キイレツチトリモチ
キイレツチトリモチ(喜入土鳥黐、Balanophora tobiracola)とは、ツチトリモチ科ツチトリモチ属の寄生植物。
キイレツチトリモチ | |||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
牧野富太郎「Observations on the Flora of Japan」
| |||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||
学名 | |||||||||||||||||||||
Balanophora tobiracola Makino | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
キイレツチトリモチ |
特徴
編集小型の一年生あるいは二年生の寄生植物で、10月下旬 - 11月中旬頃、高さ3 - 11cmの植物体(花茎)を地上に出す。全体が黄色で、花穂はやや細長い。鱗片葉は10枚前後で、白色 - 黄色で葉緑素を持たず、小型。地下茎は塊状で、皮目がない[1]。花茎はこの根茎の頂端から3 - 10個出る。雌雄同株で、一つの花穂(花の集合体)に雄花と雌花がつく。花穂は長卵形で先端が細く尖り、黄白色。雌花が花穂の表面全体に密生し、それよりも大きい雄花はその間にまばらに散生している[1]。雄花は三枚の花びらがあって[1]、はっきり分かる大きさをしている。したがって、外見上は塊の上に花が散らばったような姿になる。葉緑素を持たないため発芽した種子のうち、寄主の根に付着したものだけが成長する事ができる。
海岸付近の低地林内で、トベラやシャリンバイ、ネズミモチ、ハマヒサカキ、リュウキュウクロウメモドキ等に寄生する[2]。
1910年(明治43年)に鹿児島県揖宿郡喜入町(現鹿児島市)の喜入小学校の裏の丘陵で小学校教諭によって発見され、牧野富太郎により記載された[2][3]。なお、鹿児島市吉野町磯の生育地は国の天然記念物に指定されている[2]。
分布
編集日本には四国(高知県)[4]、九州(長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県)、大隅諸島(種子島 [2] [5]、屋久島 [2] [5])、宇治群島 [2]、トカラ列島(口之島[2]、諏訪之瀬島[2]、宝島 [2] [5])、奄美群島(奄美大島 [2] [5]、喜界島 [2] [5]、徳之島 [2] [5]、沖永良部島 [2] [5])、沖縄諸島(伊平屋島 [5])、沖縄島 [5]、 宮古諸島(多良間島? [5])、八重山諸島(石垣島 [5]、竹富島 [5]、西表島 [5])に、日本国外には台湾 [1]に分布する。北限は従来長崎県佐世保市黒島 [6]とされていたが、2014年に高知県高岡郡四万十町興津での自生が確認され、北限・東限が更新された[4][7]。南西諸島ではリュウキュウツチトリモチがよく似た場所で見られ、一緒に生えていることもある。
保護上の位置づけ
編集鹿児島県鹿児島市吉野町磯の自生地は、1921年(大正10年)3月3日に、「キイレツチトリモチ産地」として国の天然記念物に指定されている[2][8]。
脚注
編集- ^ a b c d 小林純子「キイレツチトリモチ」『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館 。コトバンクより2024年12月30日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 寺田 2016, p. 73
- ^ 『喜入町郷土誌』喜入町、2004年、498-499頁 。
- ^ a b 前田ら 2015, pp. 185–186
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 沖縄県環境部自然保護課 2015, p. 152
- ^ 保全することが望ましい地域(自然環境)/佐世保市(2024年6月5日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
- ^ キイレツチトリモチ - 文化遺産オンライン(文化庁)
- ^ キイレツチトリモチ産地 - 文化遺産オンライン(文化庁)
- ^ “宮崎県レッドリスト(2020年度改訂)”. 宮崎県. 2024年12月29日閲覧。宮崎県版レッドリスト及びレッドデータブックについてに掲載
- ^ 『レッドデータブックくまもと2019 維管束植物・コケ植物』2019年、108頁 。レッドデータブックくまもと2019-熊本県の絶滅のおそれのある野生動植物-の発刊に掲載
- ^ “選定種一覧”. 鹿児島県. 2024年12月29日閲覧。維管束植物・藻類(平成27年度改訂)に掲載
- ^ 『高知県レッドデータブック2022 植物編』高知県林業振興・環境部自然共生課、2022年、198頁 。
関連項目
編集参考文献
編集- 沖縄県環境部自然保護課 編『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)第3版(菌類編・植物編)』2018年3月、152-153頁 。
- 鹿児島県環境生活部環境保護課編 『鹿児島県の絶滅のおそれのある野生動植物-鹿児島県レッドデータブック植物編-』 財団法人鹿児島県環境技術協会、2003年。
- 財団法人鹿児島県環境技術協会編 『かごしまの天然記念物データブック』 南日本新聞社、1998年。
- 多和田真淳監修・池原直樹著 『沖縄植物野外活用図鑑 第6巻 山地の植物』 新星図書出版、1979年。
- 寺田仁志「天然記念物「キイレツチトリモチ産地」指定地の植生について」『鹿児島県立博物館研究報告』第35巻、鹿児島県立博物館、2016年、73-89頁。NDLJP:10365823
- 前田綾子、田邉由紀、稲垣典年「四国新産のキイレツチトリモチ(ツチトリモチ科)(新産地報告)」『分類』第15巻第2号、日本植物分類学会、2015年、185-189頁、doi:10.18942/bunrui.KJ00010115724。
外部リンク
編集- 牧野日本植物図鑑インターネット版 - 初版 第1898図「きいれつちとりもち」)
- 高知県立牧野植物園植物データベース - キイレツチトリモチ(ツチトリモチ科)
- 宮崎と周辺の植物 - キイレツチトリモチの写真・解説