オール・アイズ・オン・ミー (映画)
オール・アイズ・オン・ミー | |
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All Eyez on Me | |
監督 | ベニー・ブーム |
脚本 |
ジェレミー・ハフト エディ・ゴンザレス スティーヴン・バガトリアン |
製作 |
デヴィッド・ロビンソン L・T・ハットン ジェームズ・G・ロビンソン |
製作総指揮 |
ウェイン・モリス アフェニ・シャクール |
出演者 |
ディミートリアス・シップ・Jr ダナイ・グリラ ローレン・コーハン ジェイミー・ヘクター |
音楽 | ジョン・パエザーノ |
撮影 | ピーター・メンジース・ジュニア |
編集 | ジョエル・コックス |
製作会社 |
モーガン・クリーク・プロダクションズ プログラム・ピクチャーズ コードブラック・フィルムズ |
配給 |
サミット・エンターテインメント パルコ/REGENTS |
公開 |
2017年6月16日 2017年12月29日 |
上映時間 | 137分[1] |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
製作費 | $40,000,000[2] |
興行収入 | $54,876,855[3] |
『オール・アイズ・オン・ミー』(All Eyez on Me)は2017年にアメリカ合衆国で公開された伝記映画である。監督はベニー・ブーム、主演はディミートリアス・シップ・Jrが務めた。1996年に25歳で亡くなったラッパー、2パックの生涯を描いている。なお、本作のタイトルは2パックの同名アルバムに由来するものである。
本作の日本語字幕は額賀深雪が担当している[4]。字幕監修は丸屋九兵衛。
ストーリー
[編集]1995年、2パックことトゥパック・シャクールはドキュメンタリー作家を前に自分の半生を語っていた。
1971年、トゥパックの母親であるアフェニ・シャクールが刑務所から出所した。アフェニはブラックパンサー党に所属しており、その活動の中でいくつかの法律違反を犯したのであった。妊娠が判明した後も、アフェニは活動を控えるようなことはせず、積極的に社会の不公正を告発していた。
そんな母親の元で育ったトゥパックは黒人としての誇りを教えられ、様々な差別を目撃することになった。養父のミュートゥルも革新的な考えの持ち主であり、アメリカ社会が如何に抑圧的であるかをトゥパックに語り聞かせた。ミュートゥルはFBIから殺人容疑等で指名手配を受けており、ある暴動の最中に逮捕されてしまった。そのとき、トゥパックと妹は警官から暴力的な扱いを受けた。
成長するにつれて、トゥパックは母親の考えと距離を置くようになった。そして、彼はボルチモアにある美術学校に進学し、そこでジェイダ・ピンケットと友達になった。
ヒップホップグループ、デジタル・アンダーグラウンドに参加したトゥパックは歌手としての才能を発揮し始め、「Same Song」がヒットする。バンドのマネージャーであったレイラ・ステインバーグの指導の下、トゥパックはヒップホップをメインにしたアルバムの製作を始めた。彼の音楽は人々に愛されたが、その過激な歌詞が原因で音楽会社と対立してしまった。トゥパックは「この歌詞は貧民街の現実を描いたものであり、誰も貧者を助けようとはしない現実を表現した」と主張したが、音楽会社との溝は深まるばかりであった。
トゥパックは『ジュース』で俳優としての活動も始めた。ラップミュージックを通して黒人差別の深刻さを描き出した同作は高い評価を受け、トゥパックの演技も好評だった。彼は貧しい黒人たちへの寄付を惜しむことがなかった。そんなある日、トゥパックは信号無視を注意した警官と口論になった。別の日には、黒人に暴力を振るった白人2人を警察に付き出そうとしたが、男の一人がトゥパックに向かって発砲した。身の危険を感じたトゥパックは自分のリムジンから拳銃を取り出した。その2人は警察官であったため、トゥパックは2人を銃撃した容疑で逮捕されてしまった。
その後のトゥパックの人生も波瀾に満ちたものであったが、その中でヒップホップ史に残る数々の名曲を生み出していくのであった。
キャスト
[編集]※括弧内は日本語吹替。
- ディミートリアス・シップ・Jr - トゥパック・シャクール(2パック)(奈良徹)
- ダナイ・グリラ - アフェニ・シャクール(吉田麻実)
- ローレン・コーハン - レイラ・ステインバーグ
- ジェイミー・ヘクター - ミュートゥル・シャクール
- アニー・イロンゼ - キダダ・ジョーンズ
- ジャマール・ウーラード - ノトーリアス・B.I.G.(露崎亘)
- カテリーナ・グレアム - ジェイダ・ピンケット(安國愛菜)
- ドミニク・L・サンタナ - シュグ・ナイト(谷内健)
- グレイス・ギブソン - フェイス・エヴァンス
- ライアン・アマド - アンジー・マルチネス
- ステフトン・ワシントン - ショーン・コムズ
- クリス・クラーク - ショックG(坂田明寛)
- マネー-B - 本人
- クリフトン・パウエル - フロイド
- ジョネル・ヤング - レイ・ルヴ
- ジャーメル・ハワード - モプリーム・シャクール
- アザド・アルノー - ダズ・ディリンガー
- ジャレット・エリス - スヌープ・ドッグ(上住谷崇)
- キース・ロビンソン - アトロン・グレゴリー
- ラヤン・ローレンス - トリーチ
- ジェームズ・ハッター3世 - ヤキ・カダフィ
- ジャーメイン・カーター - フセイン・ファタール
- E.D.I.ミーン - 本人
- ヤング・ノーブル - 本人
- デレイ・デイヴィス - レッグス
- ハロルド・ハウス・ムーア - ドクター・ドレー(藤翔平)
- ヒル・ハーパー - ジャーナリスト
- コリー・ハーディクト - ハイチアン・ジャック(ナイジェル)
- フィル・アルミホ - ジョニー・J
製作
[編集]構想
[編集]2011年2月10日、モーガン・クリーク・プロダクションズが2パックの伝記映画『Tupac』を製作しており、アントワーン・フークアに監督のオファーが出ているとの報道があった[5]。同作には4500万ドルの製作費が投じられ、夏には撮影が開始されると報じられていた[6]。しかし、その後しばらく製作は進展しなかった。2014年2月12日、ジョン・シングルトンが監督に起用され、脚本のリライトも行う予定だと報じられた[7]。4月16日、オープン・ロード・フィルムズが本作の全米配給権を購入したと発表した[8]。2015年4月7日、製作サイドとの見解の相違を理由にシングルトンが監督を降板し、その代役としてカール・フランクリンの起用が検討されているとの報道があった[9]。10月28日、エメット/フーラ/オアシス・プロダクションが契約違反を理由にモーガン・クリーク・プロダクションズを訴えた[10]。
キャスティング
[編集]2015年11月30日、ベニー・ブームが本作の監督に起用されたと報じられた[11]。12月上旬、本作のタイトルが『Tupac』から『All Eyez On Me』に変更された[12]。24日、ディミートリアス・シップ・Jrが2パック役に起用され、ジャマール・ウーラードがノトーリアス・B.I.G.役に起用された。なお、ウーラードがノトーリアス・B.I.G.を演じるのは本作が2度目である[13][14]。2016年1月11日、ダナイ・グリラの出演が決まったと報じられた[15]。12日、カテリーナ・グレアムが本作でジェイダ・ピンケットを演じることになったとの報道があった[16]。同じ日には、ドミニク・L・サンタナの出演も決まった[17]。
13日、ジェイミー・ヘクターが本作に出演することになったと報じられた[18]。15日、ローレン・コーハンがレイラ・ステインバーグ役に起用されたとの報道があった[19]。18日、マネー-Bが本人役で出演すると報じられた[20]。19日、グレイス・ギブソンがフェイス・エヴァンスを演じることになったと報じられた[21]。22日、クリフトン・パウエルとジョネル・ヤング、キース・ロビンソンの出演が決まった[22][23]。2月、アニー・イロンゼが本作に出演するとの報道があった[24]。
撮影
[編集]本作の主要撮影は2015年12月中旬にジョージア州アトランタで始まり[25]、翌年4月12日に終了した[26]。
マーケティング
[編集]2016年6月16日、2パックの45回目の誕生日に本作のファースト・トレイラーが公開された[27]。9月13日、2パックの20回目の命日にセカンド・トレイラーが公開された[28]。2017年2月10日、本作のサード・トレイラーが公開された[29]。
興行収入
[編集]本作は『カーズ/クロスロード』、『海底47m』、『ラフ・ナイト 史上最悪!?の独身さよならパーティー』と同じ週に公開され、公開初週末に1700万ドルから200万ドルを稼ぎ出すと予想されていたが、実際の数字はそれを上回るものであった[30]。2017年6月16日、本作は全米2471館で封切られ、公開初週末に2643万ドルを稼ぎだし、週末興行収入ランキング初登場3位となった[31]。Deadline.comは本作が興行的成功を収めたのは、トゥパックの誕生日に封切られたことと『ストレイト・アウタ・コンプトン』(2015年)の成功でアフリカ系アメリカ人のミュージシャンに対する関心が高まったからだと分析している[2]。しかし、公開2週目には1週目の22%(580万ドル)しか稼ぎ出せなかった[32]。
評価
[編集]批評家からの評価
[編集]本作は批評家から酷評されている。映画批評集積サイトのRotten Tomatoesには80件のレビューがあり、批評家支持率は18%、平均点は10点満点で4.3点となっている。サイト側による批評家の見解の要約は「主演を務めたディミートリアス・シップ・Jrの素晴らしい演技にも拘わらず、『オール・アイズ・オン・ミー』は真に偉大な人物の生涯を表面的になぞっただけの伝記映画になっている。」となっている[33]。また、Metacriticには21件のレビューがあり、加重平均値は38/100となっている[34]。なお、本作のCinemaScoreはA-となっている[2]。
当事者からの評価
[編集]ジェイダ・ピンケット=スミスは自身のTwitterでトゥパックと自身���関係に関する描写に不正確な点が多くあると指摘した。ピンケット=スミスは「トゥパックが私に詩を聞かせてくれたことなんてない。彼の死後に詩集が出版されるまで、詩に関心を持っていたことすら知らなかった。」「トゥパックのライブに参加したことはないし、ましてやバックステージで口論になったこともない。」と述べる一方で、シップとグレアムの演技は高く評価している[35]。ショーン・コムズとシュグ・ナイトは本作の出来映えを称賛しており、自分たちを演じた俳優にも賛辞を送っている[36]。
出典
[編集]- ^ “オール・アイズ・オン・ミー”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ a b c “‘Cars 3’ $53M+ Is 3rd Best For Pixar Series; ‘Wonder Woman’ Wows With $40M+; ‘All Eyez On Me’ Solid – Sunday AM Postmortem”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “All Eyez on Me (2016)”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “『オール・アイズ・オン・ミー』公式サイト”. 2017年12月12日閲覧。
- ^ “Morgan Creek’s ‘Tupac’ Biopic to Begin Shooting This Summer”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Tupac Shakur Biopic Gets New Momentum As Emmett/Furla/Oasis To Co-Finance”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “John Singleton Back as Director for Tupac Shakur Biopic (EXCLUSIVE)”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Open Road Acquires U.S. On ‘Tupac’, John Singleton-Directed Pic On Hip-Hop Icon”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Carl Franklin to Replace Director John Singleton on Tupac Biopic”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Tupac Biopic Producer Brings $10M Lawsuit Over Secret Star Casting”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Tupac Biopic Finds New Director (Exclusive)”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Filming Set To Begin On Tupac Shakur Biopic ‘All Eyez On Me,’ Benny Boom Confirmed To Direct”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Tupac Biopic Casts Lead Roles for Shakur, Biggie Smalls”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Newcomer Demetrius Shipp Jr. Cast As Tupac As Biopic Begins Filming”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “‘Walking Dead’s Danai Gurira Set To Play Tupac’s Mom Afeni Shakur In ‘All Eyez On Me’”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Kat Graham Joins Tupac Movie, Portraying Jada Pinkett Smith (EXCLUSIVE)”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Dominic L. Santana is Suge Knight in Tupac Biopic ‘All Eyez On Me’”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Jamie Hector Joins Tupac Biopic ‘All Eyez On Me’”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Lauren Cohan Steps Into Key Role In Tupac Shakur Biopic ‘All Eyez On Me’”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Guess Which Digital Underground Member Will Be Appearing As Himself In The Upcoming Tupac Biopic?”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Grace Gibson Cast as Faith Evans in Tupac Shakur Biopic ‘All Eyez on Me’”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Tupac "All Eyez On Me" Biopic Casts Two More Roles”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Trevor Donovan Joins JL Ranch; Keith Robinson Is All Bout ‘All Eyez On Me’”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Annie Ilonzeh Cast to Play Kidada Jones in Morgan Creek’s Tupac Shakur Biopic”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Tupac Biopic Begins Filming”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “'All Eyez on Me' Tupac Shakur Movie Wrapped Filming in Vegas”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “His spirit lives.”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Tupac Biopic: New ‘All Eyez On Me’ Trailer Released On ‘Dear Mama’ Rapper’s 20-Year Death Anniversary”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “All Eyez on Me Trailer #3 (2017) Tupac Biopic Movie HD”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Pixar's 'Cars 3' should unseat 'Wonder Woman' at the box office”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “June 16-18, 2017”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “June 23-25, 2017”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “All Eyez on Me”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “All Eyez on Me (2017)”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Jada Pinkett Smith shares her truth about Tupac, disputes 'All Eyez on Me'”. 2017年12月9日閲覧。
- ^ “Diddy and Suge Knight Approve of Tupac Shakur Movie ‘All Eyez on Me’”. 2017年12月9日閲覧。