HyperCard
作者 | ビル・アトキンソン |
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開発元 | Apple (旧:Apple Computer) |
初版 | 1987年[1] |
最終版 |
2.4.1
/ 1998年 |
プログラミング 言語 | Apple Pascal |
対応OS |
Macintosh: System 6, System 7, Mac OS 8, Mac OS 9 Apple IIGS: Apple GS/OS 5 ~ 6 |
プラットフォーム | Macintosh, Apple IIGS |
種別 | ハイパーメディア, ソフトウェア開発 |
ライセンス | プロプライエタリ |
HyperCard(ハイパーカード)は、ハイパーテキストを実現した最初の商用ソフトウェア。1987年にApple Computer(現:Apple)のビル・アトキンソンが開発した[2]。Macintosh (Classic Mac OS) で動作し、ゲームの制作、簡単なプログラムの開発等に��用される。
概要
[編集]ハイパーテキストのノードとしてカードを用い、カードとカードをつなぐリンクとしてはボタンを用いる。カードの上にはボタンの他にテキストやグラフィックをおくことができた。プログラムを記述するにはHyperTalkと呼ばれるスクリプト言語を用いる。
ボタンを押すと各ボタンに対応付けられたカードにジャンプするか、HyperTalkで記述されたプログラムを実行する。HyperCardを使えばプログラムを直接記述しなくても簡単なアプリケーションを作ることができたので、マルチメディアオーサリングツールとして使用された。
アドベンチャーゲーム『MYST』の最初のバージョンはこのHyperCardを使って制作された。この他にHyperCardで制作されたものとして、ベートーベンの交響曲第9番CD-ROM、全地球カタログの初期バージョン、Wizzy Active Lifestyle Telephoneのプロトタイプなどがある。
バージョン 1.x ではMacintoshに標準添付され、オーサリングを含む全機能が無償で利用できた。
しかし、バージョン2.0以降になって、オーサリングツールとして使えるHyperCardは有償、ファイルを実行する機能のみのHyperCard Liteは無償配布という形になった。一般にこれら両方を総称して「HyperCard」と呼ぶことが多い。実際はLiteもコマンド「magic」によってオーサリング可能となる。ただし、バージョン2.3になってLiteに代わりバンドルされるようになったHyperCard Playerは、完全にオーサリング機能が除去されていた。最終バージョンは 2.4.1。2007年10月現在でも日本のAppleのサイトでLite 2.2-J、Player J1-2.3がダウンロード可能。
バージョン 3.0はQuickTimeのコンポーネントの一部として開発が行われていたが、途中で打ち切られたため、現在は搭載されていない。その後、QuickTimeはHyperCardの統合で実装が予定されていた機能の代わりにFlashファイルをサポートした。
ジョブズ復帰後の2000年にハイパーカードチームは完全に解体され、今後もAppleがなんらかのアクションを起こす可能性はほぼないとみられている。ちなみにAppleのサーバで http://www.apple.com/hypercard と入力すると、何かの皮肉なのか英語版Wikipediaの記事にリダイレクトされる。
アトキンソンが「HyperCardをすべてのMacにバンドルしなければ会社を辞める」と主張し、すべてのMacにバンドルされることになったという話は非常に有名であるが、これは本人によって否定されている[要出典]。
2017年、HyperCard 30周年を記念し、インターネットアーカイブによってHyperCardスタックをアップロードしエミュレートできるプロジェクトが設立された[3]。
評価
[編集]- Compute!には、1988年に「HyperCardは、人々がパーソナルコンピュータとしてMacintoshを選択するきっかけになるかもしれない」[4]、1989年には「将来のほとんどのMacintoshのソフトウェアはHyperCardを用いて開発されるだろう」[5]と書かれた。
- Stewart Alsop IIは、HyperCardがMacintoshのグラフィカルユーザインタフェースとしてFinderを置き換える可能性があると推測した[6]。
- スティーブ・ウォズニアックは、HyperCardを「これまでで最高のプログラム」と呼んでいる[7]。
HyperCardによって生まれた言葉
[編集]- HyperCardで、カードやボタンなどを積み重ねて制作したファイルのことを「スタック」と呼ぶ。スタックという言葉はしばしば「作品」というニュアンスで扱われ、作者はプログラマーやデザイナーでなく、敬意を込めて「スタック作家」と称されることすらあった[8][9]。HyperCardはそのような意味で、紛れもなくMacintosh文化の一翼を担っていた。
- HyperCardでプログラムを制作する上での制約を打破すべく、HyperCardに実装されていない機能を実現するXCMDやXFCNと呼ばれるシステムが生まれた。
- ウェブブラウザのフィンガーカーソルは、HyperCardに由来するものとされている[10]。
HyperCardに影響されて開発されたオーサリングツールや類似するもの
[編集]HyperCardは非常に優れたソフトウェアである。そのため多数の類似品が生まれた。また現在のmacOSでは言語体系がHyperTalkに似たAppleScriptが開発環境の一つになっているが、用途がオーサリングではなくmacOSのバッチ処理が主体であり、大きく異なっている。そのためHyperCardの復活を望む声は原作者のアトキンソンを始め絶えることはない。
- SuperCard
- Serf
- TownsGEAR - FM TOWNSで動作する類似ツール[11][12]
- UserLand Frontier
- Oracle Media Objects
- LINGO
- PythonCard
- LiveCode - 旧名Runtime Revolution。旧MetaCardが技術的なベース。HyperTalkのほとんどの語彙が使用できる。開発環境:Windows、macOS、Linux、iOS、Android、サーバ。オープンソース化され無料のコミュニティ版と商用版がある。
- Microsoft PowerPoint - カード形式、ボタン、ハイパーリンクなどが類似している。
- ViolaWWW - 初期のウェブブラウザ
- アドベンチャーツクール
- WinPlus
- HyperSense - macOSのベースとなったNEXTSTEPで動作する類似ツール[13]
- HyperNext
- TileStack
- mTropolis
- NoteCards
脚注
[編集]- ^ “Hypercard – How About New Mac Owners”, Mac GUI
- ^ “Bill Atkinson: Hypercard”. YouTube TWiT Tech Podcast Networkチャンネル. 2023年4月17日閲覧。
- ^ “HyperCard On The Archive (Celebrating 30 Years of HyperCard) - Internet Archive Blogs”. 2020年7月16日閲覧。
- ^ “Information On A Card”. Compute!'s Apple Applications: pp. 6. (December 1987) 18 August 2014閲覧。
- ^ Leemon, Sheldon (April 1988). “The Hazards of HyperCard”. Compute!: pp. 49 18 August 2014閲覧。
- ^ “PC-Letter_19880118.pdf”. 2020年9月23日閲覧。
- ^ “Wozniak's fireside chat”. 2020年9月23日閲覧。
- ^ 例えば、宮下由紀子 著 ; SE編集部 編『宮下由紀子コレクション : フツーの主婦が作ったアブノーマルなスタック20本+α』翔泳社1994.2 の内容説明には「ニフティサーブなどの商用ネットワークで人気を博しているスタック作家、宮下由紀子氏の作品集です。」(「BOOK」データベースより)とある。 http://webcatplus.nii.ac.jp/webcatplus/details/book/2410441.html (閲覧2022-02-13)
- ^ 小寺信良,ITmedia. “HyperCardの思い出 ゲームスタック作家だったあの頃”. ITmedia. 2022年2月13日閲覧。
- ^ “There is some important history behind ‘the finger/link/pointing-hand/pointer’ cursor (personally…”. 2020年9月23日閲覧。
- ^ 清水計宏『マルチメディアへの挑戦』、ソフトバンク、1991年、338頁。ISBN 4-89052-233-6。
- ^ 『青空のリスタート(富田倫生)』:新字新仮名 - 青空文庫
- ^ HyperSense パンフレット