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小田急30000形電車

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小田急30000形電車(おだきゅう30000がたでんしゃ)は、小田急電鉄特急形車両ロマンスカー)。車両愛称は「EXE[1](Excellent Express)」。

1996年平成8年)3月23日に営業運転を開始した。

同年度グッドデザイン商品2007年度ロングライフデザイン賞選定。


小田急30000形電車
複々線区間を走行する30000形「EXE」
(2004年11月23日、祖師ヶ谷大蔵駅にて撮影)
主要諸元
軌間 1,067
電気方式 直流1,500V
最高運転速度 110
編成定員 584人
駆動方式 TD平行カルダン駆動方式
編成出力 195kW
制御装置 VVVFインバータ制御IGBT素子
制動装置 回生制動併用電気指令式電磁直通空気制動
保安装置 OM式ATS
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誕生の背景

展望席を設け、人気を博した3100形「NSE」も登場から30年を経過し、経年劣化が目立つようになってきたため、その置き換えとして製造された。

後述するが、多様な運用に対応するために連接車の採用が見送られ、20mボギー車10両編成とし、小田原方6両と新宿方4両に分割できるような構成とされた。

ちょうど7000形LSE車の更新時期と重なったこともあり、1996年・1997年(平成9年)・1999年(平成11年)と3回に分けて10両編成(6両編成+4両編成)7本(計70両)を���入し、3100形「NSE」と置き換えていった。

従前のロマンスカーとの相違

本形式は、観光輸送の他に通勤輸送など中間駅までの輸送にも配慮したことから、従来のロマンスカーのシンボルともいうべき展望席20000形「RSE」に設定されたスーパーシートを採用しなかった。ただし、展望席こそ採用しなかったものの、運転室背後の仕切り窓を大型化しているために運転室越しの前面展望は一応可能であるが、非貫通構造車の前面展望は運転席が高い位置にあるため、ほとんどできない。

そのため、登場時は「ロマンスカーらしさ(華やかさ)がない」といった多数の否定的意見があり、また歴代ロマンスカーが5代続けて受賞していた鉄道友の会ブルーリボン賞は受賞することができなかった。選考対象となった1997年の同賞では本形式の得票数が最多だったが、「該当なし」票がそれを上回ったためである。もっとも、本来の目的である通勤輸送などでは20m車10両編成になったことによる着席サービスの向上が図られ、ビジネス・ユースの利用客や沿線の通勤客からは評価されたが、それでも「(小田急)ロマンスカーといえば流線型で展望席で連接車の特急」というイメージがあることから、箱根観光へのテコ入れもあり、次世代車両である50000形「VSE」では展望席と連接構造を復活させることとなった。

側面の愛称・行先表示器

一方で、1996年度通商産業省(当時)グッドデザイン商品(現在は財団法人日本産業デザイン振興会所管・グッドデザイン賞)に選定されており、その従来とは異なるデザインを評価する鉄道ファンも少なくない。

また、20000形「RSE」と同様に側面扉付近にLED式の愛称・行先表示器が設置されている。20000形では「あさぎり」での運行時以外列車名のみの表示だったが、本形式は番号を含んだ列車名と行先が表示される。

この他、歴代ロマンスカーにはすべてミュージックホーンが設置されていたが、本形式には設置されなかった(50000形「VSE」で復活、60000形「MSE」にも設置)。

また、あまり知られていないが、EXEにはドア開閉の半自動開閉機能が付いており、スイッチはドアの横や連結面にあり容易には分かりにくい所に開閉ボタンがあり、いたずら防止の為、スイッチに蓋がしてある。新宿駅等で即折返し時の清掃員の車内清掃や車内販売員の商品搬入時に使用���れている。


3000形「SE」「SSE」以降の歴代ロマンスカーの中では、60000形「MSE」とともに、Nゲージ鉄道模型HOゲージ鉄道模型など、鉄道模型各ゲージで商品化されるに至っていない(2008年12月現在)。ただし、キーホルダーなどのグッズは販売されている。

運用など

前述の通り、本形式は車両の運用上分割・併合ができ、連結時は前後の編成を行き来することができる。そのため、分割・併合のメリットである多客時や閑散時の波動輸送にも対応できるものである。

登場時は、分割・併合機能を十分に発揮して当初は町田駅、後に相模大野駅で「えのしま」を分割して小田原線江ノ島線の双方へ効率良く運用していたが、近年は日中の運用も減り、JRとの競争で時間短縮のために10両編成のまま運転される列車がほとんどとなっている。町田駅で分割・併合を行っていた時期は町田~相模大野間で2本(箱根方面の6両と江ノ島方面の4両)が続行する形となる上に町田駅での分割・併合作業で停車時間を通常よりも長くしなければならず、このことが後発列車の遅れにつながるといった問題もあった。

2007年(平成19年)現在、分割・併合作業は「さがみ」「はこね」と「えのしま」が併結の列車の場合(「ホームウェイ」を含む)は相模大野駅で行われる他、「はこね」などの単独列車についても箱根登山線内に20m級車両の10両編成が入線できない(20m級車両換算で7両分しかない)ことから小田原駅新宿方4両が切り離される。ただし現在では江ノ島線への快速急行新設の影響で日中の「えのしま」が大幅に減便されたため、相模大野での分割併合運用は1日数本しかない。 それ以外の「さがみ」や土曜・休日の単独の「えのしま」などは10両編成で全区間運転される。また、多くの通勤・通学客が利用する「ホームウェイ」の大半の列車は座席定員が一番多い本形式で運転される。

この他、2004年(平成16年)12月11日ダイヤ改正まで定期列車で新宿~箱根湯本間を6両編成で運行する単独運用が存在していたが、現在は消滅している。

なお、2007年までは、毎年6月神奈川県足柄上郡開成町で開催される「あじさい祭り」に併せて、開成駅に「さがみ65号」が停車することから、期間中に限り同列車は本形式の6両編成で単独運行されていたが、2008年は60000形「MSE」6両編成で運転された。

内・外装

車内
  • 小田急百貨店インテリアセクションが担当した。
  • 内装は誤乗防止を兼ねて、小田原方6両(1~6号車)はをイメージした色とデザイン、新宿方4両(7~10号車)は江の島をイメージしたものとした。
  • 車体外装のブロンズカラー(小田急では「ハーモニック・パールブロンズ」と称する)は、光の加減によって様々な色をイメージさせるものである。
  • 3次車(第5~7編成)では座席表地の色分けを廃止し、ダークブラウンとオレンジのモダンなデザインが採用された。後に1・2次車も3次車に準じた座席表地に交換されている。この3次車では中肘掛けが廃止されたり、肘掛けの布張りを中止するなどのコストダウンを図っている。

車内設備

  • 各車両の客室とデッキを仕切る扉の客室側上部に停車駅、車内設備の案内、ニュースなどを表示するLED式旅客案内表示器を設置する。

車内案内

  • 座席定員:584名
号車番号/設備他
  • 1/運転室・禁煙席(56席)
  • 2/禁煙席(60席)・男女共用和式トイレ・女性専用洋式トイレ・男性小用トイレ・洗面所
  • 3/禁煙席(56席)・公衆電話車内販売カウンター・清涼飲料水自動販売機
  • 4/禁煙席(68席)・公衆電話
  • 5/禁煙席(54席)・車椅子対応禁煙席(2席)・車椅子対応洋式トイレ・男女共用トイレ・洗面所
  • 6/運転室・禁煙席(60席)・自動体外式除細動器 (AED)
  • 7/運転室・禁煙席(60席)・自動体外式除細動器 (AED)
  • 8/禁煙席(54席)・車椅子対応禁煙席(2席)・男女共用和式トイレ(※)・女性専用洋式トイレ・男性小用トイレ・洗面所
  • 9/禁煙席(56席)・公衆電話・車内販売カウンター・清涼飲料水自動販売機
  • 10/運転室・禁煙席(56席)
※:8号車の男女共用和式便所は車椅子非対応
付随台車(SS-046)

性能

本形式は、小田急の特急車で初めてIGBT素子を用いたVVVFインバータ制御方式を採用した車両である。制御装置は小田急特急車の慣例通り東芝製である。インバータ制御では小型高出力なかご形誘導電動機を用いており、旧来に比べ主電動機1台あたりの出力が195kWに増強されている。また、インバータ制御装置の台数を主電動機と同数用意して主電動機を個別制御することにより、きめ細かい制御と制御装置故障時における編成出力低下の抑制を図った。これにより電動車(M車)と付随車(T車)の比率(MT比)を下げ、コストダウンを図っている。それまで、小田急の車両は電動車が編成の半分以上を占める編成が原則だったが、本形式ではMT比を1:2とし、電動車が編成の半数を下回る構成となった。

MT比を1:2としたことから6両編成は電動車2両と付随車4両の2M4T編成とした。また、4両編成においても電動車2両のうち1両は新宿方の台車を付随台車とした0.5M車を組み込み、1.5M2.5T編成にすることで、6両編成と同等の性能を確保しつつ、コストダウンに配慮した構成としている。

運転台は左手で抑速ブレーキ操作、右手でマスコンハンドルを操作する。また、2000形に続いて乗務員支援、検修機能のある多機能型のモニタ装置(制御伝送付)を採用した。なお、本車両ではモニター画面のカラー化が行われたほか、小田急の車両では初めて定速運転機能が採用された。

補助電源装置としてIGBT素子を用いた静止形インバータを採用し、空気圧縮機 (CP) には交流駆動で低騒音形のスクロール式(RC1500形)のものが採用された。

台車は、2000形で使用しているボルスタレス構造のモノリンク式空気ばね台車にヨーダンパなどを付加したもので、電動車はSS-146、付随車はSS-046である。 他の特急車と異なり走行中の揺れが激しく、長距離を乗車する利用客からの評判は必ずしも良くない。

歴史

  • 1995年平成7年)12月11日 - 第1編成新宿方4両(30051×4)小田急線入線。
  • 1995年(平成7年)12月19日 - 第1編成小田原方6両(30251×6)小田急線入線。
  • 1996年(平成8年)1月23日 - 第1編成(30001F)竣工。
  • 1996年(平成8年)1月30日 - 第2編成新宿方4両(30052×4)小田急線入線。
  • 1996年(平成8年)2月5日 - 第2編成小田原方6両(30252×6)小田急線入線。
  • 1996年(平成8年)2月20日 - 第2編成(30002F)竣工。
  • 1996年(平成8年)3月23日 - 第1・2編成(30001F・30002F)就役。
  • 1997年(平成9年)4月15日 - 第3編成新宿方4両(30053×4)小田急線入線。
  • 1997年(平成9年)4月19日 - 第3編成小田原方6両(30253×6)小田急線入線。
  • 1997年(平成9年)4月25日 - 第3編成(30003F)竣工。
  • 1997年(平成9年)5月15日 - 第4編成新宿方4両(30054×4)小田急線入線。
  • 1997年(平成9年)5月19日 - 第3編成(30003F)就役。
  • 1997年(平成9年)5月20日 - 第4編成小田原方6両(30254×6)小田急線入線。
  • 1997年(平成9年)5月27日 - 第4編成(30004F)竣工。
  • 1997年(平成9年)6月23日 - 第4編成(30004F)就役。
  • 1999年(平成11年)3月26日 - 第5編成(30005F)小田急線入線。小田急線内自力回送。
  • 1999年(平成11年)4月8日 - 第5編成(30005F)竣工。
  • 1999年(平成11年)4月21日 - 第5編成(30005F)就役。
  • 1999年(平成11年)5月15日 - 第6編成(30006F)小田急線入線。小田急線内自力回送。
  • 1999年(平成11年)5月31日 - 第6編成(30006F)竣工。
  • 1999年(平成11年)6月10日 - 第7編成(30007F)小田急線入線。小田急線内自力回送。
  • 1999年(平成11年)6月12日 - 第6編成(30006F)就役。
  • 1999年(平成11年)6月23日 - 第7編成(30007F)竣工。
  • 1999年(平成11年)7月6日 - 第7編成(30007F)就役。
  • 2002年(平成14年)2月1日3月31日 - 各編成の1号車で「@TRAIN」と題して小田急ロマンスカー車内でIPv6を用いた無線LANインターネット接続実験が行われる。
  • 2007年(平成19年)3月18日 - 臨時ロマンスカー「湘南国際マラソン」号が、新宿駅→片瀬江ノ島駅間にて運行し、30054編成+30254編成が充当された。

その他

  • 2007年9月に第2編成(30002F)の小田原方30252以下6両がD-ATS-P取り付け工事のために松田から豊川まで甲種車両輸送された。

関連項目

脚注

  1. ^ 小田急公式の読み方は「エクセ」。

外部リンク