佐藤敏夫 (音響監督)

日本の音響監督

佐藤 敏夫(さとう としお、1940年1月13日[1] ー )は、日本音響監督、吹替演出家である。フリー。

経歴・人物

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1962年東北新社に入社[2]。外画演出部に所属し数々の洋画吹替の演出を担当[3][4]1997年に退社し、以後フリーの音響監督として活動している[2]。アニメーションの音響監督もいくつか担当している。

外画吹替の黎明期から活躍するベテランの一人であり[5]、活動50年以上を迎えた現在でも現役で活躍している。佐藤の演出は業界での評価も非常に高く、その手腕の高さについて三ツ矢雄二は「当時(80年代)の洋画では佐藤敏夫さんに演出してもらえたら一人前と言われるほどの巨匠だった」と評している[6]。自身の吹替演出について佐藤は「単なる(原語版の)模倣ではなく物語や役のイメージにあった演出を心がけた」と発言している[7]

出演した役者からの信頼も厚い。小山力也は「私の師匠」とし[8]、自身の声優デビュー作となった『ER緊急救命室』で自分を起用してくれた佐藤について「抜擢してくださったプロデューサーとディレクターが、僕の人生の大恩人です。吹替えの誇り、醍醐味、真髄を教えていただきました。いまも目指して精進しています」と語っている[9]坂本真綾は「第2の父」と呼び慕い、「佐藤さんの演出には作品に対する愛、ひとつひとつの役柄に対する愛、役者やスタッフに対する愛がある」と語っている[10]大塚明夫も相性が良く仕事がやりやすい演出家として佐藤の名を挙げている[11]

翻訳には木原たけしを起用することがすることが多く、「007シリーズ」TBS版や「インディ・ジョーンズ シリーズ」日本テレビ版をはじめ木原の海外ドラマ引退作となった『ER緊急救命室』まで長年に渡って多くの作品でコンビを組んできた。木原は佐藤について「翻訳を大事にしてくれる演出家なんです」と語り、現場で訳を変更する場合には必ず相談してくれたという[12]

横山智佐によると佐藤はゲームでの演出の際、作品世界に入りこむため台詞を言っている役者の姿はあえて見ずに、机に突っ伏してピクリとも動かず声を聞いていたという。横山はこれを怖いと思いつつも「なんて丁寧な収録なんだ」と感動したという[13]

吹替におけるキャスティングについては俳優本人の声ではない為、誰がやっても良いとしているが、近年の若い音響監督について、「自分がお前を使ってやるんだ」という言い方をする人がいることには苦言を呈しており、「『この役をお前にやらせてやるよ』ということでは、良い物が出来ないような気がする」と発言している[14]。また「今の風潮として、忙しいとか、期間が無いとか、とにかく作らなきゃいけないという切羽詰ったところが現場にあるので、余計に『じゃあこれはお前、これはお前、これはお前な』みたいな作り方をしているように見えるんですが、それをやったら吹替えの未来は無くなってく」と語り、大塚周夫を『ヒトラー 〜最期の12日間〜』のヒトラー役にキャスティングした経緯を例に、キャスティングする側が役者の本質を理解した上で「だからこそ、この役はあなたにお願いしたい」という姿勢をとることが日本語版を大事にしていくことになると述べている[14]

近年の若手声優については「どんな役でも出来るかもしれないけども、『これだけは俺に任せろ』というような個性というか(中略)『この人にこの俳優の声を演じてもらいたい』というような個性的な役者が少なくなってきている」と発言している[14]

エピソード

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スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』を演出した際、本国側のスタッフからアナキン・スカイウォーカーの役には演じるジェイク・ロイドと同年代の子役を起用するよう要請があった。佐藤は児童劇団を訪ねまわったものの芝居ができる子役がいなかったため、本国側との交渉の末子役の吹き替え経験が豊富な矢島晶子を起用することに成功したという[15]。また『スター・ウォーズ クローン大戦』でのアサージ・ヴェントレス配役の際も、アメリカ側から原語版(グレイ・デライル、ニカ・フッターマン)と同じ20代女性での配役が要望されていたが、日本では同年代でオリジナルに似たしゃがれた声を出せる声優がいなかったため、当時40代半ばであった磯辺万沙子がキャスティングされた。佐藤はこの時も現地スタッフを納得させるのに苦労したと述べている[15]

ゲーム『サクラ大戦シリーズ』では、『サクラ大戦V 〜さらば愛しき人よ〜』まで全てのシリーズの音響監督を担当した。原作者である広井王子の想いに答えるため佐藤は、声の特徴を明確に打ち出すことと、キャラクターと声でチーム(帝国華撃団)としてのアンサンブルを取ることを意識したという[16]。そのため、当時としては珍しく細かい部分まで丁寧に演技指導があり収録が行われたゲーム作品になったという[13]

主な参加作品

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アニメーション

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1973年

1975年

1978年

1979年

1983年

2003年

2005年

劇場アニメ

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2004年

1997年

ゲーム

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1996年

1998年

2000年

2001年

2002年

2005年

日本語吹替版演出

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映画

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テレビドラマ

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海外アニメ

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脚注

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  1. ^ シネ通! ダークボの偏愛コラム #69”. 2018年9月4日閲覧。
  2. ^ a b ロゴ - 声優ワークショップ Fourth AVENUE (フォースアベニュー)”. 2017年6月21日閲覧。
  3. ^ 聞き手:とり・みき、文:村上ひさし (2014年). “#29 佐藤春夫インタビュー『サウンド・オブ・ミュージック』製作50周年記念版”. 吹替の帝王. 20世紀フォックス ホームエンターテインメント. 2015年9月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月31日閲覧。
  4. ^ 『サウンド・オブ・ミュージック』製作50周年記念吹替版 インタビュー 演出家 佐藤敏夫 - ウェイバックマシン(2015年5月11日アーカイブ分)
  5. ^ NITABOHオフィシャルサイト / メイキング / 声優オーディション”. 2017年6月21日閲覧。
  6. ^ 『アマデウス 日本語吹替音声追加収録版ブルーレイ』発売記念 特別試写会 オフィシャルレポート ゲスト:三ツ矢雄二さん”. 2017年6月21日閲覧。
  7. ^ “吹き替え映画 歌声も絶妙”. 朝日新聞. (2017年5月23日) 
  8. ^ 20世紀FOXホームエンターテイメントのツイート(2015年3月27日) - Twitter
  9. ^ 「自分の役割は“影武者”」小山力也が明かす、声優人生の“大恩人”と、ハリウッドスターへの深い敬意”. Yahoo!ニュース. 2021年9月7日閲覧。
  10. ^ *- 坂本真綾 【I.D.】 12人の優しい人たち -*”. 2017年6月21日閲覧。
  11. ^ ワーナーブラザーズ公式「吹替の力」大塚明夫インタビュー”. ワーナー・ブラザース. 2019-02-29閲覧。
  12. ^ 岸川靖 (2013年12月12日). “■海外ドラマ■木原たけしさんTV翻訳から引退 ~担当作品思い出話~ 後編”. BSコラム. NHK. 2013年12月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年3月5日閲覧。
  13. ^ a b 横山智佐『わたしが愛したゲームキャラ』ソフトバンククリエイティブ、1999年、40-42頁。ISBN 4797309415 
  14. ^ a b c 「大塚周夫との思い出」 音響演出家・佐藤敏夫 インタビュー”. ふきカエル. 2020年3月6日閲覧。
  15. ^ a b 高貴準三「Lode of STAR WARS」『宇宙船』Vol.112(2004年5月号)、朝日ソノラマ、2004年5月1日、60頁、雑誌コード:01843-05。 
  16. ^ 出山健示『広井王子の全仕事』毎日コミュニケーションズ、2000年、65-66頁。ISBN 4839902593 
  17. ^ ウエスト・サイド物語 -日本語吹き替え版”. ふきカエル大作戦‼︎ (2021年10月1日). 2022年7月27日閲覧。
  18. ^ サウンド・オブ・ミュージック 製作50周年記念”. ふきカエル大作戦‼︎ (2015年3月27日). 2022年7月27日閲覧。
  19. ^ 007 ドクター・ノオ(若山弦蔵版)”. ふきカエル大作戦!!. 2022年7月29日閲覧。
  20. ^ 007 ロシアより愛をこめて(若山弦蔵版)”. ふきカエル大作戦!!. 2022年7月29日閲覧。
  21. ^ 007 サンダーボール作戦(若山弦蔵版)”. ふきカエル大作戦!!. 2022年7月29日閲覧。
  22. ^ 007は二度死ぬ(若山弦蔵版)”. ふきカエル大作戦!!. 2022年7月29日閲覧。
  23. ^ 女王陛下の007(広川太一郎版)”. ふきカエル大作戦!!. 2022年7月29日閲覧。
  24. ^ 007 ダイヤモンドは永遠に(若山弦蔵版)”. ふきカエル大作戦!!. 2022年7月29日閲覧。
  25. ^ 007 死ぬのは奴らだ(月曜ロードショー版)”. ふきカエル大作戦!!. 2022年7月29日閲覧。
  26. ^ 007 黄金銃を持つ男(月曜ロードショー版)”. ふきカエル大作戦!!. 2022年7月29日閲覧。
  27. ^ 007 私を愛したスパイ(月曜ロードショー版)”. ふきカエル大作戦!!. 2022年7月29日閲覧。
  28. ^ 007 ムーンレイカー(月曜ロードショー版)”. ふきカエル大作戦!!. 2022年7月29日閲覧。
  29. ^ 007 ダイ・アナザー・デイ”. ふきカエル大作戦!!. 2022年7月29日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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