スカイレールサービス広島短距離交通瀬野線
広島短距離交通瀬野線(ひろしまたんきょりこうつうせのせん)は、広島県広島市安芸区のみどり口駅からみどり中央駅までを結んでいた、スカイレールサービスの軌道路線である。スカイレールみどり坂線の愛称があるほか、一般的にスカイレールサービス、スカイレールと呼ばれた。
広島短距離交通瀬野線 | |
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みどり口駅を発車するスカイレール | |
基本情報 | |
通称 | スカイレールみどり坂線 |
現況 | 廃止 |
国 | 日本 |
種類 | 懸垂式モノレール(スカイレール) |
起点 | みどり口駅 |
終点 | みどり中央駅 |
駅数 | 3駅 |
開業 | 1998年8月28日 |
廃止 | 2024年5月1日 |
所有者 | スカイレールサービス |
運営者 | スカイレールサービス |
使用車両 | スカイレールサービスを参照 |
路線諸元 | |
路線距離 | 1.3 km |
線路数 | 複線 |
電化方式 | 直流440 V |
最大勾配 | 263 ‰ (14 ° 44 ′) |
高低差 | 160 m |
最高速度 | 25 km |
停車場・施設・接続路線 | |||||||||||||||||||||||||||||||
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安芸区瀬野町の住宅団地「スカイレールタウンみどり坂」への交通手段として1998年(平成10年)に開通した路線で、「スカイレール」と呼ばれる新交通システムを採用していた。2024年(令和6年)5月1日に廃止された[1]。
概要
編集スカイレールとは、神戸製鋼所・三菱重工業などが共同開発した懸垂式モノレールとロープウェイを組み合わせたような交通システムで、懸垂式のモノレール車両を、駅間ではワイヤロープで、駅構内ではリニアモーターで駆動して運転する[2]。平均速度は約15km/hである[3]。建設費も従来のモノレールや新交通システムと比べて1/3程度と安く、運営も低コスト、工期も短いという長所を持つ[3]。
27%(=270‰、約15度)の急勾配を登坂する能力があるため[4]、山陽本線瀬野駅北側の丘陵地に開発された住宅団地への交通機関として採用された。総工費は約62億円であった[3]。
従来のロープウェイやゴンドラリフトは風に弱いため、都市内公共交通には不向きであるが[5]、スカイレールは車体の支持・案内を桁構造と車輪で行っているため風にも強く、従来の急勾配線区向けの交通システムの弱点を克服している[5]。ほぼ全線が道路沿いに造られており、懸垂式モノレールとして軌道法による特許を受けていた。実際の最急勾配は263‰となっており、これはケーブルカー以外の鉄軌道では日本一の急勾配であった。基本的な電機品である加減速装置は、東洋電機製造が担当した[6]。
鉄道としては日本で初めて、IC乗車券、QR乗車券が導入された[7](運賃の節も参照)。
2022年(令和4年)11月、維持費を含めた採算性の面から当路線の運行を終了する方針を決め、電気バス(EVバス)への切り替えを検討していることが報じられた[8][9]。当初は2023年(令和5年)12月末での運行終了を予定していたが、同年11月初旬に運行開始を予定していたEVバスの施設整備に対する許認可手続きに遅れが出ていることから2024年(令和6年)4月末に変更となった[10][11]。EVバスは運行を芸陽バスに委託した上で16の停留所を開設。スカイレールの運行終了に先立って、2024年3月30日からみどり坂タウンバス(77号線)として運行を開始した[12][13][14]。
2024年2月29日に軌道運輸事業の廃止が国土交通省中国運輸局より許可され、同年5月1日に廃止されることになった[1][15][16]。4月30日のみどり口駅12時0分発のみどり中央行、みどり中央駅12時0分発のみどり口行をもって運行を終了した[1][15][16]。
路線データ
編集運行形態
編集みどり口駅は山陽本線の瀬野駅に直結していた。みどり口駅 - みどり中央駅間の所要時間は5分であった。
6時40分から22時まで便が設定され、日中の10時台から16時台は15分間隔で運行。通勤通学時間帯は最短5分間隔で運行されていた。システムとしては最短75秒の運転間隔で運行できる性能を持っていた。
2010年度までは平日早朝にみどり口駅(瀬野駅)横の広島市立瀬野小学校へ通学する小学生のために「小学生専用車両」が運行されていたが、2011年4月に団地内に広島市立みどり坂小学校が開校したため廃止された。この小学生専用車両には、通学する小学生の安全確保の観点から、専用便には小学生以外の乗車はできず、逆に専用便が運行されていた時間帯の一般便には小学生を乗車させないようにしており、小学生と一般客を完全に分離していた。
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JR瀬野駅ホームから見たスカイレール軌道。右上の円形屋根部分の下にロータリーがあり、到着したスカイレールの車両は直進のまま上り線から下り線に転じて乗車ホームに向かう。
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スカイレール車内からみどり口駅を見下ろす。貨物列車が走っているのが山陽本線で、スカイレールとの交点の位置にみどり口駅があった。右奥が広島駅方面。
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みどり口駅。写真手前が降車ホーム、奥が乗車ホーム。みどり口駅の改札は高架で瀬野駅(左下に停車中の電車あり)の橋上駅舎に直結していた。みどり中央駅もJR線連絡通路を持つこと以外は同様の構造であった。
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みどり中央 - みどり中街間
車両
編集開業から廃止まで200形のみが使用されていた。
歴史
編集駅一覧
編集駅名 | 営業キロ | 接続路線 | |
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駅間 | 累計 | ||
みどり口駅 | - | 0.0 | 西日本旅客鉄道: 山陽本線…瀬野駅 (JR-G07) |
みどり中街駅 | 0.7 | 0.7 | |
みどり中央駅 | 0.6 | 1.3 |
- みどり口駅は有人駅、その他の2駅は無人駅である。
運賃
編集運賃は距離に関わらず均一制で、大人170円、小児90円となっていた[19]。開業当初の大人運賃は150円であった[3]。
全ての駅に自動券売機・自動改札機が設置されており、定期券には日本全国で初めて非接触型ICカードが採用された。
2013年(平成25年)1月の改札システム刷新により、非接触型ICカードによる定期券に加えて回数乗車券もICカード化された。ただし、ICカードを普通乗車券として利用はできない。ICカードでの定期券・回数券の利用は、ICOCAに搭載する[注 1]か、独自発行のICカードを使う。同時に、普通乗車券は磁気券からQRコード読み取り式に変更された[20]。従来は、乗車駅での改札時に定期券以外の磁気乗車券は自動改札機に回収され、旅客は無札の状態で乗車していたため、降車駅での集札は行われていなかった。
スカイレールの最終便は両端とも22時10分発(2023年1月現在)であり、それ以後には、瀬野駅からのジャンボタクシーが22時25分から翌日0時30分まで6便運行されて山陽本線の終列車までに対応していた。団地方面から瀬野駅方向への乗車は不可であった。運賃は大人340円、子供180円だが、スカイレール定期券所有者は大人170円、子供90円で乗車できるなど、スカイレールの代替交通機関としての役割を担っていた。
事故
編集開業前の1997年(平成9年)8月に工事用ゴンドラが暴走して駅舎に激突したことにより、作業員2名が死亡・7名が重軽傷を負う事故が発生した。
脚注
編集注釈
編集- ^ スカイレールサービスに個人情報の登録を行うことが必要で、無記名のICOCAには搭載できない。
出典
編集- ^ a b c d e f 『スカイレールの廃止を許可しました』(PDF)(プレスリリース)国土交通省中国運輸局、2024年2月29日 。2024年3月4日閲覧。
- ^ “製品紹介 短距離交通システム ―ロープ駆動式懸垂方交通システム“スカイレール”―” (PDF). 三菱重工業. 2014年8月23日閲覧。
- ^ a b c d 新交通システム「スカイレール」運行開始(国土交通省運輸白書「平成10年度 運輸経済年次報告」第2部 第5章 第1節 コラム)
- ^ “新交通システム 製品・事業紹介 スカイレール”. 神戸製鋼所. 2014年8月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月23日閲覧。
- ^ a b 日本鉄道技術協会 『20年後の鉄道システム』 日本鉄道技術協会、2008年、142頁。
- ^ 東洋電機製造『東洋電機技報』第103号(1999年4月)製品紹介「新交通システムスカイレール用加減速装置」pp.45 - 46。
- ^ 土屋武之 (2015年1月2日). “進化する自動改札機、世界初の遅延証明も! 小田急が先行、「IC革命」が静かに進行中”. 東洋経済ONLINE. 東洋経済新報社. 2018年9月11日閲覧。
- ^ 二井理江「みどり坂のスカイレール、2023年末めどに運行終了へ JR瀬野駅と団地結ぶ交通システム【動画】」『中国新聞』第46109号、中国新聞社、2022年11月6日、社会第17版、36面。2022年11月7日閲覧。
- ^ “広島スカイレール終了へ 国内唯一の交通システム”. 産経WEST (産経新聞社). (2022年11月10日) 2022年11月24日閲覧。
- ^ “スカイレール 運行終了を来年4月末に延期 広島”. RCC NEWS. RCC中国放送 (2023年6月14日). 2023年6月14日閲覧。
- ^ “広島新交通「スカイレール」運行終了4カ月延期”. 日本経済新聞. (2023年6月14日) 2023年6月15日閲覧。
- ^ 『みどり坂タウンバスの運行開始について』(プレスリリース)芸陽バス、2024年3月26日 。2024年4月2日閲覧。
- ^ “広島の交通システム「スカイレール」、EVバスに転換”. 日本経済新聞 (2022年11月29日). 2024年2月25日閲覧。
- ^ 渡部史絵 (2023年8月29日). “異形の鉄道「スカイレール」なぜ2024年春に廃止?”. 東洋経済ONLINE. 東洋経済新報社. 2023年10月22日閲覧。
- ^ a b c d “世界唯一の公共交通「スカイレール」2024年5月1日廃止決定! 運行終了は異例の真っ昼間”. 乗りものニュース (2024年3月2日). 2024年3月3日閲覧。
- ^ “ウォーターフロント地区における新たな交通システムの検討状況について”. 福岡市住宅都市局. 2023年6月8日閲覧。
- ^ a b 国土交通省鉄道局監修『鉄道要覧』平成28年度版、電気車研究会・鉄道図書刊行会、p.236
- ^ 『JTB時刻表』2017年10月号、p.860
- ^ 第12回「日本鉄道賞」応募案件の概要 (PDF) (国土交通省)
関連項目
編集外部リンク
編集- ウィキメディア・コモンズには、スカイレールサービス広島短距離交通瀬野線に関するカテゴリがあります。
- スカイレール・ジャンボタクシー|スカイレールタウンみどり坂 - ウェイバックマシン(2016年11月10日アーカイブ分)