ユダヤ難民救った樋口中将 北海道に銅像建立へ実行委設立

設立総会であいさつする工藤孝史実行委員長(中央)=11日午後2時すぎ、札幌市中央区(坂本隆浩撮影)
設立総会であいさつする工藤孝史実行委員長(中央)=11日午後2時すぎ、札幌市中央区(坂本隆浩撮影)

第2次世界大戦の直前、ナチス・ドイツの迫害を受けていた約2万人のユダヤ難民を救い、旧ソ連の北海道侵攻を防いだとされる陸軍中将の樋口季一郎(明治21年―昭和45年)の功績をたたえようと、北海道で11日、銅像建立に向けた実行委員会が設立された。樋口中将に関する情報を発信しながら令和5年秋の建立を目指す。

銅像は、孫の樋口隆一明治学院大名誉教授らによる顕彰会が、樋口中将の出身地である兵庫県南あわじ市に来年建立する予定。ゆかりのある北海道への設置も計画していた。

北海道実行委員会は顕彰会の関係者とのつながりがある有志らが設立。工藤孝史委員長(52)は11日の設立総会で「私たち道民が今の暮らしができるのは多くの人の力があったから。樋口中将の功績を伝えながら銅像建立の機運を高めていきたい」とあいさつした。

樋口中将の孫にあたる札幌市議会議員の篠田江里子氏が出席したほか、昨年9月に石狩市で樋口季一郎記念館を開設した江崎幹夫館長らが講演した。

道委員会は今後、道民の理解を広げるため、来年春以降、年3回程度のシンポジウムを開く方針。銅像建立には2千万~3千万円の費用がかかるが、「顕彰会への寄付を通じて財源を確保したい。建立場所などは今後検討する」としている。

樋口中将はハルビン特務機関長だった昭和13(1938)年、ナチスの迫害を受け、上海に亡命を目指しながら旧ソ連と満州国境で立ち往生していたユダヤ難民を満州国に受け入れて救済した。その数は2万人におよぶとも言われており、人道主義が国際的に評価されている。

第5方面軍司令官だった昭和20(1945)年には、終戦後の8月18日、北海道侵攻をもくろむ旧ソ連軍が千島列島の占守(しゅむしゅ)島に上陸した際「断固反撃」を指示し、侵攻を阻止した。

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