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アフリカ (サン=サーンス)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

幻想曲「アフリカ」(Africa, Fantaisie pour Piano et Orchestre)作品89は、カミーユ・サン=サーンスが作曲したピアノ管弦楽、あるいはピアノ独奏のための幻想曲。「アフリカ幻想曲」とも表記される。

概要

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1889年カディスでスケッチが始まり、1891年4月にカイロで書き上げられた[1][注 1]。度々の旅行を通じて北アフリカの事物を好んでいたサン=サーンスが、ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」や「アルジェリア組曲」などと同様にこの地方を題材にした作品の一つである。

総譜1892年に出版、それに先立って1891年に、共に作曲者自身による2台ピアノ版とピアノ独奏版が出版されている。ロジェ=ミクロ夫人カタルーニャ語版に献呈され、彼女の独奏とエドゥアール・コロンヌの指揮で1891年10月25日コンセール・シャトレの演奏会で初演された[1]

豊かな色彩感を持ち、独奏の華やかな技巧が発揮される作品であり、サン=サーンスの死の直後である1923年に出版された伝記では、彼がピアノと管弦楽のために書いた作品の中でも特に人気があるものと記されている[3]が、現代では他の協奏的作品同様、演奏機会はあまり多くない[4]1893年、サン=サーンスがケンブリッジ大学名誉博士号を授与された際の記念演奏会ではサン=サーンス���独奏でこの作品が演奏され[5]1904年にサン=サーンスが複数の自作をピアノ独奏で録音した際にも取り上げられている。

楽器編成

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独奏ピアノフルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、コルネット2、トロンボーン3、ティンパニトライアングルシンバル弦五部

構成

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単一楽章で、演奏時間は10分程度。大きく二つの部分に分かれ[2]、様々な旋律がポプリ風に並列される[4]

ト短調、6/8拍子を基調とする前半は、シンコペーションが特徴的な[4]主題(譜例1)で始まり、この主題を中心に、独奏がテンポを落として歌う旋律(譜例2)などいくつかのエピソードを交えて進んでいく。

譜例1

\new Staff \relative c''{\key g \minor \time 6/8 \partial 4 \set Score.tempoHideNote = ##t \tempo "Molto Allegro" 4.=120 g8-.\mf^\markup{\smaller \center-align (Ob.)} bes-. cis-. r d ~ d r es ~ es d-. cis-. d-. g,-. bes-. cis-. r d ~ d r es ~ es d-. cis-.}

譜例2

\new Staff \relative c'{\key es \major \time 3/4 \set Score.tempoHideNote = ##t \tempo "" 4=112 bes4\mf^\markup{\column {\line {\center-align \bold \concat{And \super te espressivo}} \line {\smaller \right-align (Pf.)}}}(es8 f es f) g( as bes4) g8( as) g4( as) f8( g) es( f g4 es) bes}

後半はト長調、2/4拍子を基調とし、練習曲Op.52-3などでも見られる[2]独奏の軽快なパッセージ(譜例3)で始まる。総奏で現れる力強い主題(譜例4)は、チュニジアの民謡から取られたものである[4]。これらが展開・再現され、前半の主題も回帰し、ト長調で華々しく終わる。

譜例3

\new Staff \relative c'''{\key g \major \time 2/4 \set Score.tempoHideNote = ##t \tempo "" 4=126 \stemUp <b d>16_\markup{\center-align \dynamic p \italic scherzando}^\markup{\smaller \center-align (Pf.)}[ q q] \once \stemDown <ais cis> <b d>[ q q] \once \stemDown <b, d> <c e>[ q q] \once \stemDown <b dis> <c e>[ q q] \once \stemDown <e, g> <d fis>[ q q] \once \stemDown <e g> <fis a>[ q q] \once \stemDown <a c> <g b>[ q q] \once \stemDown <a c> <b d>[ q q] \once \stemDown <fis a>  }


譜例4

\new Staff \relative c'''{\key g \major \time 2/4 \set Score.tempoHideNote = ##t \tempo "" 4=126 a8._\markup{\dynamic \center-align f}^\markup{\smaller \center-align {(Vn. Ww.)}}( g16) fis8.( g16) a2 bes16( a g fis g fis g a) bes2 a8( g16 fis) g8( fis16 es) fis8( es16 d) es8( d16 c) d( c bes c) d4}

注釈

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  1. ^ 1888年の母親の死に打撃を受けたサン=サーンスは以前に増してパリを離れていることが多かった。1890年の冬には東方へ足を伸ばし、セイロンに3ヶ月近く滞在している[2]

出典

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  1. ^ a b Ratner, Sabina Teller (2002). Camille Saint-Saëns, 1835-1921: A Thematic Catalogue of His Complete Works, Vol.1. Oxford University Press. pp. 392-394 
  2. ^ a b c Rees, Brian (1999). Saint-Saëns: A Life. Chatto & Windus. pp. 290-291 
  3. ^ Lyle, Watson (1923, rpt. 1970). Camille Saint-Saens: His Life and Art. Greenwood Press. pp. 36-37 
  4. ^ a b c d Borg-Wheeler, Philip (2001). Camille Saint-Saëns: The complete works for piano and orchestra (PDF) (CD). Stephen Hough, City of Birmingham Symphony Orchestra, Sakari Oramo. Hyperion. p. 8. CDA67331/2。
  5. ^ Fifield, Christopher (1988). Max Bruch: His Life and Works. George Braziller. pp. 248-249 

外部リンク

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