あの日
あの日 | ||
---|---|---|
著者 | 小保方晴子 | |
発行日 | 2016年1月28日 | |
発行元 | 講談社 | |
ジャンル | 私小説 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 四六判 | |
ページ数 | 256 | |
コード | ISBN 978-4-06-220012-7 | |
ウィキポータル 書物 | ||
|
『あの日』(あのひ)は、2016年1月28日に刊行された、小保方晴子によるSTAP細胞事件の手記。自殺者も出した大事件の中心人物であった自らの視点から状況を記述し、大きな反響を呼んだ[1][2][3][4]。ベストセラーとなった。
内容
[編集]院生時代
[編集]本書に書かれた、小保方のハーバード大学留学が決まる直前の四谷の天ぷら屋での会食のエピソード[5]は、大学のコンプライアンス上問題があると幾つかのメディアで話題になった[6]。東京女子医大側の指導教官の大和雅之が小保方を「はるさん」と愛称で呼んだり、大和に勧められるままに酒を飲んだ小保方が酔って寝てしまったことが問題視された。しかし、この会食には他の複数の女子学生も同席しており、酒を飲めない彼女らに代わって小保方が座持ちのために自分の意志で飲酒したことは、本書に記述されていたにもかかわらず触れられなかった。また、愛称で呼ぶことをセクハラ的であるとしたメディアがあったが、セクハラ概念の起源であるアメリカ合衆国では男女を問わず上司や教授に対してさえもファーストネームやニックネームで呼ぶことは習慣であり[7][信頼性要検証]、大和は年長の男性チャールズ・バカンティをも「チャック」と愛称で呼ぶことが本人のtwitterで確認されている[8][信頼性要検証]。
博士論文の問題について
[編集]序論部分の剽窃(いわゆるコピペ)を指摘された博士論文は、草稿段階の論文が誤って国会図書館に収められたものであったと弁解している。武岡真司が審査した決定稿とコピペ疑惑報道で注目された国会図書館所収の論文は違うということが、武岡および常田聡の発言を引用して主張される[9][注釈 1]。
ES細胞の混入について
[編集]『ネイチャー』誌へのSTAP論文の撤回理由書が共著者たちによる合意サインが交わされた後に若山照彦の依頼によって書き換えられたこと[10][注釈 2]、若山が「STAP幹細胞は自分の研究室にはいなかったマウスからできた細胞だった」と発表した後にその肝細胞が若山研にいたアクロシンGFPマウス(光る精子を持つ特殊なマウス)由来であると報告された(しかも若山は小保方の記憶の範囲内で既に光る精子を取り扱っていた)こと[11]などが告白される。
再現実験の成否について
[編集]疑惑発生後に検証として行われた再現実験について、キメラマウスの作製が実験成功の基準と定められてしまったために再現に成功しなかったと結論されたが、STAP現象と呼ばれる、刺激による多能性遺伝子の発現は小保方自身によっても丹羽仁史によっても再現されたと書かれた[12]。
これに対し、報告書によると「(小保方の再現実験で多能性遺伝子発現の証明となる緑色蛍光について)確かに光ってはいたが、自家蛍光なのか、多能性獲得の証拠である緑色蛍光なのか区別できなかった」し、「丹羽氏の再現実験についても、『多能性細胞の出現は確認できなかった』と報告されています」と発言している[13]。後者については、丹羽本人の証言について裏付けられる[注釈 3]。
人権侵害が指摘された過熱する報道について
[編集]STAP騒動が過熱する中、STAP問題を取り上げた日本放送協会(NHK)の報道番組『NHKスペシャル』『調査報告 STAP細胞 不正の深層』が、後に放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会により小保方晴子に対して「名誉毀損の人権侵害が認められる」、また報道姿勢としても「放送倫理上の問題があった」として勧告されることになる[14][15][16]。本書においては小保方による視点ではあるが、日本放送協会(NHK)などのメディアがどのような取材活動や報道を行っていたのかの多数の興味深い記述なども綴られている。毎日新聞の須田桃子からは殺意を感じたとも記述された[17]。
反響
[編集]出版当日と前後して、いくつかのワイドショーで本書が取り上げられた[18]。
初版5万部だったがすぐに15万部の増刷がかかったという[1]。Amazon.co.jpの売り上げでも1位となったと報じられた[19]、発売1か月以内で26万部を超えたと報じられた[20]。アマゾンレビューにも賛否両論のコメントを含め、大きな反響があった[2]。
元外務官僚で作家の佐藤優は、自らの専門であるインテリジェンスの観点から、印象操作や脅迫がなされていると評し、前年話題の書『絶歌』と比較考察した[21]。
自殺をした小保方の上司笹井芳樹の妻であった未亡人は、小保方の本は読んでいないとした上で、STAP細胞が本当はあるというのであれば筆頭著者は小説を書く前に実験をしてほしいと述べた[22]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 本書・第八章「ハシゴは外された」152頁 3行目末から、「常田先生から電話があり、「武岡先生がこの博士論文は自分が審査したものとは違うものだと言っている」と聞かされ…」とある。
- ^ 撤回理由が変更された経緯は、「STAP幹細胞はどこから」『日経サイエンス』2014年9月号、54-61頁 に詳しい。
- ^ 池田宏之 (2014年8月28日). “医療維新 STAP検証「22回実施も、現時点でない」 理研が中間報告、多能性示す遺伝子発現、未確認”. m3.com(記事より抜粋) 理研の実証実験研究実施責任者の丹羽仁史氏は、現在までに、STAP細胞を示す蛍光が見られないことを明かした。(中略)多能性を発現している場合、「緑色フィルターでは観察でき、赤色フィルターでは観察できない」となるが、実験で得られた細胞塊は、両方の色のフィルターで蛍光が観察できた。丹羽氏は、「(多能性発現を示す)特異的な蛍光とは言えない。自家蛍光ではないか。現時点で、STAP細胞は得られていない」とした(ただし、この実験は「小保方氏からのアドバイスを考慮していない状態」で行われたという)。
出典
[編集]- ^ a b 齋藤愼爾「ブックハンティング2016 あの日 小保方晴子著」、『出版ニュース』2408号、2016年3月下旬号、32-33頁。
- ^ a b 小谷野敦「氷雲篩雪50 小保方晴子『あの日』とマスコミ」、『出版ニュース』2408号、2016年3月下旬号、22-23頁。
- ^ 瀬戸内寂聴、小保方晴子「〈STAP騒動から2年〉小保方さん、あなたは必ず蘇ります」、『婦人公論』第1449号、2016年6月14日号、76-82頁。
- ^ 佐藤優、緑慎也「◎ベストセラー手記に騙されるな 小保方晴子は錬金術師である」、『文藝春秋』2016年4月号
- ^ 本書28頁
- ^ 『週刊文春』2月11日号・佐藤優『「 小保方手記は元少年Aの『絶歌』と同じだ」』、およびサイゾーウーマン「“はるさん、帰るよ!”.小保方晴子氏の『あの日』は男性研究者のセクハラ告発本だった!? 関係者が分析」
- ^ ヒューマン国際大学機構HP
- ^ [1]、[2]
- ^ 本書・第八章
- ^ 本書・第十一章「論文撤回」196頁
- ^ 本書・第十二章「仕組まれたES細胞混入ストーリー」208頁
- ^ 本書・第十四章「戦えなかった、戦う術もなかった」238頁
- ^ 週刊文春2016年2月11日号
- ^ 「STAP細胞報道に対する申立て」に関する委員会決定 放送人権委員会 委員会決定 2016年度 第62号
- ^ 「STAP細胞報道に対する申立て」―勧 告―(全文) 2017年(平成29年)2月10日 放送人権委員会決定 第62号
- ^ NHKスペシャル「小保方氏への人権侵害」 BPO勧告 朝日新聞デジタル 2017年2月10日付
- ^ “小保方氏手記 捏造の有無より報道被害訴えたかったのか”. NEWSポストセブン (2016年2月2日). 2022年11月23日閲覧。
- ^ “〈今週のワイドショー〉小保方晴子「あの日」反撃手記!たちまち売り切れ…中高年男性が購入”. J-castテレビウォッチ. (2016年1月30日) 2016年5月25日閲覧。
- ^ “小保方氏の手記「あの日」アマゾン売れ筋ランキング1位 印税収入700万円か”. 東スポWEB. (2016年1月28日) 2016年5月25日閲覧。
- ^ 雑誌の新聞・「週刊現代」3月12日号について
- ^ 『週刊文春』の記事「 小保方手記は元少年Aの『絶歌』と同じだ」
- ^ “(2ページ目)「STAP細胞はありましたか」小保方女史へ笹井未亡人からの代表質問”. デイリー新潮. 2022年11月22日閲覧。
外部リンク
[編集]- あの日 著:小保方晴子 - 講談社BOOKクラブ