コンテンツにスキップ

カナダ自由党

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
自由党 (カナダ)から転送)
カナダの旗 カナダ政党
カナダ自由党
Liberal Party of Canada
Parti libéral du Canada
党首 ジャスティン・トルドー
成立年月日 1867年7月1日
本部所在地 オンタリオ州オタワ
庶民院議席数
158 / 338   (47%)
(2021年9月21日)
元老院議席数
0 / 105   (0%)
(2019年10月21日)
政治的思想 自由主義
社会自由主義[1][2][3][4]
政治的立場 中道[5] - 中道左派[6][7]
シンボル
公式カラー
国際組織 自由主義インターナショナル
公式サイト Liberal Party of Canada
テンプレートを表示

カナダ自由党(カナダじゆうとう、英語Liberal Party of Canadaフランス語Parti libéral du Canada)は、カナダ中道左派自由主義政党。カナダ保守党二大政党を形成している。自由主義インターナショナル加盟政党である。創設は1861年。現在の党首はジャスティン・トルドー。口語ではグリッツとも呼ばれる。

概説

[編集]

中道右派政党であるカナダ進歩保守党(現在はカナダ保守党)と共にカナダにおける二大政党制の一翼を担ってきた。オンタリオ州ブリティッシュ・コロンビア州オタワガティノー首都圏、ケベック州モントリオールなど、都市部を基盤としている。近代カナダの歴史の中でも最も政権を担ってきた政党であり、20世紀先進国の間では最長となる69年間与党として国家運営に君臨してきたなど、"natural governing party"とも言われる。

党史

[編集]

1867年にジョージ・ブラウンによって結成された。1873年にアレキサンダー・マッケンジーが首相となって以来、大半の期間を政権与党として活動してきた。特に1968年に首相となったピエール・トルドー(首相在任:1968年 - 1979年,1980年 - 1984年)は長期政権を維持し、1971年の「多文化主義宣言」による公用語の英仏二カ国語化など、多文化国家カナダの原型を作り上げた。

トルドー退任後に行われた、1984年の総選挙では進歩保守党のブライアン・マルルーニーに政権の座を奪われ、10年近く野党となったが1993年の総選挙で大勝し(この時ライバルの進歩保守党は、たった2議席しか獲得できないという壊滅的敗北を喫した)、ジャン・クレティエンポール・マーティンと2006年まで続けて政権を担った。

しかし2004年2月、クレティエン政権時代における公的補助金に関するスキャンダル[注釈 1]が会計検査院によって暴露されたことで支持率が急落、直後に行われた総選挙では第一党こそ維持したものの過半数を失い少数与党となった。そして2006年の総選挙で敗北し、保守党に政権を明け渡し野党に転落した。

2008年10月14日総選挙でも改選前95議席から77議席に議席を減らし、保守党の勝利を許す結果に終わった。

2011年の総選挙ではさらに議席を34議席に減らし、党首のイグナティエフも落選するなど結党以来最悪の惨敗で、野党第一党の座を新民主党に譲る結果となった。選挙後、ボブ・レイが暫定党首に就任し、体制の立て直しを図ることになった[8]

2013年4月に行われた党首選挙で、ピエール・トルドー元首相の息子であるジャスティン・トルドーが投票者の80%の支持を得て、党首に選出された[9]。トルドーが党首に選出されてから自由党に対する支持は増加し、世論調査において与党である保守党を上回って首位となった[10][11]

2015年カナダ総選挙では、大幅に議席を伸ばして単独過半数となる184議席を獲得。約10年ぶりに政権を奪回した[12]。しかし、2019年の総選挙では過半数を維持できず、157議席に留まり、さらに単独過半数を狙ってコロナ禍で行われた2021年の総選挙においては159議席に留まったが、依然として第1党として政権を維持している[13]

政策

[編集]

中道右派政党のカナダ保守党に対して、自由党は自由主義インターナショナルに所属しているものの、中道左派政党とされている。近代カナダにおいて国民皆保険制度の確立や所得の再分配機能強化などの社会的公正、二言語国家・有色人種の移民受け入れに代表される多文化主義などを実現してくるなど左派的な政策を行ってきた。また、外交面においても対米追従型ではなくイラク戦争に反対するなど友好国アメリカ合衆国に対しても異を唱えるなどの1960年代から独自外交路線を貫く。また、党内においても右派・左派の違いがあり包括政党的な面も持っている。そのため、社会民主主義を掲げる左派政党である新民主党よりは中道寄りである。

歴代党首

[編集]

太字首相経験者

総選挙における党勢推移

[編集]

太字は総選挙に勝利し、与党となった、又は与党を維持した年

当選
1945年選挙 125
1949年選挙 190
1953年選挙 171
1957年選挙 105
1958年選挙 48
1962年選挙 99
1963年選挙 129
1965年選挙 131
1968年選挙 155
1972年選挙 109
1974年選挙 141
1979年選挙 114
1980年選挙 147
1984年選挙 40
1988年選挙 83
1993年選挙 177
1997年選挙 155
2000年選挙 172
2004年選挙 135
2006年選挙 103
2008年選挙 77
2011年選挙 34
2015年選挙 184
2019年選挙 157
2021年選挙 159
出典:Elections Canada

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ ケベック州における分離独立運動を抑える目的で当時のクレティエン政権が、1997年から4年間に渡って実施した地域における文化・スポーツ事に対する助成金の一部が使途不明金となり、その使途不明金が自由党系広告会社を通じて、自由党に裏金として還流されたとするものである。スキャンダルが発覚した当時の首相であるポール・マーティンはケベック州選出でクレティエン政権時代に財務大臣を務めていたことから、この不正を知りながら黙認していたのではないかとする批判が集中した。出典:ブリタニカ・ジャパン編『ブリタニカ世界年鑑 2005年版』(ブリタニカ・ジャパン)465-466頁

出典

[編集]
  1. ^ The party became infused with social liberalism in the 1940s and 1950s. Law Commission of Canada (2011). Law and Citizenship. UBC Press. p. 6. ISBN 9780774840798. https://books.google.com/books?id=EK26Gbk1wjkC&pg=PA6 
  2. ^ Susan Prentice, "Manitoba's childcare regime: Social liberalism in flux". Canadian Journal of Sociology 29.2 (2004): 193-207.
  3. ^ Michael J. Prince, "Canadian disability activism and political ideas: In and between neo-liberalism and social liberalism". Canadian Journal of Disability Studies 1.1 (2012): 1-34.
  4. ^ Smith, Miriam (2005). “Social Movements and Judicial Empowerment: Courts, Public Policy, and Lesbian and Gay Organizing in Canada”. Politics & Society 33 (2): 327–353. doi:10.1177/0032329205275193. 
  5. ^ Amanda Bittner; Royce Koop (1 March 2013). Parties, Elections, and the Future of Canadian Politics. UBC Press. pp. 300–. ISBN 978-0-7748-2411-8. https://books.google.com/books?id=TdFTCgAAQBAJ&pg=PA300 
  6. ^ カナダ下院選、与党・自由党の勝利確実…単独過半数届かずもトルドー首相は続投へ”. 讀賣新聞オンライン. 2021年9月23日閲覧。
  7. ^ David Rayside (2011). Faith, Politics, and Sexual Diversity in Canada and the United States. UBC Press. p. 22. ISBN 978-0-7748-2011-0. https://books.google.com/books?id=oYXU_1WwNKUC&pg=PA22 
  8. ^ Bob Rae becomes Interim Liberal Leader(ボブ・レイ 自由党暫定党首就任)。自由党ニュースリリース2011年5月29日
  9. ^ “Trudeau to face off against Harper in question period today”. CBCNEWS. (2013年4月15日). http://www.cbc.ca/news/politics/trudeau-to-face-off-against-harper-in-question-period-today-1.1317124 2013年12月21日閲覧。 
  10. ^ “Tory attack ads may be backfiring in favour of Trudeau’s Liberals as support rises, new poll shows”. National Post. (2013年5月7日). http://news.nationalpost.com/2013/05/07/tory-attack-ads-may-be-backfiring-in-favour-of-trudeaus-liberals-as-support-rises-new-poll-shows/ 2013年12月22日閲覧。 
  11. ^ “Justin Trudeau’s Liberals hit historic highs as senate scandal has ‘drastic effect’ on Tories: poll”. National Post. (2013年8月27日). http://news.nationalpost.com/2013/05/23/trudeaus-liberals-hit-historic-highs-as-senate-scandal-has-drastic-effect-on-tories-poll/ 2013年12月22日閲覧。 
  12. ^ カナダ総選挙 野党・自由党が圧勝、10年ぶり政権交代へ(CNN 2015年10月20日 同日閲覧)
  13. ^ カナダ総選挙で与党・自由党は過半数に至らずも、トルドー政権維持の見通し(ジェトロ 2020年2月11日閲覧)

外部リンク

[編集]