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{{複数の問題
| 出典の明記 = 2021年6月13日 (日) 10:05 (UTC)
| 独自研究 = 2021年6月13日 (日) 10:05 (UTC)
}}[[画像:Bruce McCandless II during EVA in 1984.jpg|right|thumb|240px|1984年、スペースシャトル・[[スペースシャトル・チャレンジャー|チャレンジャー号]]による[[STS-41-B]]ミッションで人類初の命綱なしの船外活動を行なった[[ブルース・マッカンドレス2世|ブルース・マッカンドレス]]飛行士。[[有人操縦ユニット]] ([[:en:Manned Maneuvering Unit|MMU]]) を使用して[[宇宙遊泳]]を行なっている。]]

'''宇宙飛行士'''（うちゅうひこうし）とは、地球の[[大気圏]]外において、宇宙船の操縦や科学実験などの業務を行う人員<ref name=":0">{{Cite web|和書|title=宇宙飛行士とは|url=https://kotobank.jp/word/%E5%AE%87%E5%AE%99%E9%A3%9B%E8%A1%8C%E5%A3%AB-440678|website=コトバンク|accessdate=2021-11-19|language=ja|first=日本大百科全書(ニッポニカ),百科事典マイペディア,デジタル大辞泉,精選版|last=日本国語大辞典}}</ref>。

観光目的の[[宇宙飛行関係者]]とは区別される<ref name=":0" />。

== 定義 ==
[[画像:Toyohiro-Akiyama-First-Japanese-Person-in-Space-1990.png|thumb|160px|[[秋山豊寛]]（1990年）]]
[[画像:Mamoru_Mohri_portrait.jpg|right|thumb|160px| [[NASA]]での[[毛利衛]]（2000年）]]
[[画像:United States Air Force Astronaut Badge.svg|thumb|160px|アメリカ軍の{{ill2|宇宙飛行士記章|en|United States astronaut badges}} (Astronaut Badge)]]
[[ロシア]]で宇宙飛行士訓練をした宇宙飛行士をコスモノート（{{Lang-ru-short|космонавт}}<small> カスマナーフト</small> kosmonavt）、[[アメリカ合衆国]]で訓練をした者をアストロノート（{{Lang-en-short|astronaut}}）、[[中華人民共和国|中国]]で訓練をした者をタイコノート（宇航員、太空人）という。そのため、アメリカ人であっても、アストロノートとコスモノートがいる。ちなみに、アメリカ人初のコスモノートは、[[ソユーズTM-11]]に搭乗したノーマン・サガード宇宙飛行士である。日本人初のコスモノートは[[秋山豊寛]]、日本人初のアストロノートは[[毛利衛]]である。

ロシアやアメリカではそれぞれ、宇宙飛行士の資格を設けているが、宇宙飛行士であるかどうか世界に共通するような厳密な規定や定義はない。今のところ（2011年において）は「1度でも宇宙に行った人」が宇宙飛行士であるとしているようであるが、何が[[宇宙飛行]]であるかの判断には幅がある。たとえばロシアは衛星ミサイル・衛星爆弾は軌道を一周しなければ[[宇宙法]]に抵触しないとの立場を採っているが、'''[[有人飛行]]については'''[[弾道飛行]]も宇宙飛行であるとしている{{efn|旧ソ連による[[ユーリ・ガガーリン]]の世界初の有人宇宙飛行は周回飛行だったためこの点は問題ないが、帰還時にパラシュートで脱出して着地する方式が当時の[[国際航空連盟]]の規定「宇宙飛行士は打ち上げから着陸に至るまで宇宙船の中に居なければならない」に反しており、旧ソ連はこの事実を隠蔽していた。}}。

日本人に関しての報道では、かつての[[宇宙開発事業団]]や、同事業団が東京大学[[宇宙科学研究所]]・科学技術庁[[航空宇宙技術研究所]]と統合した[[JAXA]]（[[宇宙航空研究開発機構]]）所属の飛行士を「宇宙飛行士」と主に指す。またロシアのソユーズロケットに搭乗し日本人初の宇宙飛行を果たした[[TBSテレビ]]の[[記者]][[秋山豊寛]]、また、その補欠であった[[菊地涼子]]の両飛行士は旧ソ連宇宙飛行士資格を取得しているため、現在もソユーズ宇宙船に乗る資格がある。

[[国際航空連盟]]では[[カーマン・ライン]]と呼ばれる[[海抜]][[高度]]100km以上、[[アメリカ軍]]では50海里（50ノーティカルマイル、92.6km）、[[連邦航空局|アメリカ連邦航空局]]では80km以上の高空を[[宇宙空間]]と定義する。アメリカ軍では定義以上の高度を飛行した機体の全搭乗員（機長・操縦士に限らず航法士などでもよい、全ての当該機乗組員）に[[アメリカ空軍の記章|宇宙飛行士記章]] (Astronaut Badge) を授与している。

初期の宇宙飛行では無事に帰ってくることが最優先され、過酷な打ち上げに耐える体力と不測の事態への対処能力が重視された事から、主に軍の[[戦闘機]][[パイロット (航空)|パイロット]]や[[テストパイロット]]から選抜されていた。近年では科学研究が主体になり、研究者が訓練を受けて宇宙飛行士になるケースが多いが、船長や操縦士としてパイロットが選抜されている。また[[ロボットアーム]]の操作にはパイロットとしてのセンスが役に立つとされる<ref>[https://koyamachuya.com/column/real/74534/ 〈宇宙兄弟リアル〉金井宣茂／宇宙飛行士　〜宇宙飛行前夜 それは最初の一歩〜（前半）] - [[宇宙兄弟]]公式サイト</ref>。

なお過去に何十人もの宇宙飛行士が[[宇宙開発における事故|飛行任務中の事故]]で殉職しているが、多くは打ち上げ時か[[大気圏再突入]]時の事故によるもので、厳密に宇宙空間で死亡した人間は[[ソユーズ11号]]の空気漏れ事故で[[窒息]]死した3人の搭乗員のみである。

<gallery mode="packed" style="text-align: center;" caption="ギャラリー" widths="200" heights="220">
画像:Gagarin in Sweden.jpg|[[ユーリイ・ガガーリン]]
画像:Neil Armstrong pose.jpg|[[アポロ計画]]での[[ニール・アームストロング]] 
画像:Yang Liwei.jpg|[[楊利偉]]
</gallery>

== 米国での区分 ==
最近の[[スペースシャトル]]などの運用にあたっては、下記の4つに業務が分かれている。
* [[船長 (スペースシャトル)|船長]]（Commander (CDR)、コマンダー）
* [[操縦手 (スペースシャトル)|操縦手]]（Pilot (PLT)、パイロット）（船長は操縦手より選出される）
* [[搭乗運用技術者]]（Mission Specialist (MS)、ミッションスペシャリスト）
* [[搭乗科学技術者]]（Payload Specialist (PS)、ペイロードスペシャリスト）

昨今、行われるようになった宇宙旅行などで運用に関係のない搭乗者にも呼称が与えられている。
* [[宇宙飛行関係者]]（Spaceflight participant、商用の宇宙旅行者、教師など）

== 精神衛生 ==
精神医学を専門とする[[カリフォルニア大学サンフランシスコ校]]の[[ニック・カナス]]教授は、[[ニューヨーク・タイムズ]]紙（2007年2月7日付）で、以下のようなことを指摘した{{efn|[[リサ・ノワック]]による事件直後、その事件を視野に入れつつ、宇宙飛行士の精神衛生全般に関して解説。}}。
{{quotation|
: 「宇宙から帰還した飛行士の中には、長年の目標を失い、一種の“[[燃え尽き症候群]]”に陥る人がいる」
: 「彼らは（訓練のおかげで）宇宙でのストレスにはうまく対処はするが、飛行の後の（地上での）現実にはうまく適応できなくなる事例がある。また、[[感情]]や[[人間関係]]の問題については、いつも上手に対処できるというわけではない」}}

燃え尽き症候群の例としては、[[アポロ11号]]で人類として初めて月に到達した[[バズ・オルドリン]]{{efn|[[ニール・アームストロング]]とともに到達。}}は地球帰還後に[[鬱病]]を患ったことが挙げられる<ref name="tachibana">[[立花隆]]『宇宙からの帰還』中央公論社　1983　中公文庫、1985 </ref>。

また、感情や人間関係の問題に必ずしも上手に対処できるわけではない例としては、[[リサ・ノワック]]の事例がある。

== 無重力の影響 ==
[[File:Iss016e008792.jpg|thumb|{{ill2|宇宙空間での睡眠|en|Sleep in space}}。]]
宇宙飛行士は重力の影響を受けない環境に長期間さらされるため、任務を続ける間、身体にさまざまな変化が現われてくる。多くの場合、それは地上へ帰還した際に不都合を招くものとなる。

{{main|無重量状態}}
* {{ill2|宇宙空間での睡眠不足の影響|en|Effects of sleep deprivation in space}}

== 宇宙線の影響 ==
[[画像:ISS Truss structure.jpg|right|thumb|200px|トラスと船外活動中の宇宙飛行士]]
宇宙空間では、[[宇宙線]]により健康上極めて重大な障害を受ける可能性がある。また、その観点から各種防護対策が必要である。

{{main|自然放射線#宇宙線によるもの}}

== スカウト・身分 ==
[[画像:Kimiya Yui NASA official portrait.jpg|right|thumb|200px|元航空自衛官の[[油井亀美也]]]]
アメリカやロシアの場合宇宙飛行士の初期において多くは[[空軍]]、[[海軍]]の[[テスト・パイロット]]から選抜された<ref name="tachibana"/>。彼らは[[軍]]に籍を置いたまま出向の形で[[NASA]]に所属する。NASA職員も国家公務員であるため軍を退職する必要はなく、任務が終了したり適性を失ったりすると軍に復帰するか、操縦士であれば操縦訓練の教官やNASAが運用する航空機の操縦士として働くのが一般である。彼らは宇宙飛行士としては元の軍の[[階級]]で呼称される。

採用試験では国際基準に基づいた医学検査が行われるが、各国の申し合わせにより詳細は非公開としている<ref name=":2">{{Cite web|和書|title=JAXA「初の学歴不問」宇宙飛行士試験で、意外な“真の課題”が不合格者の声で露呈 |url=https://diamond.jp/articles/-/320900 |website=ダイヤモンド・オンライン |date=2023-04-09 |access-date=2023-04-09 |language=ja}}</ref>。ただしNASAでは職員が利用する内部医局でアドバイスを行っているという<ref name=":2" />。

現代では自然科学系の大学を卒業し、一定期間の実務経験を有する技術者・科学者・医師から、チームワークやリーダーシップの実績、コミュニケーション能力など「[[ライトスタッフ (曖昧さ回避)|ライトスタッフ]]」と呼ばれる資質を有する者を選抜している<ref>[https://www.jaxa.jp/press/2020/10/files/20201023-1_requirement01.pdf 宇宙飛行士募集に関する資料集]</ref><ref name=natgeo_001>[https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/101600607/ 宇宙飛行士になれるのはどんな人？ NASAの選考責任者に聞く] - [[ナショナルジオグラフィック (雑誌)|ナショナルジオグラフィック]]</ref>。NASAでは応募者が増えすぎたことや結果的に選ばれているためとして、2020年から[[修士号]]が必須となった<ref name=natgeo_001 />。また応募する者の傾向としては、南極観測隊や自然環境での救助活動の経験者、[[自家用操縦士]]を有する者が多いという<ref name=natgeo_001 />。なお現在のNASAでは[[T-38 (航空機)|T-38]]での訓練を実施している都合上、操縦士を欲している<ref name=natgeo_001 />。

[[宇宙航空研究開発機構|JAXA]]が2021年に募集した要項は、日本国籍、[[身長]]149.5～190.5cm、矯正視力1.0以上、3年以上の社会人に相当する実務経験、学歴不問としている<ref name=":1">{{Cite web|和書|title=JAXAの宇宙飛行士、学歴不問に 月探査を視野に13年ぶり募集：朝日新聞デジタル|url=https://www.asahi.com/articles/ASPCM049QPCLULBJ01S.html|website=朝日新聞デジタル|accessdate=2021-11-19|language=ja}}</ref>。資質としては協調性やリーダーシップのほか、社会への発信力など広報能力も重視される<ref name=":1" />。学歴不問であり修士号や博士号は実務経験としてカウントされるが、筆記試験は大学教養レベルや国家公務員の採用試験レベルとされる<ref>{{Cite web|和書|title=新たな宇宙飛行士選抜試験の募集要項公表 JAXA|url=https://web.archive.org/web/20211119024925/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211119/k10013353861000.html|website=NHKニュース|accessdate=2021-11-19|last=日本放送協会}}</ref>。ただし視力については以前と同じ基準で審査しているという予測もあり、試験後に補足を発表した<ref name=":2" />。2008年までは、自然科学系の学士号、実務経験は自然科学系に限定されていた<ref name=":2" />。

日本では[[自衛官]]がJAXAの宇宙飛行士選抜試験を受けることは可能ではあるが<ref>{{Cite news|url=http://www.asagumo-news.com/news/200903/090305/09030502.html|title=宇宙飛行士候補に油井２空佐 全日空の大西氏と　パイロットで初めて|publisher=[[朝雲新聞]]|date=2009-03-05|archiveurl=https://web.archive.org/web/20110707175807/http://www.asagumo-news.com/news/200903/090305/09030502.html|archivedate=2009-03-12}}</ref>、合格した場合にはJAXAの職員となるため、自衛隊を退職しなければならない。JAXA職員は公務員でないため、自衛隊との兼業はできない。2015年までに[[油井亀美也]]と[[金井宣茂]]が宇宙飛行士に選ばれ退職している<ref>[http://www.kure-news.com/news/000474.html 呉インターネット写真ニュース / 金井医官きょう退職]</ref>。両名ともJAXAに在籍したままであるが、自衛隊に復帰できるのかは不明。

JAXAの職員や[[海上保安官]]も要件を満たせば受験は可能で、2008年の試験ではJAXAの地上管制官と海上保安庁のパイロットが最終選考まで残った（[[ドキュメント宇宙飛行士選抜試験]]）。

NASAでは定年や異動による自然減に対応するため常時12名前後の現役として待機させており、これに合わせアメリカ政府職員の求人サイト（USAjob.gov）を通じて、求人を行っている<ref>[https://www.usajobs.gov/ USAJOBS - The Federal Government’s Official Jobs Site]</ref>。また軍のパイロットからの選抜も別途行われている。2020年の募集では1万2040人の応募があった<ref name=natgeo_001 />。

== 宇宙飛行士の階級、年収 ==
{{main|{{ill2|宇宙飛行士の階級・役職|en|Astronaut ranks and positions}}}}
宇宙飛行士の平均年収は、各国の宇宙開発機構によって大きく異なるが、概ね下記のような金額である。{{Citation needed|date=2022年6月}}
*JAXA(日本) - 800万円～1000万円
*NASA(アメリカ) - {{ill2|米連邦政府人事管理局|en|United States Office of Personnel Management}}によって、毎年基本額が決められている。NASAの情報では、「連邦政府の一般給与表のGS-12からGS-13に基づく」とされている（2018年度のGS-12のステップ1は6万3600ドル。その後の働き方次第で昇給する。）<ref>{{Cite web |url=https://www.businessinsider.jp/post-162458 |title=NASAの宇宙飛行士、年収はいくら？ |access-date=2024-11-12 |last=Mosher |first=Dave |date=2018-02-21 |website=BUSINESS INSIDER JAPAN |language=ja}}</ref>。
*[[中国国家航天局|CNSA]](中国) - 3000万円
*[[ロスコスモス]](ロシア) - 1500万円

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Notelist}}
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}
== 関連項目 ==
{{Commons|Category:Astronauts}}
* [[宇宙飛行士一覧]]
* [[日本人の宇宙飛行]]
* [[宇宙医学]]
* [[宇宙に行った動物]]
* [[宇宙名誉勲章]]、{{ill2|アストロノート・バッジ|en|Astronaut Badge}}
* [[宇宙ロボット]]
* [[宇宙酔い]]
* [[宇宙空間でのセックス]]
* [[アストロバン]] - NASAで使用される宇宙飛行士を訓練施設や搭乗機まで輸送する乗り物
* [[TP-82]]（ТП-82、СОНАЗ） - ソビエト連邦の宇宙飛行士が装備した銃。帰還時に動物などから身を守り、猟で肉を手に入れ、救援に来た人たちに信号弾で連絡し、ストック部は鉈として草を払い道をつくり・木材を切り出し・薪やシェルターを作るための工具として多目的に使用できる。以前は[[マカロフ PM]]を装備していたが[[ボスホート2号]]の救援時に十分な性能を発揮できなかったことから開発された。
* {{ill2|レスキューボール|en|Personal Rescue Enclosure}} - 宇宙空間でスペースシャトルから緊急脱出するために考案された救命装置。実際には装備されなかった。
* {{ill2|宇宙飛行士の訓練|en|Astronaut training}}、[[嘔吐彗星]]

;フィクションの宇宙飛行士
{{main|{{ill2|架空の宇宙飛行士一覧|en|Lists of fictional astronauts}}}}
* [[ワン・フー]] ‐　明の時代に宇宙に行こうとしたというアメリカ発祥の伝説がある。

;組織
* {{ill2|NASA Astronaut Corps|en|NASA Astronaut Corps}}
* {{ill2|European Astronaut Corps|en|European Astronaut Corps}} - ヨーロッパの欧州宇宙機関（ESA）での宇宙飛行士関係者の組織。
* {{ill2|中国人民解放軍航天員大隊|zh|中国人民解放军航天员大队}} ‐ 中国の宇宙飛行士関係者の組織。

== 外部リンク ==
* {{Kotobank}}

{{宇宙飛行}}

{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:うちゆうひこうし}}

[[Category:宇宙]]
[[Category:宇宙飛行士|*]]
[[Category:宇宙開発]]
[[Category:交通関連の職業]]
[[Category:科学関連の職業]]
[[Category:天文学に関する記事]]

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