2009年新型インフルエンザの世界的流行
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2009年豚インフルエンザの集団発生(2009ねんブタインフルエンザのしゅうだんはっせい)とは2009年3月より始まった[1]豚からヒトへと感染する、新種とみられるウイルスによるインフルエンザ感染症(通称:豚インフルエンザ)の世界的な広がりをいう。
解説
今回、集団発生が起きた新種とみられるインフルエンザはメキシコで3ヶ所、アメリカでは2ヶ所での発生が確認された。その後、メキシコのメキシコシティ、アメリカのテキサス州とカリフォルニア州の3ヶ所にて確認された[2]。
他にも感染が疑われるケースは1,000以上にも及び、これら全てを把握することは不可能に近いため世界保健機構(WHO:以後当項目では略称を使用)の緊急委員会は「すべての国が、通常とは異なるインフルエンザのような症状や深刻な肺炎に対する監視態勢を強化する」よう勧告した[3]。
症状としては、従来のインフルエンザのように咳と発熱を経て重度の肺炎症状に至る他に今回メキシコでの流行の特徴として通常は羅患しても重症化しにくいとされる若者を中心に死者が出ている点である[4]。これらの患者からは「Aソ連型インフルエンザ」として過去にも流行したヒト同士でも感染するA型インフルエンザウイルス(H1N1亜型)が検出されており、従来は豚同士で感染していたブタのH1N1型ウイルスとヒトのH1N1型ウイルスの間で遺伝子交換が行なわれ新たなウイルスが生じた可能性が考えられる[5]。
4月に入りWHOとアメリカ疾病予防管理センター(CDC)はヒトからヒトへと伝染してゆき、メキシコにて高い死亡率を生んだこのウイルスが世界的大流行(パンデミック)になる恐れがあるとして懸念を表明した[6]。25日にWHOは臨床的特徴、疫学、ウイルス学、適切な対応について与えられた知識が不十分だとした上で「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」だとする声明を出した[7]。その後WHOは27日に新型インフルエンザの警戒レベルについてそれまでの「フェーズ3」から「フェーズ4」に引き上げ[8]、わずか2日後の29日には「フェーズ5」に引き上げられた[9]。
なお30日、WHO緊急委員会委員の田代真人(国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長)がジュネーブでの記者会見で新型インフルエンザは弱毒性であり季節性インフルエンザ同様、呼吸器感染にとどまり大きな健康被害は出ないのではないかとの見解を示している[10]。
WHOによる警戒の区分定義は以下のとおり[11]。
- 前パンデミック期
- フェーズ1:亜型ウイルスの存在が確認されているがヒト感染のリスクは低い
- フェーズ2:亜型ウイルスの存在が確認され、ヒト感染のリスクがより高い
- パンデミックアラート期
- フェーズ3:ヒトからヒトへの感染は無いか、あるいはきわめて限定されている(家族や身近な接触者等)
- フェーズ4:ヒトからヒトへの小規模感染を認めるだけの証拠が存在する
- フェーズ5:ヒトからヒトへの相当数の感染を認めるだけの証拠が存在する。早急に大流行への計画的な対策を講じる必要性がある
- パンデミック期
- フェーズ6:ひとつの国、もしくは共同体規模での急速的かつ持続的な感染が確認される。流通や交通機関の隔離、封鎖が必要とされるレベル
※分類上はフェーズ3までを「豚(鳥)インフルエンザ」、フェーズ4以降を「新型インフルエンザ」と呼ぶ。[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。
- *詳細はパンデミックを参照。
主要国の対応
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日本
4月26日、麻生太郎首相が検疫体制の強化や在外邦人への情報提供などの体制を指示。厚生労働省や自治体に電話相談窓口が開設された。4月27日、厚生労働省が感染の疑いのある帰国者・入国者を留め置く「停留」のための医療施設を既に成田周辺で約500室を確保した[12]。また4月28日からはメキシコ、アメリカ、カナダから成田、中部、関西、そして福岡の国内4空港に到着した国際便については降機前に乗客に機内で「機内検疫」[13]の実施を始めている。横浜[14]、神戸、関門の港についてもこれらの国からの到着客への検疫体制が強化される。検疫官不足[15]解消の為防衛医科大学校職員と陸上自衛隊の医官の応援派遣をしている。また、4月30日より品種改良の目的で輸入された生きた豚の全頭検査も開始された。
国内各地の医療機関で「発熱相談センター」や「発熱外来」が順次設けられることになっており、早いものは4月28日から開設された。同日、政府は「新型インフルエンザ対策本部」を設置し「基本的対処方針」を決定した。
アメリカ
アメリカ合衆国は4月26日、「公衆衛生に関する緊急事態」を宣言した[16]。
イスラム教・ユダヤ教圏
エジプト政府は29日に同国内で飼育されている豚20万頭の処分を決定した。イスラム教では豚は不浄の動物とされている[17]。なお、イスラム原理主義系議員は衛生上の理由で宗教上の処分でないとしている[18]。
イスラエルの保健副大臣が4月28日、ユダヤ教では豚を食べることが禁じられている事を受け「豚」という言葉を口にしなくてすむよう「メキシコ・インフルエンザ」という呼称を用いると発表した[19]。
感染の状況
死亡者数
メキシコでは4月28日の夜の保健相の記者会見で豚インフルエンザ感染が確認された死者の数を7人と発表した。なお感染の疑いのある死亡者は152人としている。また肺炎を訴えている入院患者は2498人、うち19人が豚インフルエンザと確認された[20]。
国 | 感染確認数 | 感染疑い | 死者数 |
---|---|---|---|
メキシコ | 20[21] | 1400+[22] | 8[23] |
アメリカ合衆国 | 66[24] | 100+[25] | 1[26] |
カナダ | 6[27] | 5[27] | 0 |
ニュージーランド | 14[28] | 25+[29] | 0 |
ブラジル | 0 | 2[30] | 0 |
コロンビア | 0 | 42[23] | 0 |
コスタリカ | 2[31] | 0 | 0 |
ペルー | 1[23] | 0 | 0 |
スペイン | 4[32] | 25[33] | 0 |
イギリス | 5[32] | 2[34] | 0 |
ドイツ | 3[32] | 0 | 0 |
オーストリア | 1[32] | 0 | 0 |
スイス | 1[23] | 5[35] | 0 |
イタリア | 0 | 20[23] | 0 |
フランス | 0 | 4[36] | 0 |
ベルギー | 0 | 人数不明[23] | 0 |
オランダ | 0 | 人数不明[23] | 0 |
ポルトガル | 0 | 人数不明[23] | 0 |
イスラエル | 2 | 1[37] | 0 |
大韓民国 | (誤報)1[38] | (誤報)16[38] | 0 |
発生からの動き
この記事に雑多な内容を羅列した節があります。 |
- 2009年
- 3月30日 - カ���フォルニア州サンディエゴ郡の少年にせきや発熱、嘔吐などの症状(アメリカでの最初の症例)[39]。
- 4月2日 - メキシコ政府は、東部ベラクルス州での4歳男児の感染(後に回復)を確認(4月27日の記者会見で公表)[39]。
- 4月13日 - メキシコ南部オアハカ州で女性の感染(後に死亡)を確認(当初、メキシコでの最初の症例とされた)。メキシコでは解明ができず、カナダの保健当局にウイルスの検査を依頼[39]。
- 4月14日 - アメリカの疾病対策センター(CDC)が、サンディエゴの少年について豚インフルエンザの感染例と初めて断定[39]。
- 4月22日 - メキシコシティで、インフルエンザが流行しているとの報道[39]。
- 4月23日
- 4月24日 - WHOが同じH1N1型ウイルスによる人間への感染の疑いがある事例がアメリカとメキシコで発生し、メキシコでの死者が60人であることを公表[40][41]。
- 4月25日 - WHOが、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」との声明[4]。
- 4月26日
- 4月27日
- 4月28日
- 4月29日
- 4月30日
- 5月1日
- 未明、舛添要一厚生労働相が修学旅行のためカナダに渡航していた横浜市の男子高校生に新型インフルエンザに感染の疑いと発表。同時に前日、成田空港で陽性の疑いの女性が新型ではないA香港型であったと発表した。
脚注
- ^ 「豚インフル、過去との共通点」共同通信 2009年4月26日 20:01配信(2009年4月28日閲覧)
- ^ 「豚インフルエンザ」読売新聞 2009年4月27日閲覧
- ^ 「WHO「緊急事態」声明:警戒レベル引き上げ見送り:NYで8人感染・豚インフル」時事通信 2009年4月27日配信(2009年4月27日閲覧)
- ^ a b 「豚インフルエンザは「公衆衛生上の緊急事態」、WHO」AFPBB News 2009年4月26日
- ^ 「クローズアップ2009:豚インフル感染起源特定「早急に」」毎日新聞 2009年4月26日東京朝刊(2009年4月27日閲覧)
- ^ 「WHO事務局長、豚インフル流行「深刻な状況」 パンデミックの危険性も指摘」AFPBB News 2009年4月25日
- ^ 「WHO「公衆衛生上の緊急事態」…警戒レベル上げは先送り」読売新聞 2009年4月26日 5:59
- ^ a b “新型インフル:WHOが警戒レベル「フェーズ4」に引き上げ”. 毎日jp(毎日新聞). (2009年4月28日)
- ^ a b “新型インフル、WHOが警戒水準「5」に引き上げ”. YOMIURI ONLINE(読売新聞). (2009年4月30日)
- ^ “新型インフルエンザ、弱毒性か…WHO委員見解”. YOMIURI ONLINE(読売新聞) (2009年4月30日). 2009年4月30日閲覧。
- ^ WHO | Current WHO phase of pandemic alert(英語)
- ^ 「4空港周辺に一時隔離施設=成田で500室確保-豚インフルで厚労省」時事通信@Yahoo
- ^ 機内検疫では健康質問表へ記入してもらい、サーモグラフィーなどによって体温を計測して問診を行なうとされる。
- ^ 4月29日から「臨船検疫」が始まる。
- ^ 全国の検疫官358人(2009年度)。「水際対策」は深刻な人手不足
- ^ a b 「米政府、緊急事態を宣言 豚インフル、各国へ拡大の様相」共同通信社 47NEWS 2009年4月27日閲覧
- ^ “新型インフルエンザ:広がる動揺 豚すべて殺処分、エジプト政府決定”. mainichi.jp(毎日新聞社) (2009年4月30日(東京朝刊)). 2009年4月30日閲覧。
- ^ “エジプト、30~40万頭の豚すべて処分へ”. yomiuri.co.jp(読売新聞社) (2009年4月30日). 2009年4月30日閲覧。
- ^ “病名を「メキシコ・インフルエンザ」に、イスラエル保健副大臣”. AFPBB News (2009年4月28日). 2009年04月28日 08時27分閲覧。
- ^ “メキシコ、豚インフル感染確認の死者は7人”. asahi.com(朝日新聞社) (2009年4月29日). 2009年4月29日17時1分閲覧。
- ^ “Mexico warns no kissing as 81 dead in swine flu outbreak”. CNN. 2009年4月26日閲覧。
- ^ Lacey, Marc (April 24, 2009). “Fighting Deadly Flu, Mexico Shuts Schools”. The New York Times
- ^ a b c d e f g h i “感染や疑い34か国・地域に拡大…スイス、ペルーでも”. YOMIURI ONLINE(読売新聞社) (2009年4月30日). 2009年4月30日13時12分閲覧。
- ^ “NYで新型インフル感染の疑い数百人”. nikkansports.com(日刊スポーツ) (2009年4月29日). 2009年4月29日18時17分閲覧。
- ^ 「http://www.reuters.com/article/bondsNews/idUSN2548155920090426 Texas says tracks third probable case of swine flu」Reuters 2009年4月25日
- ^ a b “豚インフルエンザによるアメリカ内初の死亡。”. reuters.com (2009年4月29日). 2009年4月29日06時56分(USA)閲覧。
- ^ a b 「6人が豚インフル感染:カナダ」時事通信 2009年4月27日 09:11配信(2009年4月29日閲覧)
- ^ “NZの感染、14人に”. jiji.com(時事ドットコム) (2009年4月29日). 2009年4月29日17時56分閲覧。
- ^ 「豚インフルエンザ、NZでも感染疑い メキシコから帰国の25人」CNN.co.jp 2009年4月26日
- ^ “Hospital em SP examina suspeita de gripe suína no País”. Yahoo Brazil. (2009年4月26日) 2009年4月26日閲覧。
- ^ a b “コスタリカで2人の感染を確認 新型インフル、8カ国目”. 47news.jp(47NEWS) (2009年4月29日). 2009年4月29日17時09分閲覧。
- ^ a b c d “感染、10カ国に拡大=新型インフル”. jiji.com(時事ドットコム) (2009年4月29日). 2009年4月29日閲覧。
- ^ “スペインで2人目の新型インフル感染者”. nikkansports.com(日刊スポーツ) (2009年4月28日). 2009年4月28日20時20分閲覧。
- ^ “Scots tourists in swine flu alert”. BBC. (2009年4月26日) 2009年4月26日閲覧。
- ^ “【豚インフル】スイスでも5人に感染疑い”. msn.com(産経ニュース). (2009年4月27日) 2009年4月27日 22時54分閲覧。
- ^ “Swine flu fears prompt quarantine plans, pork bans”. Associated Press. (2009年4月26日) 2009年4月26日閲覧。
- ^ 「メキシコ帰国者に豚インフル症状 イスラエル人男性」共同通信2009/04/26 19:53配信(2009年4月28日閲覧)
- ^ a b c “16 more tested for swine flu”. Korea Herald(韓国ヘラルド) (2009年4月30日). 2009年4月30日閲覧。
- ^ a b c d e f g 「豚インフルエンザ:公表は1週間後 メキシコ政府の対応混乱」毎日.jp 2009年4月26日
- ^ “メキシコで豚インフル?60人死亡 米で人・人感染確認”. asahi.com(朝日新聞社) (2009年4月25日). 2009年4月25日閲覧。
- ^ “米とメキシコのウイルス、同一の遺伝子 豚インフル”. asahi.com(朝日新聞社) (2009年4月25日). 2009年4月25日閲覧。
- ^ “カナダでも4人の感染確認 豚インフル”. asahi.com(朝日新聞社) (2009年4月27日). 2009年4月27日閲覧。
- ^ 「豚インフルエンザ:急拡大 欧州、中東でも疑い--メキシコから帰国で」毎日jp 2009年4月27日
- ^ 「政府、豚インフルで「対策本部」設置…首相を本部長に」YOMIURI ONLINE 2009年4月28日
- ^ 「豚インフルエンザ:WHO、警戒引き上げ 日本政府、「新型」発生を宣言」毎日jp 2009年4月28日
- ^ a b 「豚インフルエンザ:英でも感染確認 韓国「疑い」例」毎日jp 2009年4月28日
- ^ 「NYで8人感染確認 メキシコ死者81人に 豚インフル」asahi.com 2009年4月27日
- ^ 「新型インフル:キューバとアルゼンチン、メキシコ便を停止」毎日jp 2009年4月29日
- ^ 「新型インフルエンザ:国内3空港で機内検疫開始」毎日jp 2009年4月29日
- ^ “感染、10カ国に拡大=新型インフル”. jiji.com(時事ドットコム) (2009年4月29日). 2009年4月29日閲覧。
- ^ 「「国立感染症研究所」を詐称したブタインフルエンザ関連メールにご注意ください」国立感染症研究所ウエブサイト 2009年4月28日
- ^ 「新型インフル:成田着の日本人女性からA型陽性反応」毎日新聞 2009年4月30日閲覧