西巻茅子

日本の児童文学作家

西巻 茅子(にしまき かやこ、1939年4月27日[2] - )は、日本絵本作家画家イラストレーター。代表作は『わたしのワンピース』『ちいさなきいろいかさ』など。

にしまきかやこ

西巻茅子
生誕 山口茅子[1]
1939年4月27日
東京都世田谷区[1]
国籍 日本の旗 日本
職業 絵本作家
著名な実績わたしのワンピース』(1969年)
テンプレートを表示

(西巻茅子オフィシャルサイト) https://kayako-nishimaki.jp

経歴

編集

1939年東京都に生まれる[3]洋画家の山口猛彦を父とし[3]、母フミとの間に次女として生まれた[4]

1945年9月、千葉県山武郡に転居、1946年4月に千葉で小学校に入学したが、6月には東京に戻った[5]。1955年、東京都立駒場高等学校に入学した[5]

1964年東京芸術大学工芸科を卒業し、世田谷区に子どもに絵を教える「子どものアトリエ」を開いた[6]。 大学卒業後、銀座の版画工房でリトグラフを学び[7][2]、アルバイトをしながらリトグラフの作品を作っていた[8]。 日本版画協会展に出品し、1966年に新人賞を、1967年に奨励賞を受賞した[9][5]

1967年、油野誠一の紹介でこぐま社から絵本を出すことになった。こぐま社は「ロンパールームのほん」というリトグラフを原画に使用した絵本のシリーズを出版していた。西巻の初めての絵本『ボタンのくに』(1967)もこのシリーズのうちの1冊として誕生した[7]

以���、絵本の創作活動を続け、リトグラフのほかにも刺繍[10]やグワッシュ[4]を画材として使用した絵本を制作している。 1969年、3冊目の絵本として制作された『わたしのワンピース』は当初大人からあまり支持されなかったというが、出版から50年以上経った現在は187万刷を重ねるロングセラー絵本となっている。この『わたしのワンピース』で西巻は文章に頼らず「おはなしを絵で語る」という新しいスタイルの絵本創作を始めた[11]

1978年、『ふんふんなんだかいいにおい』が青少年読書感想文全国コンクールの小学校低学年対象の課題図書に選ばれた[12]

『ちいさなきいろいかさ』で第18回サンケイ児童出版文化賞を、『えのすきなねこさん』で第18回講談社出版文化賞絵本賞を受賞した[5]

1994年から鎌倉市在住[7]

2017年、デビュー50周年を迎えた[13]。同年、これまでの創作活動を振り返ったエッセイ『子どものアトリエ 絵本づくりを支えたもの』(こぐま社,2017)を出版した。

作風

編集

西巻は『子どものアトリエ』の中で、画家だった父・山口猛彦から「絵は毎日描くもの」「上手に描こうと思ってはいけない」という姿勢を自然に学んだと回顧している[14]。初めての絵本『ボタンのくに』を出した頃は「ドローイングで半抽象、半具象みたいな絵を描いていた」とインタビューでも語っている[9]。資料を見たり、写生をして描く写実的な絵ではなく、見ないで描ける絵を描くと決めていたという[15]。また、1冊ごとに何か面白いアイデアを試したいとも語っている[16]

西巻が絵を描くのに選ぶ画材は多岐に渡り、『まこちゃんのおたんじょうび』『わたしのワンピース』『きんぎょのトトとそらのくも』『はるかぜさんといっしょに』『ふんふんなんだかいいにおい』などはリトグラフ、『こわがりのみみ』は油彩と鉛筆、『はけたよはけたよ』『ちいさなきいろいかさ』などはクレヨンとアクリルカラー、『もじゃもじゃあたまのナナちゃん』はパステル、『うみのおさんぽ』はマーカーペンにアクリルカラー、折り紙、『あいうえおはよう』などは刺繍とアップリケ、『えのすきなねこさん』はグワッシュで描かれている[17]

受賞

編集

リトグラフでは1966年、日本版画協会展で新人賞受賞[8]。1967年、日本版画協会展で奨励賞を受賞[8]

絵本では『ちいさなきいろいかさ』でサンケイ児童出版文化賞、『えのすきなねこさん』で講談社出版文化賞絵本賞を受賞した[8]

作品一覧

編集

西巻は2017年までにオリジナル作品を描く、あるいは挿絵を提供するなどで以下の作品を作っている[18]

オリジナル

編集

挿絵提供

編集

絵本

編集


童話

編集

展覧会

編集
  • 2008年3月31日~4月13日 教文館ナルニア国 「西巻茅子絵本原画展」[22]
  • 2014年7月12日~9月21日 鎌倉文学館 「西巻茅子の世界」[23][24]
  • 2014年7月4日~9月4日 ギャラリーエークワッド 「絵本づくりのマイスター3人展」[25]
  • 2017年 教文館 「西巻茅子絵本デビュー50周年記念展」[21]
  • 2019年7月20日~9月23日 県立神奈川近代文学館 「『わたしのワンピース」50周年展西巻茅子展―子どものように、子どもとともに」[26]

出典

編集
  1. ^ a b 西巻 2017, p. 108.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n 絵本・挿絵大辞典3 2008, p. 421.
  3. ^ a b 神奈川近代文学館 145, p. 1.
  4. ^ a b 西巻茅子展 2019, p. 40.
  5. ^ a b c d 西巻茅子展 2019, p. 46.
  6. ^ 西巻茅子展 2019, p. 3.
  7. ^ a b c 西巻茅子展 2019, p. 6.
  8. ^ a b c d 別冊太陽 2005, p. 61.
  9. ^ a b 別冊太陽 2005, p. 62.
  10. ^ 西巻茅子展 2019, p. 34.
  11. ^ 西巻茅子展 2019, p. 13.
  12. ^ 過去の課題図書 第21回~第30回(1975年度~1984年度)”. 全国学校図書館協議会. 2019年10月2日閲覧。
  13. ^ 朝日新聞 2018.
  14. ^ 西巻 2017, p. 104.
  15. ^ 別冊太陽 2005, p. 66.
  16. ^ 別冊太陽 2005, pp. 68–69.
  17. ^ 西巻茅子展 2019, p. 48.
  18. ^ 西巻 2017, pp. 109–119.
  19. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as 別冊太陽 2005, p. 147.
  20. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc bd be bf bg 別冊太陽 2005, p. 148.
  21. ^ a b c d e f g h i 西巻茅子展 2019, p. 47.
  22. ^ “西巻茅子絵本原画展”. 読売新聞社: p. 9. (2008年3月29日) 
  23. ^ “絵本作家「西巻茅子の世界展」 作品に「挑戦の精神」”. 読売新聞社: p. 10. (2014年8月2日) 
  24. ^ 西巻茅子の世界” (PDF). 鎌倉文学館. 2019年9月29日閲覧。
  25. ^ 絵本づくりのマイスター3人展”. ギャラリーエークワッド. 2019年9月29日閲覧。
  26. ^ 企画展「『わたしのワンピース』50周年 西巻茅子展―子どものように、子どもとともに」”. 神奈川近代文学館. 2019年9月29日閲覧。

参考文献

編集
  • 西巻茅子『子どものアトリエ』こぐま社、2017年4月。ISBN 978-4-7721-9066-4 
  • 公益財団法人神奈川文学振興会『「わたしのワンピース」50周年 西巻茅子展』県立神奈川近代文学館、2019年7月。 
  • 「「『わたしのワンピース』50周年 西巻茅子展」開催」『神奈川近代文学館』第145号。 
  • 『別冊太陽 絵本の作家たちⅢ』平凡社、2005年7月。 
  • “(めっせーじ 絵本作家から)西巻茅子さん、絵にこそ、語る力”. 朝日新聞社. (2018年1月18日) 
  • 川戸道昭・榊原貴教『図説 絵本・挿絵大事典 第3巻』大空社、2008年11月。ISBN 978-4-283-00621-8 

外部リンク

編集