システム通信科 (陸上自衛隊)

陸上自衛隊の職種
通信科 (陸上自衛隊)から転送)

システム通信科(システムつうしんか、: System & Signal)は、陸上自衛隊職種の一つ。通信組織を構成・維持・管理し戦闘能力発揮の基盤となるほか、電子戦や隊内の映像・写真撮影、通信電子器材の整備等を行う。戦闘支援職種であるが行動の特性から車両の充足率は極めて高い。職種標識の色は

通信科職種徽章と部隊章(防衛大臣直轄部隊)

概要

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システム通信科は、広範囲に分散し少人数で行動することが多いのが特徴で、実戦における部隊編成は各システム通信特技([#特技|後述])が集合し通信所を開設・運用する。運用には平時から綿密に計画されており各特技が有機的に統合されることで最大の能力を発揮する。

陸上自衛隊のシステム通信科における最大の部隊はシステム通信団市ヶ谷駐屯地)であり、各方面隊には方面システム通信群が編成されている。さらに、各師団には通信大隊旅団には通信隊、第1空挺団水陸機動団には通信中隊、各高射特科群・第15高射特科連隊には高射搬送通信中隊が配置されている。他に電子戦専門部隊の電子作戦隊第1電子隊及び西部方面情報隊通信情報隊職種学校の陸上自衛隊システム通信・サイバー学校、教育研究支援部隊の通信教導隊、通信保全を担当する通信保全監査隊サイバーテロ対処部隊であるシステム防護隊、後方支援部隊には通信電子器材の補給・整備を担任する通信電子整備隊、直接支援隊等がある。それ以外に、システム通信科部隊ではないが戦闘職種(普通科・特科・機甲科・施設科)等の本部管理中隊等に通信小隊等が編成され隷下部隊と上級部隊との通信を確保している。

陸上自衛隊の通信構成には、駐屯地間の固定通信網である基地通信(基地システム通信部隊)と、展開した部隊間の移動通信となる野外通信(野外通信部隊)がある[1]。基地通信と野外通信は連接・重畳されるが、中央と各方面隊間の通信はシステム通信団、方面隊内の通信は方面システム通信群が担当している。師団・旅団内の野外通信は、通信大隊・通信隊が担当する[1]

2021年(令和3年)3月に電子戦専門部隊として、ネットワーク電子戦システムを配備���、電波の収集・分析及び相手方の電波利用を無力化して作戦を有利に進めることに寄与する部隊として第301電子戦中隊が西部方面システム通信群隷下に新編された[2][3][4]

2022年(令和4年)3月に電子作戦隊陸上総隊隷下に新編され[4][5]、第101電子戦隊および第301電子戦中隊を隷下に編合[5][6]

2024年(令和6年)3月に通信科がシステム通信科に変更された[7][8]

陸上自衛隊の通信区分と担任部隊の概要[9]
通信区分 陸上幕僚監部 方面隊 師団・旅団 連隊等
基地通信 中央基地システム通信隊 方面システム通信群/基地システム通信大隊
野外通信 中央野外通信群 方面システム通信群 師団通信大隊・旅団通信隊 連隊本部管理中隊通信小隊等

特技

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現在、システム通信科特技は以下の5つに大別される。

搬送(Carrier)
多重無線通信を担任する。大容量の通信組織を比較的容易に開設することが出来る。現在の主流通信経路で衛星通信も搬送の範疇に含める場合が多い。
有線(Wire)
有線通信を担任する。搬送と連接し電話交換機で自動電話網を構成する他、末端までの有線通信経路を構成する。
無線(Wireless)
無線電信を担任する。モールス信号や無線電話を用いて長距離通信を構成する。廃れる一方で最後の通信手段として確保されており、その長所が映画インディペンデンス・デイでも再現されている。
信務(Cipher)
信務電信を担任する。独自の技術で各種秘匿通信を行う他、通信保全にも長けていることが多い。
システム(System)
システム端末の運用操作・保守(コンピュータセキュリティ・対クラッキングを含む)及びネットワーク回線及び構成機器の維持管理、プログラムの開発等を行う。方面隊隷下に編成されていた「システム管理隊」がこれを担当していたが、近年の通信技術の革新に伴い基地通信部隊と統合、現在は「基地システム通信隊」として一元管理されている。システム通信科のみならず、これらの技術に長けた諸職種の隊員で構成されている。

この他上記特技を保有しながら電子戦や映像写真業務に特化した隊員もいる。特技区分については近年の通信技術の革新が著しく、現状では対応出来ない側面が露呈していたために将来的な特技の統合・新設等の研究が重ねられてきたが、31中期防期間中に「システム通信科」へ変更される予定であった[注 1][注 2]2024年(令和6年)3月に変更された[7]

システム通信科部隊の一覧

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システム通信科又はこれと同種の部隊として、中央野外通信群本部及び本部付隊、方面システム通信群本部及び本部付隊、基地システム通信大隊及び本部中隊、搬送通信大隊指揮所通信大隊指揮所通信中隊中枢交換通信(中)隊通信大隊旅団通信隊、空挺団通信隊、水陸機動団通信中隊中央基地システム通信隊基地通信中隊基地システム通信中隊映像写真中隊通信保全監査隊高射搬送通信中隊サイバー防護隊通信教導隊電子作戦隊電子戦隊が、システム通信科又は これと同種の機関としてとして陸上自衛隊システム通信・サイバー学校が編成されている。

陸上総隊直轄部隊
北部方面隊直轄部隊
東北方面隊直轄部隊
東部方面隊直轄部隊
中部方面隊直轄部隊
西部方面隊直轄部隊

脚注

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注釈

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  1. ^ 実働部隊として2018年3月に通信団(防衛大臣直轄)がシステム通信団(陸上総隊隷下)に、2019年3月に西部方面通信群、2020年3月に東部方面通信群、2022年3月に残りの3方面通信群が「方面システム通信群」に改組
  2. ^ 幕僚機関として2017年3月に陸上幕僚監部防衛部の情報通信・研究課が指揮通信システム・情報部の指揮通信システム課に改組、2019年3月西部方面総監部防衛部、2020年3月東部方面総監部防衛部、2022年3月に残りの3方面総監部に「システム通信課」を設置

出典

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  1. ^ a b 『陸上自衛隊パーフェクトガイド (2003-2004)』学習研究社、132-135頁。ISBN 4056032033 
  2. ^ “自衛隊に「電子戦専門部隊」「宇宙領域企画班」新設”. 日刊スポーツ. (2021年3月18日). オリジナルの2021年3月18日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210318092059/https://www.nikkansports.com/general/news/202103180000802.html 2021年10月22日閲覧。 
  3. ^ “電磁波で妨害、専門部隊が陸自に発足 対中防衛、強化が狙い”. 毎日新聞. (2021年3月29日). https://mainichi.jp/articles/20210329/k00/00m/040/226000c?cx_testId=123&cx_testVariant=cx_3&cx_artPos=0#cxrecs_s 2021年10月22日閲覧。 
  4. ^ a b “対中ロ、「電子戦」強化急ぐ 陸自、1年で7拠点に新部隊―九州・沖縄と北海道重視”. 時事通信. (2021年1月24日). https://web.archive.org/web/20210124122847/https://www.jiji.com/jc/article?k=2021012400090&g=pol 2021年11月27日閲覧。 
  5. ^ a b 電子戦部隊の新編について2021年(令和3年)9月、防衛省
  6. ^ 陸上幕僚長より皆さまへ(令和4年3月17日)”. 陸上幕僚監部 (2022年3月17日). 2022年3月21日閲覧。
  7. ^ a b 陸上自衛官の職種に関する訓令(平成13年陸上自衛隊訓令18号)
  8. ^ 陸上自衛官及び陸上自衛隊の自衛官候補生の部隊章に関する訓令(昭和30年陸上自衛隊訓令第25号)
  9. ^ 『自衛隊装備年鑑 2006-2007』朝雲新聞、P126-127頁。ISBN 4-7509-1027-9 

関連項目

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外部リンク

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