2024年、しなこが大ブレイクをした理由とは 動画プロデューサーが明かすASMRや音楽活動の“ヒット戦略”

昨年12月、モデルプレスから発表された『2024年間YouTube影響力トレンドランキング』では1位を獲得。同年11月に発表された『Simeji presents Z世代トレンドアワード2024』ではヒト部門大賞を受賞するなど、間違いなく2024年に大ブレイクを果たした、人気インフルエンサー・しなこ。
原宿系のカラフルな衣装に身を包み、お菓子のASMR動画で注目を集めている彼女だが、活動当初は伸び悩んでいる時期もあったという。そんな彼女を戦略的に支えていたのが、今回インタビューを実施した吉川歩花氏だ。人気クリエイターの危機を救った吉川氏が打ち立てた戦略とはなんだったのだろうか。
今回は、吉川氏から見た動画作りの考え方、そしてYouTubeにおける“動画プロデューサーの役割”について語ってもらった。
(参考:『2024年間YouTube影響力トレンドランキング』https://mdpr.jp/influencer/detail/4443296)
(参考:『Simeji presents Z世代トレンドアワード2024』2024https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000874.000006410.html)
ヒットを生み出す土台は“因数分解”にあり
ーー吉川さんは、VAZのインターンスタッフだった時代から、しなこさんや、同じくインフルエンサーのさくらさんといったクリエイターの動画プロデュースを行っていたんですよね。

吉川歩花(以下、吉川):はい。2人のYouTubeチャンネルの動画プロデュースを担当していました。
ーーしなこさんと言えばASMRというイメージが定着していると思うのですが、YouTubeチャンネル開設当初の動画を見ると、そのイメージはあまりないですね。
吉川:出会ったころ、しなこさんのYouTubeチャンネルは伸び悩んでいました。しなこさん自身もYouTube活動を辞めようか迷っていましたね。
ーーそうだったんですね。
吉川:だから、まずは活動を前向きに考えられるように自信をつけていくところから始まりました。そのためにはまず、私のことを信頼してもらわなければいけません。信頼関係を構築するには誠意を見せる必要があると思って、ASMR業界について分析した文章を論文くらいの量で書いてお渡ししたんです(笑)。
ーーそれはすごいですね(笑)。なぜASMRに踏み切るべきだと思ったのでしょうか。
吉川:しなこさんは、原宿で『うんちっちソフトクリーム』や『哺乳瓶ソーダ』といったスイーツ開発を制作していて、衣装や髪色も原宿系のカラフルなイメージがありました。また、当時の本人はトークを苦手と感じていたので、そういった特徴や苦手分野などを掛け合わせて、ASMRと相性がいいのではないかと思ったんです。
ーー吉川さんはクリエイターを分析する際、どんなことを意識しているのでしょうか?
吉川:主観的な視点を持たないように気をつけています。SNSのコメントや、クリエイターのことを紹介している記事などを見て、世間からの“マスの評価”がどうなのかを見るように意識しています。
ーーなるほど。結果的にしなこさんにはASMRがぴったりはまったと思うのですが、さくらさんの場合はどうだったのでしょうか?
吉川:さくらさんは、いわゆるマルチクリエイタータイプでしたね。顔も可愛いし、幼いころからYouTubeグループの「めるぷち」で経験を積んでいたので、喋りも安定していました。そこまで尖ったことをしなくても、そのときトレンドになっている企画を取り入れれば数字は安定して獲得できました。
ーークリエイターによって、アプローチの手法やバランスはさまざまですね。YouTube活動に対してしなこさんも思い悩んでいた部分もあったかと思いますが、ASMRがヒットしてから、モチベーションの変化はあったのでしょうか?
吉川:ASMRを始めて2本、3本と継続的にヒットが続くようになるとだんだん前向きになっていき、本人も活動を楽しんでくれていたと思います。しなこさんは「自分だからこそできることをやりたい」という思いをずっと持っていたので、ASMRはその部分でもハマったのかなと思います。
ーー「自分にしかできないこと」を発信するというのは、クリエイターのモチベーション的にも重要ですよね。
吉川:クリエイターの個性もあるかと思いますが、企画次第ではそういったコンテンツを作り出すこともできます。たとえば、そのYouTubeチャンネルでしか見ることのできないシリーズ企画を投稿すると、そのチャンネルのファンができると思うんです。
いまは昔に比べてチャンネルがあり過ぎて、以前よりチャンネル登録をしてもらうのが難しくなってきています。でもチャンネルの独自性を企画からも生み出せば、登録者数も獲得しやすくなるし、継続的に見てもらえるのではないかなと思っています。
ーーしなこさんの場合、ASMRが視聴者のニーズにマッチしていたのも、ブレイクの要因としてありそうですね。
吉川:そうですね。しなこさんのイベントに昔行ったことがあるのですが、小学生がすごい行列になっていたんです。だから小学生の世代に需要があることは、そのころから確信していました。さらにしなこさんも「求められるところで頑張りたい」という思いが強い方だったので、そこもよかったのかなと思います。
ーー求められていることとやりたいことにズレがあると、活動を続けるのは難しくなってきますからね……。
吉川:ある意味、しなこさんは超クリエイター気質な方だったのかもしれません。