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「媒介変数」の版間の差分

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[[数学]]における'''媒介変数'''(ばいかいへんすう)、 '''助変数'''(じょへんすう、{{lang-en-short|auxiliary variable}}; '''補助変数'''、'''パラメータ'''({{lang-en-short|''parameter''}}{{efn2|「傍らの」「補助の」を意味する[[古代ギリシア語|古]]{{lang-el-short|παρά-}} (''para''-) + 「測るもの」を意味する {{lang-el-short|μέτρον}} (''metron'') から来ている}}; '''母数'''、'''径数'''{{efn2|cf. {{ill2|一径数群|en|1-parameter group}}}})は、主たる[[変数 (数学)|変数]]([[自由変数]])に対して補助的に用いられる。異なる変数の間の陰伏的関係を記述す媒介変数はの媒介変数が変化したときの系の振る舞いを見るという意味で「変数」と見ることできるが、対照的に主変数の変化に伴う系の振る舞いを調べたい場合などでは、しばしば助変数は(「値を取り換えることができる」という意味で値は任意にとれるけれども)「定数」として扱われる。
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パラメータは系の同定(あるいは、状態や振る舞いの評価、条件の特定など)に際して有用あるいは重大な役割を果たす系の要素となるものである。

広範な各分野において、より特定の意味で用いられるが、一般に「[[パラメータ]]」は特定の系(事象や対象や状況など)を決定したり分類したりする助けとなる任意の特徴量を言う。つまり、パラメータは系の同定(あるいは、状態や振る舞いの評価、条件の特定など)に際して有用あるいは重大な役割を果たす系の要素となるものである。


== 概観 ==
== 概観 ==
=== 補助的な変数を含む函数 ===
=== 補助的な変数を含む函数 ===
[[函数]]を定義することには、[[変数 (数学)|変数]]を一つまたは多数、{{ill2|函数の引数|en|Argument of a function|label=引数}}として指定することが含まれる。補助変数を含む形で函数を定義することもできるが、ふつう補助変数はその函数のとる引数としてはリストしない。補助変数を含めて考えるとき、実際には一つの函数ではなく函数の[[族 (数学)|族]]の全体を定めているのだと考えなければならない。例えば、一般の[[二次函数]]を <math display="block">f(x):=ax^2+bx+c</math> と宣言する場合、{{mvar|x}} はこの函数の引数を表すもので、{{mvar|a, b, c}} は「任意定数」であるものとするが、この {{mvar|a, b, c}} の値を一つ決めるごとに個々の特定の二次函数が決定されると考えることができるという意味で、{{mvar|a, b, c}} はこの二次函数の族のパラメータである。
[[函数]]を定義することには、[[変数 (数学)|変数]]を、{{ill2|函数の引数|en|Argument of a function|label=引数}}として指定することが含まれる。補助変数を含む形で函数を定義することもできるが、ふつう補助変数はその函数のとる引数としてはリストしない。補助変数を含めて考えるとき、実際には一つの函数ではなく函数の[[族 (数学)|族]]の全体を定めているのだと考えなければならない。例えば、一般の[[二次函数]]を <math display="block">f(x):=ax^2+bx+c</math> と宣言する場合、{{mvar|x}} で、{{mvar|a, b, c}} は「任意定数」であるこの {{mvar|a, b, c}} の値を一つ決めるごとに個々の特定の二次函数が決定されると考えることができるという意味で、{{mvar|a, b, c}} はこの二次函数の族のパラメータである。


函数がパラメータに依存して決まることを陽に表すために、パラメータを函数名に含めることができる。例えば、底 {{mvar|b}}-の[[対数]]を定義するのに定義式として <math display="block">\log_b(x):=\frac{\log(x)}{\log(b)}</math> と書けば、左辺の添字 {{mvar|b}} は今どの対数が用いられているかを指し示すパラメータである。このパラメータはこの函数の引数ではないし、例えば[[導函数|微分]] {{math|(log{{sub|''b''}}&nbsp;''x'')&prime; {{=}} d(log{{sub|''b''}}&nbsp;''x'')/d''x''}} を考えるときなどには「定数」として扱
函数がパラメータに依存して決まることを陽に表すために、パラメータを函数名に含めることができる。例えば、底 {{mvar|b}}-の[[対数]]を定義するのに定義式として <math display="block">\log_b(x):=\frac{\log(x)}{\log(b)}</math> と書けば、左辺の添字 {{mvar|b}} は今どの対数が用いられているかを指し示すパラメータである。このパラメータは函数の引数ではな、例えば[[導函数|微分]] {{math|(log{{sub|''b''}}&nbsp;''x'')&prime; {{=}} d(log{{sub|''b''}}&nbsp;''x'')/d''x''}} を考えるときなどには「定数」として扱。
厳密さを要しない場面では、慣習的な手段として(あるいは歴史的経緯から)函数の定義に現れるすべての記号をパラメータと呼ぶこともあるが、函数の定義においてどの記号を変数と見るかパラメータと見るかという選択を変えれば、その函数がどのような数学的対象であるかということ自体も変化しうる。例えば[[下降階乗冪]] <math display="block">n^{\underline k}=n(n-1)(n-2)\cdots(n-k+1)</math> の概念は、({{mvar|k}} を定数(パラメータ)と見るとき){{mvar|n}} を変数とする[[多項式函数]]を定義するが、({{mvar|n}} をパラメータとして止めるとき){{mvar|k}} を変数とする多項式函数ではない(実際、少なくとも非負整数しか引数に取れない)。このような状況をより厳密に言い表すには、典型的には(パラメータとしたい記号まで全部変数として扱った)多変数の函数 <math display="block">(n,k) \mapsto n^{\underline{k}}</math> を考察の最も基本的な対象として考え、[[カリー化]]���どを用いてより少ない変数を持つ函数を定義することになる。
厳密さを要しない場面では、慣習的な手段として(あるいは歴史的経緯から)函数の定義に現れるすべての記号をパラメータと呼ぶこともあるが、函数の定義においてどの記号を変数と見るかパラメータと見るかという選択を変えれば、その函数がどのような数学的対象であるかということ自体も変化しうる。例えば[[下降階乗冪]] <math display="block">n^{\underline k}=n(n-1)(n-2)\cdots(n-k+1)</math> の概念は、({{mvar|k}} を定数(パラメータ)と見るとき){{mvar|n}} を変数とする[[多項式函数]]を定義するが、({{mvar|n}} をパラメータとして止めるとき){{mvar|k}} を変数とする多項式函数ではない(実際、少なくとも非負整数しか引数に取れない)。このような状況をより厳密に言い表すには、典型的には(パラメータとしたい記号まで全部変数として扱った)多変数の函数 <math display="block">(n,k) \mapsto n^{\underline{k}}</math> を考察の最も基本的な対象として考え、[[カリー化]]などを用いてより少ない変数を持つ函数を定義することになる。


パラメータを含む函数の全体をひとつの「パラメータ付けられた族」(''parametric family''), すなわち函数の添字付けられた族と見ることはしばしば有用である。
パラメータを含む函数の全体をひとつの「パラメータ付けられた族」(''parametric family''), すなわち函数の添字付けられた族と見ることはしばしば有用である。
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=== 解析幾何学 ===
=== 解析幾何学 ===
{{See also|媒介変数表示}}
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* [[陰函数|陰伏関係式]]: <math display="block">x^2+y^2=1.</math>

* [[媒介変数表示]]: <math display="block">(x,y)=(\cos t,\sin t).</math> このときの変数 {{mvar|t}} が媒介変数。
連続写像により写される[[終域]]が[[位相群]]であるとき{{ill2|一径数群|en|1-parameter group}}と呼ばれる。
これらは他の分野では函数と呼ぶことはあるかもしれないが、解析幾何学においてはその[[独立変数]]を媒介変数とする{{ill2|媒介方程式|en|parametric equations}}として特徴づけられる。


=== 解析学 ===
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=== 注釈 ===
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|author= 杉浦光夫
|title= 解析入門 I
|series= 基礎数学
|publisher= 東京大学出版会
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2023年10月21日 (土) 08:06時点における版

数学における助変数(じょへんすう、: auxiliary variable)、補助変数母数径数、あるいはパラメータ: parameter[注 1])とは、主たる変数(主変数)に対して補助的に用いられる変数である。 各分野において特定の意味で用いられることもあるが、一般に助変数は特定の系を決定し、分類し、あるいは特徴付ける助けとなる量を言う。 助変数はそれが変化したときの系の振る舞いを見るという意味で「変数」と見ることもできるが、対照的に主変数の変化に伴う系の振る舞いを調べたい場合などでは、しばしば助変数は(「値を取り換えることができる」という意味で値は任意にとれるけれども)「定数」として扱われる。 パラメータは系の同定(あるいは、状態や振る舞いの評価、条件の特定など)に際して有用あるいは重大な役割を果たす系の要素となるものである。

概観

補助的な変数を含む函数

函数を定義することには、一つまたは複数の変数を、引数英語版として指定することが含まれる。補助変数を含む形で函数を定義することもできるが、ふつう補助変数はその函数のとる引数としてはリストしない。補助変数を含めて考えるとき、実際には一つの函数ではなく函数のの全体を定めているのだと考えなければならない。例えば、一般の二次函数 と宣言する場合、この函数の引数は x であり、a, b, c は(a がゼロでないという条件を満たす)「任意定数」である。この「任意定数」 a, b, c の値を一つ決めるごとに個々の特定の二次函数が決定されると考えることができるという意味で、a, b, c はこの二次函数の族のパラメータである。二次函数のグラフを描いたとき、パラメータ a放物線の形を決定しており、パラメータは個々の二次函数を特徴付ける量である。

函数がパラメータに依存して決まることを陽に表すために、パラメータを函数名に含めてることができる。例えば、底 b-の対数を定義するのに定義式として と書けば、左辺で対数函数の記号 log に付けられた添字 b は今どの対数が用いられているかを指し示すパラメータである。このパラメータは対数函数の引数ではなく、例えば微分 (logb x)′ = d(logb x)/dx を考えるときなどには「定数」として扱われる。 厳密さを要しない場面では、慣習的な手段として(あるいは歴史的経緯から)函数の定義に現れるすべての記号をパラメータと呼ぶこともあるが、函数の定義においてどの記号を変数と見るかパラメータと見るかという選択を変えれば、その函数がどのような数学的対象であるかということ自体も変化しうる。例えば下降階乗冪 の概念は、(k を定数(パラメータ)と見るとき)n を変数とする多項式函数を定義するが、(n をパラメータとして止めるとき)k を変数とする多項式函数ではない(実際、少なくとも非負整数しか引数に取れない)。このような状況をより厳密に言い表すには、典型的には(パラメータとしたい記号まで全部変数として扱った)多変数の函数 を考察の最も基本的な対象として考え、カリー化などを用いてより少ない変数を持つ函数を定義することになる。

パラメータを含む函数の全体をひとつの「パラメータ付けられた族」(parametric family), すなわち函数の添字付けられた族と見ることはしばしば有用である。

解析幾何学

解析幾何学において曲線は区間 I から適当な空間(例えば )への連続写像 f により与えられる。この写像 f は径数付曲線と呼ばれる[1]。 例えば、原点を中心とする半径 1 の円はと表わすことができる。このような表示は径数表示、あるいは媒介変数表示と呼ばれる。原点を中心とする半径 1 の円は三角関数の恒等式を用いればと表わすこともできる。このような表示は陰関数表示(陰伏関係式)と呼ばれる。

連続写像により写される終域位相群であるとき一径数群英語版と呼ばれる。

解析学

解析学において、補助変数に依存する積分をしばしば考える。例えば において t は左辺の函数 F の引数であるが、同時に右辺の積分がそれに依存してきまるという意味でパラメータである。右辺の積分の評価に際して t は一貫して「定数」として扱われる(つまり、その意味ではパラメータであると考えるべきである)。しかし Ft の異なる値に対して値をどう変えるかを知りたいならば t は変数として扱われなければならない。なお x は「積分変数」と呼ばれる見かけの変数 (dummy variable) である(これも紛らわしいことに積分のパラメータと呼ぶことがある)。

論理学

論理学において開述語 (open predicate) に引き渡される(あるいは、開述語が引数にとる)項を「パラメータ」と呼び、その述語の中で局所的に定義されるパラメータを「変項」と呼び分ける場合がある[注 2]。この余分な区別は代入を定義するときの面倒にたいして効果がある(この区別が無いとき、変数の取り込みを避けるためには特別の注意を要する)。大抵の文献では、単に開述語に引き渡される項という意味で変項と呼んで、代入の定義において自由変数束縛変数とを区別するという手段をとる。

関連項目

脚注

注釈

  1. ^ 「傍らの」「補助の」を意味する: παρά- (para-) + 「測るもの」を意味する : μέτρον (metron) から来ている
  2. ^ 例えば Prawitz, "Natural Deduction"; Paulson, "Designing a theorem prover"

出典

  1. ^ 杉浦『解析入門 1』 p.342

参考文献

  • 杉浦光夫『解析入門 I』東京大学出版会〈基礎数学〉。ISBN 4-13-062005-3