全国植樹祭
全国植樹祭(ぜんこくしょくじゅさい)は、日本で行われる植樹祭。国土緑化運動の中核的な行事として、1950年(昭和25年)以降、毎年春に開催されている。
概要
編集国土緑化推進機構と開催都道府県(全都道府県の持ち回り)が主催している。大会会長は衆議院議長。
大会式典では、天皇の「おことば」、天皇・皇后による「お手植え・お手まき」行事、県内外の参加者による記念植樹、国土緑化運動ポスターコンクール等の表彰行事、大会宣言が行われることが恒例となっており、国民スポーツ大会・全国豊かな海づくり大会・国民文化祭と並び「四大行幸啓」の一つに位置付けられている。大会は後日NHKで編集版が放送される。
大会の前身は、第二次世界大戦以前から行われていた「愛林日植樹行事」に遡る。天皇の行幸は、1949年(昭和24年)に神奈川県箱根町仙石原で行われた愛林日記念植樹式から始められている[1][2]。現在の植樹祭につながるものは、1950年(昭和25年)に山梨県で「植樹行事並びに国土緑化大会」として開催されたものである。
開催日は、「緑の週間」に合わせて4月第1週(当時)に設定されていた[3]が、1960年(昭和35年)の第11回開催以降は5月に設定されることが増えた。
1970年(昭和45年)の第21回(福島県)から現在の名称になり、今日に至る。1977年(昭和52年)の第28回(和歌山県)からは、秋に過去の植樹祭での手植え・手まきにより成長した木の手入れ(枝払いなど)を行う全国育樹祭が行われており、歴代の皇太子(皇嗣)が出席している。
参加者数は、最盛期には1万人を超える規模になり、2002年(平成14年)に山形県金山町で開催された会場では12,000人を数えたが、2000年代に入ると地方自治体の資金難や広い植樹会場を設営することが困難などの理由で���小傾向となり、2013年(平成25年)の鳥取県南部町の会場ではスタッフを含めて7,000人規模となっている[4]。
2009年(平成27年)の第60回(福井県)からは当時の天皇明仁(現・上皇)の公務負担軽減策の一環として植樹祭式典での「おことば」は取りやめになり、平成年間中はこのまま継続した。徳仁の皇位継承後、2019年(令和元年)の第70回大会(愛知県)において、天皇の「おことば」が復活した[5][6]。
大会の歴史
編集※()内…開催回数。
回 | 開催日 | 開催地 | 回 | 開催日 | 開催地 | 回 | 開催日 | 開催地 |
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1 | 1950年4月4日 | 山梨県(1) | 31 | 1980年5月25日 | 三重県(1) | 61 | 2010年5月23日 | 神奈川県(1) |
2 | 1951年4月4日 | 群馬県(1) | 32 | 1981年5月24日 | 奈良県(1) | 62 | 2011年5月22日 | 和歌山県(2) |
3 | 1952年4月4日 | 静岡県(1) | 33 | 1982年5月23日 | 栃木県(1) | 63 | 2012年5月27日 | 山口県(2) |
4 | 1953年4月4日 | 千葉県(1) | 34 | 1983年5月22日 | 石川県(1) | 64 | 2013年5月26日 | 鳥取県(2) |
5 | 1954年4月6日 | 兵庫県(1) | 35 | 1984年5月20日 | 鹿児島県(1) | 65 | 2014年6月1日 | 新潟県(2) |
6 | 1955年4月6日 | 宮城県(1) | 36 | 1985年5月12日 | 熊本県(1) | 66 | 2015年5月17日 | 石川県(2) |
7 | 1956年4月7日 | 山口県(1) | 37 | 1986年5月11日 | 大阪府(1) | 67 | 2016年6月5日 | 長野県(2) |
8 | 1957年4月7日 | 岐阜県(1) | 38 | 1987年5月24日 | 佐賀県(1) | 68 | 2017年5月28日 | 富山県(2) |
9 | 1958年4月8日 | 大分県(1) | 39 | 1988年5月22日 | 香川県(1) | 69 | 2018年6月10日 | 福島県(2) |
10 | 1959年4月5日 | 埼玉県(1) | 40 | 1989年5月21日 | 徳島県(1) | 70 | 2019年6月2日 | 愛知県(2) |
11 | 1960年5月10日 | 山形県(1) | 41 | 1990年5月20日 | 長崎県(1) | - | 中止[注 1] | |
12 | 1961年5月24日 | 北海道(1) | 42 | 1991年5月26日 | 京都府(1) | 71 | 2021年5月30日 | 島根県(2) |
13 | 1962年4月21日 | 福井県(1) | 43 | 1992年5月10日 | 福岡県(1) | 72 | 2022年6月5日 | 滋賀県(2) |
14 | 1963年5月20日 | 青森県(1) | 44 | 1993年4月25日 | 沖縄県(1) | 73 | 2023年6月4日 | 岩手県(2) |
15 | 1964年5月13日 | 長野県(1) | 45 | 1994年5月22日 | 兵庫県(2) | 74 | 2024年5月26日 | 岡山県(2) |
16 | 1965年5月9日 | 鳥取県(1) | 46 | 1995年5月21日 | 広島県(2) | 75 | 2025 | 埼玉県(2) |
17 | 1966年4月17日 | 愛媛県(1) | 47 | 1996年5月19日 | 東京都(1) | 76 | 2026 | 愛媛県(2) |
18 | 1967年4月9日 | 岡山県(1) | 48 | 1997年5月18日 | 宮城県(2) | |||
19 | 1968年5月19日 | 秋田県(1) | 49 | 1998年5月10日 | 群馬県(2) | |||
20 | 1969年5月26日 | 富山県(1) | 50 | 1999年5月30日 | 静岡県(2) | |||
21 | 1970年5月19日 | 福島県(1) | 51 | 2000年4月23日 | 大分県(2) | |||
22 | 1971年4月18日 | 島根県(1) 広島県(1) |
52 | 2001年5月20日 | 山梨県(2) | |||
23 | 1972年5月21日 | 新潟県(1) | 53 | 2002年6月2日 | 山形県(2) | |||
24 | 1973年4月8日 | 宮崎県(1) | 54 | 2003年5月18日 | 千葉県(2) | |||
25 | 1974年5月19日 | 岩手県(1) | 55 | 2004年4月25日 | 宮崎県(2) | |||
26 | 1975年5月25日 | 滋賀県(1) | 56 | 2005年6月5日 | 茨城県(2) | |||
27 | 1976年5月23日 | 茨城県(1) | 57 | 2006年5月21日 | 岐阜県(2) | |||
28 | 1977年4月17日 | 和歌山県(1) | 58 | 2007年6月24日 | 北海道(2) | |||
29 | 1978年5月21日 | 高知県(1) | 59 | 2008年6月15日 | 秋田県(2) | |||
30 | 1979年5月27日 | 愛知県(1) | 60 | 2009年6月7日 | 福井県(2) |
行幸啓が中止された際の措置
編集1968年(昭和43年)5月19日、秋田県で開催された第19回植樹祭では、3日前に十勝沖地震が発生し行幸啓が中止となった。秋田県側は、急遽、秋田スギ苗木と鉢を皇居へ持ち込み「お手植え」をしてもらい会場へ搬送、当日に植栽箇所へ改めて移植するという手段を採った。「お言葉」は徳川義寛侍従が代読している[7][8]。
なお、開催地が2巡目となり、再び秋田県に開催地がめぐってきた2008年(平成20年)には、開催前日に岩手・宮城内陸地震が発生。開催自体が危ぶまれたが、翌日、11,500人の出席者を得て開催。「お手植え」、「お手撒き」も実施された[9]。
2020年(令和2年)に予定していた第71回(島根大会)は新型コロナ感染拡大のため1年延期となり、翌2021年(令和3年)5月30日に開催されたが、感染状況を考慮して行幸啓は行わず、赤坂御所(赤坂御用地)と島根県内の会場を中継でつなぎ、「お手植え」「お手撒き」を東京で行った後、後日、会場まで運搬されて移し替えられた[8]。翌年も同様。以降予定していた大会も1年ずつ後ろ倒しされた[10]。
全国緑化行事発祥の地
編集昭和天皇のお手植え
編集1947年10月30日から11月2日にかけて昭和天皇の戦後巡幸が富山県内で行われた[12]。その際、天皇は林業に関心を示し、富山県細入村(現:富山市西笹津)の高山本線沿いの斜面でタテヤマスギの植樹を行った。それまで天皇による公式行事での植樹は、枯死した際に責任が関係者に及ぶことを危惧し忌避されていた[13]が、「そんな時代でもないであろう」ということとなり、全国で初めて行われることとなった。これが契機となり全国植樹祭への出席、「お手植え」に結び付いている。その後、1958年10月に開催された富山国体、1969年5月に開催された全国植樹祭で富山県に再び行幸した際には、高山本線で運行されたお召列車の車窓から自ら植えたスギを眺めている[14]。この場所は、2019年現在も地域住民ら有志の手により管理が行われている[15]。
脚注
編集注釈
編集- ^ 新型コロナウイルス流行の社会情勢により中止、開催県を以降1年ずつ繰り下げ。
出典
編集- ^ 原武史『昭和天皇御召列車全記録』新潮社、2016年9月30日、101頁。ISBN 978-4-10-320523-4。
- ^ 『国土緑化運動十五年』国土緑化推進委員会、1965年、110頁 。
- ^ 「両陛下、植樹祭へ」『朝日新聞』昭和26年3月31日
- ^ 2013年全国植樹祭の概要(鳥取県ホームページ)
- ^ 中田絢子 (2019年6月2日). “天皇のおことば、11年ぶりに復活 両陛下が植樹祭出席”. 朝日新聞 2019年6月2日閲覧。
- ^ “全国植樹祭での天皇陛下のお言葉全文”. 日本経済新聞. (2019年6月2日) 2019年6月2日閲覧。
- ^ 社団法人国土緑化推進委員会『国土緑化20年の歩み』社団法人国土緑化推進委員会、1970年、p322頁。
- ^ a b “30日に2年ぶり植樹祭 天皇陛下、リモートでお言葉―過去にも訪問見送り”. JIJI.COM. 時事通信社 (2021年5月29日). 2021年5月30日閲覧。
- ^ “第59回全国植樹祭(森林整備課ホームページ内)”. 秋田県 (2016年8月3日). 2016年8月6日閲覧。
- ^ “全国植樹祭、1年延期 島根県で開催予定”. 日本経済新聞 (2020年4月6日). 2020年4月29日閲覧。
- ^ “2013年度林業遺産(No.3) 全国緑化行事発祥の地”. 日本森林学会. 2020年2月1日閲覧。
- ^ 原武史『昭和天皇御召列車全記録』新潮社、2016年9月30日、98頁。ISBN 978-4-10-320523-4。
- ^ 昭和天皇が摂政時代に宮城県の瑞巌寺でアスナロを植樹した例などが僅かにある(宮内庁『��和天皇実録第十』東京書籍、2017年3月30日、394頁。ISBN 978-4-487-74410-7。)
- ^ 北日本新聞2017年5月28日朝刊6面
- ^ “富山の「お手植え杉」美しく 県神社庁と地域住民清掃”. 北国新聞 (2019年5月17日). 2020年2月1日閲覧。