゴンドワナ大陸の場合の化石は稀である。スピコメルスは、アドラティクリットに続き北アフリカで2番目に記載された寛脚類の分類群である[1][2]

概要

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ホロタイプの保存された皮骨板の棘はに直接癒合しており、これはスピコメルスに特有の特徴であり、他の脊椎動物では知られていなかった。プロトゥベルム英語版キノドン類)やエウスコロスクス英語版偽鰐類)などの先史時代の動物の中には、表面的には類似し、変形した肋骨を持つものもいた。他の既知の曲竜類と異なり、皮骨板は骨と癒合しているのではなく、筋肉組織に埋め込まれていた[1][3]。全長は3 m(メートル)と推定された[4]

分類

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ホロタイプの予備的評価により、研究者らはこの種が剣竜類との関係性があると考えるようになった[3]。メイドメントらは、2021年に記載したスピコメルスの記述内で、スピコメルスを原始的な曲竜類と位置付ける根拠となるいくつかの証拠について論じた。硬骨魚類の中には癒着しているものが存在することから、肋骨が実際には顎の一部である可能性も考えられた。しかし、魚類の歯の重要な構成要素である象牙質の証拠がないため、この分類方法は支持できないと他の研究者らは唱えた。肋骨のT字型の断面に基づき、スピコメルスは寛脚類に分類されると考えられた。さらに、皮骨板の構造繊維は合板のような配置で絡み合っており、これは曲竜類では見られるが、他の装盾類では見られなかった[1]

スピコメルスは、現在世界中で命名されている曲竜類の内、最古のものとして既知されている。また、同様の時代の曲竜類はほとんど知られていない。下顎の一部が発見されたサルコレステス英語版は、イングランドオックスフォード粘土層英語版で発見され、カロビアンに遡る[1]スコットランドスカイ島バッジョシアンベアレレイグ砂岩層英語版から発見された未命名の装盾類はスピコメルスよりも最古である可能性があるが、これらの断片的な化石が剣竜類のものか曲竜類のものかは不明である[5]

古生態学

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スピコメルスは、モロッコのエル・メルス層群英語版から知られている。これは中期ジュラ紀にはゴンドワナ大陸の一部であったと考えられている。スピコメルスは、竜脚類"ケティオサウルス"・モグレビエンシス剣竜類アドラティクリットティレオサウルス英語版と共存していた[2][6]。この生態系捕食者は、不確定な獣脚類(おそらくメガロサウルス科)で構成されていた[7]。竜脚類のアトラサウルスも、同時代のゲティワ層英語版から発見されたことが知られている[8]

スピコメルスの発見は、2つの主要な装盾類(曲竜類と剣竜類)が2000万年以上共存していたことを示し、前期白亜紀の剣竜類の絶滅は、当時の曲竜類の多様性の増加以外の理由で起こった可能性があることを示唆している[1]

この地域の堆積学地層学を記載した著者らによる研究では、大陸の混合砕屑岩蒸発岩炭酸塩岩を含む浅海堆積環境が示唆された[2]

脚注

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  1. ^ a b c d e f g Maidment, Susannah C. R.; Strachan, Sarah J.; Ouarhache, Driss; Scheyer, Torsten M.; Brown, Emily E.; Fernandez, Vincent; Johanson, Zerina; Raven, Thomas J. et al. (2021-09-23). “Bizarre dermal armour suggests the first African ankylosaur” (英語). Nature Ecology & Evolution 5 (12): 1576–1581. Bibcode2021NatEE...5.1576M. doi:10.1038/s41559-021-01553-6. ISSN 2397-334X. PMID 34556830. https://www.nature.com/articles/s41559-021-01553-6. 
  2. ^ a b c Maidment, Susannah C. R.; Raven, Thomas J.; Ouarhache, Driss; Barrett, Paul M. (2020). “North Africa's first stegosaur: Implications for Gondwanan thyreophoran dinosaur diversity”. Gondwana Research 77: 82–97. Bibcode2020GondR..77...82M. doi:10.1016/j.gr.2019.07.007. hdl:10141/622706. ISSN 1342-937X. 
  3. ^ a b Davis, Josh (September 23, 2021). “New species of dinosaur had armour unlike anything seen before”. Natural History Museum. September 23, 2021閲覧。
  4. ^ 橋本千絵 編『講談社の動く図鑑MOVE 恐竜2 最新研究 新訂版』小林快次 監修、講談社、2023年、4頁。ISBN 978-4-06-532918-4 
  5. ^ Clark, N. D. L. (2001). “A thyreophoran dinosaur from the Early Bajocian (Middle Jurassic) of the Isle of Skye, Scotland”. Scottish Journal of Geology 37 (1): 19–26. Bibcode2001ScJG...37...19C. doi:10.1144/sjg37010019. 
  6. ^ Zafaty, O.; Oukassou, M.; Riguetti, F.; Company, J.; Bendrioua, S.; Tabuce, R.; Charrière, A.; Pereda-Suberbiola, X. (2024). “A new stegosaurian dinosaur (Ornithischia: Thyreophora) with a remarkable dermal armour from the Middle Jurassic of North Africa”. Gondwana Research 131: 344–362. Bibcode2024GondR.131..344Z. doi:10.1016/j.gr.2024.03.009. 
  7. ^ J. Jenny, A. Le Marrec, and M. Monbaron. (1981). Les empreintes de pas de dinosauriens dans le Jurassique moyen du Haut Atlas central (Maroc): nouveaux gisements et precisions stratigraphiques. Geobos. 14(3):427-431
  8. ^ M. Monbaron, D. A. Russell, and P. Taquet. (1999). Atlasaurus imelakei n.g., n.sp., a brachiosaurid-like sauropod from the Middle Jurassic of Morocco. Comptes Rendus de l'Académie des Sciences à Paris, Sciences de la Terre et des Planètes 329:519-526.