MCUの『ゲーム横丁8丁目』第12回
8bitサウンドからFM音源まで――ゲーム音楽とともによみがえる“あのころ” MCU×シティコネクション・志貫徹対談

さまざまな懐かしのハードが“ミニ”になって復刻したり、海外では中古ソフトの価格が高騰したりと、近年いろいろな意味であらためて注目が集まっているレトロゲーム。そんなレトロゲームについて、音楽業界随一のゲーマー&レトロゲームコレクターとして名高い、KICK THE CAN CREWのMCUがひたすら語り尽くす連載「MCUの『ゲーム横丁8丁目』」。
連載第12回では、シティコネクションのプロモーションチームに在籍する志貫徹(しぬき てつ)氏との対談の模様をお届け。元ゲームショップ店長であり、俳優、イベントMCとしても活動してきたレトロゲーム愛好家の志貫氏と、思い出のゲーム音楽についてざっくばらんに語り合ってもらった。(編集部)
「初めて会ったときは苦手なタイプだと思った」(MCU)
MCU:テツ(志貫氏)とは、2週間に1回の頻度で会っているんですよね。「MCUと志貫徹のファミコン心拳」という生配信番組をふたりでやっていることもあって。だから、正直飽きてます。
志貫:ちょっと!(笑) そういうことは胸に秘めておいてください。
MCU:それに加えて、いまは「第1回 百獣ゲームランド」というリアルイベントをシティコネクションさんと一緒にやろうとしていて。それもあってよく会うので、もういいかって。
志貫:でも、こうやって腰を据えてお互いに話す機会ってあまりないじゃないですか。

MCU:もう結構付き合いは長いよね。
志貫:そうですね。Uさん(MCU)とはコロナ禍に入る前くらいにあった、レトロゲームイベントで初めてお会いしました。そこからUさんの配信番組に呼んでいただけるようになり、現在はアシスタントをさせてもらっています。
MCU:3代目アシスタントの9ちゃんの後に入ってもらったから、テツは4代目にあたりますかね。本当は9ちゃんがよかったんだけど。
志貫:なんてこと言うんですか!(笑)
MCU:そもそも、これはテツにも言っている話なんですけど……イベントで初めて会ったときはテツのことが苦手だったんですよ。なんかシャッキリしすぎていて、嘘臭く感じたんですよね。ただ、その後に何回かご飯に行くうちに「ああ、こういう人なんだ」と。そこからは全然。
志貫:僕がバカ丁寧すぎたんですよね。もともとゲームショップで働いていたんですけど、その後にお笑いをやるために吉本の養成所にいったことで、芸人としての上下関係を叩き込まれまして。ミュージシャンのUさんからしたら戸惑われるのも無理はないなと。
「バルーントリップ」のBGMでトリップした幼少期
MCU:「チップチューン」ってありますけど、実は僕はそこまで詳しくはないんですよね。パッと思い浮かぶのはヒゲドライバーかなと。一緒に曲を何回かやっていたりもするので、あれが「チップチューン」というものを軽く覚え始めるきっかけだったかなと自分では思っています。
自分もゲームの中の題材を使って曲を作ったりはするんですけど、チップを使うとかゲーム音楽というほどではなくて、ゲームの要素をヒップホップに落とし込んでいる感覚なんです。それを自分たちで「チップホップ」って言っているんですけれども。
なので、ガッツリ濃いめの「チップチューン」はふだんそこまで聴かないですね。「チップホップ」というところだと、それこそシティコネクションさんの『忍者じゃじゃ丸 コレクション』でテーマソングを作らせてもらったりもしましたけど。

志貫:僕も子どものころは、いわゆるゲーム音楽ってまったく興味がなかったんですよ。初めてゲームに触れたのは小学2年生で、友だちの家でファミコンを遊ばせてもらったんですけど、もう夢中でプレイしていたので音楽がまったく耳に入ってこなくて。
そもそも当時はまだBGMがないゲームも多かったと思うんですけど、いまこうして振り返ると『バルーンファイト』の「バルーントリップ」がおもしろすぎて、友だちの家から帰るときに「バルーントリップ」のBGMを鼻歌で歌いつつ、手をパタパタさせながら帰り道を歩いていた記憶があります(笑)。
MCU:ヤバい子どもですね。
志貫:いいじゃないですか!(笑)。夕日の中を、こうやって自分もフワフワしている気分になりながら歩いていたわけですよ。
音楽の授業と『シティコネクション』
志貫:小学3年生くらいになり、やっとウチでもファミコンを買ってもらえました。僕と妹の誕生日とクリスマスを合算して4回ぶんを、ファミコン本体+『スパルタンX』+『スーパーマリオブラザーズ』に錬成したんです。でも『スパルタンX』の音楽なんてシンプルなものでしたし。『スーパーマリオ』に関しても、僕は音楽がまったく気にならなかったです。
MCU:あれが気にならないんですか?
志貫:なぜかというと、地下に入ったら地下の曲、海に入ったら海の曲、土管に入ったらこの効果音というように、めっちゃ雰囲気に合っていたので違和感がなかったんですよ。いい意味で、自然に耳に入っていたというか。
MCU:たしかに、案外そんなものかもね。僕も子どものころは、ゲームのBGMを耳をそばだてて聴いたりはしていないし。
志貫:音楽を気にしだしたタイミングがあったとしたら、それこそゲームのほうの『シティコネクション』ですよ。車を動かして、ピュンって飛ぶじゃないですか。それで「ドカーン!」(笑)。あの曲をひたすら聞いていたので耳に残りましたね。
MCU:うまく御社の話題をねじ込んできましたね。
志貫:いやいやいや、本当なんですって(笑)。だから、これが『シティコネクション』を象徴する曲なんだなって認識していたんですけど、学校の音楽の授業でクラシック音楽を聴いてみましょう、みたいな日があって。そのときにたまたま流れたんですよね。“『シティコネクション』の曲”が。
すぐさま先生に、「これ『シティコネクション』の曲でしょ!?」って聞いたら、「いえ、違います」って言われちゃって。間違っているはずないんだけどな……って困惑した思い出があります。あれってチャイコフスキーの曲なんですよね。
MCU:チャイコフスキーですね。ちょっとロックアレンジされていて。
志貫:ですよね。ちょっとおしゃれすぎて当時の僕にはあまり響かなかったんですけど。いまあらためて聞くと、かっこいいなって思います。
“ゲームのなかで流れるアニメの曲”に感じたプレミア感
MCU:贅沢な話ですよね。僕は何度も言っているようにスーパーカセットビジョンで育ってきたから、『スパルタンX』って「ファミコンだとBGMあるの!?」って感じでしたよ。
志貫:Uさんはそうか、スパカセ派だったから。BGMといえば、『忍者ハットリくん』は感動しましたね。ゲームの中で一瞬アニメの曲が流れるというのが、子ども心にうれしかったんですよ。『キン肉マン マッスルタッグマッチ』も、最後のゲームオーバーのところでちょっとだけ『炎のキン肉マン』のフレーズが流れたりとか。
その後の『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪大魔境』ではタイトル画面でOP曲をフルで流してくれていましたし。『高橋名人のBUGってハニー』も、これ完全にアニメの歌じゃんって。
MCU:BGMとしてアレンジされているから、BPMがめちゃめちゃ速くなってるんですよね。自分でプレイしながら歌おうとすると、とても口が回らなくて。
志貫:そうそうそう(笑)。あとは『超時空要塞マクロス』もアニメの曲が入っていて、すごくうれしかった記憶があります。
MCU:あれって何が流れてましたっけ?
志貫:リン・ミンメイの「小白竜(シャオ・パイ・ロン)」ですね。当時、ゲームのパッケージとか見て曲が入っているかどうか探してましたもん。“日本コロムビア”とか“JASRAC”とかのシールが貼ってあれば、ほぼ確実にアニメとかの曲が使われているんだなってわかりますから。そうやってサーチして、ついに見つけたのが『機動戦士Ζガンダム ホットスクランブル』。

MCU:森口博子さんの曲が入っていますからね。
志貫:そう。森口さんの「水の星へ愛をこめて」に加えて、「Ζ・刻を越えて」と「星空のBelieve」もありましたよね。
MCU:タイトル画面で「Ζ・刻を越えて」が流れて、ずっと流しっぱなしにしているとMS紹介が始まるんですよね。
志貫:それで、ゲームのエンディングではアニメのエンディングテーマの「星空のBelieve」が流れると。
MCU:「星空のBelieve」も入ってることまでは知らなかったのは、たぶん僕がこのゲームを最後までクリアしてないからですね(笑)。ちょうど最近、森口さんと共演することがあったから、『機動戦士Ζガンダム ホットスクランブル』のカセットにサインをお願いするという変態的行為をしてきたばかりなんですけど。
志貫:えっ!? そうか、共演されていましたもんね。めっちゃ羨ましい……!!
溶けたACアダプターで遊んだ『ドラクエIII』で号泣
志貫:ファミコンで音楽がよかったゲームとして思い浮かぶのは、『スターソルジャー』、『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』、『悪魔城伝説』とか。
あとはやっぱり、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』ですね。もう完全に音楽にやられちゃいました。当時プレイしていた最中に妹がケーブルを引っ掛けて、セーブデータが消えてしまったことがあって。僕がめちゃくちゃ怒ったので妹はいまだにあれがトラウマになっているみたいなんですけど。
それでまた最初から始めたら、今度はやりすぎてACアダプターが火を吹いたんですよ! 急いで消して……まだ実家に熱で変形したACアダプターが残っていると思うんですけど。そんな状態になりながらもエンディングまで到達して、「そして伝説へ」が流れて、もう大号泣ですよ。画面に向かって拍手しながら。
MCU:いや、火を吹いたACアダプターを使い続けてたんですか?
志貫:だって、代えなんてなかったですから(笑)。
80年代サウンドの象徴・FM音源
MCU:メガドライブやPCエンジンが出てきた時代になると、もう本当にびっくりするくらいBGMも進化しましたよね。それこそCD-ROMで出た『天外魔境 ZIRIA』とか、坂本龍一さんだったり。
志貫:あれはもう別格でしたね。CD-ROMになると、もう原曲そのままみたいな話になってきますから。
MCU:余談ですけど、プレステでゲームプレイ中にディスクホルダーのふたを開けて、別の音楽CDに入れ替えるとゲームを遊びながら音楽が聞けちゃうっていうのがあって。本当はやっちゃいけないんですけど、レースゲームなんかでヘビメタのCDとかを流すとめっちゃいいんですよ。ゲーム側のエンジン音とかSEとかは流れなくなっちゃうんですけど。
先にCD-ROMの話に飛んじゃったんですけど、やっぱFM音源的なもので鳴らしてくれると大体気持ちいいというか。メガドライブのときなんて本当に衝撃だったので。ある意味80年代サウンドの象徴だと思うんですよね。シンセキーボードの「DX7」みたいな、あの感じ。ゲーム音楽がぐっとシンセサイザーに近づいた感。
あのころに出た『スーパーハングオン』とか、BGMが4種類から選べたりしますから。やっぱ音楽に自信があったんだろうなと。大体同じ曲でしかやらないんですけどね。
志貫:せっかく選べるのにですか?
MCU:なんか、いつもと同じ曲じゃないとぎこちなくなっちゃうんですよね。アーケード版の自分でまたがって操作するやつだととくに、BGMのリズムが違うと調子が狂っちゃうから。

ゲームボーイカラー版『ビーマニ』はオトナ向けの名作
志貫:UさんがFM音源にのめり込んでいった一方で、僕はと言うとゲームボーイにいったんですよ。ゲームボーイはもっと音楽面も制約が多いじゃないですか。そこで、「これは!」と思ったのが『スーパーマリオランド』のエンディングテーマ。これまでの『マリオ』と違い哀愁があって、旅の終わりをじっくりとかみしめることができましたね。
小さな画面のなかで、マリオがスーパーボールみたいなものを投げているようなビジュアルとは裏腹に、音楽面で深いストーリーを見せられたと言うか。
MCU:『スーパーマリオランド』はあまり遊んでないなぁ。
志貫:Uさんはゲームボーイをガッツリは通ってきてないですよね。ゲームボーイカラーの『beat mania GB』も音楽に特化していて。まあ音ゲーだから当然といえば当然なんですけど。
ゲームボーイカラーで何作か出ていて、『beatmania GB2 ガッチャミックス』ではJ-POPやアニメの曲がたくさん収録されているんですよ。「RYDEEN」や、モーニング娘。の「抱いてHOLD ON ME!」とか。『ガッチャミックス2』になると、「警部補 古畑任三郎のテーマ」とかも。
MCU:バラエティがすごい(笑)。
志貫:もう「オトナのためのゲームじゃん!」って、当時感動しましたね。
「僕は東京ゲームショウを越えたい」(MCU)
MCU:せっかくこのふたりがそろったので、最後に「第1回 百獣ゲームランド」の話もさせてもらうとすると。まさにいま、バタバタしながら準備をしているんですけど、そのバタバタについては自分の好きなことをやるためなので、何も苦には感じていないんですよね。
ゲームに限らずさまざまなジャンルで展示即売会ってあって、そういったイベントももちろんリスペクトはしているんですが、せっかくシティコネクションさんがコラボして一緒にやってくれることもあって、いわゆる展示即売会とは少し違う視点からアプローチしたいと思っています。
コンセプトとしては、僕が大好きなレトロゲームを中心に80~90年代のカルチャーを詰め込んで、“あのころ”をいま一度味わってほしいという。そういう意気込みでいっぱいです。出展してくれる方々もレジェンドばかりですし。
マニアックになりすぎず、あのころのカルチャーをポップに紹介したいなと思っています。

志貫:当日は、会場でMCUさんのニューアルバムも発売するんでしたよね。
MCU:そう、『燃えろ‼︎プロラップ 令和決定版』ってものなんですけど。もうそれこそヤバいくらいにチップホップが楽しめる内容になっていると思うので、1曲目から“feat.高橋名人”とかやらせてもらってますからね。
志貫:すごいですよね。高橋名人はサイン会もやってくださいますし。
MCU:そのあたりも楽しみにしてもらえたらうれしいな。てか、僕が楽しみっすね。ちなみに『燃えプロ』ばかり持ってきてくださらなくて大丈夫ですからね。またシティコネクションさんのところに持っていって、保管しておいてもらわなくちゃいけなくなるので。
志貫:MCUさんから持ち込まれた『燃えプロ』は、僕がしかるべき場所にしっかりと収蔵していますので(笑)。
MCU:入場料は500円なんですけど、18歳以下は無料としているので、ぜひお子さんも連れて来てもらえたらと思います。当日はコラボカレーとか出しているので、お祭りだと思って気軽に楽しんでいってください。
志貫:Uさんの指令を受けて、会場(錦糸町マルイ 8F)と同じフロアにある「インド定食 ターリー屋 」さんに直談判して、コラボさせてもらえることになったんですよ。
MCU:そうそう。「テツ、ちょっとオトしてきて」って(笑)。気が早い話なんですけど、つぎにやるとしたらテキ屋みたいなものも設けたいんですよね。それこそあらゆる年代が楽しめるイベントにしていきたい。僕は「東京ゲームショウ」さんを越えたいんですよ。
志貫:……承知しました。Uさんのその志は受け止めました!
■『第1回 百獣ゲームランド』開催概要
日時:2025年3月2日(日)11:00~17:00
場所:すみだ産業会館 展示室D
入場料:500円(パンフレット)
※18歳以下の方は無料で入場可
公式サイト:https://www.mcu.tokyo/第1回-百獣ゲームランド/
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