建築物
建築物(けんちくぶつ)は、建築された物体[1]。建築された構造物。
建築物は使用目的によって形態が異なるほか、構造体も異なる[2]。建築学・建築分野で扱う建築作品、日本語の建物(たてもの)を連想されるが、この場合の〈建築〉及び〈建築する〉は、それだけに留まらない[要出典]。
建築物は工学で扱われる対象であると同時に芸術的現象としての側面も有する[2]。
建築物の概念
[編集]建築物とビルディング
[編集]英語「building」や、これをカタカナにした外来語のビルヂングやビルディング(ビルはその省略形)には、必ずしも学術的なまたは法律上の明確な定義は無い。building を辞書で引くと「屋根と壁を伴う構造物」といった定義があり[3][4]、この語義では建築基準法にいう建築物に近い。他方、ビルディングの定義では、建築物でも構造が鉄筋コンクリート構造などであるものに限り、高さもある程度、高いものに限っている辞書が複数見られる[5]。
建築物とバチマン
[編集]フランス語で建築物を意味するbâtiment(バチマン)は、動詞 「bâtir バチール」(金槌やのこぎりなどを使って)造る、建てる、というニュアンスの動詞から派生した名詞である。特筆すべきことは、フランス語の場合、同じ動詞「bâtir」から派生した語に「bateau ��ト」(=船)もある。つまりフランス人の概念枠では「建物」も「舟」も、bâtirという行為によってできる物体であり、両者はしばしば似たようなものとして挙げられている。
実際、西洋の伝統的木造船を造ること(造船)は木造の家を建てる場合と共通するような道具や、かなり似た工程で行われるし、ドイツ語のde:bauは建設や建築のほかに船・機械などの建造の意味を持つ[6]。
船舶工学は英語で「naval “architecture”」である。
日本では伝統的に船を造る人を「船大工」と言う。
建築物と建造物
[編集]日本語には建築物と建造物という言葉がある。
- 建築物
日本の法律用語としては建築基準法に定義があり、土地に定着する工作物(こうさくぶつ)[7]のうち特定条件を満たすものが建築物とされる。
建築基準法[8]第2条第1項第1号に定義があり、他の法律からも参照されている[9]。この定義によると、建築物は土地に定着する工作物[7]のうち、
- 屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)
- 1.に附属する門若しくは塀
- 観覧のための工作物
- 地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含む。建築設備は同条第三号に定義があり、土地に定着し建築物に設ける工作物のうち、電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙若しくは汚物処理の設備や煙突、昇降機若しくは避雷針をいう。
土地への定着要件は建築基準法に明確に示されていないが、行政例規上は旧建設省通達を踏襲しており、プレハブ物置や、トレーラーハウスなど基礎に緊結されていないものであっても、随時かつ任意に移動できない形式のものは建築物として取り扱われる。したがって、これらプレハブ物置等についても一定の土地において恒常的に建築物として利用する場合は、基礎への緊結や規模によっては建築確認申請等の手続きを要する。
屋根については風雨をしのぐ機能を有するものであるため、かつて、屋根をグレーチング板とした立体駐車場を脱法的に建築する事案が発生した。法改正により「これに類する構造のものを含む」との文言が付されたことによって、屋根の機能を持たない屋外設置型の機械式駐車場についても一定の高さを超えるものについては建築物として取り扱う行政庁が多い。
- 「建造物」の定義
法律用語としての「建造物」の定義は必ずしも明確ではない。刑法[10]や文化財保護法[11]においては建築物ではなく建造物が用いられているが[注釈 1]、建造物には建築物の定義を満たさない建物、構築物(主には橋梁や水門などの土木構造物)も含まれうる[注釈 2]。
景観法では景観重要建造物という名称を用いているほか、自治体の文化財保護においても、建造物の名称が用いられている[注釈 3]。
刑法では、建造物が現住建造物か非現住建造物による区別がある条項[注釈 4]と、無い条項[注釈 5]が見られる。
- 現住建造物…現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物
- 非現住建造物…現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物
である。
建築物の歴史
[編集]建築史
[編集]日本の建築史
[編集]ランキング
[編集]建築物の種類
[編集]建築物の分類には、使用する材料、骨組の形状、耐力配分方式、施工過程、特殊目的など様々な分類法がある[2]。
構造形式による分類
[編集]構造形式による分類として、木構造、鉄筋コンクリート構造、鉄骨造、鉄筋・鉄骨コンクリート造、補強コンクリート造、石造、レンガ造などがある[2]。
- 木構造・木質構造
- 木構造とは主要構造部に木材を用いた構造で、軸組式、壁式、組積式がある[2]。
- 鉄骨構造・鋼構造(S造)
- 鉄筋コンクリート構造(RC造)
- 鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC造)
- コンクリート充填鋼管構造(CFT造)
- 補強コンクリートブロック造(CB造)
- 膜構造
構造骨組による分類
[編集]構造骨組の形状による分類として、ラーメン構造、トラス構造、アーチ構造、ドーム構造、シェル構造(シャーレン構造)などがある[2]。
その他の分類
[編集]- 耐力配分方式による分類として、張壁式構造、自耐壁式構造、骨組式構造、壁体式構造などがある[2]。
- 施工過程による分類として、湿式構造と乾式構造がある[2]。
- 特殊性能を有する建物の分類として、耐火構造、耐寒構造、防水構造などがある[2]。
建築物の部位
[編集]- 建物の部位
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 重要伝統的建造物群保存地区、伝統的建造物群保存地区(篠山市篠山伝統的建造物群保存地区、近江八幡市八幡伝統的建造物群保存地区他)等。
- ^ なお、文化財保護法にもとづいて国宝、重要文化財、重要有形民俗文化財、記念物(特別史跡・特別名勝・特別天然記念物又は史跡・名勝・天然記念物)として指定/仮指定された建築物については、建築基準法は適用されない(建築基準法第三条第一項)。
- ^ 東京都選定歴史的建造物、横浜市認定歴史的建造物、小樽市指定歴史的建造物、景観形成重要建造物等 (兵庫県指定)等。
- ^ 区別がある例: 第���八条(現住建造物等放火)、第百九条(非現住建造物等放火)、第百十九条(現住建造物等浸害)、第百二十条(非現住建造物等浸害)。
- ^ 区別が無い例: 第百三十条(住居侵入等)、第二百六十条(建造物等損壊及び同致死傷)建造物等以外放火罪。
出典
[編集]- ^ 広辞苑「建築物」
- ^ a b c d e f g h i j k 職業訓練教材研究会『二級技能士コース 塗装科 選択・建築塗装法』2005年、189頁
- ^ building noun 1 (可算) "a structure such as a house or school that has a roof and walls" (Oxford Advanced Learner's Dictionary -6e)
- ^ building n. 1."a structure with a roof and walls" (The Concise Oxford Dictionary -10e)
- ^ 岩波書店『広辞苑』第五版、大修館書店『明鏡国語辞典』。
- ^ [『Bau』 - コトバンク]
- ^ a b 工作物(こうさくぶつ)〔法律用語〕: 「建物・塀・橋などのように土地に接着して設置されたもの」(三省堂『大辞林』電子版データ『スーパー大辞林』 3.0)
- ^ 建築基準法(昭和25年法律第201号)
- ^ 景観法、都市計画法、都市公園法など。
- ^ 刑法(明治40年法律第45号)
- ^ 文化財保護法(昭和25年法律第214号)
- ^ a b c d e f 職業訓練教材研究会『二級技能士コース 塗装科 選択・建築塗装法』2005年、191頁