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鉄道車両、とりわけ無動力で[[機関車]]に牽引される客車の場合、[[暖房]]装置については[[蒸気機関車]]が発生させる[[水蒸気]]による'''蒸気暖房'''を採るのが一般的であった。そのため、[[鉄道の電化|電化]]されたが客車の改修が行われない等の理由で蒸気暖房を採用していた地区では[[電気機関車]]に[[蒸気発生装置]]を積んだものや、[[暖房車]]と呼ばれる蒸気供給用の[[ボイラー]]車を連結し、暖房用蒸気を客車に送って暖房源としていた。また、例外的に電化区間でかつ長大編成を客車で組んだ[[東海道本線]][[湘南電車|東京近郊区間]]などでは[[電車]]のそれと同じく電気機関車から電力供給を受け[[椅子|腰掛]]下に電熱器をおく'''電気暖房方式'''も使用された。 |
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しかし、冷房装置についてはクーラーなど電気を使用した冷房機器が発達したことから、それまで想定されていなかった大きな電力を必要とするために発電機を車内に設ける必要が生じた。 |
しかし、冷房装置についてはクーラーなど電気を使用した冷房機器が発達したことから、それまで想定されていなかった大きな電力を必要とするために発電機を車内に設ける必要が生じた。 |
2009年6月5日 (金) 16:58時点における版
電源車(でんげんしゃ)とは、主として他車に電力を供給するために発電機を搭載した鉄道車両・自動車のこと。
鉄道車両
概要
鉄道車両の場合、客車の種類の一つ。運転機器以外の、エア・コンディショナー(冷房装置)等のサービス用電源を搭載するための鉄道車両の呼称である。
登場の背景
鉄道車両、とりわけ無動力で機関車に牽引される客車の場合、暖房装置については蒸気機関車が発生させる水蒸気による蒸気暖房を採るのが一般的であった。そのため、電化されたが客車の改修が行われない等の理由で蒸気暖房を採用していた地区では電気機関車に蒸気発生装置を積んだものや、暖房車と呼ばれる蒸気供給用のボイラー車を連結し、暖房用蒸気を客車に送って暖房源としていた。また、例外的に電化区間でかつ長大編成を客車で組んだ東海道本線東京近郊区間などでは電車のそれと同じく電気機関車から電力供給を受け腰掛下に電熱器をおく電気暖房方式も使用された。
しかし、冷房装置についてはクーラーなど電気を使用した冷房機器が発達したことから、それまで想定されていなかった大きな電力を必要とするために発電機を車内に設ける必要が生じた。
それ以前から、車内の照明等に使用するために車軸の回転を用いて発電する車軸発電機と蓄電池はあったが、「個々の車両で用いる電力を賄う」という観点から車軸発電機では発電能力が低く、また、技術的な問題から蓄電池も小型で大容量な物が積載出来なかった事情もあった。そのため、明治時代には蓄電池を積載し、個々の客車に電力供給を行った蓄電池車という車両も存在した。
冷房装置については主に食堂車・一等展望車等一部の車両では車軸回転を用いた車軸駆動冷房装置や蒸気の力を用いるものもあったとされる。だがそれらは、運行時の環境に依拠するものであり、かつ保守に手間が掛かることから、必ずしも使い勝手が良くないものであったといわれる。それゆえ、運行時の環境に依拠しない電力による冷房装置を必要としたのである。
1950年代には電車ではあるが、151系電車において固定編成の理念が特急用車両に採り入れられた。また、この151系電車では全車両にエア・コンディショナーが整備されていた。
しかし、架線からの電気をそのまま(正確には電動発電機等により架線電力をサービス電力に変換する)利用できる電車と異なり、集電装置を持たない客車では車軸発電機によるものでは到底賄えず、安定した電力の��給が出来ないこともネックとなった。
そこで、ヨーロッパ各国の鉄道で大規模な電力を使用するために電源集中方式が採用されていたこともあり、日本ではカシ36形食堂車で試行された電気レンジなどの調理機器による電力消費も考慮し、サービス電源供給車両という大容量発電機を搭載した車両が設計・製造された。
登場とその発展
当初登場した20系客車では設計当初より「利用客への騒音防止」の観点というより、荷物列車の一部としての役割を担うことから、荷物車として荷物専用スペースを設けたマニ20形が製造されたが、次期製造車両からは荷物室の荷重を増大し、車長を延ばしたカニ21形が標準形として量産された。
20系客車登場時は、運行区間であった山陽本線でも電化されていない区間も存在したため、ディーゼル発電機を採用し、内燃力発電を行うこととした。変わったところでは、直流電化区間では架線からパンタグラフにより集電し、電動発電機からも電力を供給したカニ22形が存在したが、この車両はディーゼル発電機も積載していた関係で機関車並みの重量を持っていたことから運用列車が限られたため、後に電動発電機・パンタグラフをはずしている。
また、多層建て列車等で20系客車が運用されることになると1両では電源車が不足することから、小容量のディーゼル発電機を積載した簡易電源車と称されるマヤ20形が旧形客車から改造製作された。
しかし、編成中にデッドスペースが出来ることや、分割先での電源車を連結する手間もあり、臨時列車・団体専用列車に用いられる前提で座席車として製造された12系客車では、比較的小型のディーゼル発電機を編成両端の緩急車に設置しそれをこの車両の代替として運用することとなった。この分散電源方式は20系客車の後継車両として設計・製造された14系客車でもこの方式を採用した。
しかし、1972年に発生した北陸トンネル火災事故で分散電源方式の危険性が指摘され、旅客を乗せる車両とは別に発電機を搭載する事業用車の運用が決定された。このため客車の基本的な設計は14系客車を元にした24系客車が新規に製造され、在来の14系客車でもディーゼル発電機の防火工事が行われた。
ちなみに製造初期の24系客車ではマヤ24形と形式上職用車として分類されたが、後に20系客車の代替により荷物列車としての運用があることから、荷物合造車としてカニ24形も製造された。また、予備用として20系のカニ22形を改造したカニ25形が製作されている。
後年の改造であるが、静止形インバータ(SIV)を使用し直流電流による電源供給が行われたこともあった(スハ25形)。
また、一般には言及されないがお召し列車に用いられる460号供奉車もこの範疇に含まれる。これについては、当該項目を参照されたい。
構造
先に述べたように、サービス電源を供給するためにディーゼル発電機及び変電設備を設置している。その為、しかるべく重く、そのため車両重量は総じて重くなることが多い。
また、24系客車までは荷物列車としての側面があった関係で荷物室を設けた車両が多かったが、東日本旅客鉄道(JR東日本)が設計・製造したE26系客車のカハフE26形車両ではE26系客車が全て2階建車両として設計したことから、1階部分にディーゼル発電機を設置したラウンジカーとして使用されている。これにより、定員は0人であるものの、乗客に供するスペースを有することから普通車扱いとなった。
例外的な使用例
なお、客車だけではなく電車にも電源車が設定されたことがある。これらはやや例外的であるが、客車のそれに近い運用を行うためである。総じて非電化区間に電車が乗り入れる際に実施された事例である。
たとえば、「草津」の運行当初は臨時列車であったこともあり、80系電車を用いて運行されたが、当時電化されていなかった長野原線内では蒸気機関車により80系電車を牽引することとなった。その際、蓄電池を積んだ客車を連結したとされる。この様な事例は、101系以降のいわゆる国鉄新性能電車では実施できなかったとされる。
そのため、長らく途絶えていたが、エル特急「有明」で485系電車や783系電車「ハイパーサルーン」が、かつて非電化であった豊肥本線に乗り入れる際に車掌車「ヨ8000形」にディーゼル発電機を設置した車両や12系客車の緩急車「スハフ12形」を用い、サービス電源を供給するという手法を用いる事例があり、運転開始当初のみではあったが、小海線で運転された臨時列車「葉ッピーきよさと」が同様な手法を採った。
同じく営業運転前の試運転風景ではあるが、285系電車「サンライズエクスプレス」が24系客車の電源車を連結して交流電化区間への試運転を行っている。
現在においても運転される例として、485系電車の「リゾートエクスプレスゆう」には専用の改造を施されたマニ50形が用意され、水郡線など非電化区間への乗り入れの際に使用し、通常は鉄道車両の検査などで工場へ回送される車両に対する控車として使われている。
また、特異な事例としては、直流専用として製造された151系電車を用い、関門トンネルを越えて鹿児島本線博多駅まで乗り入れる際、交流で電化がされていた同線内のために、動力は電気機関車に牽引されることとし、サービス用電源は421系電車のパンタグラフ付き電動車であるモハ420形車両を早期落成させて、これを電源車サヤ420形として使用した事例がある。
気動車での事例
「サービス電源を供給する」と言う範疇で言えば、181系電車を範とし、日本初の特急形気動車であったキハ81系気動車ではサービス電源を供給する為、先頭車両であるキハ81形車両及び食堂車であるキサシ80形車両ではディーゼル発電機を搭載することとなった。このうち、キサシ80形車両では床下に設けられ、先頭車両であるキハ81形車両は運転席前部にあるボンネットに設けたが、改良型となったキハ82系気動車では貫通型先頭車両としたキハ82形車両では運転席後部に床下にサービス電源発生用発電機を設けた。この形態は以降旧国鉄が製造した特急形気動車で踏襲されるが、国鉄分割民営化を控え四国向けに製造されたキハ185系気動車では個々の車両で冷暖房装置を完結させる機関直結式冷房装置に改めたため、このような特定の電源車両を要する必要がなくなっている。
また、急行形車両においてはキハ58系気動車の冷房化に際して製造されたキハ65形気動車の事例もあるが、これも冷房化とのかかわりによるものである。
電源車が設定された形式
本節では客車のみに限定する。
- 国鉄20系客車 電源荷物車:マニ20・カニ21・カニ22 簡易電源車:マヤ20 電源車:カヤ21
- 国鉄24系客車 電源車:マヤ24・カヤ24 電源荷物車:カニ24・カニ25・マニ24 電源座席車:スハ25
- JR東日本E26系客車 電源座席車:カハフE26 予備電源車:カヤ27
- 皇室用客車 供奉車:460号
- 台鉄電源荷物車 ディーゼル機関車牽引の莒光号他空調付き客車で使用
自動車
概要
自動車の場合、主に災害等で電力が供給できない場合、ないしは映画、テレビ、写真などのロケーション撮影や、イベントなどで臨時に大電力を供給する必要が生じた場合に、発電機を積んだ車両がこれにあたる。
この場合、発電機の駆動に専用エンジン、もしくはPTOを用いる特種用途自動車を指し、軽トラックの荷台にガソリン発電機を置いた程度(固定された発電機とカプラーやケーブルを持たない)では電源車とは呼べない。
また、空港などで見られる航空電源車も存在する。駐機中のエアコン、照明などのサービス用や、メインエンジンの始動用の電力を供給するのが目的である。
これは、航空機(主に旅客機)がエンジンを切ってしまうと電力が得られないためであり、発電器を装備する車両と、地上電源からの電力を中継する車両がある。現在の中型機以上にはAPUが装備されており、短時間の折り返しなどでは電源車を不要とした。