「ヴァイオリン協奏曲 (チャイコフスキー)」の版間の差分
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[[ピョートル・チャイコフスキー|チャイコフスキー]]の'''ヴァイオリン協奏曲'''[[ニ長調]] 作品35は、[[1878年]]に作曲された[[ヴァイオリン]]と[[管弦楽]]のための[[協奏曲]]。[[ヴァイオリン協奏曲 (ベートーヴェン)|ベートーヴェン]]、[[ヴァイオリン協奏曲 (メンデルスゾーン)|メンデルスゾーン]]、[[ヴァイオリン協奏曲 (ブラームス)|ブラームス]]のいわゆる3大ヴァイオリン協奏曲に本作を加えて4大ヴァイオリン協奏曲と称されることもある。ちなみに、ヴァイオリン協奏曲をニ調(ニ長調、ニ短調)で作曲した作曲家には、チャイコフスキーのほかに著名なところとして[[ヴァイオリン協奏曲 (ベートーヴェン)|ベートーヴェン]]、[[ヴァイオリン協奏曲 (ブラームス)|ブラームス]]、[[スペイン交響曲|エドゥアール・ラロ]]、[[ヴァイオリン協奏曲 (シベリウス)|シベリウス]]、[[ヴァイオリン協奏曲 (ストラヴィンスキー)|ストラヴィンスキー]]、[[ヴァイオリン協奏曲 (コルンゴルト)|コルンゴルト]]、[[ヴァイオリン協奏曲 (ハチャトゥリアン)|ハチャトゥリアン]]などがいるが、彼らが一様にニ調(ニ長調、ニ短調)で書いた理由のひとつには、ヴァイオリンという楽器の特性としてニ調(ニ長調、ニ短調)が一番よく鳴る構造を持っていることも考慮されたと見られる。チャイコフスキーのヴァイオリン独奏を伴う管弦楽作品としては他に『[[憂鬱なセレナード]]』変ロ短調 作品26などがある。 |
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== 作曲の経緯 == |
== 作曲の経緯 == |
2013年6月29日 (土) 15:33時点における版
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35は、1878年に作曲されたヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲。ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームスのいわゆる3大ヴァイオリン協奏曲に本作を加えて4大ヴァイオリン協奏曲と称されることもある。ちなみに、ヴァイオリン協奏曲をニ調(ニ長調、ニ短調)で作曲した作曲家には、チャイコフスキーのほかに著名なところとしてベートーヴェン、ブラームス、エドゥアール・ラロ、シベリウス、ストラヴィンスキー、コルンゴルト、ハチャトゥリアンなどがいるが、彼らが一様にニ調(ニ長調、ニ短調)で書いた理由のひとつには、ヴァイオリンという楽器の特性としてニ調(ニ長調、ニ短調)が一番よく鳴る構造を持っていることも考慮されたと見られる。チャイコフスキーのヴァイオリン独奏を伴う管弦楽作品としては他に『憂鬱なセレナード』変ロ短調 作品26などがある。
作曲の経緯
1877年、メック夫人から毎年年金を贈られることになったチャイコフスキーは、ジュネーヴ湖畔のクラランに静養に出かけ、ここを拠点にイタリアへも足を延ばして風光明媚な南国の風物に親しんだりした。そのおかげで、この時期、創作意欲が旺盛になり、交響曲第4番や歌劇『エフゲニー・オネーギン』を完成するなどした。翌1878年4月、友人でヴァイオリニストのイオシフ・コテックが、3年前にパブロ・デ・サラサーテが初演して大成功を収めたエドゥアール・ラロのヴァイオリン協奏曲第2番《スペイン交響曲》(Symphonie espagnole )ニ短調作品21の譜面を携えてクラランのチャイコフスキーの許を訪ねてきた。チャイコフスキーは早速この『スペイン交響曲』を研究し、その研究の成果物として本作は着想されたようである。コテックのクララン滞在中の1ヶ月ほどの間に、本作は集中的に書き上げられた。
初演
チャイコフスキーは完成した楽譜を早速メック夫人に送ったが、夫人から賞賛の声を聞くことはできなかった。次いで彼は楽譜を、当時ロシアで最も偉大なヴァイオリニストとされていたペテルブルク音楽院教授レオポルト・アウアーに送ったが、アウアーは楽譜を読むと演奏不可能として初演を拒絶した。
結局初演は、後に、ライプツィヒ音楽院教授となったロシア人ヴァイオリニストのアドルフ・ブロツキーの独奏、ハンス・リヒター指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、1881年12月4日に行われた。
しかし、指揮者も楽団員も作品を好まず、全くの無理解のうちに演奏を行ったため、その演奏はひどい有様であったという。このため聴衆も批評家もこの作品をひどく批判した。特に、エドゥアルト・ハンスリックはその豊かな民族色に辟易し『悪臭を放つ音楽』とまで言い切った。
しかし、ブロツキーは酷評にひるむことなく、様々な機会にこの作品を採り上げ、しだいにこの作品の真価が理解されるようになった。初演を拒絶したアウアーも後にはこの作品を演奏するようになり、弟子のエフレム・ジンバリスト、ヤッシャ・ハイフェッツ、ミッシャ・エルマンなどにこの作品を教え、彼らが名演奏を繰り広げることで、4大ヴァイオリン協奏曲と呼ばれるまでに評価が高まったのである。
この作品は、いち早くその真価を認め、初演を行い、世界中で演奏を行うことによりその普及に尽力した恩人アドルフ・ブロツキーに献呈された。
なお、古くからアウアーが大幅にカットを施した版による演奏が一般的だったが[1]、近年のチャイコフスキー国際コンクールではこの曲を演奏する場合にノーカットを定めている。また、その他でも近年は、ロシアのヴァイオリニストを中心にノーカットで演奏を行うケースが増えている。カット無し完全版のCDは、1979年にギドン・クレーメル盤が日本で最初にリリースされている。
楽器編成
独奏ヴァイオリン、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット、ホルン4、トランペット2、ティンパニ、弦楽五部
作品の内容
- 第1楽章 アレグロ・モデラート − モデラート・アッサイ ニ長調
- ソナタ形式。オーケストラの第1ヴァイオリンが奏でる導入主題の弱奏で始まる序奏部アレグロ・モデラートでは、第1主題の断片が扱われる。やがて独奏ヴァイオリンがカデンツァ風に入り、主部のモデラート・アッサイとなる。悠々とした第1主題は独奏ヴァイオリンによって提示される。この主題を確保しつつクライマックスを迎えた後静かになり、抒情的な第2主題がやはり独奏ヴァイオリンにより提示される。提示部は終始独奏ヴァイオリンの主導で進む。展開部はオーケストラの最強奏による第1主題で始まる。途中から独奏ヴァイオリンが加わりさらに華やかに展開が進み、カデンツァとなる。再現部はオーケストラと独奏ヴァイオリンが第1主題を静かに奏で、徐々に音楽を広げて行き、型通りに第2主題を再現する。ここから終結に向け音楽が力と速度を増してゆく中、独奏ヴァイオリンは華やかな技巧で演奏を続け、最後は激しいリズムで楽章を閉じる。
- 第2楽章 カンツォネッタ アンダンテ ト短調
- 複合三部形式。管楽器だけによる序奏に続いて独奏ヴァイオリンが愁いに満ちた美しい第1主題を演奏する。第2主題は第1主題に比べるとやや動きのある主題で、やはり独奏ヴァイオリン主体で演奏される。第1主題が回帰してこれを奏でた後、独奏ヴァイオリンは沈黙し、オーケストラが切れ目なく第3楽章へと進む。
- 第3楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェシモ ニ長調
伴奏音楽としての利用例
- 映画『オーケストラ!』(2009年・フランス) - ストーリーにおいて中心的な役割を果たし、クライマックスでは演奏シーンが12分間映し出される。
- テレビドラマ『のだめカンタービレ』(2008年・フジテレビ) - 2008年1月5日放送の特別編で、千秋真一が『プラティニ国際指揮者コンクール』の本選の課題曲として指揮。第1楽章と第3楽章がハイライトされた。
- 映画『殺したいほど愛されて』(1984年・アメリカ) - 指揮者夫妻とヴァイオリニストを主要人物とするサスペンスコメディであり、劇中演奏会のメイン曲目および伴奏音楽として、第1楽章、第3楽章を中心に演奏される。吹き替え演奏はピンカス・スッカーマンとレナード・スラットキン指揮ロスアンセルス・フィルが担当。
- 第1楽章
その他
- この曲の第3楽章の第1主題のソロ部分のリズムは、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲第3楽章の第1主題のリズムとそっくりである。これに倣って、山本直純がその2つの曲を交互に繋げた「ヴァイオリン狂騒曲『迷混』」というパロディ音楽を作曲した。