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「特発性拡張型心筋症」の版間の差分

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2006年12月26日 (火) 15:54時点における版

特発性拡張型心筋症(とくはつせいかくちょうがたしんきんしょう Idiopathic cardiomyopathy)は心臓の細胞が変化し、特に心筋が伸びてしまう心疾患である。心臓が大きくなってしまう心疾患にほかに肥大型心筋症というのがあるが、まったく別の心疾患である。特定疾患治療研究事業対象疾患に指定されている。

症状

心筋の細胞の一部ないしすべての性質が変化してしてしまい、通常状態より心筋が薄く延びてしまう。そのため、心臓のポンプ機能は著しく低下してしまう。初期段階では自覚症状があまりないく、易疲労感や動作時に軽い動悸が起こる程度である。そのため発見が遅れてしまうケースがある。病状が進行していくと重篤なうっ血性心不全や治療抵抗性の不整脈をおこす。5年生存率は50%前後、10年生存率は30%前後ときわめて不良で突然死もまれではない。

原因

原因は不明である。現在、原因の解明が急がれている。 現在の主要な説は

があげられている。

現在、少なくとも一部(特発性拡張型心筋症、全体のおよそ20%と推定)の症例において遺伝子異常や免疫異常がその病因として明らかにされている。

治療法

1967年に世界で初めてヒトからヒトへの心臓移植が行われ、現在では安定した成果を示している。特発性拡張型心筋症の根本治療としては現在は心臓移植しかないとされる。 主な有用点は

  • 唯一の根本治療である。
  • 長年の研究の成果により技術が安定している。
  • 劇的な回復が望める。

しかし現在、以下の理由により特に日本国内においては心臓移植手術がなかなか行われていない状況にある。

  • 世界的に心臓を提供するドナーが心臓移植を必要とする患者に比べて少ない。
  • 心臓移植の条件として心臓提供者の脳死が絶対条件とされるが、現在もまだ脳死をヒトの死とするのかというのは個人の裁量が大きく、また日本国内においては脳死という概念自体が広く一般に浸透しているとはいいがたい。
  • 現在施行されている臓器移植法では日本国内で15歳未満の患児に臓器移植を行うことはできない。
  • 移植が成功しても一生免疫抑制剤を飲まなくてはならない。
  • 免疫抑制剤摂取のため免疫力が低下して感染症にかかりやすくなる。
  • 医療保険の対象外。

という問題が挙げられている。特にドナーの不足の改善は今後の心臓移植を左右するものとなるといわれている。

内科的療法

近年、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、アンジオテンシン受容体阻害薬ベータ遮断薬などが使用されて効果を挙げている。遠隔生存率も比較的高い。しかし、体質・症状の進行状態により上記の薬が期待した効果を挙げない場合もある。また、進行を遅らせることしかできない。

ブラジル人のRandas J.V.Batistaによって1980年代に考案された心臓外科手術で直接肥大した心臓の左心房の3分の1程度を切除し心臓の形を整える治療法ある。有効な点(心臓移植と比較して)は

  • 患者自身の心臓を使い続けるので、心臓移植の最大の問題であるドナーの不足がまったく影響しない。
  • 15歳未満の患児に対しても行うことができる。
  • 免疫抑制剤による免疫力低下がない。
  • 医療保険の対象となっているため安価にすむ。

しかし、問題点もいくつか挙げられている

  • 世界的に行われるようになったのは心臓移植に比べてごく最近のことなので研究が途上である。
  • 手術が左心房の再拡大が起こらないかどうかはわからない。また、起こるとしたらそれはどのくらいの期間をおいて起こるのかは未だ統計不足でわからない。
  • 非常に難しいためリスクが高い。
  • 遠隔生存率が心臓移植に比べて若干低い。

バチスタ手術は現在も不確定要素の多い手術であるが、心臓移植の代替手術としては有効という見解が一般的である。 日本国内では1996年12月2日須磨久善医師によって初めて実行された。

これは心臓移植までの症状維持を目的とする埋め込みと、心臓移植待機を目的とせず補助人工心臓を使い続けていく目的で補助人工心臓を埋め込む2通りの治療が行われている。前者の心臓移植までのつなぎとして補助人工心臓を使用することは2004年に医療保険の適用となった。補助人工心臓を使い続けるという選択は、主に高齢のため心臓移植手術やバチスタ手術に耐えうるだけの体力がない患者が選択している場合が多い。この補助人工心臓を使い続ける世界初の手術は1995年10月イギリスで高齢のため移植手術が行うことが困難とされた患者に施された。

左室縮小手術(Overlapping cardiac volume reduction operation)

バチスタ手術は遠隔心不全回避率が比較的低く、術後3年後の心不全回避率は25%前後と報告されている。原因として左心室を切除してしまうため、心機能が低下してしまうためだといわれている。そこで、バチスタ手術を改良して発案された手術が左室縮小手術である。これは左前下行枝に沿って左心室を切開し、それを左心壁を巻き込む形で縫い合わせる手術である。心臓を提供するドナーが少ない日本では今後バチスタ手術と並んで研究が進められていくものと予想される。しかし、現在は症例数がごくわずかで予後経過については心臓移植にくらべて不明な点が多い。また、手術に要される心臓外科医の技術は非常に高く、手術における危険はほかの治療法に比べて高い。

現在は動物実験の段階である。ヒトへの治療が行われた症例は報告されていない。特発性拡張型心筋症の先天的原因を治癒しようという試みである。積極的治療法(心臓移植)を行うことが難しい患者への応用が期待されている。


外部リンク