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カイコウオオソコエビ

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カイコウオオソコエビ
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 甲殻亜門 Crustacea
: 軟甲綱 Malacostraca
亜綱 : 真軟甲亜綱 Eumalacostraca
上目 : フクロエビ上目 Peracarida
: 端脚目 Amphipoda
亜目 : ヨコエビ亜目 Gammaridea
上科 : フトヒゲソコエビ上科 Lysianassoidea
: Hirondelleidae
: Hirondellea
: カイコウオオソコエビ H. gigas
学名
Hirondellea gigas
(Birstein and Vinagradov, 1955)
和名
カイコウオオソコエビ

カイコウオオソコエビ学名Hirondellea gigas)は、節足動物門 甲殻亜門 軟甲綱 端脚目 フトヒゲソコエビ上科に属するヨコエビの一種[1][2]

生息地

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北西太平洋海溝に分布し[3]マリアナ海溝フィリピン海溝ヤップ海溝パラオ海溝日本海溝伊豆・小笠原海溝カムチャッカ海溝で採集されている[4]。水深6,000メートル以深の超深海底にのみ生息し、世界で最も深い海であるマリアナ海溝のチャレンジャー海淵(水深10,920メートル)にも分布する[4]

特徴

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体は淡い茶色[3]、またはピンクがかった白と描写される[5]。ヨコエビとしては大型の部類になり、体長4.5センチメートル程の大きさになる[3][5]は完全に退化している[3]。触角は短い[要出典]。フトヒゲソコエビ類に共通する特徴であるが、腹部の遊泳脚が発達しており高い遊泳力を持つ[6]

体内に多量の脂肪トリグリセリド)を貯め込んでおり、餌の少ない環境において重要なエネルギー源として機能している。さらに、この脂肪は密度が低く、水中を移動する際に浮力を与えていると考えられる[6]。気温と圧力の変化により、深海底から引き上げると、体内からその脂肪分が溶け出して、抜け落ちてしまうという[5]

カイコウオオソコエビの体表を解析した研究チームは、カルシウムでできた外骨格の表面に「アルミニウムを含む膜」を発見した。浅海域で得られたヨコエビには見られなかったため、カイコウオオソコエビは海底の堆積物に含まれるアルミニウムを抽出して、アルミニウム化合物を含んだゲル状の物質として身にまとい、カルシウムの溶出を防いでいると結論づけられた[7]。 しかし後の研究により、検出されたアルミニウムは解析に用いた器具に由来するコンタミネーションであり、一部は臭素を誤同定していた可能性が高いとの結果が示され、「アルミニウムを含む膜」の存在は否定された。消化器や剛毛の解析により臭素の凝集は示唆されたものの、その機能やメカニズムについては明確な答えは出ていない[8]

フィリピン海溝、マリアナ海溝、パラオ海溝の3か所で採集された標本を比較した研究によれば、海溝によって形態に差がみられる[9]。マリアナ海溝の超深海に生息する種は、他の種とは違い隔絶して独自の種へと変わりつつある進化の途上ではないかともいわれている。

生態

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生息域が深海底のため、詳しい生態は不明である。日本JAMSTECが行った調査によれば、他の生物の遺骸や植物片を餌としていると考えられ、植物性多糖を分解するセルラーゼなど数種類の酵素を持っていることが明らかとなった[10]。ベイトランダーを使用した調査においては、群れをなして魚肉を食べる様子や、他のヨコエビPrincaxelia jamiesoniに捕食される様子が観察されている[11]

世界最深部での発見

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1995年、マリアナ海溝チャレンジャー海淵の深度10,920メートル付近において、日本の海洋研究開発機構の無人探査機かいこうによって採集された[12]

当初、これほどの深度に大きな生物は生息していないと思われたが、餌を仕掛けたところ多数が集まってきたという。超深海の高水圧と暗黒の中で進化し、生息していることは、当時の研究者達を驚かせた。

1998年にも再調査が行われ、地球最深部に住む動物の一つとして有名になった[5]

参考文献

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  1. ^ Species: Hirondellea gigas (Birstein & Vinogradov, 1955) カイコウオオソコエビ”. Biological Information System for Marine Life. 国際海洋環境情報センター. 2012年2月15日閲覧。
  2. ^ Lowry, J.K.; Stoddart, H.E. (2010). “The deep-sea scavenging genus Hirondellea (Crustacea: Amphipoda: Lysianassoidea: Hirondelleidae fam. nov.) in Australian waters” (PDF). Zootaxa 2379: 37-55. ISSN 1175-5334. http://www.mapress.com/zootaxa/2010/f/zt02329p055.pdf. 
  3. ^ a b c d 千葉県立中央博物館 (2006年6月20日). “世界一深い海にすむカイコウオオソコエビ”. 千葉県立中央博物館平成18年度企画展「驚異の深海生物 未知の深世界を探る」展示品の一部紹介. 2012年1月18日閲覧。
  4. ^ a b 土田真二 著「カイコウオオソコエビ」、藤倉克則・奥谷喬司・丸山正(編著) 編『潜水調査船が観た深海生物 深海生物研究の現在』東海大学出版会、2008年、253頁。ISBN 978-4-486-01787-5 
  5. ^ a b c d 北村雄一『深海生物ファイル』ネコ・パブリッシング、2005年、210頁。ISBN 978-4777051250 
  6. ^ a b K. L. Smith Jr., R. J. Baldwin (1982). “Scavenging Deep-Sea Amphipods: Effects of Food Odor on Oxygen Consumption and a Proposed Metabolic Strategy”. Marine Biology 68 (3): 287-298. 
  7. ^ Kobayashi, H.; Shimoshige, H.; Nakajima, Y.; Arai, W.; Takami, H. (2019). “An aluminum shield enables the amphipod Hirondellea gigas to inhibit deep-sea environments”. PLoS One: 17. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0206710. 
  8. ^ Okada S.; Chen C.; Watanabe H.K.; Isobe N.; Takai K. (2022). “Unusual bromine enrichment in the gastric mill and setae of the hadal amphipod Hirondellea gigas. PLoS ONE 17 (8). https://doi.org/10.1371/journal.pone.0272032. 
  9. ^ France, Scott C. (1993). “Geographic variation among three isolated population of the hadal amphipod Hirondellea gigas (Crustacea: Amphipoda: Lysianassoidea)” (PDF). Marine Ecology Progress Series 92: 277-287. doi:10.3354/meps092277. ISSN 01718630. http://www.int-res.com/articles/meps/92/m092p277.pdf. 
  10. ^ マリアナ海溝世界最深部に生息する超深海性ヨコエビの特異な生態の解明と新規セルラーゼの発見 海洋研究開発機構
  11. ^ NHKスペシャル ディープ オーシャン超深海 地球最深(フルデプス)への挑戦 2017年8月27日(日)午後9時00分~9時49分放送
  12. ^ 久保川勲『深海』誠文堂新光社、2001年、71頁。ISBN 4416201060 

外部リンク

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