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エンデューロ世界選手権

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Salminen at the 2008 WEC GP of Italy.
ユハ・サルミネン。KTM/BMW/ハスクバーナで活躍し、史上最多の世界王者8回(総合王者も含めると13回)/優勝96回を記録した。

FIM エンデューロ世界選手権(FIM エンデューロせかいせんしゅけん、: FIM Enduro World Championship)は、FIM(国際モーターサイクリズム連盟)が主催する、二輪のオートバイによる、伝統的なスタイルのエンデューロ世界選手権大会。「Enduro GP」の略称で知られる。

概要

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2023年現在は総合優勝(Enduro GP)も同時に争うE1・E2・E3の3クラスに、ジュニア/ユース/女性/オープンの各クラスが存在し、欧州を中心に各国を転戦する。

各イベント2日間で行われる。各日終了時に各クラスの上位15名に20 - 1ポイントがそれぞれ与えられ、各日で1~3位が表彰される。モトクロス世界選手権とは異なり、両日の合算順位にはポイントはつかない。

KTMグループ(KTM/ハスクバーナ/ガスガス)やオフロードバイク専門の小規模欧州メーカー(ベータ・モーターTM Racingシェルコファンティックリエフなど。古くはフサベルVORも活躍)が強さを発揮している。以前は日本ブランド勢も活躍したが、現在は欧州ホンダ(ホンダ・レッドモト)とヤマハの欧州ディーラー系チーム[1]が参戦している程度に留まる。

歴史

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2008年イタリアGP

1968年から行われていたFIMヨーロッパエンデューロ選手権が発展し、1990年に世界エンデューロ選手権として開始した。ヨーロッパ選手権は1993年に改めて再始動し、ヨーロッパモーターサイクルユニオン(FIMヨーロッパ)の管轄となった。

創設から2003年まで、エンジンの排気量に加えて2/4ストロークかどうかでも4~6クラスまで分かれていた。

2004年に、それまで欧州スーパーモタード選手権のプロモーションを担っていたフランスのABCコミュニケーションがプロモーターに就任。彼らにより運営のあらゆる部分で改革の大鉈が振るわれ、プロフェッショナル競技として洗練されていくことになる[2][3]。クラス分けは同年から2/4ストロークとも同一クラスに組み込まれ、E1・E2・E3の3クラスに簡素化された。

また同じく2004年に、数年前からABCコミュニケーションと提携していた台湾のオフロードタイヤブランドであるマキシスがタイトルスポンサーに就き、「MAXXIS FIM Enduro World Championship」となった[4]

2005年からジュニアクラス、2009年から125cc以下ユースクラス、2010年から女性クラスが追加されている。

欧州圏内のみでカレンダーを構成するか、世界的にイベントを開催するかは時期によって全く異なる。2007年の選手権はアメリカ、カナダ、ヨーロッパの6イベントで構成された。2008年シーズンは全8ラウンドヨーロッパで開催された。2009年から再び中南米など欧州圏外での開催を行うようになっていたが、2014年を最後に欧州圏内のみの開催に戻っている。

2015年、人気低下を危惧するメーカーとABCコミュニケーションの総意により、MotoGPのような大衆人気の獲得を目指し、分かりやすくするため2017年以降のクラス区分を「Enduro GP(250cc以上)」「Enduro 2(250cc未満)」の2クラスまで簡素化することを決定した[5]。2017年シーズン序盤はこの改訂はうまく行ったかに見えたが、やがてエントリー数は大きく減少し、たった一年で元の3クラスに戻された[6]。この騒動の余波により、KTMハスクバーナが一時的にファクトリーチームを引き上げて、近年人気の高まっているハードエンデューロシリーズに転向する事態を招いた[7]

全クラス最速を争うオーバーオール選手権は2004年まで���いったん終了していたが、2016年と2018年以降に「EnduroGP」として復活して開催されている。

近年の多様化するエンデューロ需要と、これを求めるKTMグループの圧力を無視できなくなり、2018年にイベントカレンダーにハードエンデューロやクロスカントリー式ルールのイベントを組み込んだこともあったが、2019年以降は自らのアイデンティティを取り戻し、再び伝統的エンデューロの姿勢を維持した。

ABCコミュニケーションが主に予算面でFIMとの折り合いが合わず15年に及ぶプロモーター契約が終了し、マキシスもタイトルスポンサーを降板。2021年はプロモーター不在となった。2022年からポルトガルの企業プライムスタジアムが10年契約でプロモーターに就任した[8]

現在のクラス

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2010年イタリアグランプリ

2022年時点のレギュレーション[9]

  • Enduro GP (GP) : E1 - E3の総合。
    • Enduro 1 (E1) : 250ccまでの2ストローク/4ストローク
    • Enduro 2 (E2) : 255cc - 450ccの4ストローク。
    • Enduro 3 (E3) : 255cc以上の2ストローク/455cc以上の4ストローク。
  • Junior (EJ) : J1 - J2の総合。23歳未満かつ、E1~E3で一定の成績を収めていない者に限る。
    • Junior 1 (J1) : 250ccまでの2ストローク/4ストローク。
    • Junior 2 (J2) : 250cc以上の2ストローク/4ストローク。
  • Youth (EU) : 100 - 125ccの2ストローク。21歳未満の者に限る。
  • Women (EW) : 女性に限る(年齢制限は無し)。E1 - E3の車両を用いる。
  • Enduro Open World Cup (EO) : 3名でエントリーする団体戦。
    • Enduro Open 2S (O2) : 排気量無制限の2ストローク。
    • Enduro Open 4S (O4) : 排気量無制限の4ストローク。
    • Enduro Open Senior (OS) : 排気量無制限、40歳以上の者に限る。

※E1 - E3はシーズン途中でバイクを変更することが可能だが、各クラスのポイントは得られず、GPのみを争うことになる。
※Enduro GPおよびE1~E3にはマニュファクチャラーズ選手権も存在する。

歴代チャンピオン

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優勝者

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80cc2ストローク 125cc2ストローク 250cc2ストローク 350cc4ストローク 500cc2ストローク +350cc4ストローク
1990年 東ドイツの旗 Thomas Bieberbach (Simson) イギリスの旗 Paul Edmondson (KTM) フィンランドの旗 Kari Tiainen (Suzuki) チェコの旗 Otakar Kotrba (Husqvarna) スウェーデンの旗 Peter Hansson (KTM) スウェーデンの旗 Jimmie Eriksson (Husaberg)
1991年 イタリアの旗 Pierfranco Muraglia (Kawasaki) スウェーデンの旗 Jeff Nilsson (KTM) フィンランドの旗 Kari Tiainen (Husqvarna) スウェーデンの旗 Kent Karlsson (Husaberg) スウェーデンの旗 Sven-Erik Jönsson (Husqvarna) スロバキアの旗 Jaroslav Katriňák (Husaberg)
1992年 イタリアの旗 Gian-Marco Rossi (HRD) スウェーデンの旗 Jeff Nilsson (KTM) イタリアの旗 Giorgio Grasso (Kawasaki) イタリアの旗 Mario Rinaldi (KTM) イタリアの旗 Tulio Pellegrinelli (Honda) フィンランドの旗 Kari Tiainen (Husqvarna)
1993年 イタリアの旗 Gian-Marco Rossi (TM) イギリスの旗 Paul Edmondson (Husqvarna) イタリアの旗 Giorgio Grasso (Kawasaki) スウェーデンの旗 Sven-Erik Jönsson (Husqvarna) イタリアの旗 Giovanni Sala (KTM) イタリアの旗 Fabio Farioli (KTM)
500cc4ストローク
1994年   イギリスの旗 Paul Edmondson (Gas Gas) イタリアの旗 Giovanni Sala (KTM) イタリアの旗 Mario Rinaldi (KTM)   フィンランドの旗 Kari Tiainen (Husqvarna)
1995年   フィンランドの旗 Petteri Silván (Husqvarna) イタリアの旗 Giovanni Sala (KTM) スウェーデンの旗 Anders Eriksson (Husaberg)   フィンランドの旗 Kari Tiainen (Husqvarna)
1996年   イタリアの旗 Fausto Scovolo (Honda) イギリスの旗 Paul Edmondson (Gas Gas) スウェーデンの旗 Anders Eriksson (Husqvarna)   スウェーデンの旗 Peter Jansson (Husaberg)
1997年   オーストラリアの旗 Shane Watts (KTM) フランスの旗 Stéphane Peterhansel (Yamaha) イタリアの旗 Mario Rinaldi (KTM)   フィンランドの旗 Kari Tiainen (KTM)
250cc4ストローク 125cc2ストローク 250cc2ストローク 400cc4ストローク 500cc4ストローク
1998年 イタリアの旗 Gian-Marco Rossi (Honda) チェコの旗 Roman Michalík (TM) イタリアの旗 Giovanni Sala (KTM) スウェーデンの旗 Björne Carlsson (Husaberg)   スウェーデンの旗 Anders Eriksson (Husqvarna)
1999年 フィンランドの旗 Vesa Kytönen (Kawasaki) フィンランドの旗 Juha Salminen (KTM) フィンランドの旗 Petteri Silván (Gas Gas) イタリアの旗 Giovanni Sala (KTM)   スウェーデンの旗 Anders Eriksson (Husqvarna)
2000年 イタリアの旗 Matteo Rubin (KTM) フィンランドの旗 Juha Salminen (KTM) オーストラリアの旗 Stefan Merriman (Husqvarna) イタリアの旗 Mario Rinaldi (KTM)   フィンランドの旗 Kari Tiainen (KTM)
2001年 フランスの旗 Stéphane Peterhansel (Yamaha) フィンランドの旗 Petteri Silván (Husqvarna) フィンランドの旗 Juha Salminen (KTM) オーストラリアの旗 Stefan Merriman (Husqvarna)   スウェーデンの旗 Anders Eriksson (Husqvarna)
2002年 スウェーデンの旗 Peter Bergvall (Yamaha) フィンランドの旗 Petteri Silván (Husqvarna) フィンランドの旗 Samuli Aro (Husqvarna) フィンランドの旗 Juha Salminen (KTM)   スウェーデンの旗 Anders Eriksson (Husqvarna)
2003年 スウェーデンの旗 Peter Bergvall (Yamaha) フィンランドの旗 Petri Pohjamo (Gas Gas) オーストラリアの旗 Stefan Merriman (Honda) スウェーデンの旗 Anders Eriksson (Husqvarna)   フィンランドの旗 Juha Salminen (KTM)
E1 E2 E3
2004年 オーストラリアの旗 Stefan Merriman (Yamaha) フィンランドの旗 Juha Salminen (KTM) フィンランドの旗 Samuli Aro (KTM)
2005年 スペインの旗 Iván Cervantes (KTM) フィンランドの旗 Samuli Aro (KTM) イギリスの旗 David Knight (KTM)
2006年 スペインの旗 Iván Cervantes (KTM) フィンランドの旗 Samuli Aro (KTM) イギリスの旗 David Knight (KTM)
2007年 フィンランドの旗 Juha Salminen (KTM) フィンランドの旗 Mika Ahola (Honda) スペインの旗 Iván Cervantes (KTM)
2008年 フィンランドの旗 Mika Ahola (Honda) フランスの旗 Johnny Aubert (Yamaha) フィンランドの旗 Samuli Aro (KTM)
2009年 フィンランドの旗 Mika Ahola (Honda) フランスの旗 Johnny Aubert (KTM) スペインの旗 Iván Cervantes (KTM)
2010年 フランスの旗 Antoine Méo (Husqvarna) フィンランドの旗 Mika Ahola (Honda) イギリスの旗 David Knight (KTM)
2011年 フィンランドの旗 Juha Salminen (Husqvarna) フランスの旗 Antoine Méo (Husqvarna) フィンランドの旗 Mika Ahola (Honda)
2012 フランスの旗 Antoine Méo (KTM) フランスの旗 Pierre-Alexandre Renet (Husaberg) フランスの旗 Christophe Nambotin (KTM)
2013 フランスの旗 Antoine Méo (KTM) イタリアの旗 Alex Salvini (Honda) フランスの旗 Christophe Nambotin (KTM)
2014 フランスの旗 Christophe Nambotin (KTM) フランスの旗 Pierre-Alexandre Renet (Husqvarna) オーストラリアの旗 Matthew Phillips (KTM)
2015 フィンランドの旗 Eero Remes (TM Racing) フランスの旗 Antoine Méo (KTM) フランスの旗 Mathias Bellino (Husqvarna)
Enduro GP E1 E2 E3
2016 オーストラリアの旗 Matthew Phillips (Sherco) フィンランドの旗 Eero Remes (TM Racing) オーストラリアの旗 Matthew Phillips (Sherco) イギリスの旗 Steve Holcombe (Beta)
Enduro GP Enduro 2
2017 イギリスの旗 Steve Holcombe (Beta) スペインの旗 Josep García (KTM)
EnduroGP
ライダー
EnduroGP
マニュファクチャラー
E1 E2 E3
2018 イギリスの旗 スティーブ・ホルコム(ベータ) イタリアの旗 ベータ イギリスの旗 ブラッド・フリーマン(ベータ) フィンランドの旗 エーロ・レメス (TM Racing) イギリスの旗 スティーブ・ホルコム (ベータ)
2019 イギリスの旗 ブラッド・フリーマン(ベータ) イタリアの旗 ベータ イギリスの旗 ブラッド・フリーマン(ベータ) フランスの旗 ロイック・ラリュー(TM) イギリスの旗 スティーブ・ホルコム(ベータ)
2020 イギリスの旗 スティーブ・ホルコム(ベータ) イタリアの旗 ベータ イタリアの旗 アンドレア・ヴェローナ(TM) イギリスの旗 スティーブ・ホルコム(ベータ) イギリスの旗 ブラッド・フリーマン(ベータ)
2021 イギリスの旗 ブラッド・フリーマン(ベータ) イタリアの旗 ベータ イタリアの旗 アンドレア・ヴェローナ(ガスガス) スペインの旗 ジョセップ・ガルシア(KTM) イギリスの旗 ブラッド・フリーマン(ベータ)
2022 イタリアの旗 アンドレア・ヴェローナ(ガスガス) オーストリアの旗 KTM イタリアの旗 アンドレア・ヴェローナ(ガスガス) オーストラリアの旗 ウィル・ルプレヒト(TM) イギリスの旗 ブラッド・フリーマン(ベータ)
2023 イギリスの旗 スティーブ・ホルコム(ベータ) イタリアの旗 ベータ スペインの旗 ジョセップ・ガルシア(KTM) イギリスの旗 スティーブ・ホルコム(ベータ) イギリスの旗 ブラッド・フリーマン(ベータ)

オーバーオール選手権

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シーズン ライダー バイク
1998年 イタリアの旗 Giovanni Sala 250cc KTM
1999年 フィンランドの旗 Petteri Silván 250cc Gas Gas
2000年 フィンランドの旗 Juha Salminen 125cc KTM
2001年 フィンランドの旗 Juha Salminen 250cc KTM
2002年 フィンランドの旗 Juha Salminen 400 cc KTM
2003年 フィンランドの旗 Juha Salminen 500cc KTM
2004年 フィンランドの旗 Juha Salminen E2 KTM

ジュニア選手権

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シーズン ライダー チーム
2005年 スペインの旗 Cristóbal Guerrero Gas Gas
2006年 スウェーデンの旗 Joakim Ljunggren Husaberg
2007年 スウェーデンの旗 Joakim Ljunggren Husaberg
2008年 イタリアの旗 Thomas Oldrati KTM
2009年 スペインの旗 Oriol Mena Husaberg
2010年 スペインの旗 Lorenzo Santolino KTM
2011年 スペインの旗 Jérémy Joly Honda

脚注

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  1. ^ ファクトリーとしては2019年で撤退
  2. ^ ABCが就任する前は「まるで石器時代」と形容されるような緩慢な運営で、タイム集計は遅く勝敗が夜10時に決まるようなこともあった。これに対しABCはライブで結果が分かるシステムを導入して改善した。また現在では定着している「スーパーテスト」や「エクストリームテスト」を導入したのもABCで、導入時は賛否両論激しかったが、数年もすると好評を得るなど、興行面で大きな貢献を果たした。
  3. ^ 15YEARS IN ENDURO GP - 一時代の終焉 後編 - No.234から Note.com ビックタンクマガジン 2023年10月21日閲覧
  4. ^ Maxxis and ABC sign partnerships for FIM series SportsPro 2023年11月3日閲覧
  5. ^ Creation of a new premier class for 2016 FIM Enduro World Championship Enduro21 2023年10月1日閲覧
  6. ^ ENDURO: QUALE FUTURO PER IL MONDIALE? MOTO SPRINT 2023年10月14日閲覧
  7. ^ ENDURO MONDIAL : RETOUR AUX 3 CATÉGORIES FREE ENDURO 2023年10月14日閲覧
  8. ^ Prime Stadium appointed as new FIM EnduroGP promoter EnduroGP公式サイト 2023年10月21日閲覧
  9. ^ FIM ENDUROGP, E1, E2 AND E3 WORLD CHAMPIONSHIPS FIM JUNIOR AND YOUTH ENDURO WORLD CHAMPIONSHIPS FIM WOMEN’S ENDURO WORLD CHAMPIONSHIP FIM ENDURO OPEN WORLD CUP REGULATIONS 2021 FIM Regulation 2023年9月18日閲覧

関連項目

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外部リンク

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