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ゼニガタアザラシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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ゼニガタアザラシ
ゼニガタアザラシ P. vitulina stejnegeri
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
亜綱 : 獣亜綱 Theria
: 食肉目 Carnivora
亜目 : イヌ亜目 Caniformia
下目 : クマ下目 Arctoidea
小目 : クマ小目 Ursida
上科 : アザラシ上科 Phocoidea
: アザラシ科 Phocidae
亜科 : アザラシ亜科 Phocinae
: ゴマフアザラシ属 Phoca
: ゼニガタアザラシ
P. vitulina
学名
Phoca vitulina
Linnaeus, 1758
和名
ゼニガタアザラシ
英名
Harbor Seal
Common Seal

ゼニガタアザラシ(銭形海豹、学名Phoca vitulina)はアザラシ科ゴマフアザラシ属に属する海棲ほ乳類。日本沿岸に定住する唯一のアザラシ。

分布

太平洋から大西洋まで広く分布し、日本に定住する唯一のアザラシであり北海道東部の襟裳岬大黒島歯舞群島等に生息する。

ゼニガタアザラシの分布
(注:正確には日本では北海道東部のみに分布している)

分類

ゼニガタアザラシは生息地域に応じて次の5亜種に分けられている。

  • P. v.concolor Western Atlantic Harbor Seal(西大西洋)
  • P. v.richardii Eastern Pacific Harbor Seal(東太平洋)
  • P. v.stejnegeri Western Pacific Harbor Seal(西太平洋)
  • P. v.vitulina Eastern Atlantic Harbor Seal(東大西洋)
  • P. v.mellonae Lac Des Loups Marins Seal(カナダアンガヴァ半島ハドソン湾流域の河川や湖に生息)

うちP. v.mellonaeは陸封型で、淡水に生息する。日本に定住する亜種(P. v. stejnegeri)はアリューシャン列島千島列島北海道に生息する亜種である。この亜種は他の亜種に比べ体の表面に占める黒色部分が多く、暗色型の亜種である。なおP. vitulina stejnegeriP. vitulinaとは別種(Phoca kurilensisまたはPhoca insularis) とする説もある。

形態

体長・体重はメスの成獣で120-170cm・50-150kg オスの成獣で150-200cm・70-170kgになる。黒地に白い穴あき銭のような斑紋を持つのでこの名前が付けられた。体の色には暗色型と明色型があるが、日本に生息している個体はほとんどが暗色型である。新生児の産毛は母の胎内で白い産毛が抜けてしまうので、大人と同じ銭型模様で生まれてくる。これは他のゴマフアザラシ属のアザラシが氷上で出産するのに対し、ゼニガタアザラシは岩場で出産するので大人と同じ銭型模様であるほうが天敵に狙われにくいという利点がある。

生態

日本に生息する亜種は嫌氷性で海氷、流氷の来ない岩場で定住生活をする。北海道の太平洋側のいくつかの岩礁に定住している個体群もある。

回遊魚、底生魚、外洋魚やタコやエビやイカなどを捕食する。

性成熟年齢はメスで4-6歳。岩場で出産し子供は大人と同じ模様で産まれてくる。出産は5-6月。寿命は30年前後。日本国内の水族館で同じゴマフアザラシ属ゴマフアザラシと交雑した記録がある。

保全状態評価

日本の環境省水産庁により絶滅危惧種(絶滅危惧Ⅱ類)に指定されている。2008年に発表された国際自然保護連合のレッドリストでは、軽度懸念(Least Concern)と評価されている。

個体数は全世界で40-50万頭。日本には900頭ほどが生息すると推定されている。

日本人との関係

  • 過去に北海道で乱獲されたことがあり、一時期個体数が急減した。現在は狩猟は行われておらず、やや増加傾向にあるが環境省水産庁絶滅危惧種に指定されている。
  • かつて天然記念物に指定する動きがあったが、魚網に入った魚を食害してしまう、魚網を破ってしまう等の漁業被害を与えており漁業関係者から指定が反対され見送られた。なおゴマフアザラシと同様に漁業の定置網に迷い込み、溺死する個体がいることが報告されている。
  • 1980年代前半にゼニガタアザラシの個体数が約200頭ほどに激減し、日本獣医畜産大学(現日本獣医生命科学大学)の羽山伸一助教授(当時)が水産庁に保護の対策を講じてほしいと進言したところ、当時の担当官に「そんな害獣はむしろ征伐しなければならない」といわれたそうである。
  • ゼニガタアザラシは日本沿岸で繁殖し住みついている唯一のアザラシである。ゆえに近年観光資源としても着目されウォッチングツアーも行われるようになってきた。
  • 北海道えりも町には現在、『えりもシール・クラブ』というアザラシとの共存共栄を考える会が漁業被害を受けている地元漁師や旅館の主人などの市民によって運営されている。その活動は広く知られ、朝日新聞・海の環境賞などを受賞している。
  • 2007年北海道豊頃町に出没するアザラシにコロちゃんの愛称がつけられたが、見物人が3人コロちゃんに噛まれる事故が起きた。見物人がペット感覚でゼニガタアザラシに接した為とみられる。アザラシは野生肉食獣なので、むやみに近づくのは危険である。

日本で見られる施設

ギャラリー

脚注

  1. ^ Thompson, D. & Härkönen, T. 2008. Phoca vitulina. In: IUCN 2008. 2008 IUCN Red List of Threatened Species.

参考文献

  • Ronald M. Nowak " Walker's Mammals of the World (Walker's Mammals of the World)" Baltimore : Johns Hopkins University Press (1999). ISBN 0-8018-5789-9
  • 和田一雄・伊藤徹魯 『鰭脚類 : アシカ・アザラシの自然史』東京 : 東京大学出版会 、1999年、284頁。 ISBN 4-13-060173-3
  • 和田一雄編著 『海のけもの達の物語 : オットセイ・トド・アザラシ・ラッコ』東京 : 成山堂書店、2004年 172頁。 ISBN 4-425-98131-6
  • 羽山伸一著 『野生生物問題』地人書館、2001年、159頁、243-244頁。ISBN 4-8052-0689-6
  • 斜里町立知床博物館編 『知床のほ乳類』斜里町 : 斜里町教育委員会、 2000年。 ISBN 4-89453-081-3

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