危機に瀕する言語
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危機に瀕する言語(ききにひんするげんご)は、話者がいなくなることで消滅(死語化)の危機にある言語である。危機言語とも言われる。
概要
現在、世界には6,000から7,000の言語があるとされる[1]。Michael E. Kraussによれば、100万程度の話者を持つ言語は、今後100年程度は安定であるとされている。この基準によれば現存する言語のうち半数は22世紀の初めまで、つまり約100年以内に完全に話し手を失い、消滅すると予想される言語である。
1990年代以降、欧米の学界では危機言語研究に力が入れられるようになったが、その言語を記述し、記録を残す研究は進んでいないとされる。言語を研究する言語学者にとってもその言語自体が失われる事態になるため、危機言語の研究は重要であるとされる。
また、言語が消滅することは文化人類学的な面だけではなく、生物の多様性を保つ点にとっても無視できない問題であるが、辺地の地方文化、マイノリティ、少数民族への蔑視も根強く、危機に瀕した言語研究への意識も高いとはいえない事態にある。しかし日本では21世紀に入り、2003年に特定非営利活動法人「地球ことば村・世界言語博物館」が立ち上げられる等、事態を改善しようとする動きも広がりを見せつつある。
日本国内の消滅危機言語には2009年に、ユネスコによって「消滅寸前言語」に指定されたアイヌ語や八丈語、与那国語などが挙げられる。
英国王立協会紀要によれば、世界で最も少数言語が失われる恐れの高い場所は、オーストラリアと北米の一部とされる。研究では、経済的な発展した地域ほど、少数言語は失われやすいとされ、イギリスのケンブリッジ大学は、一人当たりのGDPのレベルは言語多様性の消失と関連があると発表した[2]。
脚注
- ^ 2005年時点において国際SILによりSILコードの割り当てられた言語数は7299
- ^ “経済成長で少数言語が失われる、研究”. AFPBB News. (2014年9月3日) 2014年9月5日閲覧。
関連文献
- 青木晴夫 (1984)『新版 滅びゆくことばを追って インディアン文化への挽歌』(三省堂選書111)三省堂
- C・アジェージュ;糟谷啓介訳 (2004)『絶滅していく言語を救うために ことばの死とその再生』ISBN 456002443X
- 岩波書店編集部編 (2004)『フィールドワークは楽しい』(岩波ジュニア新書474)岩波書店
- 大角翠編著 (2003)『少数言語をめぐる10の旅 フィールドワークの最前線から』三省堂
- 梶茂樹 (1993)『ことばを訪ねて アフリカをフィールドワークする』大修館書店
- 金子亨 (1999)『先住民族言語のために』草風館
- 呉人恵 (2003)『危機言語を救え ツンドラで滅びゆく言語と向き合う』大修館書店
- D・クリスタル;斎藤兆史・三谷裕美訳 (2004)『消滅する言語 人類の知的遺産をいかに守るか』(中公新書)
- T・クローバー;行方昭夫訳 (2003)『イシ 北米最後の野生インディアン』(岩波現代文庫 社会85)岩波書店
- 真田信治 (2001)『方言は絶滅するのか 自分のことばを失った日本人』PHP研究所
- 津曲敏郎編著 (2003)『北のことばフィールド・ノート―18の言語と文化』北海道大学図書刊行会
- R・ディクソン;大角翠訳 (2001)『言語の興亡』(岩波新書)岩波書店
- 中川裕 (1995)『ことばを訪ねて アイヌ語をフィールドワークする』大修館書店
- ダニエル・ネトル,スザンヌ・ロメイン、島村宣男訳『消えゆく言語たち:失われることば,失われる世界』ISBN 4788507633
関連項目
外部リンク
- 危機言語のページ - 日本言語学会
- Nearly extinct languages - エスノローグ
- 北海道大学大学北方文化論講座民族言語学研究室(北方諸民族の言語を研究)
- 千葉大学文学部ユーラシア言語文化論講座(アイヌ語やニヴフ語などを含む北方諸民族の言語や文化を研究)
- 東京大学文学部言語学教室(日本の言語学教育の始まったところであり、研究対象言語も多岐にわたる)
- 絶滅に瀕した言語(Endangered Language)の継承と生物多様性確保の共通点
- NPO法人地球ことば村・世界言語博物館
- Terralingua (生物の多様性と言語の多様性を関連づけて活動するNGO)
- 消滅の危機にある方言・言語(文化庁)