
連載
女の気持ち
読者の皆様からの投稿欄「女の気持ち」。「男の気持ち」「わたしの気持ち」とともに出来事や悩みなど「時代の心」を映しています。
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ギョーザ 東京都千代田区・遠山昌子(パート・44歳)
2025/3/13 02:01 526文字「ギョーザ包むの上手ですね。早いし、きれいだし」 半年前から調理補助としてパートで勤めているレストランのシェフにほめられた。 何でだっけ? そうだ。夕食の準備をする母親の隣にずっといたからだ、と思い出した。 小学生のころから、母親が夕食の準備をするときはいつも隣にいた。5人家族でギョーザも50個作
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母のカレー 山口県下松市・岩本ひろみ(主婦・76歳)
2025/3/12 05:12 548文字先日、母の十七回忌の法要が営まれた。その後の会食の席では母の思い出話に花が咲いた。 母は陽気で社交的な人だったが、家事は好きではなく農作業で多忙なこともあってか料理には熱がなかった。しかし、そんな母が時々作ってくれるカレーは、幼い私と弟の大好物だった。集落で1軒だけの店で手軽に買えるサバ缶を使った
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今夜も2人で 鳥取県江府町・福田智恵(非常勤講師・69歳)
2025/3/12 05:12 549文字週に2回、73歳の夫と2人で卓球に行く。夜の8時50分ごろから10時まで、もう10年近く続いている。 卓球に行く夜は、98歳になるしゅうとめに早めにお風呂に入ってもらう。下着や寝間着は用意するが、自分で入ることができ、手がかからない。それでも風呂から上がり、自室に入るまでを確認して出かける。少し遅
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明日のために 愛媛県宇和島市・藤堂千佳子(主婦・64歳)
2025/3/11 05:10 561文字なんで同じ場所、同じ宿にずっと滞在するのだろうと思っていた。退職後に車の免許��取った父は母を伴い、自家用車で全国あちこちを巡っていたものだ。それがある時から遠出をするわけでもなく、比較的近場に長期滞在するようになったのである。 1週間以上もいるとご飯も一周してまたの月曜日は同じメニューになるらしい
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心豊かに 福岡県水巻町・植山和代子(主婦・82歳)
2025/3/11 05:09 571文字暗い窓が少しずつ明るくなっていく。これから活動的な一日が始まると思うと、とてもうれしくなる。夜になると温かい床が待っている。これから夢の世界へ入っていくと思うと、これまたうれしい。 変わらないようでも同じ日は二度とこないと思えば記録したくなる。買い物をして、もらったレシートを食料品とその他に分類し
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はっさく 高松市・植村里美(パート・61歳)
2025/3/9 02:01 564文字私ははっさくに特別な思いがある。小学3年生のある日、給食に四つ切りで皮の付いたはっさくが出た。私は見るなり「あっ、はっちゃん(妹)には無理だ」と思い、そそくさと給食を食べ終え教室を飛び出して、木造の校舎の階段を駆け下りた。そして別棟の1年生の教室に入り、妹の姿を探した。そばに行き、妹のはっさくの皮
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お赤飯 兵庫県西宮市・湯舟幸代(家庭医・49歳)
2025/3/8 05:09 556文字お赤飯を見るたびに思い出す出来事がある。実家には庭があり、放課後に友達がよく遊びに来ていた。小学5年生の頃、クラスの男女が何人かで遊びに来た時、母が「味見して」とお赤飯を持ってきた。その翌日、私が初潮を迎えたという事実が、クラス全員の知るところとなった。あぁ、何というデリカシーのなさ。 とはいえ、
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父に会いたい 北九州市八幡西区・宮地迪子(81歳)
2025/3/8 05:09 563文字父は商船会社の乗組員として人生の大半は海上でした。我が家の壁には大きな世界地図が張ってあり、父が行った港に赤丸を付けるのが末っ子の私の役目でした。7、8歳でパナマ運河やジブラルタル海峡、ブラジル・サントスなどの場所を覚えました。 ハイテクが進んだ現在、大型船でも乗組員は以前より少ないと聞きましたが
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1杯のさゆ 千葉県市原市・梅津華織(中学校教員・52歳)
2025/3/8 02:01 539文字もう40年以上前、小学生だった私は祖母に「今までで一番おいしかったものは?」と尋ねた。何十年も生きて、海外旅行にも行ったことがある祖母。きっと私の知らないすてきなものを教えてもらえると思ったからだ。 しかし、祖母の答えは「お湯」。聞き間違えたかと尋ね直す私に、祖母は1945年3月10日の東京大空襲
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よいしょ! 北九州市若松区・了戒恵理子(介護福祉士・61歳)
2025/3/7 05:08 548文字リハビリ特化型のデイサービスで働いている。お元気な高齢者の皆さんとのにぎやかな日常が私の毎日だ。なにげないやりとりや出来事に心が温かくなったり、ほころんだり、私の人生に彩りをいただいている。 平均年齢80代後半の利用者さんたちは「よいしょ」「どっこいしょ」とかけ声をかけながら、熱心に運動に取り組ん
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夫婦のでこぼこ 北九州市八幡西区・星子陽子(74歳)
2025/3/6 05:23 539文字1月31日の本欄で杉田氏の「正月閑話」を読ませていただいた。ご夫婦の小さなでこぼこの様子が書かれていた。読むうちにあまりにもわが家とよく似た光景だったので、夫に「あなた投稿したの?」と思わず振り向いて聞いてみた。「いいえ」と否定していたが、夫は先に記事を読んでいて自分でも似ていると思ったに違いない
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6人の旅 東大阪市・田中えみこ(主婦・60歳)
2025/3/4 05:09 569文字「河津桜を見に行こう」と、還暦を記念する旅をした。同行したのは高校時代の友人5名。長い付き合いである。 さかのぼること42年前、金沢・輪島へ卒業旅行をした。家庭にパソコンがなかった時代。どのように旅行計画を立てたのか、まったく思い出せない。ガイドブックや時刻表とにらめっこして、宿泊先に電話したり、
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ひな飾り 長崎県諫早市・江川泰子(アルバイト・68歳)
2025/3/3 05:08 566文字幼少の頃の私のひな飾りはない。亡母はお内裏様とおひな様を食材でこしらえていた。ウズラの卵で顔、卵焼きで着物、扇はニンジンで。眺めては笑みを浮かべていた。 時は過ぎ、私の娘のひな祭りには夫と私の両亡母は昔買えなかった反動からか、2人で相談しながら7段飾りを選んだ。私は、こんなに立派なものをと気の毒だ
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時が止まった日 山口市・藤井朝子(78歳)
2025/3/2 05:16 529文字菜園の中に立っていたら、知り合いのトシコさんが車の窓を開けて私に声をかけてくれた。 「少しは落ち着いた? 元気そうな顔を見て安心した。寂しいのは日にちがたたんと。頑張ってね」 「心配してくれて、ありがとうね」 首に巻いたタオルで目頭を押さえた。車はもう見えなくなっていた。 あの日も晴天だった。夫の
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貴重な日常 大阪市平野区・速水峰子(パート・71歳)
2025/3/2 05:15 547文字ずうっと胸の奥に引っかかってどうしようもなくイライラ、カリカリしていた。正直なところ、もう行くのはやめとこうと思っていた。 そしてついに、「ええい今日一日とにかく頑張ったら済むことや」と自分に言い聞かせ、病院に向かった。朝早くから強風の中をちぢこまって歩き、地下鉄に乗り、たどり着いた診察室。レント
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都会の洗礼 北海道滝川市・浦三紀(無職・65歳)
2025/3/2 02:01 547文字久しぶりに娘と札幌へショッピングに出かけた。 まずは軍資金の準備、とATM(現金自動受払機)へ直行。高齢の男性が操作中で少し時間がかかっていたが、私たちは「何を買おうか」などとウキウキおしゃべりしながら並んでいた。 5分ほど過ぎたころ、男性が急に振り返り怒鳴り声を上げた。「あんたら、人の暗証番号で
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二人の日々 大阪府熊取町・西川正子(主婦・83歳)
2025/2/28 05:08 558文字梅の香が風とともに春近しを知らせてくれます。90歳の夫が認知症と診断されてから、はや6年あまりの月日が流れました。この間にいろいろな出来事があり、眠れない夜を何度か過ごし、介護は厳しく、ずいぶん悩みました。 同じ介護の仲間の集いがあり、いろいろな悩みをお聞きして、一人ではないと元気をもらいますが、
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孫との決別 山口県周南市・田畑純子(71歳)
2025/2/28 05:08 569文字冬休みに孫2人を連日預かった。朝、娘の出勤と共に我が家に来て夕方娘の仕事が終わると共に帰って行った。孫たちの朝食、昼食を作り、帰りには夕食用の弁当を作った。天気の良い日には公園で遊び、寒い日には孫たちのために買ったゲームを楽しんだ。 そんな中、小学2年の孫の言葉が気になっていた。「くそばばあ、死ね
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1人の食卓 静岡県富士市・坂本智子(無職・70歳)
2025/2/28 02:02 554文字日ごろ、栄養には気をつけているほうだと思う。 特に朝食は具だくさんのみそ汁、魚の干物にはたくさんのダイコンおろし、おひたしやきんぴらゴボウなどの常備菜、あれば前日の残りの煮物も。食後には季節の果物入りのヨーグルトも欠かさない。 どれも安くて簡単なものばかりだが、10品以上は並べる。だから朝食抜きな
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母の一言 福岡市東区・梅崎悦子(パート・57歳)
2025/2/26 05:09 558文字「髪の毛を洗ってもらいたかった」。母の言葉にハッとした。母は数日間、体調を崩していたため入浴を控えていた。私は母を病院へ連れて行くため帰省した。病院から帰宅後、多少回復した様子の母の話し相手をして、家路についた。「帰り着いたよ」と電話した時に、78歳の母が口にしたのが冒頭の言葉だった。 「介護」の
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思い出ノートの作り方
昔を思い出してノートに書きとめることは脳の活性化にもつながります。公益財団法人「認知症予防財団」の監修の連載です。
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今週の気持ち
投稿コラム「女の気持ち」「男の気持ち」から1本を選び、担当記者が紹介します。