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[[日本]]の[[学校]]では、[[保健]]科や[[家庭 (教科)|家庭科]]の時間を中心に行われ、体や心の変化([[第一次性徴]]及び[[第二次性徴]]、[[妊娠]]と[[出産]]、男女の相互理解と[[男女共同参画社会]]、[[性別]]にとらわれない自分らしさを求めること、[[性感染症]]の予防や避妊などの内容が扱われている。近年では[[LGBT]]など多様な性についても言及するようになった。
 
なお、[[2018年]]1月に改訂された[[国際連合教育科学文化機関|ユネスコ]]の『国際セクシュアリティ教育ガイダンス<ref>{{Cite web|url=http://www.unaids.org/sites/default/files/media_asset/ITGSE_en.pdf|title=International technical guidanceon sexuality education|accessdate=2019-3-1|publisher=UNESCO|year=2018|format=PDF}}</ref><ref>{{Cite book|author=ユネスコ|title=国際セクシュアリティ教育ガイダンス|date=2017-6-15|year=|accessdate=2019-3-1|publisher=明石書店|author2=浅井春夫|author3=艮香織|author4=田代美江子|author5=渡辺大輔|author6=|author7=|author8=|author9=|isbn=9784750344751}}</ref>』では、性教育の開始は5歳からで、ヨーロッパの性教育スタンダードでは0歳からとなっている<ref name=":212">{{Cite web|url=https://diamond.jp/articles/-/159339|title=2018.2.12 日本の性教育は時代遅れ、ユネスコは小学生に性交のリスク教育推奨|accessdate=2019-2-14|publisher=株式会社ダイヤモンド社|author=末吉陽子|website=ダイヤモンドオンライン}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.buzzfeed.com/jp/saoriibuki/pilcon-sexed-changeorg?utm_term=.ookZLR4p4Q|title=「AVが性の教科書」の現状をどう変えるのか。望まぬ妊娠、中絶をした女性の願い|accessdate=2019-3-1|publisher=BuzzFeed Japan株式会社|author=伊吹早織|date=2018-4-25|website=BuzzFeed News}}</ref>。
 
== 概説 ==
[[生殖]]に関する教育は、広義には[[性交]]後の女性体内の[[受胎]]から[[胎芽]]へ、胎芽から[[胎児]]へ、そして出産へと移り変わっていく流れを追いながら、新たな命の創造と成長を取り扱う。狭義には性感染症の概念やその予防、[[避妊]]法などの内容が、この範疇に含まれる。
 
学校の[[教育課程]]の中に性教育的なものが組み込まれてはいるものの、それを教えることに関して、未だ激しい議論が行われている国もある。性教育はどの段階で開始されるべきなのか、どこまで深く踏み込んで良いのだろうか、[[セクシャリティ]]や性行動に関する内容(安全な性交の実践、[[自慰行為]]、性の倫理感など)も扱うべきなのかなど、様々な論争が巻き起こっている。なお、子供を望むができない[[不妊]]症では'''加齢が原因'''の場合もあり、女性は胎生期に最大の卵子を持ち、以降減少していくため、女性の妊娠しやすさ(妊孕性)は、おおよそ32歳位までは緩徐に下降し、卵子数の減少と同じくして37歳を過ぎると急激に下降していく。また男性も年齢とともに妊孕能が低下する<ref>{{Cite web|url=http://www.jaog.or.jp/lecture/1-妊娠適齢年令/ |title=1.妊娠適齢年令 |publisher=公益社団法人 日本産婦人科医会 |accessdate=2020-05-05}}</ref>。二人目不妊の問題もあり、雑誌社の調査では不妊治療経験者中で第二子のときに不妊治療を経験した人は6割を超え、その内半数が第二子で初めて不妊治療をした状態にあり、子供を望んでいて最初の妊娠で問題がなくとも加齢やセックスレスにより妊娠しづらくなる問題が起こる場合があり、このため生涯設計のため生殖可能年齢を早期に理解することも重要である<ref>{{cite web|url=https://style.nikkei.com/article/DGXMZO37969890Q8A121C1000000/|title=実は多い2人目不妊 早めに受診、子育てと仕事が壁に|publisher=woman smart DUELプレミアム|date=2018-12-6|accessdate=2020-06-20}}</ref>。日本産科婦人科学会によると不妊治療の体外受精によって2017年に誕生した子どもの数は、この年に生まれた子どものおよそ16人に1人の割合となっており<ref>{{cite web|url=https://news.yahoo.co.jp/articles/304c8c94437d789ba9c51970c569c03ba0ab69be|title=16人に1人が体外受精児 17年、5万6千人誕生|publisher=|date=2019-10-28|accessdate=2020-08-02}}</ref>、誰もが自然妊娠するとも限らない現状がある。一方で、若い女性に正しい性知識が不足が普及していないことで2008年には女性歌手(当時25)が、35歳を過ぎた母体では羊水が腐るため早期の出産をという発言をラジオでして批判にさらされるなど誤解を生む状況がある<ref>{{Cite news|url=https://www.j-cast.com/2008/02/01016232.html?p=all |title=「35歳でお母さんの羊水が腐る」 倖田トンデモ発言に批判 |publisher=jcastnews|date=2008-02-01 |accessdate=2020-06-04}}</ref>。
 
[[1980年代]]以降、[[後天性免疫不全症候群|後天性免疫不全症候群(エイズ)]]の存在が取り上げられるようになり、性教育もその存在を無視することはできなくなった。[[後天性免疫不全症候群|エイズ]]が流行しているとまで言える状態にまで達してしまった[[アフリカ]]各国においては、[[研究者]]たちのほとんどが、性教育をきわめて重要な公共衛生計画と捉えている。[[米国家族計画連盟]]など、国際的な組織の中には、幅広い性教育を実践していくことは、[[人口爆発]]の危機を乗り越える/女性の権利を向上させるといった地球規模的な成果を達成することに繋がる、と考えている人々もいる。
 
== 性教育の効果 ==
[[2002年]]から、[[秋田県]]では県の教育委員会と[[医師会]]が連携し、中高校生向けに性教育を実施している。その結果、全国平均の1.5倍だった10代の中絶が平均以下となり<ref>{{Cite web|url=https://www.asahi.com/articles/ASL583WNBL58UTIL00Y.html|title=性教育、親「現実見て正しい知識を」 自治体が講座開催|accessdate=2019-2-19|publisher=|author=三島あずさ、山下知子、山田佳奈、塩入彩|date=2018年5月14日|website=朝日新聞}}</ref>、[[2012年]]には10代の中絶率が約三分の一となった。性教育で性行動はより慎重になると知られている<ref>{{Cite web|url=http://www.tokyo-np.co.jp/article/culture/hiroba/CK2018090802000222.html|title=【考える広場】よく生きるための性教育|accessdate=2019-2-16|publisher=東京新聞|date=2018年9月8日}}</ref>。
 
[[富山市]]では、10代の人工妊娠中絶率はこの5~6年、女子の人口1000人あたり1人前後の割合で推移している。対して全国平均は6人前後で、福岡県や沖縄県などは10人前後となっている。1990年代に女子高生等の性が商品化され、全国で人工妊娠中絶が急増したことに危機感を抱いた産婦人科医と富山市は協力し、1991年から性教育の出張授業を始めた結果となっている。性教育とは危機管理を学ぶことという意識で教育が行われている<ref>{{cite web|url=https://www.news-postseven.com/archives/20200415_1555262.html?DETAIL|title=富山の10代人工妊娠中絶が激減、産婦人科医の“出張授業”の内容|publisher=newsポストセブン|date=2020-04-15|accessdate=2020-08-02}}</ref>。
 
なお、人工妊娠は毎年低減しているものの、平成30年度件数は 161,741件であり、「20 歳未満」について各歳でみると、「19 歳」が 5,916 件と最も多く、次いで「18歳」が 3,434件となっている。一方で30代は60,368件、40代以上も15,909件となっている<ref>{{Cite web|url=https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/18/|title=平成30年度衛生行政報告例の概況 母体保護関係|accessdate=2020-05-10|website=厚生労働省|date=2019-10-31}}</ref>。出産に関する統計はほとんどが15歳からだが、15歳未満の妊娠も年間約400件ほどある<ref>{{cite web|url=https://allabout.co.jp/gm/gc/479647/|title=小中学生の妊娠は年間約400件…産科はどう対応するか|publisher=All about|aouthor=清水ほなみ|accessdate=2020-08-02}}</ref>。平成29年度の出産数と中絶数の比率で出した中絶選択率は、全体では15%だが20歳未満で59%にも上る。また12歳未満の強制性交等の性犯罪は約1000人が被害者となっている<ref>{{Cite web|url=http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2019/06/132_20190612.pdf|title=性教育の新たなスタートに向けて|accessdate=2020-05-10|autheor=安達知子|website=日本産婦人科医会|date=2019-6-12}}</ref>。社会福祉法人恩賜財団母子愛育会の平成26年度調査によると、[[児童相談所一時保護所]]入所者の虐待は性的虐待年齢が13.03歳となっている<ref>{{cite web|url=http://www.boshiaiikukai.jp/img/hokoku-jido-26.pdf|title=一時保護所における支援のあり方に関する研究|publisher=社会福祉法人恩賜財団母子愛育会|accessdate=2020-07-10}}</ref>。
 
2020年3月から5月にかけて、[[2019新型コロナウイルス|新型コロナウイルス]]感染症拡大予防のためにとられた全国での一斉休校において、学校や部活も無くなり自宅にいる中高校生が性行為の機会を持ち望まない妊娠に至ったり、妊娠の不安を感じて[[こうのとりのゆりかご]]を設置する熊本市の慈恵病院の妊娠相談窓口に、過去最多の中高生からの相談が寄せられている<ref>{{Cite news|url=https://mainichi.jp/articles/20200511/k00/00m/040/232000c |title=中高生の妊娠相談過去最多 新型コロナによる休校影響か 熊本・慈恵病院|accessdate=2020-05-17|website=毎日新聞|date=2020-5-11}}</ref>。コロナ禍の最中に性虐待が判明した少女には、10歳での母の恋人からの性暴力の妊娠や12歳での父からの性強要による事件も含まれ、日本は他国に比較し性虐待の顕在化がされていない可能性が高い一方で自分の体を守り大切にする性教育が不足しているため自らを責めたり我慢をする少女もいる<ref>{{cite web|url=https://news.ameba.jp/entry/20200616-260/|title=コロナ禍で家庭内の性暴力が増加…少女を性的虐待から守るには?|publisher=日刊spa!|date=2020-06-16|accessdate=2020-06-26}}</ref>。性暴力を受けたときに相談できるワンストップ支援センターの大阪支部では、2010年度~18年度に来所し、受診につながった者のうち19歳以下の子どもは1285人で6割を占めている。また17、18年度、家族からの性暴力を訴えた子どもは161人となり、実父からが36%、実兄・義兄からが18%を占め、そのほか母の恋人・祖父・いとこが加害者の事例もある<ref>{{cite news|url=https://www.asahi.com/articles/ASN7B62S1N7BUTIL032.html?iref=pc_extlink|title=全都道府県にワンストップセンター整備|author=山田佳奈、林幹益|publisher=朝日新聞|date=2020年7月10日|accessdate=2020-07-13}}</ref>。加害者は知人や親族など身近な人からのことが多い。女性の心身を守るうえでも性教育は重要である。
 
日本は妊娠を回避する緊急妊娠ピル(アフターピル)「ノルレボ錠」が医師の診断なしには処方されずかつ約15000円と高価であるため、「'''意図しない妊娠のリスクを抱えた全ての女性は、緊急避妊薬(アフターピル)にアクセスする権利がある」とする世界保健機関の勧告に逆行している'''<ref>{{Cite web |url=https://style.nikkei.com/article/DGXKZO50604600U9A001C1TCC000/ |title=緊急避妊薬、入手の壁なお高く ネット処方解禁でも |publisher=日経電子版ヘルスUP |date=2019-10-7 |accessdate=2020-5-2}}</ref>ところであり、この妊娠回避機会の喪失も影響している。なお2019年にジェネリック薬「レボノルゲストレル錠」が適用となり約9000円で処方可能となった<ref>{{Cite web |url=https://nagoya-yamahara-lc.jp/column/p247/ |title=アフターピルが安くなります |publisher=レディースクリニック山原|date=2019-3-21 |accessdate=2020-6-11}}</ref>。[[厚生労働省]]の[[処方箋医薬品]]から要指導・[[一般用医薬品]]への転用に関する評価検討会議でも、経口妊娠中絶薬の市販化について審議されたが、アメリカなどの緊急避妊ピルを常時使用している環境と比較して、参考人として招聘された国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院副理事長 矢野哲と公益社団法人日本産婦人科医会常務理事 宮崎亮一郎より性教育の不十分さや薬剤師の知識不足による誤解などを懸念することが述べられ、[[日本産科婦人科学会]]も反対理由として表明している<ref>{{Cite web |url=https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000176856.html |title=2017年7月26日 回医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議 |accessdate=2020-05-02|publisher=厚生労働省}}</ref>ことが不許可の背景となっている。これに対しドラッグストアの業界団体や一部薬剤師らが反発し、一部の産婦人科医からも、緊急避妊薬は早ければ早いほど効果があることを述べ、休日で病院が開いていない際に女性を守る視点が欠けているとの意見もあった。緊急避妊薬に関するパブリックコメントは9月11日から1ヵ月間受け付けられ、全部で348件。賛成が320件、反対はわずか28件だったにも関わらず、国民の意思が反映されない決着となった<ref>{{cite web|url=https://diamond.jp/articles/-/149842?page=1|title=緊急避妊薬のOTC化、圧倒的世論を受けてもやはり不可|publisher=週刊ダイヤモンド編集部|date=2017-11-16|accessdate=2020-08-02}}</ref>。スイッチOTC検討会の委員、鈴木邦彦・日本医師会常任理事は、望まない妊娠を減らしたいという考え方そのものに反対ではないとしつつも、審議会の議論について、医師の関与の必要性、緊急避妊薬への国民の理解度、販売体制の問題が示され、とてもOTCにできないという結論であり、反対意見ばかりで賛成は誰もいなかったとの見解を示している<ref>{{cite web|url=https://diamond.jp/articles/-/145747|title=緊急避妊薬のスイッチOTC化に日本医師会が反対する理由|publisher=週刊ダイヤモンド編集部|date=2017-10-16|accessdate=2020-08-04}}</ref>。ちなみに医師向けサイトで行われた現場の産婦人科医師のアンケート(n=124)では47%が反対よりの意見を表明しているが、27%がどちらでもないことを表明している。また60代男性医師は、基本的には個人の選択に任せるべき、妊娠反応薬の時も産婦人科医会は反対していたことを述べている<ref>{{cite web|url=https://ishicome.medpeer.jp/entry/1136|title=緊急避妊のOTC(一般医薬品)化についてどう思われますか?産婦人科120名に聞きました|publisher=イシコメ|date=2018-02-13|accessdate=2020-08-02}}</ref>。産婦人科医の有志9人による5月の産婦人科医に緊急アンケート(n=559)では、6割以上がアフターピルの市販化とオンライン処方のいずれも肯定している。ただし主催者の医師は緊急避妊薬のオンライン診療が解禁になった場合も性暴力被害者に限定されたり、オンライン診療を行っている産婦人科医を探すならば今よりアクセスしやすいかと疑問を呈している<ref>{{cite web|url=https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/ec-online-otc|title=アフターピル(緊急避妊薬)のオンライン処方 産婦人科医の6割超が「望ましい」|publisher=Buzzfeednews|date=2019-6-6|accessdate=2020-08-02}}</ref>。2019年に行われたオンライン診療指針見直し検討会では、ささえあい医療人権センターCOML理事長 山口育子構成員が、産婦人科受診に抵抗を感じる女性が多いため、その受診に精神的な負担のあるときもオンライン診療を可能とすべきと述べ、諸外国では薬局で緊急避妊薬を購入できるところもある補足した。それに対し、「『精神的負担のあるとき』との表現はあまりに広すぎだと牽制し、諸外国と日本の文化が異なることを掲げ、対象が無制限に広がってはいけないとの指摘も多数でた(今村聡構成員:日本医師会副会長、黒木春郎構成員:医療法人社団嗣業の会理事長・日本オンライン診療研究会会長ら)<ref>{{cite web|url=https://gemmed.ghc-j.com/?p=26695|title=オンライン診療での緊急避妊薬処方、産科医へのアクセス困難な場合に限定―オンライン診療指針見直し検討会|publisher=GLOBAL HEALTH CONSULTING|date=2019-06-03|accessdate=2020-08-04}}</ref>。傍聴者からは検討委員のひとりで日本医師会副会長の今村聡氏は検討会で「(緊急避妊薬へのアクセスが)無制限に広がってしまうのも困るという思いがあります。」というWHO勧告に逆行する趣旨の発言に疑問を呈されている<ref>{{cite web|url=https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65430?page=4|title=女性の健康世界会議で大衝撃!23歳が「日本ヤバイ」と痛感した理由|publisher=現代ビジネス|author=福田和子|date=2019-06-23|accessdate=2020-08-04}}</ref>。
 
2019年米国産科婦人科学会(ACOG)は避妊に関する声明を改め、腟リングや避妊パッチを含めた全ての避妊薬を市販薬(OTC)として、処方箋なしで販売すべきだとの見解を「Obstetrics & Gynecology」10月号に発表している。またDMPA(デポ型酢酸メドロキシプロゲステロン)注射薬についても、年齢制限なく処方箋なしで販売すべきだとし、女性が避妊薬にアクセスするのを阻む障壁を取り除くべきだと主張している<ref>{{cite web|url=https://mainichi.jp/premier/health/articles/20191011/med/00m/070/002000d|title=「避妊薬はすべて市販薬にすべきだ」と米産婦人科学会|publisher=毎日新聞|date=2019-10-15|accessdate=2020-07-31}}</ref>のと対比的な状況となっている。なお産婦人科医の人工妊娠中絶の件数減った場合、クリニック収入が減る可能を医師が懸念する可能性を指摘する意見もあり<ref>{{Cite web |url=https://president.jp/articles/-/29212?page=4 |title=ピルを出したがらない産婦人科医の屁理屈 "人工妊娠中絶"の収入減を懸念か | author=山本佳奈 |accessdate=2020-05-02 | newspaper = PRESIDENT Online | publisher = [[プレジデント社]] }}</ref>、中絶が「罪人に対する処罰」であり産婦人科医の「いい金づる」とも表現されている<ref>{{cite web |url=https://www.ohtabooks.com/qjkettle/news/2018/08/03074223.html|title=「世界一遅れた中絶手術」 なぜ日本の医療は女性に優しくないのか? | accessdate=2020-05-05|publisher=太田出版ケトルニュース }}</ref>。また、中絶胎児は万能細胞としてアメリカではパーキンソン病患者に胎児から取った神経細胞を移植する研究が進められ、中国でも脊髄損傷患者などに実際の治療が始まっている<ref>{{cite web|url=http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20050409|title=NHKスペシャル中絶胎児利用の衝撃|publisher=NHK|date=2005年4月9日|accessdate=2020-08-01}}</ref>が、現状では女性から摘出した中絶胎児は産婦人科が処分しているが他の用途の転用可能性もある。日本やポーランド、アイルランド等のミフェプリストンが未認可の国々では、掻爬術あるいは吸引処置が選択されるが、子宮穿孔や出血などの合併症のリスクが高く安全性において「薬物による中絶」に大きく劣る。ミフェプリストンが開発される以前は、妊娠初期であっても吸引術や掻破術がファーストチョイスとして選択されていたが、ミフェプリストンが認可された国々ではリスクの問題のためにファーストチョイスとされない。また、子宮内膜が薄くなる子宮内膜菲薄化、子宮に穴が開いてしまう子宮穿孔や術後に[[アッシャーマン症候群]]を起こすことがあり、[[不妊症]]となるケースがあるのも欠点となっている。
 
中高生の妊娠には、[[避妊]]の正しい知識不足による失敗がある。月経中は妊娠しないという誤認があったり、膣外射精や炭酸飲料で膣を洗う対策は避妊ですらないということが伝わっていない場合がある<ref>{{cite web|url=https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_749.html|title=避妊に失敗してしまう間違った対策方法とは?|publisher=NHK|date=2018年7月23日|accessdate=2020-08-01}}</ref>。また知識があったとしても、一般的な避妊方法に使用されるコンビニエンスストアでも購入できるコンドームによる避妊方法も万全ではなく、避妊失敗率は2%であり正しい使用方法でない場合を含めると18%とされ、一方でピルは0.3%とされる<ref>{{cite web|url=https://medley.life/diseases/topics/57b6586f3ee3ba32008b4569/details/manner/condom/|title=避妊|publisher=MEDLEY|accessdate=2020-08-01}}</ref>。コンドームは「性感染症予防」、避妊のためにはより効果の高い方法を「併用する」ことが常識となっている<ref>{{cite web|url=https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65430?page=2|title=女性の健康世界会議で大衝撃!23歳が「日本ヤバイ」と痛感した理由|author=福田和子|publisher=現代ビジネス|date=2019-06-23|accessdate=2020-08-03}}</ref>。しかし口で性器に触れるオーラルセックスでは、双方の性器を保護しないと性感染症が防げない問題もある。妊娠の不安については、市販されている99%の精度<ref>{{Cite web |url=https://www.arax.co.jp/checkone/ |title=チェックインワンについて |publisher=株式会社アラクス |accessdate=2020-6https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59092?page=2-11}}</ref>と言われる[[妊娠検査薬]]の存在への無知などがあり、様々な性にまつわる理解が不十分な状態が招いた問題となっている。なお中絶可能週数は22週までで、中絶の同意書には配偶者の同意者が必要である。未婚者の場合でもパートナーの合意を求める病院があり男性も交際相手の女性の中絶同意書に署名する責任がある。しかしこの制度は性暴行の加害者にも同意を求めなくては手術を行うことができない現状に繋がっているため弁護士から批判を浴びている<ref>{{cite web|url=https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/20200705-00186652/|title=性暴力による妊娠中絶、なぜ「加害者の同意」が必要? 厚生省は通達で「いやしくも便乗して…」|publisher=yahoo news|author=小川たまか|date=2020-07-05|accessdate=2020-07-11}}</ref>。一方コロナ禍での若年層の妊娠不安増加を背景として緊急経口避妊薬の市販化への議論が高まったが、日本産婦人科医会の前田津紀夫副会長は「日本では若い女性に対する性教育、避妊も含めてちゃんと教育してあげられる場があまりにも少ない」「“じゃあ次も使えばいいや”という安易な考えに流れてしまうことを心配している」と2020年7月にNHKでコメントし、物議を醸しだした<ref>{{cite web|url=https://biz-journal.jp/2020/07/post_171066.html|title=産婦人科医会副会長、NHKで緊急避妊薬めぐり「安易な考えに流れてしまう」発言が物議|publisher=Business Journal |date=2020-7-29|accessdate=2020-03-31}}</ref>。片や国内で認可されているノルレボは、売上ベースで年間11万個の販売に対し、日本国内の人工中絶は年間におよそ16万8千件(平成28年度・厚生労働省で、1日にすると国内の中絶数は460件という結果から、緊急避妊薬にリーチできない人が多数であることを懸念し、性交後120時間(丸5日間)以内の服用で効果がある「ella(エラ)」というアフターピルを処方する医師もいる<ref>{{cite web|url=https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59092?page=2|title=「アフターピルが市販されると女性の性が乱れる」という大嘘|author=及川夕子|publisher=現代ビジネス|date=2018-12-23|accessdate=2020-08-03}}</ref>。
 
世界で承認されている、子宮内避妊システムの小さいものの利用、腕に入れるインプラント、皮膚に貼るシールの利用を含め'''「産む・産まない」の選択を女性自身が決める「リプロダクティブ・ヘルスアンドライツ」'''の権利が尊重される必要がある<ref>{{Cite web |url=https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65043?page=6 |title=荻上チキsession体も心も痛い…「時代遅れの中絶手術」で傷つく日本の女性たちの叫び| date=2019-06-06|accessdate=2020-05-05|publisher=現代ビジネス }}</ref>。
 
高校生など学生で妊娠に至った場合、学校は退学処分になり将来の夢が阻まれるほか、2017年には東京都台東区で女子高校生が妊娠が分かり親からの叱責などを恐れ交際相手に嘱託殺人させた事件<ref>{{cite web|url=https://bunshun.jp/articles/-/8913|title=女子高生が妊娠発覚で「死んじゃいたい」 男はバンダナで彼女の両手を縛った……|publisher=文春オンライン|date=2018-09-18|accessdate=2020-0802}}</ref>や千葉市では2018年に交際相手(16)が出産した新生児の遺体を自宅に隠した少年(17)の事件<ref>{{cite web|url=https://www.chibanippo.co.jp/news/national/493906|title=新生児遺体隠した疑い 出産した16歳と少年逮捕 千葉北署|publisher=千葉日報|date=2018年4月26日|accessdate=2020-08-02}}</ref>、2017年には静岡市で女子大生(20)が乳児遺体遺棄で逮捕される事件<ref>{{cite news|url=https://www.sankei.com/affairs/news/170818/afr1708180006-n1.html|title=乳児遺体を遺棄した疑い 女子大生逮捕、静岡|publisher=産経ニュース|date=20118-08-18|accessdate2020-08-02}}</ref>が起こっている。厚生労働省の虐待死の統計では、その被害者は半数以上が0歳であり、児童虐待死が最も多いのは「0歳0ヶ月0日」となっている<ref>{{cite web|url=http://bigissue-online.jp/archives/1018623517.html|title=児童虐待死が最も多いのは「0歳0ヶ月0日」。産まれてすぐ殺される新生児と、追い詰められる母親|publisher=the big issue|date=2016-10-26|accessdate=2020-08-02}}</ref><ref>{{cite web|url=https://allabout.co.jp/gm/gc/481840/|title=虐待死5割以上が0歳児、望まぬ妊娠で中絶を選べない母親の選択肢|publisher=All about|author=竹内正人|accessdate=2020-08-02}}</ref><ref>{{cite web|url=https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000533867.pdf|title=ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第15次報告)の概要|publisher=厚生労働省|date=2019-08-01|accessdate=2020-08-02}}</ref>。
 
[[人工妊娠中絶]]や[[特別養子縁組]]といった手段を取らず、若年層で子供を産み育てる選択を取ったとしても、未婚のまま、または離婚の場合も子どもを引き取るのは2012年統計では妻側が83.9となっており、一人親になるのは圧倒的に母親である<ref>{{Cite web|url=http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2014.asp?fname=T06-14.htm |publisher=国立社会保障・人口問題研究所 |title=人口統計資料集2014|accessdate= 2015年10月31日}}</ref>うえ、日本ではひとり親の相対的貧困率が高く、無職では60%で30か国中ワースト12位と中位であり、有業のひとり親の相対的貧困率については58%で諸外国中ワースト1位<ref>[http://www.oecd.org/els/soc/growingunequalincomedistributionandpovertyinoecdcountries.htm] OECD Growing Unequal? Income Distribution and Poverty in OECD Countries table5.2. 2008年10月</ref>という状況にある。政府調査ではひとり親の4世帯に1世帯は、子どもの世話・家事について頼れる人が「誰もいない」うえ、金銭的援助も望めない世帯の割合は、母子世帯が 51.5%となっている<ref>{{cite web|url=https://www.jil.go.jp/press/documents/20191017.pdf|title=母子世帯の貧困率は割超え、13%が「ディープ・プア」世帯「第回(2018)子育て世帯全国調査」結果速報|publisher=独立行政法人労働政策研究・研修機構|date=2019-10-1|accessdate=2020-08-03}}</ref>ため準備ができていない時の妊娠・出産は女性の人生でより困難な大きな転機となる。
 
== 北欧の性教育 ==
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{{further|キリスト教}}[[アメリカ合衆国|アメリカ]]では[[1980年代]]半ばから、[[性感染症|性病]]や[[後天性免疫不全症候群|エイズ]]感染症の予防から[[コンドーム]]の使用指導をしていた。しかし[[1990年代]]初めより、[[宗教右派|キリスト教右派]]の「絶対禁欲性教育([[:en:Abstinence-only_sex_education|Abstinence-Only Sex Education]])」が導入された。結婚するまで絶対にセックスをしてはならず、妊娠の医学的仕組み、避妊の仕方も教えてはならないというもの。[[ブッシュ政権]]は莫大な資金援助をしたが、避妊を教えた場合は助成金を打ち切った。その結果、一部の州で未成年者の性病罹患と妊娠が急増した<ref>{{Cite book|和書|author=|title=論座 2007年 03月号|date=2007-2-5|year=|accessdate=2019-2-21|publisher=朝日新聞社出版局|author2=|author3=|author4=|author5=|author6=|author7=|author8=|author9=|ASIN=B000MV8WO8}}</ref><ref>{{Cite web|url=http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20070206|title=北米セックス禁止令、避妊も禁止の性教育!Add Star|accessdate=2019-2-19|publisher=|month=|date=2007-02-06|website=映画評論家町山智浩アメリカ日記|author=町山智浩}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://blog.goo.ne.jp/konstanze/e/6a9eb3b85a7f873460d56bac0196e136|title=「アメリカSEX革命」CBSレポートより|accessdate=2019-2-19|publisher=|date=2005-11-06|website=千の天使がバスケットボールする}}</ref>。この[[純潔教育]]の顛末は、ドキュメンタリー映画『The Education of Shelby Knox』などで知ることができる。ピュアボール([[:en:Purity_ball|Purity ball]])という、父親と10代の娘が「結婚するまで処女を守る」と誓うダンスイベントも存在する。
 
また[[2004年]]、[[共同通信社|共同通信]]によると、18歳以上の成人1009人に行われた電話調査で、アメリカ国民の79%、キリスト教徒では87%が、[[聖母マリア]]の[[処女懐胎]]を信じていることが明らかになった<ref>{{Cite web|url=http://kisosuu.cocolog-nifty.com/zakki/2004/12/post_13.html|title=米国民の割が処女懐胎を信じている!|accessdate=2019-2-19|publisher=|date=2004-12-06|website=大学への基礎数学-雑記帳}}</ref>。[[2016年]]には[[カトリック教会|カトリック]]系高校の女子生徒が保健室の先生に「[[生理]]が来ない」と相談したところ、「処女懐胎かも」と言われたエピソードも話題となった(国や年代は不明)<ref>{{Cite web|url=https://j-town.net/tokyo/news/localnews/234590.html|title=女子高生「生理が来ないんです」 先生(カトリック)「...処女懐胎かも」 生徒「えっ」|accessdate=2019-2-19|publisher=株式会社ジェイ・キャスト|year=|date=2016年11月4日|author=a rainbow|website=Jタウンネット}}</ref>。
 
[[アメリカ心理学会]]の研究では、「包括的性教育([[:en:Comprehensive_sex_education|comprehensive sex education]])」の有効性が示されているとした<ref>{{cite web|url=http://www.apa.org/releases/sexeducation.html|title=アーカイブされたコピー|accessdate=2006年8月11日|archiveurl=https://web.archive.org/web/20060811000127/http://www.apa.org/releases/sexeducation.html|archivedate=2006年8月11日|deadlinkdate=2017年10月}}</ref>。包括的・総合的な性教育の有効性は、査読誌の記事の複数によって明白であるとする一方、「絶対禁欲性教育([[:en:Abstinence-only_sex_education|Abstinence-Only Sex Education]])」は深刻な危険があるとの指摘がなされている<ref>{{PDFlink|[http://ari.ucsf.edu/science/reports/abstinence.pdf. Abstinence Only vs. Comprehensive Sex Education: What are the arguments? What is the evidence?]}} - AIDS Research Institute
University of California, San Francisco, Policy Monograph Series March 2002.</ref>。<!--こちらもおそらく追記の必要あり。英語力他が足りないので後回しにします。abstinenceに否定よりな結果とおぼしいので問題は少ないでしょう。
http://www.bmj.com/cgi/content/full/324/7351/1426 -->
 
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[[1992年|1992年(平成4年)]]、[[学習指導要領]]が改訂され、性に関する具体��な指導が盛り込まれたことで「性教育元年」と呼ばれた<ref name=":21" />。
 
学習指導要領の改訂で、思春期の成長は「男子=[[変声|声変わり]]」から「[[精通]]」と定義され、これにより男女が名目上は[[平等]]に性教育を受けられるようになり、教育現場では[[射精]]をどこまで掘り下げるかなど試行錯誤をしていた<ref name=":20">{{Cite web|url=https://wezz-y.com/archives/32936|title=2016.07.21 「レイプもセックスだと思ってた」…まともに教えず、男を誤解させる自民党の政治的性教育|accessdate=2019-2-14|publisher=株式会社サイゾー|website=wezzy}}</ref>。[[後天性免疫不全症候群|エイズ]]が社会問題化し、[[ヒト免疫不全ウイルス|HIV]]教育の重要さがフォーカスされたことで、小学校6年の理科で扱う人体の学習が3年生に前倒しされ、5年生に『人の発生と成長』が位置づけられるなど、性教育に発展の兆しが見られるようになった<ref name=":21" />。
 
そんななか、[[東京都]][[日野市]]の[[東京都立七生特別支援学校|七生養護学校]](現・[[東京都立七生特別支援学校]])では、知的障害の子どもが性被害を受けても気づかなかった等の事態を受け、男性器と女性器の名称を織り込んだ歌や、性器のついている人形を使うなど独自の性教育に取り組み、校長会等でも高く評価された<ref name=":21" />。
 
=== 性教育を巡る論争と学習指導要領の変更 ===
{{See also|七生養護学校事件}}[[2002年|2002年(平成14年)]]、[[東京都議会|東京都議会議員]]で[[自由民主党 (日本)|自民党]]の[[古賀俊昭]]、[[自由民主党 (日本)|自民党]]の田代博嗣、[[民主党 (日本 1998-2016)|民主党]]の[[土屋敬之]]ら3名の議員が、[[東京都立七生特別支援学校|七生養護学校]]を始めとした学校を「行きすぎた性教育」と問題にし、[[産経新聞]]などのメディアで「過激な性教育」「まるでアダルトショップのよう」と扱われるなど、保護者や寮の職員から学校側に苦情や懸念が相次ぎ、社会的な批判が起きた<ref name=":22">{{Cite web|url=http://kokokara.org/saiban0.html|title=こころとからだの学習裁判|accessdate=2019-2-14|publisher=「こころとからだの学習」裁判を支援する全国連絡会|website=「こころとからだの学習裁判」支援}}</ref><ref>[http://www.anti-freelove.net/data/nanao-mondai.htm これでいいのか?性教育教室はアダルトショップ]</ref>。その後、[[東京都立七生特別支援学校|七生養護学校]]は授業内容の全面変更・禁止、授業は事前に副校長の許可と当日の監視のもとで実施するよう指導され、[[校長]]他116人の[[教職員]]は処分された<ref name=":22" /><ref name=":212" />。
 
この処分について時の[[教育長]]・[[横山洋吉]]は「都立七生養護学校では、虚偽の学級編制あるいは勤務時間の不正な調整、それから勤務時間内の校内[[飲酒]]などの服務規律違反、その他、学習指導要領を踏まえない性教育など、不適切な学校運営の実態が明らかになったことから、教職員とともに、管理監督責任を果たさなかった校長への処分等を行ったものでございます」と都議会で説明している<ref name="togikai">{{cite web|url=http://www.gikai.metro.tokyo.jp/gijiroku/yotoku/2004/d6214412.htm|title=アーカイブされたコピー|accessdate=2007年5月11日|archiveurl=https://web.archive.org/web/20080310024449/http://www.gikai.metro.tokyo.jp/gijiroku/yotoku/2004/d6214412.htm|archivedate=2008年3月10日|deadlinkdate=2017年10月}}</ref>。
 
[[2005年]]3月4日の[[参議院]]予算委員会では、[[山谷えり子]]参議院議員が「[[陰茎|ペニス]]、[[膣|ヴァギナ]]などの用語を使い[[性行為|セックス]]を説明するのは過激で、とても許せない」と批判し、[[小泉純一郎]]元首相も同意した。[[自由民主党 (日本)|自民党]]の[[安倍晋三]]を座長とした「過激な性教育・[[ジェンダーフリー]]教育実態調査プロジェクトチーム」が設置され、性教育は余計に性を乱すと批判した<ref name=":212" /><ref name=":202">{{Cite web|url=https://wezz-y.com/archives/32936|title=2016.07.21 「レイプもセックスだと思ってた」…まともに教えず、男を誤解させる自民党の政治的性教育|accessdate=2019-2-14|publisher=株式会社サイゾー|website=wezzy}}</ref>。[[山谷えり子]]は「性なんて教える必要はない」「オシベとメシベの夢のある話をしているのがいい」「結婚してから知ればいい」と主張した<ref name=":202" />。
 
元一橋大学非常勤講師の[[村瀬幸浩]]は、これにより[[学習指導要領]]が変更され、科学的な知識としての「受精」は扱うが「受精に至るプロセス(=セックス・性交)」は扱わないなど、日本は性教育後進国となったと主張した<ref name=":202" />。
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[[2008年]]2月、[[東京都立七生特別支援学校|七生養護学校]]の教員や保護者、関係者が人権侵害を訴えて提訴した裁判で、[[東京地方裁判所]]は教育委員会の裁量権乱用を認め、処分取り消しを命じる判決を言い渡した。また、[[2009年]]3月12日、東京地裁(矢尾渉裁判長)は、3議員および東京都教育委員会に対して210万円の損害賠償の支払いを命じた。
 
[[2013年]]、[[最高裁判所 (日本)|最高裁]]は「教育の自主性を阻害」するなどの「不当な支配」にあたると認定し、[[古賀俊昭]]をはじめとした都議側に、原告である教員らに賠償金を支払う判決を下した<ref name=":213">{{Cite web|url=https://diamond.jp/articles/-/159339|title=2018.2.12 日本の性教育は時代遅れ、ユネスコは小学生に性交のリスク教育推奨|accessdate=2019-2-14|publisher=株式会社ダイヤモンド社|author=末吉陽子|website=ダイヤモンドオンライン}}</ref><ref name=":222">{{Cite web|url=http://kokokara.org/saiban0.html|title=こころとからだの学習裁判|accessdate=2019-2-14|publisher=「こころとからだの学習」裁判を支援する全国連絡会|website=「こころとからだの学習裁判」支援}}</ref>。
 
[[2013年]]、[[中京テレビ放送|中京テレビ]]『ニッポンの性教育 セックスをどこまで教えるか』が放送され、のちに無料公開された<ref name=":332">{{Cite web|url=https://www2.ctv.co.jp/20130525nippon/|title=ニッポンの性教育 性をどこまで教えるか|accessdate=2019-2-19|publisher=中京テレビ|date=2013-5-25}}</ref>。
 
[[2018年]]3月、東京都足立区立中学校の授業が不適切だとする[[東京都議会]]質問が波紋を広げた。[[性行為|性交]]、[[避妊]]、[[妊娠中絶|中絶]]は中学の学習指導要領で扱っていないが、3年生を対象にした授業で「産み育てられる状況になるまで性交は避けるべき」と強調し、[[避妊]]や[[人工妊娠中絶]]についても教え、考えさせる内容を行った<ref name=":23">{{Cite web|url=https://courrier.jp/news/archives/119521/|title=2018.4.20 性教育「後進国」ニッポン|「性交」「避妊」がNGワード! じゃあ何を教えているの?|accessdate=2019-2-14|publisher=講談社|website=クーリエ・ジャポン}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://diamond.jp/articles/-/168347|title=2018.4.24 中学校の性教育で大論争、東京都議vs教育現場それぞれの言い分|accessdate=2019-2-14|publisher=|author=末吉陽子|website=ダイヤモンドオンライン}}</ref>。また授業前のアンケートで「2人が合意すれば、高校生になればセックスをしてもよいと思うか」や、正しいと思う避妊方法などを問う項目が含まれており、「学習指導要領に記載のない性交、避妊、中絶といった言葉を使っていた」「かえって性交を助長する」と問題視され、[[足立区]][[教育委員会]]を指導するに至った<ref name=":23" /><ref>{{Cite web|url=https://www.sankei.com/life/news/180423/lif1804230011-n1.html|title=2018.4.23 「高校生になればOK?」足立区立中、授業前にアンケート 都教委は問題視「助長の可能性」|accessdate=2019-2-14|publisher=}}</ref>。
 
発端の都議会質問は、[[東京都立七生特別支援学校|七生養護学校]]を非難・処分し最高裁で敗訴した[[古賀俊昭]]であり、「結婚するまで性交渉を控えるという[[純潔教育]]や自己抑制教育が必要だ」「そもそも『結婚する・しない』を自己決定するという戦後の価値観が問題だ。『結婚・出産・子育て』は社会貢献だとしっかり教育すれば、安易な性交渉にはおのずと抑制的になる」などと主張した<ref>{{Cite web|url=https://mainichi.jp/articles/20180607/ddm/005/070/040000c|title=2018年6月7日 東京・中学性教育への「政治介入」 身を守るには知識必要=中川聡子(統合デジタル取材センター)|accessdate=2019-2-14|publisher=|website=毎日新聞}}</ref>。
 
Yahoo!ニュースのアンケート(2018/5/155/25)では、25,063票中、性教育が必要は90.5%(22,674票)、不必要は9.5%(2,389票)だった<ref>{{Cite web|url=https://news.yahoo.co.jp/polls/domestic/34843/result|title=中学生に避妊などの性教育、必要だと思う?|accessdate=2019-3-1|publisher=Yahoo! JAPAN|website=Yahoo! ニュース}}</ref>。
 
[[2019年]]2月26日に行われた東京都議会では、中学校での性教育について、都教育委員会の中井敬三教育長は「児童生徒が正しい知識を身に付け、適切に意思決定や行動選択ができるよう、区市町村教委などと連携して各学校を支援する」と答弁した。[[小池百合子]]知事は、犯罪の被害者を支援するための犯罪被害者支援条例を制定する方針を明らかにした<ref>{{Cite web|url=https://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201902/CK2019022702000132.html|title=<論戦 都議会>中学校「性教育」 各校の授業支援 教育長表明|accessdate=2019-3-10|publisher=中日新聞社|website=東京新聞|date=2019年2月27日|author=石原真樹}}</ref>。
 
== 男子の性教育 ==
元[[一橋大学]]・[[津田塾大学]]講師の[[村瀬幸浩]]は、[[2014年]]出版の『男子の性教育』(ISBN 4469267600)に、男子高校生を対象にした「射精イメージ」の調査結果を記載した。約15%の男子が[[射精]]を「汚らわしい」と感じ、約20%が「恥ずかしい」という意識を持っている一方、女子高校生の「[[月経]]のイメージ」では「汚らわしい」と答えた人は約5%、「恥ずかしい」は約8%であった。この男女差は教育の有無によるものだとしている<ref name=":19">{{Cite web|url=https://wezz-y.com/archives/32935|title=2016.07.20 「勃起と射精」に拘泥する男の“性欲”と、ニッポンの「性教育」|accessdate=2019-2-14|publisher=株式会社サイゾー|website=wezzy|author=桃山商事}}</ref>。
 
女子は妊娠・出産に備え親や学校が月経のメカニズムを教えるが、男子には「別に教える必要はない」という風潮が続いた。思春期になれば性的な欲求や関心が高まり、メディアや友達を通じ、様々な性情報にアクセスするようになるが、科学的に正しい知識ではなく、誤解や偏見によって理解や認識が歪むことも少なくない<ref name=":19" />。高1男子100人に「射精や性器についての相談相手は?」をアンケートした際は、誰にも相談できないが70%、友達が20%、家族・親戚が9%だったとし、誰にも相談できず、悩んでいる子供が多い実態を指摘した<ref name=":29">{{Cite web|url=https://asobo-kids.net/post-770-sex-education/|title=どうする?男子の性教育。性教育研究者 村瀬幸浩氏が語る「思春期の男の子への性教育」とは。|accessdate=2019-2-19|publisher=|date=2017-03-19|website=ASOBO KIDS}}</ref>。
 
「[[強姦|レイプ]]が女性の人格を切り裂く殺人的行為だなんて考えたこともなかった。セックスのバリエーションのひとつと思っていた」などの認識や、望まない妊娠や中絶において彼氏の「他人事感」が問題となる場合、無知ゆえにリアルな想像や共感ができなかったことも原因だとし<ref name=":203">{{Cite web|url=https://wezz-y.com/archives/32936|title=2016.07.21 「レイプもセックスだと思ってた」…まともに教えず、男を誤解させる自民党の政治的性教育|accessdate=2019-2-14|publisher=株式会社サイゾー|website=wezzy}}</ref>、性教育は大人が子どもに対して果たすべき責任だとしている<ref name=":19" />。
 
アダルトビデオ=性のスタンダードになってしまうと、パートナーを心理的・肉体的に傷つけてしまうことに発展しかねず、「アダルトビデオは作り物なんだ」「あれは女の人がお金で演技している(させられている)ものなんだ」という分別がつけられるよう、性について真面目に伝えていくことが大切だとする。[[精液]]がついたパンツを「汚いから別の洗濯かごに入れてね」などと対応することで、子供がセックスは汚い、いやらしい、ひどいといった[[ネガティブ]]な意識を持ち、恋愛や性行為を回避するケースもあるという<ref name=":29" />。
 
[[埼玉大学]][[教育学部]]教授の[[田代美江子]]は、「性をいやらしいと考えている大人」や「性と真正面から向き合わない大人」は、極めて個人的な感覚に端を発するタブー意識を拠りどころに性を捉えており、大人たちが体系的な性教育を受けていないことから、「小学生には早い」「中学生に避妊なんて教えてどうするんだ」という価値観がストッパーになってしまうとしている<ref name=":214">{{Cite web|url=https://diamond.jp/articles/-/159339|title=2018.2.12 日本の性教育は時代遅れ、ユネスコは小学生に性交のリスク教育推奨|accessdate=2019-2-14|publisher=株式会社ダイヤモンド社|author=末吉陽子|website=ダイヤモンドオンライン}}</ref>。
 
== アダルト業界の性教育 ==
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== 日本の性教育の内容 ==
[[体育]]・保健体育の授業で小学校4年生で「体の発育・発達」、同5年生で「心の発達及び不安、悩みへの対処」<ref>[http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syo/tai.htm 小学校学習指導要綱体育]</ref>、[[中学校]]1年生で「身の機能の発達と心の健康」<ref>[http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/chu/hotai.htm 中学校学習指導要綱保健体育]</ref>として性教育を受ける。初めて学ぶ小学校4年生では、[[思春期]]初来の平均年齢<ref>[http://tanaka-growth-clinic.com/shishunki/shishunki_0_3.htm たなか成長クリニック・思春期] 男子は約11歳6ヶ月で小学校5・6年生頃、女子は約9歳9ヶ月で小学校3・4年生頃</ref>の関係上、男子は思春期前に学ぶ者が多いが、女子は思春期初来後に学ぶ者が多くなる。
 
小学校では体や心の変化を中心に取り上げ、自分と他の人では発育・発達が異なり、[[いじめ]]などの対人トラブルを起こしやすいことから、発育・発達の個人差を肯定的に受け止めること特に取り上げる。また、発育・発達を促すための[[食事]]・[[スポーツ|運動]]・休養・睡眠なども取り上げる。中学校では体や心の変化に加えて生殖も取り上げられるが、受精・妊娠までをは取り上げても妊娠の経過は取り上げられない。
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== 性教育関連事件 ==
=== 思春期のためのラブ&ボディBOOK ===
性行動の低年齢化や人工妊娠中絶、不測の事態の対応について書かれた冊子『思春期のためのラブ&ボディBOOK』が、中学校に無料で配布された<ref name="wezzy">[https://wezz-y.com/archives/23148/ 性教育の過去20年を振り返り、これから先10年を語る Next Generation Leaders’ Summit 2015] 2015.10.05</ref>。内容の一部が過激だとして批判され2002年に回収・絶版となった<ref name="wezzy" />。2002年に国会の議論の対象になった<ref>[http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigirokua.nsf/html/kaigirokua/009615420020529012.htm 第154回国会 文部科学委員会 第12号(平成14年5月29日(水曜日))]</ref><ref>[http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigirokua.nsf/html/kaigirokua/009615520021101002.htm 第155回国会 文部科学委員会 第2号(平成14年11月1日(金曜日))]</ref>。
 
== 性教育の議論 ==
141行目:
 
== 参考文献 ==
* {{Cite book ja-jp|和書 |author = [[澁谷知美]] |title = 性欲の文化史 |volume = 1 |year = 2008 |chapter = 性教育はなぜ男子学生に禁欲を説いたか:1910~40年代の花柳病言説 |series = 講談社選書メチエ |publisher = 講談社 |editor = [[井上章一]] |isbn = 9784062584258 |ref = harv }}
 
== 関連項目 ==
157行目:
* [["人間と性"教育研究協議会]]
 
<br />{{性}}
{{性道徳}}