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核禁条約会議の宣言 拡散リスクへの重い警告

核兵器禁止条約の第3回締約国会議の閉会が告げられ、会場からは拍手が起きた=ニューヨークの国連本部で2025年3月7日、八田浩輔撮影 拡大
核兵器禁止条約の第3回締約国会議の閉会が告げられ、会場からは拍手が起きた=ニューヨークの国連本部で2025年3月7日、八田浩輔撮影

 開発から使用まで全面的に禁じる核兵器禁止条約の第3回締約国会議が先週、国連本部で開かれ、核廃絶に向けた宣言を採択した。

 オブザーバーを含めて80を超える国と地域が参加し、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)など多くの市民団体も加わった。

 残念だったのは、これまでオブザーバー参加してきた北大西洋条約機構(NATO)の一部加盟国の姿がなかったことだ。国際情勢の不安定化を踏まえ、核抑止を重視する姿勢を鮮明にした。日本は過去2回に続いて不参加だった。

 核保有国と非核保有国との分断が一段と深まり、「核なき世界」への険しい道のりを印象付けた。

 だからこそ、と言うべきだろう。非核国が打ち出したメッセージに耳を傾けたい。とりわけ強調されたのが、核抑止論の拒絶だ。

 核兵器を保有する国同士が互いに報復を恐れ、使用をためらうことで核戦争が回避される、という安全保障上の概念を言う。

 抑止論は使う意思を示して初めて成り立つ。「意図的または偶発的」に核が使用される事態は否定できず、そうなれば「破滅的な結果が人類に及ぶ」と警告した。

 ロシアの「核の脅し」に加え、会期中にフランスが自国の「核の傘」を欧州全体に拡大する構想を明らかにしたことも、批判が高まる要因になった。

 マクロン仏大統領はNATOを軽視する米国に代わって核抑止力を提供するという。ドイツが要請し、ポーランドなどが前向きだ。

 だが、仮想敵とするロシアには核弾頭数で遠く及ばない。核の目的を自衛だけでなく他国の安全保障に広げようと言うなら、核戦力の強化も避けられないだろう。

 懸念されるのは、拡散の火種となることだ。中東では、イランに対抗する国々が触発されて保有を目指しても不思議ではない。

 危険はアジアにもある。北朝鮮をにらんで韓国では保有論が根強い。日本でも米国との核共有や「核持ち込み」の議論がくすぶる。

 結果として高まるのは核戦争のリスクだ。非核国の警告を世界は重く受け止めるべきだ。

 核弾頭の数を増やさず、核の使用を封じる手立てを考える。厳しい安全保障環境の改善を図る。日本もその役割を担う必要がある。

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