
連載
はじまりのうた
「終わり」が意識される時代に「はじまり」へのヒントを見つけたいと願いつつ――。佐藤千矢子論説委員のコラムです。
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秘書官が語る角栄氏=佐藤千矢子
2025/3/7 13:05 923文字著書「日本列島改造論」が2023年に半世紀ぶりに復刻されるなど、田中角栄元首相に改めて注目が集まる中、東京都内で先月、ある講演会が開かれた。田中氏の通産相、首相時代に秘書官を務めた小長(こなが)啓一氏(94)が、元首相との関わりや、列島改造論の執筆過程について語り、エピソードの数々に引き込まれた。
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高校無償化に反対47%=佐藤千矢子
2025/2/28 13:10 919文字一瞬、数字を見間違えたのかと思った。毎日新聞の2月中旬の世論調査で、私立高校の授業料の無償化について聞いたところ、反対が47%に上り、賛成の31%を上回った。「無償化なのに反対が多数?」と素朴な疑問を持った。 高校授業料の無償化は、来年度予算案をめぐる与野党の修正協議で、自民党、公明党、日本維新の
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世襲問題を忘れずに=佐藤千矢子
2025/2/21 13:07 895文字世の中には、場の空気を読まずに率直な発言をする人がいる。その時は聞き流されても、人々の頭の片隅には残るから、効果は案外、無視できない。最近、そんなことを思わせる場面があった。 東京・北の丸公園にある国立公文書館に与野党議員13人が集まり、衆院の選挙制度のあり方を話し合う協議会が開かれた。議論の口火
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核禁条約への姿勢は=佐藤千矢子
2025/2/14 13:03 912文字ノルウェー、ドイツ、オランダ、ベルギー、オーストラリア。これらの国々に共通することは何だろう。初めから難しいクイズのような話で恐縮だが、核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバーとして参加してきた国々だ。 締約国は73カ国・地域。核保有国や、「核の傘」のもとにある日本、北大西洋条約機構(NATO)諸
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湛山と石破さんの訪米=佐藤千矢子
2025/2/7 13:10 918文字石破茂首相の石橋湛山元首相びいきは相当なものらしい。昨年11月の所信表明演説に続き、1月24日の施政方針演説でも、その言葉を引用していた。 石破首相の訪米にあたり、石橋元首相を当時の米国がどう見ていたのかを調べていたら、知人がある冊子を送ってくれた。増田弘・立正大学法学部名誉教授の論文「石橋湛山内
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石破さんと夫婦別姓=佐藤千矢子
2025/1/31 13:09 898文字通常国会が始まり、国会議員を取材していると、選択的夫婦別姓が話題になることが増えてきた。政策的に重要というだけでなく、この問題が国会の焦点になり、自民党を揺るがす事態になりかねないと、多くの議員が感じているからだろう。 石破茂首相は昨年9月の党総裁選で「選択的ということだから、否定する理由はない」
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森さんに聞かなくては=佐藤千矢子
2025/1/24 13:19 873文字石破茂政権になって初めての通常国会が始まった。 自民党の裏金問題では、年末年始をまたいで、旧安倍派議員が参院政治倫理審査会に五月雨式に出席したが、相変わらず「秘書が」「事務局が」と言うばかりで、真相は見えない。やはり旧安倍派の元事務局長、松本淳一郎氏を国会に参考人として招致し、話を聞く必要がある。
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気の早い参院選予測=佐藤千矢子
2025/1/17 13:11 903文字今年は夏に参院選が予定されている。7月20日投票の日程が有力だ。衆院選での与党過半数割れを受けて、参院でも与野党勢力が逆転するのか。やや気が早いかもしれないが、どんな選挙結果が予想されるのか、考えてみたい。 結論から言えば、参院選での与党過半数割れの可能性は、高くはないと思う。なぜか。平たく言うと
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今年のリスクを考える=佐藤千矢子
2025/1/10 13:13 899文字今年はどんな年になるのか。新年を迎え、思いをめぐらせている人は多いだろう。米調査会社ユーラシア・グループが発表した今年の「10大リスク」のトップは、国際秩序を主導する国家がない「Gゼロ」世界の深刻化だった。 新年早々、私もラジオNIKKEIのポッドキャスト番組に出演し、「今年の5大リスク」について
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日本被団協の会見にて=佐藤千矢子
2024/12/27 13:25 868文字約2週間ぶりに謎が解けた気がした。 ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の帰国後初の記者会見が24日、日本記者クラブであった。幸運にも司会を務める機会を得た。円滑な運営が役目だが、一記者として聞きたい質問があった。 田中熙巳(てるみ)代表委員(92)の授賞式演説での一場
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「熟議の国会」遠い道のり=佐藤千矢子
2024/12/20 13:15 877文字少数与党政権になって初めての本格的な国会となった臨時国会が、近く閉幕する。 「政治や国会が少し面白くなった」という声が聞こえてくる。同感だが、気になることもいろいろあった。中でも今週、成立した13兆9433億円の補正予算をめぐる与野党の攻防は、政策論と政治論がごちゃごちゃになり、わかりにくかった。
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石破氏の政治改革答弁=佐藤千矢子
2024/12/13 13:12 870文字石破政権が発足して2カ月以上たち、今月5日からようやく国会の予算委員会が始まった。 これまで本会議で、下を向いて原稿ばかり読んでいた石破茂首相の姿勢は一変した。予算委員会での一問一答形式の質疑に、紙にあまり頼らず、自身の言葉で語ろうとする首相は、生き返ったように見える。 しかし肝心の内容はどうか。
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逆・木綿のハンカチーフ=佐藤千矢子
2024/12/6 13:10 886文字「逆・木綿のハンカチーフ」と呼ぶのだという。女性が地方から東京圏に流出する近年の現象を指している。 比喩のもととなった「木綿のハンカチーフ」は、1970年代に太田裕美さんが歌ってヒットした名曲だ。地方から都会に出て帰らない男性と、故郷に残された女性との恋愛が対話形式で描かれ、最後に女性が涙をふく木
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石破さんの外交デビュー=佐藤千矢子
2024/11/29 13:08 866文字首相ともなれば一挙手一投足が注目され、批判の対象になる。とはいえ、ちょっとたたかれすぎではないか。 石破茂首相がペルー、ブラジルを歴訪し、国際会議に出席した。ラオスで外交デビューは果たしているものの、今回が本格的な外交始動という印象が強い。 報道されているように、会場で1人でスマホをいじっていたり
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読者からの手紙=佐藤千矢子
2024/11/22 13:10 885文字読者から先日、丁寧な手紙をもらった。今月8日の当欄に掲載された「103万円の壁」考、というコラムについてのものだった。多くの人に知ってほしい内容がつづられていた。匿名の手紙で本人に連絡を取ることができないため、差し支えないと思われる範囲内で、一部を紹介したい。 「普段はこんなことでいちいち目くじら
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動くか、夫婦別姓法案=佐藤千矢子
2024/11/15 13:23 898文字30年近く停滞していた選択的夫婦別姓の導入をめぐる議論が、思わぬ形で動き出しそうだ。 衆院選後の国会人事で、野党第1党の立憲民主党が予算委員長をはじめ重要ポストを握ることになり、西村智奈美前代表代行が法務委員長に就いた。 ここに至るまでの与野党の攻防は見応えがあった。 与党過半数割れを受けて、立憲
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「103万円の壁」考=佐藤千矢子
2024/11/8 13:03 888文字衆院選の最終日、国民民主党の玉木雄一郎代表が東京駅前で街頭演説した映像を最近、テレビ番組で何度も見ている気がする。 「自民党、もっとしっかりしろよ」「私たちは103万円の壁の問題を絶対やりたい」。聴衆は約2000人。「やってくれ~」と声が飛び、コンサート会場のような盛り上がりを見せた。 選挙結果は
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衆院選大敗の後始末=佐藤千矢子
2024/11/1 13:15 905文字衆院選の投票日となった先月27日午後、各党の獲得議席を予測した情報が永田町に流れた。 「自民党は最大で191議席だが、155議席程度まで落ち込む可能性もある。立憲民主党は180議席を獲得する可能性があり、第1党になるかもしれない。28日未明にも石破茂首相は辞任を表明するのではないか」 実際には、自
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ノーベル平和賞に思う=佐藤千矢子
2024/10/25 13:01 901文字日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞の決定は、多くの「気づき」を与えてくれる。 ノルウェーのノーベル賞委員会は、授賞理由について、核兵器使用は道義的に容認できないという「核のタブー」(the nuclear taboo)の確立に貢献したことを挙げ、「タブーが今、圧力にさらさ
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石破首相の政活費発言=佐藤千矢子
2024/10/18 13:08 875文字衆院選がスタートし、主要政党の党首による討論会が、テレビ各局などで開かれている。キックオフとなった12日の日本記者クラブでの討論会に、私も代表質問をする機会を得て参加してきた。 1990年以来の歴史があり毎回、何かしら象徴的な場面がある。今回は、石破茂首相の「後ろめたさ」発言が、注目を集めた。 政
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