コンテンツにスキップ

遮光幕

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。211.133.184.197 (会話) による 2009年1月27日 (火) 18:18個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (鉄道車両の遮光幕)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

左の窓(運転台後ろ)の遮光幕を閉めた状態
すべての窓の遮光幕を開けた状態

遮光幕(しゃこうまく)とは、光を遮るための幕(カーテン)などのことをいう。

鉄道車両の遮光幕

日本鉄道車両の場合、夜間・トンネル内などでは乗務員室(運転室)背面の遮光幕を閉める。これは、客室内の照明がそのままフロントガラスに映り込み、前方を監視するのに支障があるためである(夜間、ルームライトを点けたままで乗用車を運転する状態を考えてもらえばよい)。社によっては、座席右側にもカーテンを吊る場合がある。

形状は、ほとんどの場合がロールスクリーン方式で上げ下げを行う、いわゆる遮光「幕」であるが、一部には乗務員室背面ガラス下から遮光「板」を引き出す形状のもの(京成電鉄京浜急行電鉄800形2000形東京急行電鉄、旧・日本国有鉄道119系105系など)、横引きのプリーツカーテン(日本国有鉄道38型気動車東日本旅客鉄道(JR東日本)255系東海旅客鉄道(JR東海)373系近畿日本鉄道21000系阪神電気鉄道など)を使用している事業者や車両も一部存在する。また阪急電鉄の新型車両と、阪神電気鉄道の新型車両と更新車両、北大阪急行電鉄8000形京阪電気鉄道800系などは、運転席左側のスイッチ操作で遮光幕の上げ下げを行う。

色は、客室側を白色・淡色もしくは内装の化粧板と同系色、乗務員室側は黒色や茶色である場合が多いが、客室側が緑色のもの(阪急電鉄など)、表裏一体でグレー(旧・国鉄)を用いる事業者もある。

運転士列車を運転する場合で遮光幕の使用が許される場面は、ほとんどの事業者で早朝、夜間、悪天候時、地下鉄、トンネルなど視界に自然光が差し込まず、客室内のが反射することが多い区間、およびその直前の停車駅を出発する前から直後の停車駅に到着して停止している間に限られ、それ以外の場合(おおむね曇天日の通年と1~3、9~12月晴天日の8時~16時頃、4月~8月晴天日の6時~18時頃、ただし最も日が長い6~7月は梅雨時で晴天日が少ないため特に首都圏で17時以降に開放しているケースは稀である)は原則として全面開放し、不必要に使用して運転してはならないことが指導されている。これは、乗客に対して業務内容を堂々と見せるということであり、乗客側から見ても前方の風景が見えることにより精神衛生上良い効果をもたらす。

しかし、職業としての運転士は、安全輸送・定時運転の観点から、ブレーキのタイミングについて、秒単位の集中力で制動時期を考えており、できれば客室からの視線はない方がいい、という意見もある。この意見に考慮し鉄道事業者によっては運転士のプライバシー保護等を名目として、昼間から運転席背後の遮光幕が閉められている路線もある(例・東武鉄道など)。

  • 地上区間から地下区間に入る場合、通常は手前の駅で停車中に遮光幕を閉める。たとえば東急東横線の下り元町・中華街行き列車ではみなとみらい線乗り入れのため東白楽→反町間で地上から地下に入るが、各駅停車は東白楽駅停車中に遮光幕を閉めるが、急行以上の種別は東白楽を通過するため、手前の停車駅である菊名駅停車中に遮光幕を閉める。
    • 京阪京津線では、地下区間と地上区間の境界である山科御陵間で走行中に遮光幕を閉める。運転中に立って遮光幕を閉めるわけにはいかないので、先述の通り同線の800系電車には運転台左側に遮光幕を閉めるためのスイッチがある。
  • 線区や車両によっては「トンネルの多い区間はカーテンを閉めさせていただきます」等の掲示がしてある。
    • 京急では夜間と泉岳寺品川を除き、トンネルが多い所や羽田空港付近でも遮光幕をいちいち開閉せずにずっと開けたまま走行してる事が多い。
    • 小田急ロマンスカーにも遮光幕はあるが、遮光幕は回送時のみ使用し、客室からの前面展望性重視の為、夜間だから遮光幕を閉めるという野暮な事はしてない。
  • 一部の車両ではスモークフィルムや特殊な遮光ガラスを使い(外からは見えないが中からは見える)、夜間・地下区間でも遮光幕の使用は不要となっている。
  • JR東海の373系。同社区間は乗務員室ガラス背面のカーテンは使用しないで運転する内規になっている。対してJR東日本区間に入ると早朝・夜間・トンネル区間は一部、あるいはすべてのカーテンを閉める。
  • 近鉄名阪ノンストップ特急「アーバンライナー」は、中川短絡線通過時、運転士と車掌の入替えを行うが、入替えの際は遮光幕を閉めて行うのが正規の取り扱いである。また近鉄奈良線快速急行は、昼間でも始発から終点まで夜間と同様、終始遮光幕を閉めたままとなる。これは近鉄難波線上本町駅発車後、地上駅の鶴橋駅に停車するが鶴橋発車後は生駒までノンストップで、その間長距離トンネルを通過し、生駒学園前西大寺・新大宮の順に停車するが、新大宮駅出発後地下線に入り奈良駅到着となるからである。近鉄奈良線では、特急、快速急行を除く電車の大多数の運転士が長距離トンネル通過時、手前の石切駅停車中に遮光幕を閉め、生駒駅到着時に遮光幕を開ける。
  • 昭和50年代の旧・国鉄では、日中であってもすべての遮光幕は閉めたままであることが珍しくなかった。運転士も車掌も、遮光幕を閉めた乗務員室で勤務中漫画を読んだり喫煙をしたりすることが全国で見られ、本来の設置目的からは逸脱した使い方をされていた。民営化後、JR各社はこの問題に取り組み、現在では遮光幕をできるだけ開放して乗務するという方針となっている。なお、国鉄103系電車ATCを搭載した先頭車は、運転席後部をATC車上装置の設置スペースとしたために壁になっており、助士席側にある客室への出入り口のみに窓があった。
  • 以前は、夜間は全面使用という鉄道事業者が多かったが、最近では運転席側の遮光幕だけ使用し、助士席側の幕は開放する事業者が増えている。また、JR東日本E231系電車のように助士席側には幕が無い車両が増えてきた。もともと幕を設置していた車両であっても、助士席側の幕を撤去した車両もある。助士席側のフロントガラスに室内の光が映り込んでも運転には支障がないためである。
  • 京成電鉄やJR東海自社発注の通勤車両、および関西私鉄の車両のほとんどには、以前から助士席側に遮光幕は無い。したがって夜間であっても助士席側の仕切りガラスから前を見ることができる。もっとも、前面の眺望のためというよりも運転士が乗務員室を意図的に完全密室にする行為を防止するためである。
  • 乗務員室の背後が「全面壁」の車両を新製したり、日中の地上区間まで遮光幕をすべて閉め切って運転することを認める事業者はごく一部の路線を除きさすがに見られなくなったが、一部事業者ではいまだに日中でも遮光幕を上げずに運転するケースが見られたり、ごく一部事業者の車掌が夜間・早朝に使用している場合がある。(例・東武鉄道など)
  • 事故等の発生時にも、客室から前面が見えていたほうが見えない場合より目撃者の確保の観点から有利である。
  • 鉄道の場合事故が発生する可能性がゼロではないため、前方の視界が確保されているほうが心理的にも安定するという。そのため夜間でも(すべての仕切り窓に遮光幕がある場合も)全面使用を行わないようになってきている(例・京浜急行電鉄など)。
  • 車掌が列車後部などの乗務員室で、現金査算する場合に一時的に用いることがあるが、防犯の観点から正規の取り扱いとされている。また、夜間・トンネル内での折り返しの際に、車掌がカーテンを閉める鉄道会社も存在する(折り返しに運転士が入るため)。
  • 設計時から客室からの展望を重視している車両(伊豆急行2100系など)は、遮光幕自体が設置されていない。
  • 九州旅客鉄道(JR九州)885系では、運転室と客室の仕切りに液晶ガラスを採用しており、両先頭車のマスコン(ワンハンドル式)とも非常制動の位置にある場合は不透明になる。
  • 東武鉄道50050系は運転室と客室の仕切り窓の配置の関係から夜間と地下区間ではすべての遮光幕を閉めていることが多く、同じ区間を走行する東武30000系が助士席側遮光幕を使用していないことや、当初から助士席側に遮光幕がない東急田園都市線東京メトロ半蔵門線所属車とは遮光幕の取り扱いが微妙な窓仕切りの違いで異なっているので、東武伊勢崎線曳舟~東急田園都市線二子玉川間では先頭車両での前面展望が不可能であることがほとんどである。
  • 北総鉄道9100形は東武50000系同様運転室と客室の仕切り窓の配置の関係から夜間と地下区間では原則すべての遮光幕を閉めている。また運転席側の仕切り窓が大型1枚窓のため京成電鉄や北総鉄道では前述の理由で運転席側の仕切り窓は終日閉めて運転する内規となっているので、仕切り窓の遮光幕がすべて開放されることが保証される区間は日中帯の京急線内に限定される。仕切り窓の配置については都営浅草線5300形も準じているが助士席側仕切り窓が9100形に比べ端に寄っているので京急線区間では夜間でも助士席側窓の遮光幕が開放されている。また都営・京成・北総区間でも乗務員によっては助士席側仕切り窓の遮光幕が開放されたり、日中の京成区間(京成曳舟~京成成田間)ですべての遮光幕が開放される場合もある。
  • 南海電気鉄道高野線では、トンネルの連続する九度山駅極楽橋駅間において、一部の運転士が日中でも遮光幕を下ろして運転を行うことがある。なお、南海の通勤用車両には、運転席真後ろの仕切り窓のみスモークフィルムが貼り付けられている。
  • 東急東横線の元町・中華街行き列車では、菊名駅(特急・通勤特急・急行)または東白楽駅(各停)で遮光幕を閉める際、運転士が客室に向かって一礼することが多い。

バス車両

  • 夜行高速バスの場合、運転席の後ろにカーテンを設置し、室内の光がフロントガラスに映らないようにしている。JRバス関東などのように、運転席のスイッチ操作で開閉できるようにしているケースもある。なお、夜間走行中にカーテンを全閉するのは、道路上の明かりが客室に入り込み、安眠妨害になるのを防ぐためでもある。
  • 一般路線バス、多くの高速バスでは運転席自体が仕切られた部屋にあるわけではなく、カーテンもない場合が多い。運転席の後ろに簡単な仕切りがあるだけである。そのため運転席付近の室内灯は乗降の時だけ点灯するようにしている。また室内の照明灯にカバーを付けて前方に明かりが当たらないようにしている。前方に室内の光が映りこむことはあるが、運転に支障がでるほどではない。

日本で製造された諸外国向け鉄道車両

  • 新製当初から、客室と乗務員室の間にあるドアを含めて全く仕切り窓のない「全面壁」仕様であったり、客室と乗務員室の間に窓ガラスは設置されていても、現地において遮光幕は終日下げられている場合が多い。

旅客船の最前部窓

  • 旅客船においては、夜間航行中は、最前部の部屋の前方の窓の遮光幕として、カーテン等が閉められる。
  • 出航時に既に夜になっている船はもちろん、夜行フェリーの場合は出航時から閉めてある場合もあり、航行中に昼から夜になる航路の場合は、最前部の部屋のカーテンを閉めるように、アナウンスされるのが通例である
  • 船によっては最前部はスイート、特等、一等など、高級な部屋が並ぶ場合も多いが、最前部の部屋は、このような制約があり、夜間は、これらの部屋からの前面展望は困難である。
  • 最前部にラウンジを設置している船もあるが、当然ながらラウンジのカーテン(遮光幕)も閉鎖している。

関連項目

外部リンク

[2]フロントビュー